捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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「おぉう……」

 思わず気持ち悪い呻き声が漏れる。危ねー、これが教室だったら、また陰でキモ谷呼ばわりされてるところだったぜ。

 過去のトラウマに心を再び傷つけられながら、呻き声の原因となったメールを再び凝視する。

 

 FROM 小泉花陽

 

 どうしようどうしようどうしよう。別に女の子とメールをするのが初めてというわけではない。だが、これまでの女の子は、夜7時に就寝しているので、こんな時間にメールが来ることはなかった。健康的だなぁ。

 …………いかんいかん。またトラウマを思い出してしまった。ちくしょう、地雷多すぎだろ。迂闊に踏み込めない。ええい、引っ込め。

 気を取り直し、メールを開く。

 

『こんばんは、夜分遅くにごめんなさい』

 

 そこで、メールは途切れていた。

「…………」

 え、何これ?何でいきなり謝られたの?もしかして、俺が好きになって告白する前に事前にごめんなさいって事?

 頭を抱えていると、またメールの受信音が鳴る。

『すいませんすいません!間違えて途中で送信してしまいました!あの、お聞きしたい事があるのですが、お兄さんはアイドルはお好きですか?』

 あー、操作ミスか。良かった。うっかり死ぬところだったわ。

 しかし、アイドルか。アイドル系ビッチなら割と見てきた方だが、生で見た事はない。まあ、俺も男なので、全く興味がないわけじゃないが。

『嫌いじゃない。今日見たA-RISEなんかはいいと思う』

 こんなもんか。我ながら当たり障りない。よし、送信。

 すると、10秒もせずに着信がきた。

「おぉう…」

 また気持ち悪い呻き声が漏れる。画面には小泉花陽と表示されている。何なのコイツ、俺の事好きなの?中学時代の俺だったら告白してフラれているところだ。

 恐る恐る電話に出る。

「ですよね!!!」

「な、何が?」

 小泉のテンションが昼間と全然違う。夜行性なのだろうか。

「A-RISEは本当にすごいアイドル何ですよ!3人のバランスの取れたルックスもさることながら、一糸乱れぬ美しいパフォーマンス!そして、3人の素晴らしい歌声が重なった時のあの感動といったら、もう…………」

「…………」

 小泉は悦に入り、俺は言葉を失った。

 いや、そもそも気づくべきだったのだ。秋葉原でアイドルグッズをあんなに買い漁るやつは、間違いなくアイドルオタクなんだから。

 だが別に引いたりしない。俺だってマンガ、アニメ、ゲーム、ライトノベルと一通り嗜んでいる。昔はコスプレだって…………。危ねぇ。また黒歴史が蘇るところだった。いや、何もしてないよ。ハチマン、ウソ、ツカナイ。

「……その、なんだ、小泉はアイドルが好きなのか?」

「はい!アイドルと白米なしでは生きていけません!」

 そこ同列なんだ…………。

 この後、延々とアイドルについて語られてしまった。

 女子との初めての夜の長電話がアイドルトークか…………。

 まあ、俺らしいといえば俺らしい。

 

「あのお兄ちゃんが女の子と長電話してる!小町嬉しいよ!」

 …………盗み聞きはバレないようにしろよ。





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