ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
放課後、いつもの分かれ道で彼を待つ。彼の自転車を持ってまだかまだかと待っている自分が、まるで父親の帰りを待つ小さな子のように思えて、一人で笑ってしまう。そして彼の姿が見えたので、その一人笑いを誤魔化すように私は元気よく手を降った。
櫂はぶーたれるけど、結局いつも仕方なさそうにでも少し嬉しそうに自転車を漕いでくれる。それがちょっと嬉しかった。
だから出迎えをもう辞めようかと言った時は猛反対した。私と千歌ちゃんに良くない噂を立てないためだと思ってもそれだけはイヤだった。
なんでだよと聞く櫂に、私は顔を彼の背中に押し付けて聞こえないように呟いた。
――だって……、一緒にいられる時間が少なくなっちゃうじゃんか……――
大きな背中に私は顔を埋めた。
喉が渇いた、と言うと櫂がペットボトルを買ってきてくれた。わがまま言ってごめんね、と心のなかで謝りながらカルピスを喉に通す。甘酸っぱい旨味が喉を癒やしてくれる。
ふと見ると、櫂が暑そうにしている。自転車漕いで貰ったもんね。ちょっとからかってやろ。
飲みかけのペットボトルを渡すと、難しそうな顔をして注ぎ口を見つめている。ふふ、間接キスになると思ってドキドキしてるな。
かく言う私自身もすっごくドキドキしてる訳で。時間切れとごまかしてそれを奪い返した。あ、残念そうな顔をしている。惜しかったね、もうちょっと早く飲んでたら間接キス出来たのに。私もちょっと残念かな。
お父さんとお母さんが帰ってこれないと解って、櫂の家に泊まることにした。ドキドキしながら家に入る。
どうやらこれからご飯を作るところらしい。櫂は正直料理の腕は微妙だからなぁ。ここは曜ちゃんが助けてあげますか。エプロンを借りて、早速準備にとりかかる。ふと鏡を見ると、写るのはエプロン姿の自分。なんだか新婚さんみたい。照れを誤魔化す為に鼻歌を歌いながら料理した。
ハンバーグ、櫂は美味しそうに食べてくれたなぁ。それだけでもとっても嬉しいな。
櫂が私と一緒の部屋で寝ることを妙に渋る。他に寝るとこないんだから仕方ないじゃん。もしかして、エッチな本持ってるからなんじゃ? そうと決まればエロ本探しだ!
なんて、半分悪ふざけの探索をしていたらちょっと櫂を怒らせたみたいで。ベッドに押し倒されちゃった。
ごめん、と謝るけどそれよりも今の状態にすっごくドキドキしちゃって。このまま、櫂に……
なんて考えてたら、おじさんが帰ってきちゃった。櫂は身を離すと玄関へと逃げていった。ほっとしたような、少し残念なような。
「ちょっと、濡れちゃった、かな……」
なんて呟いた瞬間、私の顔は真っ赤に爆発した。
結局櫂の部屋で寝ることに。ベッドを譲ろうとしてくれたけど、流石に遠慮した。その優しさが、嬉しかった。
「て、繋ご?」
気がつけばそんなことを言っていた。温もりが欲しくて、ちょっとでもいいから、櫂が欲しかった。
無言で差し出される左手。握った瞬間に嬉しさと懐かしさが身体を駆け巡る。
私は嬉しさとドキドキで、しばらく眠れなかった。
朝。櫂よりも早く起きて、制服に袖を通す。櫂が起きないか少しドキドキしたけど。この寝坊助は起きることもなく、無事に着替え終えた。
膝をついて幼馴染の寝顔を観察する。だらしなく開かれた口。そこに指を入れたらぱくっと食べちゃいそうで。本当に指を入れてやろうかと思ったら――
「――っ」
櫂が何かを呟いた。寝言で何を言ったのかわからなかったけど、何となく人の名前のような気がした。
ちくりと胸が痛み、ちょっとした苛立ちを込めて頬をつねってやる。
「いでぇ!?」
あは、ヒドイ顔。そんな彼に私は出来うる限りの笑顔を向けた。
「あははっ、おはよう、櫂! また寝坊寸前だぞー!」
櫂の表情も緩み、おはようを返してくる。
ここから、私の朝が始まるんだ。
まさかの曜の視点オンリーで一話丸々使うことになるとは。上手く甘々なものを提供出来れば良いのですが。
どうすんだこれ。こんなに濃厚なイベやって他の子達勝ち目あんのか? 作者自身ビビっております。
こうなりゃ本命(?)の梨子ちゃんイベをぶつけるしかねぇ。