ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
俺「ヒィィィ、許してください! 互いにグレード3行ったんですよ! もう暫くの辛抱を!」
ダイヤ「いつまでファイトを楽しみにして下さるファンを待たせるつもりなんですの!」
俺「だって…、ダイヤさんを書きたかったから……」
ダイヤ「えっ……(トゥンク)」
俺(チョロいな……)
本当に申し訳ありません。情報量多くて、キツくて、頭痛くて……。気晴らしに本編進めないとやってられないのです……。
「紫堂さんにお願いがあります」
朝食を終えた頃、目の前に座っていたダイヤさんが突然おれに声をかけてきた。彼女の目はいつになく、真剣だった。
「お願い? 何ですか?」
「ルビィの、ルビィの男性恐怖症を治してもらいたいのです」
「ルビィちゃんの?」
ふと視線をルビィちゃんの方へと向けた。ルビィちゃんはおれの視線に気づいたのか、花丸ちゃんを盾にするように身体を隠してしまった。
「ああ、確かに今も隠れちゃいましたね」
「それは貴方が覗き騒ぎをするからです」
まだ引きずるか。
「あ、あれは誤解だと梨子が説明してくれたじゃないですか!」
「冗談です」
冗談なのかよ。まさかダイヤさんが冗談を言うなんて思ってもなかった。
「今回の合宿に紫堂さんをお呼びした理由はこれにあるとわたくしは思ってますの」
「ルビィちゃんの男性恐怖症克服に?」
ええ、と頷くダイヤさん。そうは言ってもおれ、医者でもないんだけど。
「治すって言っても、具体的にはどうやって?」
そんなおれの疑問に、ダイヤさんはふふんとおれに近づきながら得意げな顔をした。大和撫子な、整った美麗な顔がおれの鼻先にある。彼女の美しさが否が応でも視界いっぱいに広がった。
「わたくしに、良いアイディアがありますの。これならルビィも人前に出ても恥ずかしくないアイドルになれますわ!」
「ダイヤさん、わ、分かりましたから! ちょっと近いですよ!」
おれの指摘でやっと自分の距離を把握したのか、顔を赤くして身を離すダイヤさん。
「し、失礼しました……」
そんな彼女を可愛いな、と思うおれであった。
「それでは、これよりルビィの男性恐怖症克服のトレーニングを始めます!」
千歌の家の前、もとい駐車場。車一台も停まってないここに、おれたちはオドオドするルビィちゃんを囲むように立っている。練習着に身を包んだダイヤさんが張り切っておれの方を向いた。
「その為、紫堂さんに協力して頂くことになりました。紫堂さん、よろしくお願い致します」
「は、はい……」
皆の視線がおれに向いたのでその輪の内側に入る。するとルビィちゃんがぴくっと反応した。なんか、怖がられているって思うとちょっと傷つくな。
「これから紫堂さんにはルビィに近づいてもらい、触れてもらいます。それでルビィが悲鳴をあげるなり、怖がる反応をしなくなるまで続けます。ルビィ、準備は大丈夫?」
「う、うん……」
ダイヤさんのやる気と反比例して引腰のルビィちゃん。大丈夫かな。
「では紫堂さん、ルビィに近づいて下さい」
「は、はい……」
おれはルビィちゃんに向き合い、歩みを進めた。
「ピギッ!?」
ルビィちゃんは悲鳴をあげると、一歩後ずさった。おれがまた一歩進むと、また後ずさってしまった。
「ダイヤさーん、これじゃあ訓練になりませーん……」
「仕方がありませんね。鞠莉さん! 果南さん!」
「ハーイ!!」
「な、何かな?」
どこかご隠居じみた物言いをしながらダイヤさんはルビィちゃんを指差した。
「ルビィが逃げないように、縛っておしまい!」
「OK! ルビィ、御用だぁ~!!」
「い、いいのかなぁ……?」
二人はダイヤさんの指示に従い、ルビィちゃんを取り押さえた。
「ひっ!? 鞠莉さん? 果南さん?!」
「ルビィ、オカクゴー!」
「ごめんね、ルビィ。これもルビィの為だから……」
「そ、そんなぁ!」
かくしてルビィちゃんは駐車場に生えていた松の木に縛られることとなった。
「さ、紫堂さん。これで思う存分近づけますわ」
半分ドヤ顔でこちらを見つめてくるダイヤさん。この人、実はポンコツなんじゃないか?
「じゃ、じゃあ近づきます……」
ゆっくりとルビィちゃんへの接近を再開する。ルビィちゃんは怯えの表情を混ぜた顔をしている。
「る、ルビィちゃん。怖くないからね~」
気休めになるかどうかわからないが、落ち着かせようと言葉を投げかけながらルビィちゃんの目の前に立った。ここまではルビィちゃんも怯えながらも叫ばないでいてくれた。
「そ、それじゃあ……、触るね……?」
「あっ、あのっ!」
おれは縛られているルビィちゃんを余所に、彼女の右手に触れた。
「っ――!!」
次の瞬間、響く絶叫。あまりの音量に周りは耳を塞いだ。おれはそのままその叫びを受けて、思わずつんのめる。が、足を踏ん張り、何とか持ち直した。
「あぁ、先輩、ごめんなさいです……」
「っ、大丈夫。これくらいどうってことないって!」
ルビィちゃんを心配させないように笑ってみせる。こんなんで怯んでちゃ彼女と向き合うことなんて出来ないからな。
「櫂、先輩……」
ルビィちゃんのまん丸な瞳がうるうると揺れる。大丈夫、まだ頑張れる。
が、その後何度も試してみたが、やっぱり触られるとルビィちゃんは叫び声をあげてしまった。うーん、どうしたらいいのやら。
「ねぇダイヤ! ワタシにGoodなアイデアがあるんだけど!」
そんな中手を上げたのは、鞠莉さんだった。
「何でしょうか、鞠莉さん?」
「要はカイを男だと認識しなければイイんだよね? ちょっとカイを借りてくね~♪」
「ちょっと、鞠莉さんっ!」
「えっ、あの!?」
困惑するダイヤさんとおれを余所に、鞠莉さんはおれを旅館へと引っ張っていった。
「お待たせー!!」
それから十分後、おれと鞠莉さんは皆の元へと戻ってきた。
「鞠莉さん、それは……っ」
ダイヤさんを含め、鞠莉さん以外のメンバーがざわめく。ふふ、無理もない。今のおれの格好は、ダイヤさん達の学校の制服姿なのだから。もちろん、浦の星女学院は女子校である。男子生徒の制服なんてものはない。おれは、スカートを穿いて皆の前にいるのだ。
「か、かい……、流石にそれは……、キッツいかな……」
「あはは! 櫂ったら変なカッコー!」
「うわー……、櫂ちゃん……」
「し、紫堂くん……」
「シドー……、あなた、そっち方向へ堕天してしまったのね……」
「紫堂先輩、ヘンタイさんだったんずら……」
メンバーの阿鼻叫喚の声が聞こえる。おれは、それをほぼ死にかけた心で聞いていた。
「まぁりさん!! こぉれはどういうことですのぉ!?」
おれの声を代弁してくれるかの様にダイヤさんが鞠莉さんの胸ぐらを掴む。胸ぐらを掴まれて尚、鞠莉さんはけらけらと笑っていた。
「だってほら、男として認識されないようにするには、女装しかないと思って~」
「それは解らなくもないですが、どうしてウチの学校の制服なんですの! そもそもあれは誰の制服なんですの!?」
「んーっと、ダイヤのだよ!」
「そうですか、それなら問題は――っ、オオアリじゃないですの!!」
かっくんかっくんとダイヤさんは鞠莉さんを揺さぶるけど、鞠莉さんは笑顔を崩さない。
「まぁこれでルビィの男性恐怖症も治るかもしれないよ。試してみようよ!」
「ま、まぁそうかもしれませんね。紫堂さん、お願いします」
嘘でしょお嬢様。まさかこんな簡単に騙されるとは思わなんだ。が、ここまで来たらやってやろうじゃん!
おれは覚悟を決めてルビィちゃんに向き合った。そして、彼女への一歩を踏み出した――
「っ――!!」
一歩目で悲鳴あげられた。そりゃそうだよね。女装した男が近づいてくりゃ、悲鳴の一つでもあげたくなるよね。お兄さんわかってたよ。
「あ、そもそもルビィの男性恐怖症治すんだったらカイは男の格好しなきゃダメだったね♪」
ことの発端たる鞠莉さんは舌を出した。
「って、そうじゃないですか! 紫堂さん、ついてらっしゃい!」
おれはダイヤさんに手を引かれ、再び宿へと入っていった。
可愛い子が、可愛いことしてるだけじゃダメなんですかね? それでいいじゃん。涙とか、辛いもん見たくないっつうの。
話が長くなってきたので、前後編にします。果たしてルビィは男性恐怖症を克服出来るのか……。