捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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君は太陽 ♯2

「は、八幡さん。入りますね?」

「ああ…………」

 タオルを巻いた花陽がカーテンを引き、泡で満たされた湯船の中へ入ってくる。泡は溢れる事はなく少しだけで浮き上がった。

 ブクブクとした柔らかい感触の中で、さっきのやり取りを思い出す。

『……よかったら、一緒にシャワー浴びないか』

『……え?』

『…………』

『…………えぇ!?』

『わ、悪い。忘れてくれ』

『…………いいですよ』

『え、いや、別に』

『無理なんてしてませんよ。ただ……』

『?』

『素敵な思い出にしてくださいね?』

『……ああ』

 そんなわけで一緒に泡風呂に入っているわけだが、一つ問題がある。

 ……何をすればよろしいのでしょうか?

 花陽は微笑みながらこちらを見ているが、まさかこのままぼーっとしているのも違う気がする。

「あの……」

「ひゃいっ!?」

「ふふっ、どうしたんですか?」

「いや、なんでも……」

 久々に花陽の前で噛んだ気がする。

「そっちに……行っていいですか?」

「……もちろん」

 花陽は泡を纏わりつかせながら、俺の足の間にすっぽりと小さく収まった。

 そしてそのまま寄りかかってくる。

「髪……綺麗だな」

「えへへ……ありがとうございます」

「昔からショートなのか?」

「そうですね。あ、もしかして長い方が好きですか?」

「いや、ただ色んな花陽を見たくなる時があるだけだ」

「私と一緒ですね」

「俺が髪伸ばしたところが見たいのか?」

「そうじゃなくて……」

 花陽は顔だけ僅かに俺の方へ向けた。

「私も色んな八幡さんを知りたいんです」

 体をこっちに向かせた花陽が、小さな手を俺の頭に添え、深めのキスをしてくる。俺もそれに呼応するように、火照った舌を絡め始めた。そして、タオル一枚を通して伝わる花陽の体温がさらに熱を加速させていく。

 そして、震える指先を何とかコントロールしながら、タオルを丁寧に外していく。

 花陽の身体が少し反応した。

「……何だか恥ずかしいです」

「大丈夫。……すごく綺麗だと思う」

「このまま……その……私達……」

「いや、見るだけにしとく」

 本能に任せて行動しているせいか、頭がぼんやりしてきた。まるで自分が自分じゃないみたいだ。

 そのまま互いに存在を確かめ合う夜は、高校二年の最も熱い夜になった。

 

 翌朝の事もあるので、少し早めに戻る事にした。

 頭の芯から火照っていたが、どこか心地良かった。

 花陽も顔を赤くしたまま、笑顔を向けてくる。

「あっという間でしたね。もう少し一緒にいたいかもです」

「そうだな。でも、そっちは朝早いんだろ?」

「はい、八幡さんも一緒に走りますか?」

「止めとく。ジャージ持ってきてないからな。それに……μ,sとしての時間も大事だろ?」

「ありがとうございます。気遣ってくれて」

「怪我に気をつけてな……おやすみ」

「おやすみなさい」

 微笑みを見届け、ゆっくりとドアを閉める。  

 花陽のやわらかな感触は体に残ったまま、夢にも出てきそうだった。




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