捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
今週も金曜日まで生き抜いた!
それでは、今回もよろしくお願いします。
μ,sに加入して、早くも2週間が過ぎようとしています。最初は自信のなかったダンスも少しだけ踊れるようになってきました。それに、私と一緒に凛ちゃんも入ってくれたし、同じクラスの西木野さんも私達と同時にμ,sの一員になったので、とても心強いです!
それに、な、な、何と……今週、矢澤先輩のアイドル研究部に私達が入り、矢澤先輩がμ,sに加入した事により、部室が出来て、正式にスクールアイドルとして活動する事ができるようになりました!!さ、さらに生徒会長の絢瀬先輩と副会長の東條先輩も加入してμ,sはその名前の通り9人になり、現在PVの撮影中なのです!!
まだ廃校を止められるかわからないけど、この事を励みに頑張ろう!
あ、帰ったら小町ちゃんと……先輩にも報告しなくちゃ!
考えている内に自宅の前にいた。いつマンションの中に入ったかもわからないくらいだった。
「ただいま~」
ドアを開け、晩御飯の仕度をしているお母さんに声をかける。
「おかえり~、花陽」
今日の晩御飯は何かな。
「お、おう花陽、おかえり。もう少しでできるみたいだから着替えてこいよ」
「はい、わかりました~」
お皿を並べている先輩の横を通り過ぎて、自分の部屋に入る。
ブレザーを脱ぎ、ハンガーにかけながら、先輩がPVを見たときのリアクションを想像してみる。いつものように捻くれたようなリアクションしか思い浮かばないけど……
「あら、比企谷君。ありがとう~」
「いえ、このぐらいなら……」
「花陽ちゃんに男の子のお客さんなんて初めてだわ~、ちなみに付き合ってるの?」
「い、いえ、そんなんじゃ……」
リビングの方から、お母さんと先輩の話し声が聞こえる。お母さん、先輩に何聞いてるんだろ……。先輩を困らせてないといいけど……。
あれ?
先輩?
ドアの向こうに耳を澄ませる。
「秋葉原でたまたま出会って……」
先輩の声だ。
え?嘘?何で?
慌ててリビングに行く。
「ど、どした?」
そこには確かに先輩がいた。
「え、ええええええええ!?」
数時間前。
「お兄ちゃん、これ花陽ちゃんのところに届けてきて♪」
「は?」
どこかへ出かけてきたらしい小町は、可愛らしく包装されたは小さな箱を渡してくる。
「お兄ちゃん、これ花陽ちゃんのところに届けてきて♪」
「小町ちゃん、説明不足にも程がありますよ」
「ほら、花陽ちゃんがいるユーズってグループが本格的に活動始めたから、そのお祝い!」
「ミューズな、ミューズ」
「そうそう、それ!花陽ちゃんがスクールアイドルを始めるからには、小町も陰ながら応援したいんだよ!」
名前間違ってたけどな。
「それでこのプレゼントをお兄ちゃんのお小遣いを前借りして買ったんだよ!」
「おい、今とんでもない事言わなかったか?」
このガキ……。てか何故普通に前借りできるんだよ。おかしいだろ。
「というわけで、お兄ちゃんは今からこのプレゼントを花陽ちゃんに届けてきてください!」
『というわけで』の使い方を学んでこい、受験生。ぼっちのような絶滅危惧種に対して、学校だけでなく家族も厳しいとは……。そろそろ動物愛護団体が動いてもいいレベル。
だが舐めるな。
「あ、財布の中、すっからかんだわ。無理。おやすみ」
「あ、大丈夫!お父さんのお小遣い前借りしてきたから」
親父ざまぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
小町の天使のような悪魔の笑顔を見ながら、2人の罪のない男達が、傷ついていく。どんなミッドナイトシャッフルだよ。
「仕方ねぇ。行くぞ」
「小町は行かないよ。だってもう遅いじゃん。それに交通費は1人分しかもらってないし」
「それなら、お前が行った方が喜ぶだろ……」
「ゴ・ミ・い・ちゃ・ん」
何かもう、色々とアレだ。反論する気もおきない。
小町に教えてもらった住所を頼りに、花陽の住んでるマンションに着く頃には、陽がけっこう傾いていた。
とりあえずロックを解除してもらおうと、部屋の番号を確かめながら押していると……
「あなた、もしかして比企谷君?」
「ひゃい!」
突然声をかけられて驚いた。振り向くと、知らない人だ。だがこの容貌、声、立ち振る舞い、それで予想はつく。
「あの、もしかして花……小泉の……」
何故か名字に言い直す。
「母の花枝です。よろしくね。いつも花陽からあなたの事は聞いてるわ~」
ナイスタイミング!ここでプレゼント渡せばミッションコンプリートじゃん。小町には『会えなかった!てへっ☆』とでも言っておこう。
「あの、これ、花陽さんに……」
「あら、ありがとう~」
「じゃあ俺はこれで」
回れ右!
「そろそろ花陽が帰ってくるから、一緒に待ちましょう♪」
できなかった!何気に腕をホールドされている。そして、花枝さんの胸があ、あ、当たってるけど気にしない!
そうして半ば強制的に食事をしていく事になり、今に至る。俺の料理レベルは小学生程度なので、下手に手伝わずに、皿を並べたり、花枝さんの話し相手をしていた。旦那さんは出張のようだ。そして…
「あ、あ……」
この前と違い、眼鏡をかけていない花陽は、未だに固まっていた。やれやれだ。
読んでくれた方々、ありがとうございます!