ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
「本当に鞠莉さんったら・・・」
旅館内でダイヤさんと二人、肩を並べて歩く。方や練習着に身を包んだ大和撫子。もう一方はその大和撫子の制服を着た変態。ひどい絵であることは違いない。
「鞠莉さんも悪気があった訳じゃないと思いますから・・・」
「逆に悪気がないのがタチが悪いですけどね・・・」
と、二人で話しているとおれが鞠莉さんに着替えさせられた場所にたどり着いた。そこにはおれの服も置いてあった。
「それじゃあおれ、着替えますので・・・」
「どうぞ、お着替え下さいな」
ダイヤさんは出て行くこともなく、おれの目の前に立っていた。
「あの、着替えづらいんですけど・・・」
「ですからどうぞ、と言ってるではないですか」
なんとも反応に困るな。どう言えばいいのかな・・・。
「ダイヤさん、おれの裸が見たいんですか・・・?」
「なっ!? わ、わたくしがそんな破廉恥な女に見えるのですか!?」
「いや、着替えるんだから後ろを向くなり部屋から出て行って下さいよ」
「そ、それもそうでしたわね・・・」
おれの指摘に顔を真っ赤にさせて、ダイヤさんはこちらに背中を向けた。
「ダイヤさんは、どうしてルビィちゃんの為にここまでするんです?」
おれは着替えながら後ろを向いているダイヤさんに話しかけた。
「どうしてって、簡単なことですわ。わたくしの妹だから、ですわ」
本当に簡単な答えだな。でもとってもシンプルで、ダイヤさんらしい。
「それにわたくしの為でもあります」
「ダイヤさんの為?」
「ルビィがあのままでは、わたくし達Aqoursのパフォーマンスにも影響が出るでしょう。わたくし達の為にも克服は必須なのです。それに――」
「それに?」
おれの着替えが終わったのを察知したのか、ダイヤさんはこっちを向いて笑顔を向けてきた。
「いつか、あの子が殿方を好きになって、素敵な恋をしてくれたらいいなって思ってますの。それにはアレは邪魔でしょ?」
うふふ、と上品に笑うダイヤさんからおれは目が離せなかった。
「大好きなんですね、ルビィちゃんのこと」
「大好き、というのは言葉に綾がありますけど・・・。大事な妹ですから」
その言葉を聞いただけで十分だ。おれはぱんっと両頬を叩いた。
「紫堂さん!?」
おれのいきなりの行動に驚くダイヤさん。おれも笑顔を向けて彼女に応えた。
「それじゃ、もう一踏ん張りしましょうか。ルビィちゃんの為に、ルビィちゃんが大好きなダイヤさんの為にも!」
おれの言葉にダイヤさんは一瞬顔を赤くするが、表情をきりと締め直した。
「ええ!!」
が、そんなんでルビィちゃんの男性恐怖症が簡単に克服出来るなら苦労はしない訳で。先の女装騒ぎによりルビィちゃんは完全におれを不審者とみなしてしまったのか、近づくだけで悲鳴をあげるようになってしまった。
「櫂ー!! 頑張れー!」
「ルビィちゃんも、ファイトだよー!」
周囲の声援も虚しく、事態は全く好転しない。そうして何度かやっているうちに――、
限界が訪れた。
「紫堂さん!?」
おれはがくりと膝を折り、動けなくなってしまった。ダイヤさんが異変に真っ先に気づき、周囲も声をかけてくれる。
「櫂! ここが踏ん張りどころだよ!」
「ルビィちゃんを救えるのは、櫂ちゃんだけなんだよ!」
「紫堂くん! もう一踏ん張り!」
「シドー! 貴方の力はその程度なの!?」
だがおれの足は動かない。皆、そう簡単に言ってくれるけどさ、近づく度に女の子に叫び声あげられるって相当にキツいからな? それを何度も繰り返されれば、足が止まるのも無理ないだろう。ダイヤさんの為に、ルビィちゃんの為にと自分を鼓舞し続けるが、頭で解っていても理性が追いついてくれない。
おれは……、ルビィちゃんの為に出来ることは、ないというのか……。
●●
櫂先輩が膝をついた。辛そうな顔をして挫けてしまった足をなんとかしようとしてる。それでも足は動かない。どうしよう。ルビィのせいで、ルビィのせいで先輩が辛そうな顔してる。
「もう、いいですからぁ! 先輩!」
ルビィの声にも先輩は不敵に笑った。
「なぁにコレくらい……っ! ルビィちゃんと、ダイヤさんの為だと思えばっ!」
でもそれが自分を奮い立たせてるのに精一杯みたいで、足は動かない。ルビィは見てることしか出来なかった。ただ見てるだけの自分が許せなかった。
もう、見てるだけの自分はイヤだ。自分から歩き出さないといけないんだって。今がその時なんだって。
「まるちゃん!」
「ずらっ!?」
呼ばれたまるちゃんがびっくりしてこっちを見てくる。
「この紐、解いて欲しいの!」
「で、でもルビィちゃん……」
「お願い、まるちゃん!!」
まるちゃんは何かを感じたのか、真剣な顔をしてルビィを縛っていた縄を解いてくれた。
「ありがとう、まるちゃん」
ルビィは今までお姉ちゃんやまるちゃんに支えられて生きてきたんだと思う。でもこれからは、自分で立って歩き出さなきゃいけないんだって。今がその時なんだって思う。
「ルビィ、ちゃん……?」
櫂先輩や、他の皆が驚きの表情でルビィを見てる。目の前にいるのは男の人。恐怖がないって言えば嘘になる。でも。それでも。
「櫂、先輩……。今っ、行きますっ」
一歩、また一歩、先輩に近づいていく。大事なのは、出来る出来ないじゃない、やるかやらないかなんだ! そう自分を奮い立たせてルビィは先輩の目の前までたどり着いた。
「ルビィちゃん……」
「櫂先輩……」
そしてルビィは、櫂先輩の頬に触れ、ぎゅっと抱きしめた。自分でもびっくりするくらい積極的だった。でも触れた瞬間に身体中にドキドキが奔った。この気持ちは何だろう?
『ルビィちゃん~!!』
でもその問いが解決する暇もなく、皆がルビィ達に押し寄せてきました。皆嬉し涙を浮かべてルビィの成長に喜んでくれてるみたいで、それが嬉しくてわんわん泣いちゃった。
でも、押し寄せてきた皆の中に、お姉ちゃんはいなかった。皆で喜んでいる時も、離れた所でそれを見てた。
お姉ちゃん、見てくれてた? ルビィ、頑張れたよ。今はまだお姉ちゃんと肩を並べる程じゃないかもしれないけど。でもいつかはお姉ちゃんの隣に、ううん、追い越してみたいって思いました。
◆◆
ルビィ、ちゃんと頑張ったのね。お姉ちゃんとして、嬉しいわ。
でもごめんなさい。どうしてだが、お姉ちゃんは皆の様に駆け寄ることが出来なかったの。
あなたが、紫堂さんに抱きついているのを見て、内心穏やかじゃなかったの。この気持ちは何なんでしょう。
輪の中心にいる紫堂さんとルビィを見る。二人共すっごく嬉しそうな顔をしていて。それが何故か羨ましくて。気持ちとは正反対の言葉が出てしまった。
「さぁ、ルビィの男性恐怖症も克服出来たことですし、練習を始めますわよ! ライブまで時間はないんですから!」
わたくしって何て嫌な子なんでしょう。妹の成長を素直に喜べないなんて。そう自己嫌悪しながらわたくしはその輪へと向かっていった。
ルビィ編&ダイヤ編でした。さて、次は何書こうかしら? 少し時間を空けたらアンケをとってみようかと思います。
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