がんばれ衣玖さん!   作:斉藤まゅ

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六道の世界のちょうど一番上の世界の天界。
そこに住む竜宮の使いの衣玖さんの元には平社員の癖に、すげぇ数の仕事が来るんだよ。畜生め。
今日もまた、仕事が来たようですよ?


ー総領娘様の消失の難!ー【上】

皆様こんにちは。

デキる女、永江衣玖です。

私は竜宮の使いという者でありまして、結構長くこの仕事をやらせて頂いています。

主な内容として、長ったらしい話を聞く、地震の時には放浪して春告精のように「地震ですよー」と言ってあちこちを回る……などがありますが、私の仕事の中で一番面倒、もとい時間のかかる仕事が一つだけあります。

それは、「総領娘様のお目付け役」です。

そんな厄介な仕事がまた、私の所に舞い込んで来ました……

 

 

疲れるんだよなぁ……

 

 

「永江、永江はおらんか!」

 

「はいwww永江はここに居ますwww」

 

「昨晩から天子の姿が見当たらんのだ。厄介ごとに巻き込まれてたのでは困る。早く探して参れ。そして草を生やすな」

 

「御意」

 

先ずは天界から探してみますか。

 

竜宮を後にし、雲浮かび、花咲き誇る天界へと足を運んだ。

何回来ても長閑なところだ。

気儘に寿命に抗う天人、何一つ不自由の無い天界、こんな所で育ったからあんなに我が儘なのになったんだろうな……総領娘様は。

 

「総領娘様ー総領娘様ーどこですかー

いたら返事をして下さいよー」

 

棚引く雲を下に見て私は声を上げる。

 

「総領娘様ー上司からお呼びが掛かっていますので早く帰ってきてくださいよー」

 

また総領娘様の事だから、色んな所をほっつき歩いてるのでしょう。

自分に言い聞かせるように言葉を飲んだ。

酒を飲む天人達の中混ざっていないかと思い視線を落とした。

 

「んん〜?何でしょうかあれは?」

 

やけに人集りが出来ている。

普段は自由奔放としている天人が集まるなんて事は無いのだが。

 

「何かあったのでしょうか」

 

もしかしたら総領娘様が居るかもしれないと思い、私は人集りの方へと飛んでいく。

近づくにつれて段々と声が聞こえてくるようになり、寝そべっている人の周りに天人が集まっているのが見えた。

私は一応視力は8.0と良い方だが、まだ姿までは確認できなかった。

もう少し近づいてみるか、と思った数瞬後、向こうから白い何かが飛んでくるのが見えた。

 

「おおっと」

 

振り向きざまにそのモノを見てみると、空気の塊だった。

あんな技を使うのはもしや……

 

「おーい、竜宮の使いー」

 

あの酔った声、大きな二本の角、貧相な胸、伊吹萃香に違いない。

 

これはこれで面倒な人に捕まったなぁ……

 

「おーい聞こえないのかー?

お前もこっち来て飲もうよぉー」

 

私が探しているのはあなたでは無いのですが……

面倒な事になると嫌なので行きますか……

 

「はい来ましたよ」

 

「良いところに来たなぁー。

ほら、お前も飲んできなよぉー」

 

「全く、あなたが呼んだのでしょうが。

そもそも私は仕事中ですよ。

 

「良いから良いから〜

一杯だけだからぁ〜」

 

萃香は一つ、しゃっくりをして言った。

 

ああ……相当酔ってるな……

ここで飲まない選択肢を取ると、更に事が長引きそうね。

 

「分かりました。本当に一杯だけですよ?」

 

「そうこなくっちゃ〜」

 

萃香は手を挙げ天を仰いだ。

すると早速、自前の瓢箪を取り出した。

そして私は次の瞬間見えた光景に目を疑った。

杯、デカすぎだろ。私中で寝れるじゃん。

 

「あ、あの〜萃香さん?」

 

「ふぇ?何だよ〜」

 

「少しばかり杯が大き過ぎやしませんか?」

 

「気にするなよ〜それとも何だ?

怖気付いたのか〜?」

 

「いやそんなことは無いですけど……」

 

とは言ったものの、あんな量の酒飲んだら私がいくら妖怪でも、死ぬ。急性アル中で。

 

そんな私の思いとは裏腹に、杯にはどんどん酒が注がれていく。

 

いやいや無理無理無理無理あんなに飲める訳わけないよ。

 

「よーし注ぎ終わったぞ〜。

ほら、ぐーっと飲みなさいな」

 

「いや、ぐーっとと言いましても……」

 

杯を目の前に、私はただそれを呆然と見つめるしかなかった。

 

てかあれどうやって持つのさ。

ええい衣玖!お前も女だろ!

あとは野となれ山となれ!

 

私は杯を抱え、酒を飲みにかかった。

 

「おお!いい飲みっぷりだねぇ〜」

 

私の喉を急流の如く酒が通っていく。

 

お酒……美味しいんですけどねぇ……

何分量が……

 

目を開けるとまだ半分位酒が残っていた。

私は無理矢理流し込むように飲んだ。

 

「ぷはー……はぁはぁ……」

 

「いいねいいねぇ〜

流石じゃないかぁ〜」

 

「あ、ありがとうございます……

もう仕事に戻りますね……」

 

「お〜付き合ってくれてありがとな〜」

 

漸く終わった……

行っても行かなくても結局のところ面倒な事になったわね……

 

よたつく足で地面をそっと蹴り、総領娘様探しを再開した。

しかし、アルコールの所為で頭と体がよく動かない。右に左にふらふらと飛んでいく。

途端、目が霞み、猛烈な睡魔に襲われた。

 

こんな所で寝るわけには……

早く総領娘様を探さないと……

 

だが睡魔には抗いきれず、襲い来るものに身体を預ける他なかった。

 

 

 

 

 

ん……

 

んっ……

 

んん?

 

頬に当たる冷たく固いものはなんだろう。

 

さっきまで私は何かをしていたような……?

 

誰かを探してたよね……?

 

探すって言ったら……総領娘様。

 

総領娘様といったら……総領娘様。

 

総領娘様?

 

「総領娘様ぁぁぁぁ!!」

 

一気に意識が覚醒し、身体中を駆け巡る。

今まで土の上で寝ていたらしい。

風がそよいで体に当たる。

 

「ここは一体……?」

 

結構高い所みたいだ。この辺りで高い所といったら妖怪の山くらいだろう。

ん?妖怪の山?

 

「妖怪の山ですって?!

痛ててて、頭がガンガンするわ」

 

これがまさしく二日酔い!

などと言ってる場合ではない。

ここは恐ろしい(面倒臭い)妖怪達が蔓延る妖怪の山。

面倒臭い妖怪に捕まると、また事が長引いてしまう。

 

「早くここから逃げる事が先決ね」

 

重い頭を上げ、私は地面を蹴って飛ぼうとしたその時、

 

「あやややや〜?

どうして貴女がこんな所に?

まあ、見つけてしまったからには取材をしませんとねぇ〜〜〜

空飛ぶレアアイテムさん?」

 

 

 

一難去って、また、一難。

 

 

 

 

 

 

はぁ……

 

 

【中】に続く

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