捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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花泥棒

「先輩……お知り合いなんですか?」

 

 一色は心底驚いた顔をしていて、視線が俺と花陽を行ったり来たりしていた。

 俺達は俺達で視線を交わし、とりあえず俺がその場をやり過ごすべく、なるたけ平静を装いながら頷いた。

 

「ああ」

「そうだったんですね」

「へー、かなりびっくりだね」

 

 城廻先輩も目をぱちくりさせている。

 俺と花陽の関係を知っている由比ヶ浜はぽけーっとした表情でこちらを見ていた。

 

「あの……ミュ、μ'sの小泉花陽です!八幡さんにはいつもお世話になってます!」

 

 花陽は少し慌てながら、持ち前の礼儀正しさを発揮して、一色達に自己紹介を済ませる。

 だが、また一つ綻びが生じた。

 

「八幡さん……?」

 

 雪ノ下がこちらを見る。あ、何かに気づいた目だ。だがここで花陽に言い直してもらうわけにはいかない。一度吐き出した言葉は戻せないのだ。

 すると今度は別の方から声が飛んでくる。

 

「そりゃそうだよ!だって比企谷君と花陽ちゃんは……」

「あ、ダ、ダメ!ヒッキーと花陽ちゃんが付き合っているのは内緒だから!」

『…………』

 

 こうしてアホの子二人のファインプレーにより、秘密は秘密ではなくなりました。俺はこの先の説明を考えながら、溜息を一つ吐いた。

 

 *******

 

「まったく、貴方は……」

「ご、ごめぇ~ん……」

「由比ヶ浜さん。次からは気をつけましょうね」

「ごめんなさい……」

「だ、大丈夫だよ」

「なんつーか、俺達も迂闊だった……」

 

 高坂さんが園田さんに、由比ヶ浜が雪ノ下に叱られるのを見ながら、俺と花陽は何と言っていいのかわからなくなる。

 

「そっかー。先輩、彼女さんがいたんですね」

「比企谷君……やっぱり花陽と付き合ってたのね」

 

 一色のリアクションはわかるが、絢瀬さんは知ってたでしょうが。

 

「ま、最近のアンタならなんか納得」

「そうか?」

「アンタ最近、生徒会やら勉強やらバイトやら頑張ってたからね」

「確かに~、この前本屋さんに行ったら、比企谷君が棚の整理しててびっくりしたよ」

 

 そういや、城廻先輩と仕事中に遭遇したな。ラスト1時間でほんわかめぐりんパワー浴びると、体力回復して、効率上がるわ-。

 

「つーかさ、問題なくない?規則とかあるわけじゃないっしょ?」

「まあ、わざわざ広めたくないって事だろ?大事な大会の時期だからね」

「そ、そうだよね」

 

 三浦、葉山、相模と続き、東條さんがまとめに入った。

「とりあえず、今日は皆で比企谷君とかよちんがいちゃつきだしたら止めるって事でええかな?」

 

 そう言ってウインクすると、生徒会の男子も大和も童貞風見鶏も目を奪われた。つーか、胸の下で腕を組むのを止めてください!童貞風見鶏が前かがみになってるから。雪ノ下、さり気なく自分の胸元に手を当てるな。

 

「あ、あの……」

 

 何かを思い出したように、川崎が急に前に出てきた。皆の視線が集中したのが恥ずかしいのか、少し顔が赤い。

 彼女は胸の前に手を当て、一呼吸置いて、μ'sに向かい合った。

 

「い、衣装って誰が作ってるの?妹のお遊戯会の参考にしたくて……」

 

 何だろう。ほっこりする。

 俺はその視界の端で、雪ノ下と西木野の視線が意味ありげに交錯するのを見た。何か言葉を交わすでもなく、二人の表情が真顔から微笑みに変わるのを見て、ほっとした。

 

「ほら、そろそろ振り付け確認するわよ!」

 

 部長らしくその場を仕切る矢澤さんの声をきっかけに、俺達はそれぞれの仕事に戻った。

 





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