捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
1週間過ぎるのが早い!
それではもよろしくお願いします。
「かよちん、どうしたの?」
「え、な、何でもないにゃ…………」
「凛の喋り方が移ったにゃ!?」
頭がぽーっとしていて、凛ちゃんの言葉が上手く入ってこない。2人を見送るまでは頑張っていつも通りに振る舞ってたけど、もう限界のようです……。
指先で唇に触れる。そこには八幡さんの頬の感触があった。
決して七夕の夜のロマンチックな空気に当てられただけじゃない。そんなに器用な性格じゃない事は、自分がよく知っている。
私は八幡さんが好き。
いつからだろう…………。最初は哀しそうな目をしてるけど、どこか優しい人と思っていたような…………。いつから私の気持ちが恋に変わったんだろう。
「かよち~ん!」
「ぴゃあっ!」
凛ちゃんが私の頬を左右からつまんでくる。
「比企谷先輩と何かあったの?」
「ふぁ、ふぁんふぇふぉふぁふぃふぉ」
「えぇ!?せ、先輩に変な事されたにゃ!?」
何故か先輩が悪者になってしまいました……。
「ど、どうしよう……。でも小町ちゃんが言ってたように、作戦どおりにゃ?」
「ふぁ、ふぁふふぇふふぉふぉふぃ?」
な、何だろう、作戦って?
「帰ったら、小町ちゃんに電話しなきゃ!!さ、かよちんいくにゃ!!」
凛ちゃんは私の手を握ると、猛スピードで走り出した。
「え?り、凛ちゃん……ダ、ダレカタスケテェ~!」
私は叫びながらも凛ちゃんの明るさに感謝していた。
だってこの気持ちと真正面から向き合うには、私はまだ臆病すぎたから。
翌日の学校。
「は、八幡……大丈夫?」
クラス、いや学年、いや学校一の美少女…………もとい天使の戸塚彩加が心配そうな顔で、俺の顔を覗き込んでくる。天使とはこのように近距離で目を合わせるのを躊躇わない。ビッチと違い、目が合っただけで嫌悪感を露わにしたりしない。
「大丈夫って、何がだ?」
最大限に優しい声音で聞き返す。下手すりゃ俺も天使になれるくらいだ。無理か。
「だって今日ずっとぼーっとしてるよ?」
「そ、そうか?」
「そうだよ。しかもさっきの平塚先生の授業だって、机に何も出してなくて、怒られてたし……」
「うっ……」
確かにあれは、今学期最大の恐怖だろう…………。
『そうか比企谷……。私の授業など受ける必要もないか。そういう事か』
『い、いえ、これはですね……』
『だが安心しろ比企谷。私は生徒の反抗期には徹底的に向き合ってやる』
『いや、だから…………暴力反対!』
思い出したらブルッと震えた。あの人その内、瞬獄殺でもマスターしそうだ。
「だ、大丈夫?」
「ああ、何とか……」
放課後呼び出されたけどな。
「それで、何かあったの?」
「…………」
「ど、どうしたの?顔赤くなってるよ?」
「…………」
「は、八幡ってば~!」
まずい。非常にまずい。あれから花陽の事しか考えていない。小町からも今朝尋問されたが、言葉が出てこない。今ならペッパー君に口喧嘩で負けるレベル。
現実より幻に近くて、幻より生々しい。時間が経ってからの方が、より鮮明に色々と蘇る。主に左半身に……。
「ぐあぁぁぁ…………」
「は、八幡!?どうしたの?何で左頬と左腕を押さえてるの?痛いの?」
痛いは痛いが別の意味で痛々しい奴に見えるだろう。
「ヒッキー……」
由比ヶ浜が俺を見ていたが、それに気づく余裕もなかった。
読んでくれた方々、ありがとうございます!