ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
ツイッター上で「読みましたよー」ってフォローして頂ける方が多くて嬉しい限りです。ハーメルンで書いてる方ともどんどん仲良くなって、絆の輪が大きくなっている気がします。嬉しい半面、僕の歪みを受け止めてくれるのか心配だったり。
くぁ、と欠伸をして身体を伸ばす。淡島へと続く桟橋で一人待ち人を待つ。目指すは淡島マリンパーク。なぜおれがここで待ち合わせしているのかを説明しなければならない。
「新曲のPVですか?」
「ええ。そのヒントを得るためにわたくし達は三組に分かれて三つの水族館に行こうと考えていますの」
ダイヤさんとの勝負を終え、部屋から出ようとした時に彼女に呼び止められ、その話を聞いた。どうやら学年ごとに別々の水族館に行くらしく、最初は千歌達二年生の番だそうだ。
「それで、おれにその水族館行きに同伴しろと」
「はい。そして楽しむ彼女達をこのカメラで撮って欲しいのです。何かのヒントになるかと思いますので」
おれ達は現在、淡島のホテルを活動の拠点にしているので本来ならそのまま行っても問題はないのだが、おれが同伴するということを知った千歌達は一度帰って支度すると言い出して、朝早く家へと戻って行った。こうしておれは一人桟橋で待ちぼうけをくらっている訳だ。
「櫂! お待たせ!」
一番におれの元へやってきたのは、曜だった。ハーフパンツにシャツとジャケット、小さな帽子を被っていて、完全に余所行きの格好だった。
「ん。ずいぶんとおめかししてきたな」
そうおれが言うと、視線を逸らしながら頬を掻いた。
「だ、だってこれってデートみたいじゃん。ちょっとはおしゃれしてみたいかなーって思って、さ……」
「PVのヒントの為に水族館に行くだけだろ。そんなにおしゃれする意味あるか?」
「もー、櫂君は女心ってのがわからないんだから」
ジト目でおれを見つめる曜。そりゃ男だからわからないに決まってるだろう。
「それでさ、櫂。どう? 似合ってる、かな?」
両手を広げてくるりと一回転する曜。ラフな格好や制服しか最近見てなかったからか、とても新鮮だった。
「あ、ああ。中々いいと思うぞ」
「そ、そっか……」
少し頬を赤らめて俯く曜がいつもよりも女の子っぽく見えて、おれの心臓はどきりとした。
互いに気恥ずかしいのか、視線を逸らし沈黙が訪れる。周囲から聞こえる波の音だけが響く。何か言おうとして口を開けた時だった。
「おーいっ! 櫂ちゃーん! 曜ちゃーん!」
桟橋に響く、幼くて元気のある声。声の方を向くと、千歌と梨子が小走りでこっちに向かってきていた。
「遅くなってごめんね。紫堂くん、曜ちゃん。だいぶ待った?」
「そんなことないよ梨子ちゃん。私も櫂と合流したばっかだし」
柔らかい桜色の上着に、ふわりとしたスカートからすっと脚が伸びている。少し高めのヒールを履いた梨子に目を奪われていた。
「お? 櫂ちゃんったら梨子ちゃんに目が釘付けですな?」
肘でおれをつく千歌。おれは我に帰って必死に目を逸らそうとしたが、梨子のすらりとした脚から目が離せなかった。梨子が少し恥ずかしそうに身を捩った。
「え、やっぱり地味だった、かな?」
「いやいや、そんなことないって! むしろ綺麗っていうか……」
「え!?」
ぼっと顔を赤くする梨子。おれも自分が言ったことの意味を理解して顔が真っ赤になった。
「ねーねー、櫂ちゃーん! ちかは?!」
ありがたく空気を読まない千歌がぴょんと跳ねておれに訪ねてきた。肩紐のあるショートスカートと薄手のセーターという組み合わせ。動き易さを考えた、彼女らしいファッションだった。
「ああ。似合ってるよ」
跳ねる頭を撫でると少し顔を赤くしながら嬉しそうに目を瞑った。心なしか頭のアホ毛もぴこぴこと揺れ動いている。
「って、そんなことしてる場合じゃないよ! 早くしないと船行っちゃうよ!」
曜の慌てた声に視線を船着き場に停泊している船に向ける。汽笛を鳴らしてそろそろ出航の合図をしている。
「わーっ! 急がないとー!」
「ち、千歌ちゃん待ってよぉ!」
それを聞いて慌てて走り出す千歌と梨子。おれもそれに慌てて続いた。
船を降りたおれ達を迎えたのはイルカの激しいジャンプだった。
「きゃあっ!!」
水しぶきに驚いた梨子がおれに飛びついた。柔らかな感触が身体から伝わり、おれの体温を一気に上昇させる。それは梨子も同じらしく、顔を赤らめながら身体を離した。
「ご、ごめん紫堂くん。びっくりしちゃって……」
「む、ムリもないさ。ここはいきなりイルカの水槽があるからな」
「なんでこんな所にイルカの水槽があるのぉ……」
少し涙目になって水槽を見つめる。
「さぁねえ。ここを作った人に聞いてくれ」
「それ、理由になってな――、っきゃあっ!」
再びイルカが跳んで、水しぶきに驚く梨子。そしてまたおれの腕にひっついた。
「ご、ごめんね紫堂君……」
涙目で上目遣いは卑怯だって。おれはその視線から逃げるように目線を逸らした。
「い、いいって。なんなら水族館に着くまでそうしてればいいんじゃないか?」
「それじゃ、お邪魔しまーす!」
おれ達の会話を聞いていたのか、曜が梨子とは反対側の腕にひっついた。
「お、おい曜! なんでお前もくっついてくるんだよ!」
おれの問いに曜はいたずらっ子っぽく笑った。
「きゃあー、イルカこわーい!」
わざとらしく俺の右腕をぎゅっとする曜。右腕に彼女の柔らかさが伝わる。梨子よりはあるんじゃないかな。
「よ、曜ちゃん、真似しないでよぉ!」
負けじと梨子もおれの腕をぎゅっと抱きしめてくる。なんだこの両手に花な状況は。
「曜ちゃんも梨子ちゃんもずるーい! よーし私だって!」
何を思ったのか、千歌が後ろから抱きついてきた。背中に広がる、双丘の柔らかさ。千歌の奴、大きくなったんじゃないか? 曜と同じ位の大きさに感じるぞ。
なんて考えていると、曜がむすっとした表情でおれの右頬を抓ってきた。
「櫂、鼻の下が伸びてるぞー。エッチなこと考えてたんじゃないのー? このスケベー」
「なっ、ち、ちげーって!」
と、おれが慌てた表情をしていると、反対の頬をぷにっと柔らかくつつかれた。
「紫堂くんのスケベ♪」
「り、梨子まで!」
更には後ろで抱きついていた千歌がぎゅっと首もとを締めるようにしてきた。
「櫂ちゃんのスケベー!」
首を絞められる痛みと共にふにゅっとつぶれる千歌の胸。痛みと柔らかさの波状攻撃がおれを襲う。
「お、お前ら! こんなことしてる場合じゃないだろ! いいから水族館に行くぞ!」
おれは三人の抱擁を受けながら、水族館への道を歩き出した。
「ってなんでカエル館なのぉ!」
梨子の叫びが館内に響いた。ことの発端の千歌が口元で人差し指を立てた
「駄目だよ梨子ちゃん。カエルが驚いて出てこなくなっちゃうから」
「出てこなくていいよぉ……」
涙目になっておれの袖をきゅっと握ってくる。
「水族館のPVを作るんだから水族館に行くんじゃないの?」
「甘いよ梨子ちゃん! そんなありきたりな考えじゃアイドルとして目立てないよ!」
「ありきたりでいいよぉ……」
「梨子、いいことを教えてあげよう」
「紫堂くん?」
梨子の視線がおれに向く。
「千歌がああやっておねだりする時は、諦めることだ」
「えぇ……」
「思い出してみろ。『お願いー!』っておねだりする千歌のことを」
子犬のように目をうるうるさせながらお願いする千歌の顔が瞼の裏をよぎった。
「あれを断れると思うか?」
「うん、ムリ、だよねぇ……」
それが千歌の可愛さなんだけどな。
「千歌という環境にあらがうんじゃなくて、適応するのが大事なんだ」
「もう、櫂ちゃん! 私をバカにしてるー!」
千歌が頬を膨らませてこっちを見てくる。
「バカにしてないぞ。ただ千歌が可愛いってことを話してただけだ。な、梨子?」
「う、うん。バカにしてたわけじゃないからね千歌ちゃん」
「か、可愛いだなんてそんなぁ……」
可愛いと言われてふにゃっとした笑顔を見せてくる千歌。こういう所はお世辞抜きに可愛いんだよな。
「あ、じゃあ二人にいいもの見せてあげる!」
そう言って彼女はおれ達の前に両手を差し出した。おれ達がそれをのぞき込むと、握られていた手が開いた。
両手にいたソレはゲコっと一鳴きした。
「やっと見つけてきたんだ、ほら、カエルだよー」
「きゃあぁぁぁああ!」
梨子は驚きのあまりおれの顔に抱きついた。
「ちょっと梨子! 当たってる! 色んなとこがおれに! あとマジで苦しいから!」
この後、曜が助けてくれるまで梨子に締められ続けた。梨子、いい技持ってるじゃないか。
「もう、私が目を離してる隙に何やってるんだか……」
カエル館を出て広い場所をおれ達四人は歩く。曜が呆れながらおれを見ていた。
「そういう曜こそどうしたんだよ。おれ達とは別行動とってたみたいだし」
助けにくるまで、曜の姿が見えなかった。こいつにしては珍しい気がした。
「別にいいでしょ。女の子にはね、たまには一人でいたい時があるんだよ」
「そんなもんかね」
「そーゆーもんだよ」
と曜と二人で会話していると、千歌の明るい声が聞こえてきた。
「それじゃあ、ここでお昼にしよーよ!」
「うん。丁度シートも持ってきたし。ここで食べようか」
梨子がレジャーシートを広げると、おれ達はそこに腰を下ろした。風が心地よく吹いて気持ちいい場所だ。
「あの、これ、朝家で作ってきたんだけど……」
梨子がおずおずと少し大きめの箱を取り出してきた。彼女が蓋を開けると、そこにはサンドイッチがぎっしりと詰まっていた。それに千歌の目はキラキラと光った。
「うわー! これ全部梨子ちゃんが作ったの!?」
「お母さんに手伝ってもらったりもしたけどね。皆で食べよ?」
そのサンドイッチを見て、曜がきゅっと唇を噛んだように見えた。が、すぐに笑顔に戻ってそれを手に取った。一口食べると驚いたような反応を見せた。
「梨子ちゃん! このたまごサンド、すっごく美味しいね!」
「ありがとう。すっごく好きなんだ、たまごサンド」
「櫂ちゃんも食べてみなよ!」
千歌に進められるまま、おれはたまごサンドを口に運んだ。口の中でたまごの柔らかさが広がり、独特の甘さが舌を誘惑する。
「お、確かに旨い! 美味しいよ!」
おれの反応に、梨子の顔がぱぁっと輝いた。
「ホント!? よかったぁ……」
その喜んでいる表情を見ると、なんだかこっちまで嬉しくなるな。
とそのまま梨子のサンドイッチに舌鼓をうっていると、曜が立ち上がった。
「ふー、ちょっと食べ過ぎたみたい。私、ちょっと飲み物買ってくるねー!」
おれ達が返事をする前に曜はそのまま走っていった。
●●
「何やってるんだろうな、私」
ベンチで一人、炭酸飲料を飲む。しゅわしゅわとした刺激がのどを駆けめぐる。それが体中を刺激してくれればこの胸のもやもやも消えてくれるんじゃないかって思ったけど効果はないみたい。
「隣に住んでる幼なじみってことで、油断しすぎたかなぁ」
また独り言がこぼれた。今日のデート(?)でわかったのは、梨子ちゃんも千歌ちゃんも櫂のこと好きなんだってこと。梨子ちゃんのあれは事故かもしれないけど、千歌ちゃんの異常なまでのスキンシップは絶対櫂のことを意識してるからだ。
そんな中に私が入っていいのか。そうすることで櫂に迷惑をかけてしまうんじゃないかって。
更に梨子ちゃんが作ってきたサンドイッチ。本当に美味しくて、妬けちゃうよ。あんなの見せられたら私のこれなんか――
「どうした、一人でベンチに黄昏れて」
そんな私の思考を遮る声。櫂が私を正面から見下ろしている。
「か、櫂!? 千歌ちゃんと梨子ちゃんはどうしたの?」
「あいつらなら仲良くお昼を食べてるよ」
「そうじゃなくて! どうしてこっちに来たのさ!」
「どうしてってそりゃーー」
櫂は頬を掻いて私の隣に座った。言葉を選ぶように考えると彼はこう言った。
「一番の幼なじみがなんか悩んでるのを感じたから、かな」
一番の幼なじみ。その言葉を聞いて胸が少し、ずきっとしてしまう。
「いやさ、なんか最近曜と話してないなーって思ってさ。お前、なんかここに来てから調子おかしかったろ? どうしても気になって、さ」
すっと胸の痛みが少し和らいだ気がした。そっか。櫂はわたしのこともずっと見てくれてたんだ。千歌ちゃんや梨子ちゃんだけでなく、わたしのことも。
「もう、櫂はバカだなぁ!」
私は笑うとベンチから立ち上がった。
「な、おれはお前のことを心配してだな!」
「まんまと曜ちゃんの策にひっかかったな! こうすれば櫂は私のことを心配してくれると思ったのだよ!」
「なんだよそれ。んじゃ策にかかったおれにどうして欲しかったんだ?」
「えっ、そ、それは……」
しまったそこまで考えてなかった。視線をベンチにおいたままにしていた小さな弁当箱に送ると櫂に悟られてしまった。
「もしかしてこれか?」
「あっ!」
私が反応するよりも早くそれを手に取り、櫂は蓋を開けた。
「ほー、ハンバーグサンドか」
「……」
一度家に帰って、櫂に食べて貰おうと思って作ったハンバーグのサンドイッチ。梨子ちゃんのサンドイッチに比べれば数も一つしかないし、形も少し歪んでて。見劣りすると思って出せなかった。
「これをおれに食べて欲しかったのか?」
黙って頷くと、櫂はそれを口に運んだ。梨子ちゃんのを食べておなかいっぱいのはずなのに。
「ちょっと櫂! ムリして食べなくていいって!」
私が止めようとするけど櫂は黙々と食べる。あらかた食べて、一息つくと、笑って見せた。
「ムリなら、こんな顔はしないさ」
「櫂……」
胸がきゅんとした。もう、櫂のクセに生意気だよ。
再び櫂の隣に腰掛けて、ぽすっとその肩に体重を預けた。
「お、おい、曜!?」
「櫂、ちょっとだけこうさせてくれる……?」
男の子の固い身体。うわ、さっきまでは平気だったはずなのに、私すっごいドキドキしてる。
「しゃ、しゃーないな。少しだけだぞ?」
あ、意識してくれてる。それだけで嬉しくなる。
「ねえ櫂っ。私、もうちょっと頑張ってみるね!」
「お、おお。頑張れよ」
多分櫂はスクールアイドルのことだと思ってるのかな。そんな女心がわからない櫂には、こうだっ。
「あっ、櫂っ」
「ん? お、おい!?」
口元に残ってた、ハンバーグサンドのソースを指で拭う。それを舐め取った。うん、良い味付け。
「残ってたぞっ。もうちょっときれいに食べてよね」
一気に櫂の顔が真っ赤になる。私も頬が熱い。
私は、櫂のことが大好き。今は、まだ櫂にとっては「幼馴染」ってだけかもしれない。そのままで終わるかもしれない。でも可能性がないわけじゃないってわかったから。いつか伝えてみせるんだ、私の、「大好き」って気持ちを。
ふと、遠くから賑やかな声が聞こえて来た。よく見ると千歌ちゃんが梨子ちゃんの手を引っ張ってるみたい。
「ち、千歌ちゃん! もうカエル館はいいからぁ!!」
「そんなこと言わないでー! もーいっかい見ればカエルの良さに気づくからー!!」
そんな二人の様子を見て、櫂がため息をつきながら立ち上がった。
「しょうがない、行くか、曜!」
「ヨーソロー!!」
私はそれに元気よく敬礼で応えたのだった。
俺だってさ、梨子ちゃんの特製玉子サンド食いたいよ。でもね、俺卵苦手なんだよぉ!!
久々に曜ちゃんを書くに当って、「あれ、これは本当に渡辺曜なのか?」と悩むことが多かったです。ほったらかしにし過ぎたバチが当たったな。反省。今度彼女の回を書くときは、水着回にしようかな。
あ、二年生組の衣装は千歌が水着SRの覚醒前、曜はSSR覚醒前、梨子が恋アク覚醒前の服装になっております。更にカエルを差し出す千歌は以前イベント報酬だった覚醒前のSRだったり。
特別企画なのですが、出来れば10月末日までに一つ投稿したいなと考えています。ですから皆様からのアイデアをお待ちしてます!
ご意見ご感想も待ってます。