ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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 今回は番外編です。本編のストーリーとは全く関係がありませんのでご注意を。


誕生日記念:ルビィの一日お兄ちゃん

 夕暮れに染まる道を走っている。本日の主役であろうあの子に会う為に。こんな時に朝練だからと自転車を黙って借りていった曜を、今回ばかりは恨んだ。

 いつもあいつらと分かれる道に、ぽつんと立つ影が一つ。おれはその影の主に対して叫んだ。

「ルビィちゃん!」

「ピギッ!?」

 ルビィちゃんはおれの声に驚くがおれを見た途端、ぱあっと表情を輝かせた。

「かい先輩!」

「ご、ごめんね。間に合わなくて・・・」

「いえ、先輩の学校の都合もあるから・・・」

 そう、今日はルビィちゃんの誕生日。彼女の学校で誕生日会をやるので来てくれと言われていたのだ。

 が、運悪く補習やらなんやらが入り、こんな時間になってしまったのだ。

「先輩にも祝ってもらいたかったけど、こればかりは仕方ないです・・・」

 そう言うルビィちゃんの瞳はうるうるとしていて。果てしない罪悪感に苛まれた。よし、ここはお詫びも兼ねて人肌脱ぎますか。まだ誕生日は終わってないからな。

「それじゃあルビィちゃん、ここはこうしようか」

「ふぇ?」

「あと残りの時間、おれはルビィちゃんの言うことを何でも聞きます」

「えぇ? いいんですかぁ!?」

「もちろん。プレゼントの準備も一応あるからさ。ここからは、おれとの誕生日会をしようよ」

「ほんとのほんとに、ルビィのお願い聞いてくれるんですか?」

「ああ。おれに可能なものであればね」

「えっと、それじゃぁ・・・」

 もじもじと顔を赤らめてこちらを見つめてくる。そんなに言いにくいものなのかな?

「遠慮しなくていいんだよ? お兄さんに任せなさいっ」

 どん、と胸を叩いてみせる。ルビィちゃんは意を決したのか一度深く呼吸すると、おれの手を握って叫んだ。

「あの、今日一日、ルビィのお兄ちゃんになってくださいっ!」

「はい?」

 今、なんと言った? おれが、ルビィちゃんの、お兄ちゃんに?

「だめ、ですか?」

 彼女が瞳を揺らして上目遣いで見つめてくる。そんな目で見られたら断れないじゃないか、というかむしろこっちからお願いしたかったところだ。

「あ、ああ! お安いご用さ! 前々からルビィちゃんみたいな妹が欲しいなって思ってたから!」

「ホント!? じゃあ・・・」

 ルビィちゃんは少し恥ずかしそうにしながらおれの横にすす、と並んだ。

「おにい、ちゃん♪」

「ーー」

 一瞬意識が跳びかけた。お兄ちゃん。こんなに甘美な響きだとは・・・! おれを心配してくれたのか、ルビィちゃんは首を傾げた。

「どうしたの、お兄ちゃん?」

「い、いや何でもないよ、ルビィちゃん」

 おれがそう呼ぶと彼女は頬を膨らませた。

「むぅ、駄目だよお兄ちゃん。ルビィ達は兄妹なんだから呼び捨てしないと」

 あ、そこまでこだわるのね。

「そっか。ごめんな、ルビィ」

「うん♪ それで、お兄ちゃんの誕生日プレゼントって何?」

「ああ、ちょっと歩くから一緒に行こうか」

「うん!」

 そう言うとルビィはおれの腕に絡みついてきた。

「あの、ルビィ?」

「兄妹でもこういうことするでしょ、お兄ちゃん♪」

 そういうもんなのかね。まあ彼女が喜んでくれているならいいか。

「それじゃ行こうか」

「うん!」

 こうして一日だけの兄妹は、学校をあとにした。

 

「ここって駄菓子屋さん?」

 おれ達がたどり着いたのは、以前集合場所として使った駄菓子屋。中は店番をしているおばちゃん一人しかいない。おれはそのおばちゃんに言葉をかけた。

「おばちゃん、来たぜー! 例のアレおねがいー!」

 あいよー、と言うとお婆ちゃんは奥へと引っ込んでいった。

「おばちゃんが戻ってくるまで駄菓子でも食べてよっか。おれの奢りで、ね」

「うん!」

 ルビィは素直に返事を返した。なんだかいつもと違って、遠慮とかがない気がする。妹になったからかな?

 二人並んで駄菓子を食べていると、おばちゃんが戻ってきた。

「はーいお待ちー。あつあつだから気をつけてお食べー」

 おばちゃんが出したものを見て、ルビィは息を呑んだ。

「あっ、これって……」

 それは黄色く、揚げたてなのか熱を発している。そして塩の粒がその身にまぶしてある。

「そ。フライドポテト。好きだったろ? おばちゃんに頼んで揚げてもらったのさ」

「ルビィの為に? ありがとうお兄ちゃん!」

 嬉しさのあまり、彼女はおれに抱きついた。彼女の身体の柔らかさがおれの胸でふにゅっと形を変える。って、昨今の兄妹はこんなことしないだろ! おれは惜しむ心を押し殺し、彼女を引き剥がした。

「さ、さぁ! お食べよ! 熱々のうちにさ!」

「うん!」

 指から伝わる熱さに悪戦苦闘しながらそれを口に運んだ。

「んー♪」

 ほっこりとした笑顔を見せてくれるルビィ。やっぱりこの子の笑顔は本当に可愛らしいな。そう穏やかな気持ちになってると、ルビィはポテトを一本、おれに差し出した。

「お兄ちゃん、あーん♪」

「おれに? いや一人で食べれるから……」

「ルビィがしたいのー! あーん!」

「あ、あーん……」

 ルビィのおねだりに負け、口を開けると熱々の芋がつっこまれた。その熱さに口をはふはふとしながら租借し、飲み込んだ。

「おいしい?」

 そう聞いてくるルビィにおいしいよ、と答えてやると――

「よかった♪」

 まぶしい笑顔を見せてくれた。それだけで、おばちゃんに無理言ってよかったって思えた。

 

 それからおれ達はその駄菓子屋で一緒に過ごした。互いが違う学校だからか、相手の学校の話がとても新鮮だった。

「それで友人のさ――」

「……」

「ルビィ?」

 ルビィは船を漕いでいた。眼が閉じかけたり開いたりしている。おれの掛け声にはっとなる。

「ご、ごめんなさい! ルビィ、ちょっと疲れちゃって……」

「けっこう喋ってたもんな。仕方ないさ」

 空を見れば橙に藍色が混じった色をしている。そろそろ帰り時かな。

「そろそろ帰ろうか」

「うん……」

 そう言うルビィの瞼はまた重くなり始めたみたいで。しょうがない妹だな。

「ほら」

 おれは背を向けて、身をかがめた。

「うん……」

 ルビィも眠気が限界だったのか、抵抗もなく従った。おれの首に彼女の腕が回るのを確認したので腰を上げて、おぶってルビィの家へと向かうことにした。

 さらさらとした肌触りの手足がおれに絡んでいる。背中には二つの大きくはないけど柔らかな感触。嫌でも女の子を感じておれの身体は反応してしまう。

 落ち着けおれ! ルビィは妹、一日限定とはいえおれの妹じゃないか! 妹に発情する兄がどこにいる!

 そう言い聞かせながらおれは足に力を入れた。

 

「あら、紫堂さん。それに、ルビィ?」

 門を開けてくれたダイヤさんがおれ達の出で立ちを見て目を丸くした。

「紫堂さん、ルビィは体調を崩したのですか!?」

「いや、そんなんじゃないですよ。ちょっと眠くなったみたいでおれがおぶって連れてきました」

「それは……、ルビィが迷惑をかけて申し訳ありませんですわ……。全く、この子は……」

「ルビィは悪くないですよ。誕生日だからおれは――」

 そこでおれはダイヤさんの視線に気づいた。彼女の視線はおれの下半身に集中していた。慰め虚しく、おれの分身はその硬さを保ったままであった。

「むにゃ……、お兄ちゃん……」

 そして運悪くルビィの寝言がダイヤさんの顔をさっと青くさせた。

「あ、あなたは……」

 わなわなと身体を震わせるダイヤさん。キッとおれを睨むと、右手を振りかぶった。

「妹に何破廉恥なことをさせてますの!!」

 ぱぁん、と大きな音が夕闇に染まる空に響いた。

 

「ほ、本当にごめんなさいかい先輩……」

「い、いやおれにも落ち度があったし……。ダイヤさんが勘違いするのは無理ないよ」

 おれはルビィちゃんに見送られながら門まで出た。

 叩かれた頬を撫でる。まだヒリヒリする。こりゃ鏡を見たら立派なモミジが見れるな。

「ダイヤさんも誤解だってわかって謝ってくれたし、もう気にしてないよ」

「でも……」

 目を潤ませるルビィちゃんの頭を撫でた。

「それよりも、ルビィちゃん。今日は楽しかった?」

 彼女は返答の代わりに、首を縦に振ってくれた。

「お姉ちゃん、いつも厳しいから……。少しでもいいから甘えられる人が欲しかったんだ」

「そっか。でも、ルビィちゃんのお姉ちゃんはダイヤさんだけだよ。たまには甘えてもいいと思うよ?」

「そ、そうですか?」

「もちろん。ダイヤさんはルビィちゃんのこと大好きだと思うから」

 いつだったか、ダイヤさんが言っていた。『大事な、妹ですから』妹のことを大事にしてるから、ああやっておれを引っ叩いた訳だし。甘えられて嬉しくないはずがない。

「よ、よしっ。じゃあ今夜にでもルビィ、甘えちゃおうかなぁ」

「ダイヤさんも喜ぶと思うよ。じゃあおれはもう帰るね」

「あ、あの先輩!」

 帰ろうとするおれをルビィちゃんは呼び止めた。

「ん? どうしたの?」

「最後の、最後のお願いを聞いて貰えますか?」

「いいけど?」

「じゃあ、少し身をかがめて、目を瞑って下さいっ」

「はいはい」 

 おれが身をかがめて目を閉じると、左頬にちゅっと柔らかい感触が伝わってきた。

「もう、目を開けていいですよ……」

 おれが混乱しながら目を開くと、ルビィちゃんは顔を赤らめながら今日一番の笑顔を見せてくれた。

「今日は、楽しかったですっ。ありがとう、お兄ちゃん♪」

 そう言うと彼女は恥ずかしさから逃げるように家へと走り去っていった。

 おれは左頬を撫でて、先程の感触を思い出した。もしかしておれ、キスされたのかな?

 顔の体温の上昇と共に、ルビィちゃんの笑顔が思い浮かんだ。

 それを思い出して、頬が緩んだ。

 

「こっちも楽しかったよ、ルビィ」

 

 おれは一人呟くと家路についた。




 ルビィちゃんお誕生日おめでとう! 
 まさか梨子と2日違いとは。梨子ちゃんは元々考えていたシナリオがあったので本編として書いたのですが、ルビィちゃんは全く考えてませんでした。それ故の番外編です。満足して頂けるといいのですが。

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