捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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エスペランサ

「うんうん、かなり集まりましたね~♪」

 

 今、会議室には生徒会メンバー以外に、戸塚、材木座、戸部、川崎がいて、さらに城廻先輩を始めとする元生徒会メンバー、そして……

 

「いや~、隼人君達が手伝ってくれて助かったわ~」

「いや、いいんだよ。予定もなくなったしさ」

「つーか、あーしらは何すれはいいわけ?」

「確かに」

「だな」

 

 葉山グループも勢ぞろいである。まあ、体力的な面を考えればかなりありがたい援軍ではあるだろう。ガンガン働いてもらいたい。そして、俺を楽させてくれ。

 

「一色、説明を」

「ですね。はい、では皆さん注目してくださ~い」

 

 一色がカンペを読みながら、仕事の内容を説明する。

 俺達の仕事は、座席を並べる事、入場の列規制、衣装等の搬入の手伝い、もちろん片付けも。さらに、もし雪が降れば雪かきも加わる。

 一色の説明が終わると、皆頷きながら、それぞれ当日に思いを馳せた。

 

「君は変わったな」

「あん?」

 一区切りついてぼーっとしていると、葉山が話しかけてきた。

 

「正直、2年の始めの頃とは別人みたいだ」

「いや、俺は俺だよ」

「何だかんだ言って、いろはだってちゃんと生徒会長をやれてる」

「あれは本人の資質だ。あいつ何気に人使い上手いし。さらに人使い荒いし」

「ははっ。そうかもしれないな」

「それに……」

「?」

「変わったとしても、一人で変わったわけじゃねーよ」

「……君がそんな事を言うとはな」

 

 葉山はどこか寂しそうに笑う。その視線は果たして何に向けられたものなのか。

 その思考を断ち切るように、ガラリとドアが開き、見慣れた白衣が目に入る。

 

「邪魔するぞ」

 

 平塚先生がいつも通りノックもなしに入ってきた。本人は特に気にする様子もなく、教室を見渡す。

 

「おお、中々集まっているじゃないか。感心感心」

「どうかしたんですか?」

「ああ、入ってきたまえ」

 

 平塚先生に続き入ってきたのは、雪ノ下と由比ヶ浜、そして……落ち着かない様子であちこちに視線を彷徨わせる相模南だった。

 

 *******

 

「いや~、花陽ちゃんもラッキーだねー!」

「本当~、こんな素敵な偶然もあるんだね~♪」

 

 穂乃果ちゃんとことりちゃんが何やらはしゃいでいる。うぅ……これはからかわれそう。そこまで嫌じゃないけど、やっぱり恥ずかしい……。

 

「アンタ達、浮かれてる場合じゃないわよ!うっかり会場で二人の関係がバレたらどうすんのよ!」

「そうよ!もしそれで変な事があって比企谷君が私に「エリチ」皆、関東大会に集中しましょう!」

「はぁ……先が思いやられるわね」

「本当にゃ~」

 

 皆の落ち着かない様子に、真姫ちゃんと凛ちゃんは呆れていた。

 そこで、希ちゃんの悪戯っぽい笑みが凛ちゃんを捉える。

 

「そういえば凛ちゃんは戸塚君とはどうなん?」

「にゃ!?」

 

 予想もしなかった希ちゃんの言葉に、凛ちゃんの顔が真っ赤になる。視線がキョロキョロと落ち着かない。

 

「な、な、何の事にゃ!?」

「だって……ねぇ?」

「とっても仲良しだよね♪」

 

 穂乃果ちゃんもことりちゃんも気づいているらしい。凛ちゃん…………戸塚先輩に思いが届くといいな。

 

「花陽だけではなく、凛まで……」

 

 海未ちゃんがわなわな震えている。

 そして、思いの丈を力いっぱい吐き出した。

 

「ハ、ハ、ハレンチです!!!」

 

 その大声は冬晴れの空によく響いて、千葉にも届いてしまいそうだった。





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