捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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 それでは今回もよろしくお願いします。


君は太陽 ♯3

 

『ねえ、八幡君!』

『は、はい?』

『絵里編はどう!?この後も○○で○○な展開がくるそうよ!』

『な、何の事ですか?ていうか何故水着……』

『八幡君はウチに惚れたんよ♪』

『え?』

『私としっとりとチュンチュンするんだよ♪』

『な、何の事でしょうか……』

『八幡、私達はあんな出来事を乗り越えてきたのよ!私が一番よね!』

『あ、え……』

『わ、私には付き合う前からあんなハレンチな事をしてたのに……八幡……』

『えー……』

『わ、私だって……頑張ります!八幡さん』

『お、おう……』

『穂乃果編はそろそろだよ♪』

『あ、亜里沙編もきっと……』

『なぁんでにこ編は予定も立っていないのよ!』

 さっきから何が起こってるんだ?

『ほら、八幡』

『そろそろ起きるにゃ!』

 

「八幡さん、起きてください」

「……花陽?」

 聞き慣れた声にうっすらと瞼を開ける。

 ぼんやりとした何かの輪郭が次第にはっきりしてきた。そこで、さっきまでのが夢だったのだと気づく。

 完全に目が覚めると、そこにはこちらを覗き込む花陽がいる。いつものやわらかな笑顔がそこにあった。

「おはようございます。朝御飯出来てますよ」

「ありがとう」

 のろのろと体を起こし、伸びをすると、朝食を並べるエプロン姿の花陽がそこにいる。

 ……そろそろ一ヶ月か。この光景もだいぶ見慣れてきた。

 

 東京の大学に合格した俺は、ワンルームの賃貸に引っ越した。そして引っ越してきてからというもの、花陽がほぼ毎日こうして食事を作りに来てくれる。朝は朝練があるので頻度は少ないが、それでも来れる日は必ず来てくれた。

 

「……いつも悪いな」

「いえ、私がやりたくてやってるんです」

 頭をぽんぽんとしてやると、気持ち良さそうに目を細め、そのまま俺の空いた手を握ってくる。

「な、なんか、新婚さんみたいですね」

「……もう5回くらい聞いたぞ」

「そういう事言うなら……」

 いきなり唇を塞がれた。

「…………ん」

「…………」

 朝日が射し込むような爽やかなキスは数秒間、今日の花陽を注ぎ込んできた。

 

「あ、もうこんな時間!」

「朝から4杯も飯食うからだよ……」

「白米ですから!」

「あ、ああ、そうだな……ほら、片付けは俺がやるから」

「ありがとうございます!」

 花陽はパタパタと忙しなく動き、そこが微笑ましい。

「じゃ、気をつけてな」

「八幡さんも二度寝しないでくださいね」

「お、おう……」

 ……さすが、俺の行動をよくわかってらっしゃる。

 この前二度寝して怒られたばかりだから気をつけよう。

「八幡さん……」

 花陽は目を閉じ、俺を待っている。

 朝に花陽が来た時はこれも定番になっている。

 少し照れくさくはあるが、やっぱり幸せだと思える。

 今日もその幸せを確かめよう。

「いってらっしゃい…………」

「…………ん」

 また新しい一日が始まる。

 

 

 





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