ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
サブタイにもちょっとしたオマージュを。気がつく人は私とお友達。
「段々と暑くなってきたな……」
図書館までの道の途中にある小さな駄菓子屋。そこのベンチでおれはイチゴミルクのアメを口に放り込んだ。ミルクのまろやかさといちごの甘酸っぱさがマッチングしてて、おれの舌を癒やしてくれる。
何故おれがここにいるかと言うと、ある女の子と待ち合わせしているからだ。ここを待ち合わせ場所に指定すると、彼女は快く了承してくれた。
「あ、紫堂せんぱーい!」
そうして待ってること一、二分。彼女はやってきた。国木田花丸ちゃんだ。
「ごめんなさい、待ちましたか?」
「ううん、今来たとこ。こっちこそ、来てくれてありがとう。あれ……」
ふと花丸ちゃんの背中に誰かいることに気づいた。おどおどしながらこちらをチラと見ている。そしておれと少し視線が合ったと思ったらすぐに引っ込んでしまった。
「ほら、ルビィちゃん。この先輩は怖くないずら」
「う、うん……」
やっぱり。こないだ助けた黒澤ルビィちゃんか。おれ、彼女に嫌われちゃったかな? まあ出会いがお姫様抱っこだもんな。でも、おどおどしながらこっちを見ているルビィちゃんが何だか可愛らしくて。ちょっとからかってみるか。
すっとイチゴミルクのアメを彼女の前にちらつかせてみる。すると、ぱぁっと顔が明るくなる。手を伸ばそうとするので少し手を引っ込める。少し頬を膨らませて取ろうとして身を乗り出してくるルビィちゃん。
それを何度か繰り返してやると、ルビィちゃんはすっかり花丸ちゃんの後ろから出てきたのだった。そのことに気がついたのか、顔を赤らめて俺を睨む。でも、そのにらみ顔に怖さはなかった。
「もうっ、からかわないで下さいっ」
「ははっ、ごめんごめん。可愛くてつい、ね」
「かっ、可愛い……」
おれの言葉にぽぉっと顔を赤らめるルビィちゃん。それに呼応するかのように花丸ちゃんも身を乗り出してきた。
「そうずら! ルビィちゃんはとっても可愛いんです!」
そう言うと花丸ちゃんはルビィちゃんをぎゅっと抱きしめる。
「花丸ちゃん、苦しいよぉ」
「ん~♪ 可愛いずら~」
二人のそんなやりとりを見て、おれの心はほっこりとしていた。何だかこの二人を見てると、癒されるな。
と、ほっこりしてる場合じゃないな。
「それじゃ、ここにいるのもアレだし、図書館に行こうか」
はい、と二人にアメを渡すと、俺は歩き出した。図書館までの道中、二人が美味しそうにアメを舐める様は、おれを更にほっこりさせた。
「すいません、本の返却をお願いします」
おれが図書館のカウンターに声を掛けるとこの間とは違う、おじいさんが対応してくれた。
「はいはい、おや彼女さん連れかい?」
「い、いや違いますよ!」
「そ、そうずら! 紫堂せんぱいとはこの間であったばかりで、せんぱいはカッコいいなって思ってるけど、まだおら達はそんな関係じゃ――、って、おら何言ってるんだろ~」
花丸ちゃんも顔を真っ赤にして否定する。あわわ、と慌てる姿が何とも可愛いな。これ以上このおじいさん司書と話してると変な誤解が生まれてしまう。さっさと要件を済ませてしまおう。
「それでこの本の返却の処理が終わったら彼女にそれを渡して欲しいんです」
おれが『坊っちゃん』をカウンターに出すと、それに倣うように花丸ちゃんも本を出した。
「ま、まるも同じで、この人に渡して欲しいずら」
おれたちの説明に質問も何もせず、おじいさんははいよ、と返事をすると返却処理をこなしてくれた。
「はい、『坊っちゃん』を花丸ちゃんに、この『すくーるあいどるの全て』ってのをお兄さんに。これでいいかい?」
ありがとうございます、と俺はおじいさんにお礼を言うと、花丸ちゃんと眼が合い二人して笑い合う。
そんな様をおじいさんは頬杖しながら微笑んでいた。
「やっぱり二人は恋人同士だろ?」
『ちがいます!』
おれたちが同時に否定すると、おじいさんはごめんごめんと誤ると視線を花丸ちゃんに向けた。
「そうだ、花丸ちゃん。今日もアレ、お願い出来るかね?」
アレって何だ?
「はい! お任せ下さいずら!」
花丸ちゃんは得意気に胸を張った。その時、胸が大きく揺れたのは、黙っておこう。
「皆久しぶりずら~。元気にしてたかな~?」
子供向けの絵本の小さな本棚に囲まれた、児童書エリア。そこで花丸ちゃんは小さな子たちの相手をしていた。
『まるちゃんひさしぶり~』
『あいたかったよぉ~』
子どもたちも嬉しそうに彼女の元へと集まっていく。何か微笑ましいな。
「きゃっ、こら! まるのおっぱいに触った、エッチな子はだれだ~?」
どうやら子どもたちの誰かがうらやま、けしからんいたずらをしたようだ。花丸ちゃんはお前か~、と悪戯っ子らしき子を捕まえて頭をわしゃわしゃと撫でる。
おいそこ代われ、と言いたくなるのを我慢しながらおれは花丸ちゃんと子どもたちの触れ合いを見ていた。
「花丸ちゃんは、よくここで子どもたちに絵本の読み聞かせをボランティアでやってるんです」
おれの隣で体育座りで座ってたルビィちゃんが呟いた。花丸ちゃんを取られたみたいで、少し寂しそうな表情をするルビィちゃん。
「ルビィちゃんはやらないの?」
おれの問いに彼女は首を横に振った。
「ルビィはそんなに人前に出るの、得意じゃないですし……」
あがり症ってやつかな。でもそれならどうして――
「じゃあどうしてスクールアイドルをやってみたんだ?」
俺の質問に、ルビィちゃんはきゅっと腕を締めた。
「ルビィはずっとスクールアイドルが好きでした。なりたいなって気持ちもあったけど、ずっとあと一歩が踏み出せなかったんです……」
すっと上を向き、翡翠色の眼が輝く。
「その一歩を後押ししてくれたのが千歌さんだったんです。千歌さんだけじゃない、花丸ちゃんや他の皆がいてくれたから、その一歩を踏み出せたんだって」
そこまで言うと俺の方を見て、萎縮してしまうルビィちゃん。
「あはは、変ですよね。これじゃスクールアイドルを始めた理由にもなってないような――」
「変じゃないさ」
「え?」
きょとんとして、おれを見つめるルビィちゃん。おれは微笑んでルビィちゃんの両手を握る。
「始めの一歩をやっとルビィちゃんは進めたんだ。千歌の、おれの幼馴染のひと押しがルビィちゃんを歩かせたのなら、それはもう立派な理由だよ」
「せ、先輩……」
俺に触れて、緊張が走るのが目に見える。が、俺の言葉を受け取り、嬉しそうに少し不器用に笑ってくれる。
さて、後ろを押されて始めの一歩を踏み出したのなら、今度は自分から歩き始めないとな。そのきっかけには丁度いい。
視線を花丸ちゃんの方へ向けると、丁度絵本を読み終えたようだ。
「花丸ちゃん、ちょっといい?」
「はぁい?」
おれは花丸ちゃんの元へと寄ると耳打ちした。おれの話に彼女はうん、と頷いてくれた。
「みんなー! こんどはあそこのルビィちゃんがごほんを読んであげるって! みんなルビィちゃんのまえにあつまれー!!」
「ふぇっ!?」
花丸ちゃんの声に子どもたちはルビィちゃんの方に興味津々な視線を向けた。慌てるルビィちゃんに俺は目についた本を本棚から抜き出し、彼女に手渡す。
「えぇ? あの、これは……?」
「あがり症を何とかする訓練だと思って。スクールアイドルになった以上、人の視線には慣れておかないと」
本番はこの子たちよりも歳が上で、更に大勢の人に見られるんだ。訓練としてはこれが最適だろう。
「で、でも……、ルビィは……」
「大切なのは、出来る出来ないじゃない。やるか、やらないかだよ。大丈夫。おれと花丸ちゃんがついてるから」
千歌達が背中を押すなら、おれはその手を引っ張ってあげないと。いつか、この子が一人でも歩けるようになる為に。
「は、はい!」
ルビィちゃんは頷くと子どもたちに笑顔を向けた。
「そ、それじゃあ始めるよっ。むかしむかし――」
●●
夕暮れの帰り道。まるとルビィちゃんは二人並んで歩いていた。口の中にはイチゴミルクのアメ。紫堂せんぱいがまる達が頑張ったご褒美だってくれたずら。甘酸っぱさとまろやかな味が好きなんだよね。
ルビィちゃんの方を見ると、まだ包みを解かずにじっと見つめてる。
「ルビィちゃん、それ食べないずら?」
「え!? た、食べるよっ」
何か考え事してたみたい。
「紫堂せんぱいのこと考えてたの?」
「っ!!」
図星だったみたいずら。別れ際の紫堂せんぱい、おら達の頭を撫でてくれたんだよね。
――花丸ちゃん、今日はありがとう。ルビィちゃんはよく頑張ったね――
撫でられた時に感じた温かさ。このぽかぽか~ってするのは何でだろ?
ルビィちゃんもそれを思い出しているのか、小さくえへへと笑っていた。あんまりおらでも見ないルビィちゃんの可愛らしい表情。あがり症でちょこっと男性恐怖症なルビィちゃんにこんな顔をさせる紫堂せんぱいってどんな人なんだろ? ちょっと興味があるずら。
「ルビィちゃん、紫堂せんぱいに頭撫でられてたけど大丈夫だったずら?」
「え?」
何が、という表情をする。ありゃ、男性恐怖症が治っちゃった?
「ほら、ルビィちゃん男の人苦手じゃなかった?」
「っ――」
今更それを認識したのか、顔を真っ青にする。そしてそのままルビィちゃんは固まって、動かなくなっちゃった。
「ちょっとルビィちゃん!? しっかりするずら~!!」
うーん、ルビィちゃんを男性恐怖症を忘れさせるくらいに夢中にさせる紫堂せんぱいって不思議な人ずら。
その後、軽く頬を叩いてやると、ルビィちゃんは我に帰ったのでした。
曜に三回も使ってしまい、更にはルビィ&まるは一緒にして掘り下げを終了。この作品の各ヒロインのストーリーのバランスが難しいな。これも全て、どんなことをしてもさせても違和感がない曜ちゃんが悪いっ。この作品の明日はどっちだ。
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