捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします。
「ハ、ハレンチです!」
園田さんが顔を真っ赤にして、俺と花陽の間に割って入る。
「そ、そのような事は人前でするものではありません!」
「そ、そ、そうよ!せめて私にも……じゃなくて、本番前なんだから集中しないと!チカァ!」
「「ごめんなさい……」」
二人して謝る。……はい、本番前という事をすっかり忘れていました。しかし、絢瀬さん噛みすぎだろ。うっかり胸キュンするかと思ったわ。
「え~、もっと見たかったのに~」
「穂乃果、あなたはリーダーでしょう!」
「見たかったなぁ~♪」
「ことりも!穂乃果に便乗しないでください!」
園田さんのツッコミキレッキレだなぁ-、などといらん事を考えていると、いきなり園田さんの顔が目の前に来ていた。整った顔立ちと、控えめながらも甘い香りに、緊張して胸が高鳴る。
「比企谷君」
「ひゃ、ひゃい……」
「むっ……」
距離をかなり詰めてくる園田さんに花陽がジト目を向ける。
「恋愛は自由です。あなた達の交際は構いません。ですが高校生らしい健全な、節度ある交際を心がけてください。彼女はスクールアイドル・μ'sのメンバーなのですから」
「あ、ああ……」
近い近い近い近い近い!!だが俺の心情などお構いなしに、園田さんは至近距離で睨みをきかせてくる。ぶっちゃけ平塚先生並みに怖い。あとどうでもいいが、胸は平塚先生の大勝利だ。ヨカッタネ。
「むぅ~……」
花陽さん違うんです!怒らないで!黒い何かが出てるから!本当に緊張してるだけなんです!睫毛ながいなぁ~とか、唇の形がきれいだな~とか思ってないから!ハチマン、ウソ、ツカナイ。
「ほらほら、本番前なんだから、そろそろ着替えるわよ」
西木野さんが手を叩きながら皆に準備するよう促す。た、助かった……。
「じゃあ、俺らも行くべ!」
「皆、応援してるからね!」
戸塚がそう言いながら、一瞬だけ星空とアイコンタクトを交わしたのを、俺は見逃さなかった。星空も少し顔が赤い。うん、ほっこりする。
「皆の者、出陣だ!敵を薙ぎ払え-!!」
いや、敵とかいねーから。薙ぎ払わねーから。ちょっとμ'sの皆さんが苦笑してるから。本当にやめて。オタクノリは一般の方にはきついことが多々あるから。
「これマジで楽しみすぎでしょー。俺ら応援してっからー!」
「じゃあ……楽しみにしてる」
俺は部屋を出る際に、花陽の頭をもう一度ぽんっと撫でながら、その反応をあえて見ずにドアを閉めた。
「甘々やね~」
「今度、また話聞かせてね♪」
「あうぅ……」
*******
「いや~、いいもん見れたわ~」
「うむ。余は満足じゃ」
戸部は満足げに、材木座はややキャラ崩壊を起こしながらしみじみと呟く。
イベントの開始が近くなり、さっきよりもさらに人口密度が高い秋葉原の街は賑やかなんて言葉じゃ足りないくらいだ。人ごみはまだ苦手なので、やはり疲れてさそまう。
「あ」
「ん?」
聞き覚えのある声に振り向くと、見知った顔がそこにあった。
「あれ、海老名さんじゃね!?」
戸部もその姿に気づき、声をかける。
「珍しい組み合わせだねー。はっ、これはもしや、とべはちのチャンス!」
「いや、そんなチャンス一生訪れねーから」
「海老名さんは一人~?」
このノリに戸部は慣れてるのか、軽く受け流すように尋ねる。
「友達の付き合いできたんだけどねー。今は自由行動。二人は?いや四人だ」
「何となく来たんだよ」
「ふーん、そっかぁ」
海老名さんは特にそれ以上聞いてこない。だが、少し何か考えこむような仕草を見せ、急に真面目くさった顔になる。それと同時に、周りの喧騒が遠くなった気がした。
「……二人に用事があるんだけどいいかな」
「すまん、そういう変なのは……」
「いや、真面目な話だよ」
海老名さんは、これまでに見たことのない、言葉通りの真面目な表情をしていた。
引き続きアンケート実施中ですので、気が向いた方、よろしくお願いします!
絵里……強すぎです。
読んでくれた方々、ありがとうございます!