何かに追われている。
それがどんな姿なのか、どんな能力なのか、何をしているのか分からない。
何故か分かるのは、世界には私だけしか残って居ないことと他の人たち妖怪たちは、全てその何かになってしまったこと。
ただただ逃げて逃げて逃げて。
森の中にもそいつらが溢れてて。
思わず叫んで。
~○~○~○~○~○~
光ったと思ったら家に居た。
「なんだ…夢…」
周りを見る限り、海の中に居るみたいだ。
珊瑚が輝き、発光色の魚がようよう泳いでいる。
「綺麗…」
ボーッと眺めて。
ふと、何か光る石が見えた。
手を伸ばす。
~○~○~○~○~○~
「夢、なのよね」
ベッドから起き上がる。…鼻をしっかり押さえる人形を撫で、ベッドに座らせる。
外を見る。…夜、なのか。
お気に入りの人形を呼び出す。
……また一つ、人形が動かない。
「残り…四体…ね」
でも、これで幻覚からは解放されたはず。
あぁ、そういえばカレンダーをめくってないしカレーの処理もしてなかったわね。失敗失敗。
大量に居る人形を使ってカレンダーをめくらせ、勿体無いけどカレーを外に埋める。
「目が覚めちゃって…そうだ、人形を治しましょうか。少し難しいけど、出来なくは無いでしょ」
作業部屋に行き、壊れた人形を並べる。
一体目、間接破壊。間接の取り替えで治せるわね。
二体目、潰れている。これは…一から作り直し。この際だし、より良く手直ししましょうか。
三体目、パーツがバラバラに付け替えられてるわね。まあ、これは簡単ね。付け直せば良いだけだもの。
「~~♪」
鼻唄を歌いながら治していく。
後ろでは大量の人形がお互いを造り出していく。
ガタガタカンカンチクチクツイツイ
あぁ、この音が好きだ。集中できる。
今なら何でも上手く出来そうだ。
「……そうだ、新しい人形のテーマは『夢』にしましょう」
こんなにあっさり思い付くなんて。ここ最近見た夢をメモに書き出していく。
自律人形の完成。……。人形の反乱。異星人の侵略。幻想的な海の景色。
「ふふ…」
思わず笑いが漏れる。と、戸が叩かれる。
夜も遅い結構な時間に誰かしら。
玄関に行き、戸を開ける。
「どなたかしら」
「ウ、ウサ」
「あら、竹林のウ詐欺。どうかしたのかしら?」
と、てゐは急に謝ってきた。
「すまんウサ!こんなつもりじゃ無かったんだウサ!」
「…?何の事?」
「ウサ…その…」
「薬を盛ったんですよ、この馬鹿ウサギは」
てゐの後ろの暗がりから赤青の医者…八意 永琳が現れる。
「あら、竹林の。それはどういう事かしら?」
「私が極秘に作成していた紺珠の薬が無くなっててね。てゐを問い詰めたら貴女にこっそり服用させた、と」
「はぁ…成る程ねぇ?」
人形総動員。ここは文字どおり私の
「明日の朝御飯はウサギ鍋で良いかしら?」
「ウサァッ!?」
「ウサギなら後で大量に送るわ」
「ウサッ、勝手に決めないでくれウサ!」
「てゐ、貴女の命とウサギたちの命とどちらにする?」
「ウ、ウサァ……」
はあ。溜め息をついて人形を下がらせる。
「それで、その紺珠の薬ってどんな効果があるの?」
「簡潔に言えば『やり直せる』効果があるわ。試作品だから副作用は良く分からないけど」
「『やり直せる』?」
「そう。何か上手くいかなかった事があるでしょう?この薬を使えばそれを文字どおり『やり直せる』の」
「…時間を弄るの?」
そうだとしたらかなり恐ろしい薬だけど。
「違うわ。正確には『失敗する未来を見せる』の」
「……それって…考えるだに恐ろしいわね…。何度でも
「そうかもね。はいこれ、解毒薬」
永琳が渡してきたのは緑色の液体が入った瓶。
「効果はこれでかなり軽減されるわ」
「軽減?」
「えぇ。試作品だからこれでちゃんと治るか分からないのよ」
「……信じるわよ?」
「信じてちょうだい」
液体を飲み干す。うげ、苦い。
「ふぅ。もう用が無いなら帰ってちょうだい。ウサギ肉楽しみにしてるわ」
返事を待たず家の中に戻る。
「…これで良いのかウサ?」
「えぇ、あの子は
「悪いやつウサね」
「それを手助けする貴女も、ね」
先ほど渡したのは解毒薬
あれこそが紺珠の薬。
「あとは姫様に頼んで被験体Aの見た未来を見せてもらうだけね。てゐ、帰るわよ」
「ウサァ」
後ろでてゐが小さく呟く。
「悪いね、私が幸せにするのは『人間』だけなんだ」
そして、始まりへ戻る。