ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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 また今度、誰かを泣かせるようなシナリオ書いたら、誰かにビンタするという業を背負わせるというのなら、その顔面にショットガンぶっ放すぞ。
 ゼロ距離からの散弾は浪漫。


28話 傷口に絆創膏を、額に――

 何時もより早く起きてしまった朝。練習の準備をしようとおれは駐車場に足を向けた。一番乗りかな、と思っていると先客が一人、そこにいた。

「――♪」

 自分達の歌を軽く口ずさみながら踊る鞠莉さん。おれはただ黙って彼女を見ていた。踊る度にふわりと舞う金髪。目の前にいるであろう観客を想像してか、見せる笑顔。ただただ魅力的だった。綺麗としか言えなかった。

 ダンスが一通り終わったのか、動きを止めた鞠莉さん。おれはふと我に返るとパチパチと拍手した。

「カイ! 見てくれてたの!?」

 おれを見つけて表情を輝かせて近づく鞠莉さん。おれは彼女にタオルを渡した。

「ちょっと早く起きちゃいまして。朝練の準備しようかと思ったら、ね。鞠莉さんも?」

「ええ。ワタシも早く起きちゃって。ちょっと通しでやってみようかなーって思ったの」

 鞠莉さんはふふんとちょっと妖艶に笑うと身を乗り出して来た。

「それで? カイはワタシのダンスを見てどう思った?」

「どうって……?」

「ミリョクテキだった? ワタシのダンスに眼が釘付けだったんじゃない?」

 ん? と更に近づいて、おれの唇に指を近づけてくる。誤魔化しも効きそうにない。ここは思い切ってバカ正直に言ってみるか。

「えぇ。とっても魅力的で我を忘れてましたよ」

「ふぇっ!?」

 途端に鞠莉さんの顔が真っ赤に染まった。いつもどこか余裕がある彼女らしからぬ反応。それが新鮮で、可愛らしかった。いつも彼女には迫られていたんだ。少しぐらい仕返ししてやれ。

「いや、お世辞じゃないですよ? 踊る時の鞠莉さんの表情とっても綺麗でした。笑顔もとっても可愛らしくて、拍手するのを忘れてました」

「――っ!!」

 更に顔を真っ赤にする鞠莉さん。耐えられなくなったのか、立ち上がってしまった。こんなに顔を赤くして照れる鞠莉さんはやっぱり新鮮で、一人の女の子なんだなと改めて思った。

「お、オゥケェ!! そ、そんなに魅力的ならもう一回アナタに見せてアゲル!」

 言うが早いが、鞠莉さんはおれの前で再び踊り始めた。が、先ほどのものとは違い、何かに欠けるものだった。本人もそれを理解しているのか、動きに焦りが見え始める。その焦りが更に動きを乱し、足を縺れさせる。バランスを崩して砂利に膝を折ってしまった。おれはたまらず、鞠莉さんの元へと駆け寄った。

 

 

●●

 情けないな、ワタシ。

 心の中でそう呟いた。魅力的かどうか聞いた時、カイならテキトーにあしらうと思ってた。そしたらまさかの直球。それは予想以上の破壊力で、ワタシの心をきゅんきゅんさせて。照れ隠しにもう一度踊ろうとするけれど、不意をつかれたワタシのカラダは思うようにいかなくて。気がついたら膝に痛みを覚えてた。

「大丈夫ですか!?」

 直ぐ様カイが真剣な顔つきで駆けつけてくれた。それが嬉しくて、またきゅんきゅんしちゃった。でもそれを表に出さないように、笑顔を見せる。

「ダイジョーブダイジョーブ! ちょっとさっきハードに踊りすぎたかなー」

 そんなワタシのやせ我慢を見抜いているのか、カレは真剣な表情を解かない。

「血が出てるじゃないですか!」

「コレくらい、ケガのウチに入らないよ」

「駄目です!」

 カイの声が荒い。ホントに、ワタシのコト心配してくれてるのかな。

「小さくても怪我は怪我です。これが元で足に支障が出たら大変ですから」

「それは、スクールアイドルとして? 一人の女の子として?」

 そんな質問を投げかけていた。だって、カイのこと好きな人Aqoursに多いし。時折、ワタシの入り込むトコあるのかなって思っちゃうから。

 カイは真剣な表情を解いて、微笑みながら傷の処理をしてく。

「スクールアイドルとしてってのはあります。パフォーマンスの低下は、アイドルとして致命的でもあるだろうし」

 傷口が、じゅわと痛む。気のせいか、転んだ時よりも、傷口が痛い。

「でも、女の子に、鞠莉さんに怪我して欲しくないのも、おれの本音です」

 その言葉を聞いて、一瞬で痛みが吹っ飛んだ。それって、カイはワタシを女の子として見てるってことなんだよね? ワタシにも、チャンスがあるってことなんだよね?

「これでよしっ。今日は念のためあんまり激しい動きは控えて下さいね」

 そんなワタシの思惑も知らず、カイはバンソウコウを貼ってくれた。そんなカレに笑顔を向ける。

「Thank you,カイ。お礼に――」

 他の皆より少しだけ、リードしていいよね?

「――っ!?」

 カイの額に唇を当て、軽く吸引してやる。いわゆる、デコチューってヤツかな? ワタシのある意味でのファーストを受け取ったカイは、顔を真っ赤にしてワタシを見つめている。

「何慌ててるの? コレくらい海外ではフツーよ?」

「い、いや、そうじゃなく――」

 そんなカイが面白くて、愛おしくて。ワタシは立ち上がってカレにウィンクした。これはさっきのお返しよ。

「それじゃワタシ、朝のシャワー行ってくるね。チャオ~♪」

 腰を抜かしたみたいに動かないでいるカイをそのままにワタシは旅館の中へ戻っていった。

 

 カイ、ワタシはアナタが好きよ。これからもドンドン攻めていくんだから、覚悟しておいてね♡

 

 この後シャワーを浴びたせいで遅刻して、更に怪我してダンスの練習に参加しなかったからダイヤにこっぴどく怒られたのは、別の話ね。

 




 ふと浮かんだ鞠莉回。鞠莉は正面から褒められたりすると、めっちゃ赤面して余裕が無くなるタイプだと思った。もっと、鞠莉を上手く書きたいと思う今日このごろでした。

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