捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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愛のことば ♯2

 花陽が思いきり抱きついてきた。

 いつもの場所にすっぽり収まる小さな温もりに、喜びが込み上げてくる。つい最近会ったばかりなのに、すごく久しぶりに会ったみたいだ。

 甘い香りを撒き散らしながら、彼女は笑顔を向けてくる。

「来てくれてたんですね」

「あ、ああ、まあな」

 くりくりした子犬のような瞳が甘えるように見つめてくる。何度見てもこの目には参ってしまう。今なら何でも言うことを聞いてしまいそうだ。

 髪をな、親指で涙を拭ってやる。

「……泣くなっての」

「だって……嬉しくて……」

 親指で優しく目元を拭う。

 その雫をとおして、花陽の気持ちがわかる気がした。

 あとはお互いに、自然と唇が重なっていく。

「…………」

「…………ん」

 2、3秒で唇を離し、花陽の目を見ると、もういつもの笑顔に戻っていた。

「おお……」

「ハ、ハレンチな……」

「わぁ~♪」

「私達がいるの忘れてない?」

「あ、あ、あんた達……!」

「比企谷君、花陽……希、今夜は飲むわよ」

「いや、ウチら未成年やから。それに、明日は朝から練習やから」

「かよちん、よかったにゃ~!!」

「お、お兄ちゃん!大胆すぎ!」

「あらら、若いっていいわねぇ」

「…………」

 気がつけば、知らない人達からも囲まれて、拍手されていた。何を言っているかはよくわからないが、とりあえず祝福してくれているらしい。

「…………!」

「~~~~♪」

「粋な演出しやがってぼっちのくせに!……仲良くやれよ!」

 おや、なんか久しぶりに出てきやがったぞ。まあ、今日のところは許しておいてやろう。

「よ~し、今日の晩御飯は二人のおごりやって~♪」

「の、希ちゃん!」

 さりげなくとんでもない事言い出すな、この人。

 

「まさか八幡さんとアメリカでこうして一緒にいられるなんて……夢みたいです」

「まあ、確かにな」

 二人してベッドに寝転がり、頬を撫でたり、髪を梳いたりしている。

 食後にホテルに戻った俺達は、花陽と星空の部屋でくつろいでいた。星空が気を利かせて二人きりにしてくれた。本当にありがたい。日本に帰ったら、戸塚との甘い場面をセッティングしてあげたいくらい。まあ、俺が何かしなくても大丈夫そうだけど。

 考えながら、花陽の柔らかい頬をつまんだり、つついたりしてみる。おお、結構伸びる。

「ふぁふぃふぁんふぁん」

「どした?」

 手を離す。

「……………………い」

「?」

 顔を寄せ、耳を近づける。

 花陽は顔を紅く染め、目を潤ませながら言った。

「もっとキス……してください。それと……抱きしめて欲しいです」

「…………」

 やばい。

 可愛すぎる。

 体が火照るのを感じながら、花陽を引き寄せる。いつまでもこの温もりを包んで、やわらかな感触に包まれていたい。

 この時、一つの考えが閃いた。




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