ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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 ヨハネ回です。スクフェスでの最初の挨拶「はぁい、リトルデーモン」にやられました。彼女とのルートは中々楽しく書けそう。


4話 覚醒は堕天の来訪者と共に

 2日後。いつものように俺と曜が千歌を起こしに行くと、もう千歌は家の前に立っていた。

「あれ、今日は早いな千歌。それと――」

 彼女の隣には桜内梨子がいた。

「桜内さんね、私の隣が家だったんだって」

 曜は嬉しそうに桜内さんの手を握った。

「そうだったんだー! 桜内さん、登校も一緒だね!」

「う、うん。よろしくね」

「ん、二人は桜内さんのこと知ってたのか?」

「そっか、違う学校の櫂ちゃんは知らないか」

 千歌の説明によると、飛び込み騒動の翌日に彼女は星浦に転校してきたらしい。

「そうか。桜内さん、千歌のことよろしく頼みますわ」

「どうして櫂ちゃんが保護者みたいなこと言うのさー!!」

 千歌が頬を膨らませると、桜内さんは柔らかく笑ってくれた。

「はい、よろしくお願いされました♪」

「もー! 桜内さんまでーっ!!」

 今まで三人だけの通学路が少しだけ騒がしくなった。

 

 

「んで、スクールアイドル活動はどうなのさ?」

「ん~、目ぼしい子はいるんだけどねぇ……」

 曜がアゴに手を当てて唸る。そんなに難航しているのか。

「桜内さんは誘ったのか?」

 俺の問いに千歌がズイっと出てきた。

「誘ったよ! それでも断られちゃった……」

「千歌ちゃん、転校の挨拶直後に誘っても混乱させるだけだってば」

「そうは言っても曜ちゃ~ん」

 絡み合う二人を余所に、俺は桜内さんの方に意識を向けた。

「ごめんな、こいつら考えたらすぐ行動しちゃうタイプでさ」

「大丈夫です。それ抜きでも二人共とっても優しいですから」

 うう、なんて優しい子なんだ。この子がいるだけで俺たちの間に華が添えられる感じだ。

「……」

「いっつ!!」

 突然頬に感じる痛み。視線を痛みの方へ向けると曜が俺の頬を引っ張っていた。

「何だよ」

「べっつにー。ただ桜内さんを何となーくやらしい目で見てた気がしたから」

 ふん、と唇を尖らせてソッポを向く曜。俺が何をしたって言うんだ?

「もう、駄目だよ櫂ちゃん? そんなことしちゃ!」

「やってねえよ」

 ただ少し和んだだけだ。誤解とは言え、桜内さんに変な風に思われるじゃないか。

 視線を彼女の方へと向けるとよく理解出来ていないのか、首をかしげている。きょとんとしてる姿もなんか、いいな。

「むぅ!!」

「いっで!!」

 また曜にさっきより強めに抓られる俺だった。

 

 

「あ、そうそう。さっき脈ありだと思った子の中にね」

 頬の痛みが引いた頃に千歌が切り出した。

「ちょっと櫂ちゃんにお手伝いして欲しい子がいてね……」

「俺が?」

 別の学校である俺に、スクールアイドルの勧誘が出来るのか? 

「櫂なら――、上手くコミュニケーションとってくれるんじゃないかなーって思うんだけど……」

 曜も言葉を選びながら喋っている。何か嫌な予感が……

 

「ふふ、見つけたわ」

 

 俺たちの会話の中に割って入る謎の声。声のする方向へ意識を向けた。藍色が混じった長髪を揺らし、少し散り気味の桜の枝の上にその女は立っていた。

「はぁ!!」

 と勢い良くそこから跳び、俺たちの目の前に着地した。綺麗な着地とは言えず、少しガニ股じみた足の開き方のまま、動かない。

「っ――!!」

 こりゃどうやら着地の衝撃で足が痺れてるな。俺が声をかけようとすると、素早く動いて右手を変な形にして頬に当てる。

「ヨハネには解るわ。あなた、『此方側』の人間じゃないわね?」

 ヨハネ? 此方側? 何だろう、以前自分も似たような言葉を吐いた覚えがある。若干の寒気を感じながらも言葉を紡ごうとするが遮られる。

「言わなくてもいいわ、リトルデーモン。ヨハネのデモンズアイの前では、隠し事なんて無駄なのよ」

 もしかして誘いたい子ってこいつ? と視線を送ると曜が苦笑いしていた。近づいて小声で耳打ちしてくる。

(ほら、櫂も昔あんな時期あったじゃない? 昔取った杵柄でさ、ちょっと会話してみてよ?)

 なんつー要望出してきやがる! あの頃の自分を思い出しただけで全身に悪寒が奔るってのに。

 ヨハネと名乗る彼女をちらと見ると反応して欲しそうにこちらをちらちらと見てくる。仕方ない、付き合ってやるか。あとでアイスかなんか奢れよ、曜。

 すっと目を閉じ、記憶に埋もれた小さなスイッチをカチッと俺は押した。

「ふっ、よもやこんな小娘に見抜かれるとは、俺も老いたものだな……」

「っ!!」

 不敵に笑って見つめ返してやる。するとヨハネは息を呑み、嬉しそうな表情を見せた。改めて彼女を見るとなかなか可愛い子だな。

「当然よ。美しさの為、天界から『追放(おと)』されたヨハネの前では全ての隠し事は開示されるのよ。さあ、貴方の真名を教えてもらおうかしら?」

 そこは見破らずに聞き出すのな。俺は湧き出る悪寒を堪えながら彼女好みのアンサーを導き出す。

「『移ろう天秤(ジャッジメント)』、ルシフェルだ。そういうお前は、『美の堕天使(ビューティー・リリス)』、ヨハネだな?」

 嗚呼、後ろの三人の視線が怖い。この後で何を言われるのだろう? だが今はっ!!

 そんな俺の苦労も知らず、目の前の中二病全開女子は嬉しさのあまり悶得るような舞らしきものを舞っている。

「やるわね、貴方。このヨハネの全ての者を魅了する『結界』の中でそこまで平然といられるなんて」

 全然平然としてねーよ。今の俺の姿や言動を動画で撮られていたら、撮ったそいつと一緒に入水してくれるわ。が、俺の思考とは裏腹に、スイッチを入れてしまった身体は更なる恥を紡ぐ。

「元最上級天使を侮るでないぞ。俺の前では貴様なぞ、『可愛いウサギちゃん(ラビット)』に過ぎん」

「ラビット……っ!!」

 可愛いウサギちゃんが伝わったのか、少し顔を赤らめるヨハネ。が、すぐに表情を戻し、スマホを取り出した。

「あなた、気に入ったわ。このヨハネの『契約者』にしてあげるわ」

 これは、アドレスを交換して友達になって下さいってことか? 交わすぞ、その契約!

「いいだろう、貴様を我が『共犯者』にしてやろう」

 互いに情報を交換する。ヨハネは嬉しそうに笑っていた。中二病がなければ可愛いと思えるんだけどなぁ。

「津島善子……、か……」

「よ、善子ゆーなっ!!」

 さっきまでの低い声からは想像もつかない、高い声。これがこの子の本当の声か。すぐに善子は我に返ったのか声の調子を元に戻す。

「その名前は忘れて頂戴。『深淵(アビス)』に置いてきた名前だから……」

 くるりと俺に背を向けて善子は歩き出した。

「バァイ、リトルデーモン。次その機器が福音を鳴らした時が、ヨハネ達が出会う時よ」

 そしてそのまま善子は去っていってしまった。残されたのは俺とヨハネのやり取りを目撃していた三人と俺。

「スゴイよ櫂ちゃん! メルアドまで聞き出すなんて!」

「やるじゃん櫂! さっすが昔取った杵柄は違いますなぁ~」

「カッコ良かったよ、紫堂くん!」

 三人はそれぞれ感想の俺に投げかけてくる。俺はそれに笑顔で応えると、がくりと膝から落ちた。

 

 嗚呼、誰か、俺を殺してくれ。

 

 

 その後、千歌と曜にめちゃくちゃアイス奢ってもらった。




 終盤の中二ラッシュ、自分でも何言ってるのかよくわからなくなってきた。でも表現したいこと全て出しきれた感じするので満足。
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