捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします。
新学期が始まり、早くもクラス内の人間関係は出来上がっていた。まあ2年にもなれば、学校内での己の立ち位置なんて、誰もがそれなりに理解している。後は、同じ雰囲気を持ち、同じ匂いのする奴らとつるめばいいだけだ。そして他のグループとは極力関わらなければいい。
孤高のぼっちたる俺は、読書で時間を潰していた。去年と何ら変化のない日常が流れていく。だがそれでいい。それがいい。急激な変化などストレスでしかない。ただでさえ来月には五月病が控えている。悩みの種を自ら増やしに行くのはバカのやることだ。
そんな事を考えている俺の最近の変化といえば……。
スマホを操作して、写真を見る。
そこには、校門のまえで穏やかに微笑む花陽が写っていた。入学式の日に撮ったものを小町だけではなく、俺にも送ってきたのだ。ちなみに『似合ってますか?』という言葉も添えられていた。それに対して『悪くない』と返したら、小町から怒られた。おかしい。花陽からは『ありがとうございます!』と言われたのに。
そんなやりとりを思いだしているうちにはっとなる。
そういえば、昨夜自宅にて、この写真を見ていたら、小町から『お兄ちゃん、さすがにそのニヤニヤ顔は気持ち悪いよ』などと罵倒された。花陽とは割とメールをしているが、学校でそのメールを読み返すこともある。てことは…………。
俺は今、ニヤニヤしてるのか。
周りから見られていないか確認しようとしてやめる。もしかしたら、確認する事によって、トラウマが増えるかもしれない。かくなる上は……。
俺は誰かとメールしているふりをして、クールに教室を出た。
入学式を終え、早くも2週間、新しい制服の着心地には慣れましたが、まだ落ち着きません。その理由が……
「かよちーん!もう部活は決めたかにゃ?」
幼稚園の頃からの幼馴染みで親友の凜ちゃんが私の悩みを知ってか知らずか、その種を突いてきます。
「はやく決めないとでおくれちゃうよ?」
凜ちゃんの言うとおりです。確かに今週には決めてしまわないと……。このままじゃ、私を急かしながらも、自分も決めずに待ってくれている凜ちゃんに申し訳ないし……。
とりあえず、凛ちゃんの好きそうな陸上部を見学するために、カバンを持って教室を出た。
先輩は何部なのかな……。
千葉にいる目つきの悪い、でもどこか寂しげな、それでいて優しい先輩を思い出す。そういえば先輩の学校生活の事は、まだ何も聞いていない。というか、いつも私がアイドルの話ばかりしている気がする。質問しようとしても上手くはぐらかされてる……。き、嫌われてないよね……。
先輩の事は小町ちゃんから聞くことが多い。
とても甘いコーヒーが好き。
読書が好き。
国語が得意。
数学が苦手。
運動はそこそこ。
と、年下の女の子の相手が得意。
「かよちーん……」
「ぴゃあ!!」
気がつけば凛ちゃんの顔が目の前にあった。
「何、ボーッとして顔紅くしてるの!?ほら行くよ!!」
凛ちゃんは私の腕を引っ張ってどんどん進んで行く。それにつられて私も急がざるをえなくなる。
「ダ、ダレカタスケテェーー!!」
いつものように叫ぶ私の目にある文字が飛び込んだ。
『スクールアイドル、メンバー募集!!』
それと同時に先輩の言葉も頭の中に蘇ってきた。
今後も花陽視点が何話かに1回あると思います!
読んでくれた方々、ありがとうございます!