ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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 最近僕ラブへの準備に必要なものがそこそこあって頭痛の種が増えつつあります。それでも、やる、かも。

 果南回です。


52話 重ねた手と手

「よっと」

 私が力を入れてちかの右手を倒す。ちかから驚きの悲鳴が聞こえた。

「うわぁ!」

「果南ちゃんのかちー!」

 ようがわたしの右手を持ち、高く掲げる。何だかちょっと照れくさいな。

「やっぱり果南ちゃんは強いねー」

 ちょっと恨めしそうにちかが頬を机にくっつけてこっちを見ている。

「千歌ちゃんが弱いだけなんじゃない?」

「なんだとよーちゃん! じゃあ千歌としょーぶだ!」

 ちかとようがにらみ合い腕相撲することになったので私は席を譲った。窓の外に視線を向けると晴れ晴れとした青空が広がっていた。

 ライブに向けての最終調整。今日の分の練習が終わって、時間を持て余した私たちはちかの突拍子な提案で腕相撲することになった。いつもちかの提案には驚くけど、楽しいからまあいいかってなる。

「うりゃっ!」

「うわーん! また負けたー!」

 どうやら勝負がついたのか、ようが得意げな顔をしている。対してちかは泣きそうな顔をしていた。そんなちかに手を広げた。

「しょうがないなちかは。ほらおいで?」

「果南ちゃーん……」

 ちょっと泣きべそかいて私の胸に飛び込むちか。いつまで経ってもちかはちかのまんまだね。そんな彼女の頭をよしよししていると。

「ん、三人で何してるんだ?」

 聞き慣れた声、かいの声を聞いた瞬間にドキッとした。ちかも私の胸に埋めていた顔をかいの方へと向けた。

「あ、櫂ちゃん! 皆で腕相撲してたんだよ!」

「果南ちゃん強いんだよ。私もさっき負けちゃったし・・・」

 曜も少し嬉しそうな顔をして櫂に説明している。あれ、どうしてだろう。二人とも普通に櫂に話してるだけなのに、どうして私、胸がちくちくしてるんだろ?

「へぇ、面白そうじゃんか。じゃあおれもやってみようかな」

 そう言ってかいが一歩前に出た。え、かいと私が腕相撲するの? そう考えただけでドキドキが止まらない。なんて思っているとーー

「待つんだ櫂ちゃん!」

「果南ちゃんと戦いたくば、私たちを倒すことだー!」

 私の前に立ちふさがるように千歌と曜が立った。その様を見て櫂は苦笑いしながらYシャツの袖を捲った。

「なんだよそれ。ま、いいだろう。かかってこい!」

 こうして、私たち四人の腕相撲が始まった。

 

「じゃあまずはかいVSちか、だね」

 名前を呼ばれた二人が机越しに向かい合う。どこから来る自信なのか、ちかは不敵に笑っていた。

「ふっふっふ、櫂ちゃん、覚悟はいいかい?」

「ほほう、自信満々だな」

「千歌もアイドル始めて体力ついたからね。以前の千歌と思わないことだね」

「じゃ、負けた方は罰ゲームありにでもするか?」

「いいよ、負けた方は勝った方の言うこと何でも聞くってことにしよーよ!」

「なら俄然、負ける訳にはいかないな!」

 ニヤリと笑ってちかの手を握るかい。ただ握ってるだけなのに、また胸がちくってした。

「果南ちゃーん? かけ声まだー?」

 ちかが首を傾げてこっちを見る。いけない、今の私は審判なんだからしっかりしないと。

「じゃあ二人とも、準備はいい? よーい・・・スタート!」

 わたしのかけ声と共にちかとかいの二人が力を入れる。

「ふっ、ぬぬぬ……」

「っ……」

 声を上げて力を込めるちかと、何も言わずにその握られた手を見つめるかい。勝負は長引くかと思ったけど、徐々に千歌の手の甲が机の木目に近づいていってーー

「わぁっ、ま、負けたー!」

 力つきる様に机に突っ伏すちか。勝者であるかいはふっと息を吐き出した。

「おれの勝ちだな千歌。あとでコンビニ行ってきてもらおうか」

「むぅー!!」

 頬を膨らませるちかの頭をようがよしよしと撫でた。

「待ってて千歌ちゃん。千歌ちゃんの仇はこの渡辺曜が討つであります!」

 びしり、と敬礼のポーズをするよう。

「今度は曜が相手か。千歌と一緒に買い物してもらうぞ!」

「ふっふっふ、千歌ちゃんに勝ったからっていい気にならないでよね。渡辺曜、容赦せん!」

 手を握り合うようとかい。それを見て、また胸がちくり。それを振り払い、二人を見つめた。

「じゃあいっくよー。よーい、スタート!」

「ふっ!」

「ぬっ!」

 力を入れて相手の手を倒そうとする二人。震える二人の手は動かず、勝負は拮抗した。

 そんな二人を見ながら、私はさっきから胸にひっかかる何かについて考えていた。ちかとようは小さい頃からの幼なじみだし、かいだってそうだ。親しく話していてもおかしくないのに。どうして胸の奥辺りがちくちくするんだろ? もしかして二人に嫉妬してるのかな? 幼なじみ二人にもこんな感情を持っちゃうの、いけないよね?

 なんて、考えているとーー

「うわっ」

「よし勝った!」

 どうやら勝負がついたみたいで嬉しそうに拳を握るかいと、悔しそうにかいを見るようがいた。

「むぅ、櫂のくせに生意気だー!」

「そーだそーだ!」

 ちかとようが文句を言う。

「おれは真っ正面から正々堂々と勝ったんだっての。そんな風に言われるいわれはねーよ」

「むぅー! 果南ちゃん!」

「え、私?」

 ちかとようがかいから隠れるように私の背中に回り込んだ。

「果南ちゃん、仇をとってくだせぇー!」

「千歌と曜ちゃんの分まで、お願いしやす……!」

 そのまま座らせられ、かいと向き合う。うわ、なんだろ、妙にドキドキする。かいにはバレてないよね?

「ここまで来たらやろうか、果南ねえちゃん」

「う、うんっ!」

 肘を机に置き、かいの手を握る。水族館デートの時は緊張してあんまり感じれなかった、かいの手。昔と比べてすっごく大きくなった男の子の手。それにまたドキドキしちゃってて。

「それじゃいっくよー! スタート!」

 ようのかけ声に反応が遅れてしまった。

 次の瞬間に襲いかかる私の手を倒そうとするかいの力。慌てて力を入れるが、なかなかスタート位置に戻らない。

 こうやって腕相撲したの、いつ以来だろう? ふと昔の事を思い出す。あの時も私が勝って、かいってば涙目で「つぎはかなんねえちゃんに勝って見せる!」って言ってたっけ。「楽しみにしてるよ」って返したけど、もうかいは覚えていないんだろうな。

 昔は私がかいの手を引っ張っていたのに、今じゃこんなに力強くなってたんだね。嬉しさと共に力がこみ上げてくる。それじゃかいのお姉ちゃんとして、頑張らなくちゃね! 私はかいの腕を倒すべく、更に力を込めた。

 

 

○○

 窓から海の景色を眺める。視線を学園へと続く道路へと向けるとコンビニへと走る千歌と曜の姿が。

「どう? 二人とも元気に走ってる?」

「ああ。二人とも必死に走ってるよ」

 そう言いながらおれは自分の右手を見つめた。手のひらには強く握りしめられた感覚が強く残っていて、手の甲は机にたたきつけられてじんじんとした感覚がある。すると、心配そうな果南ねえちゃんの声が聞こえてきた。

「ごめんねかい? 痛かったでしょ?」

「いや、こんなの痛いの内にも入らないよ」

 笑顔を向けると安心した表情を見せておれの隣に立った。

「でもびっくりしたよ、かいがあそこまで強くなってるなんて。ちょっと油断してた」

「毎日軽い筋トレはしてたからね」

「軽いってどれくらい?」

「んー、腕立てと腹筋二十回ずつかな」

「そこそこやってたんだ。でもどうして? かいは部活やってなかったんでしょ?」

 あー、それ聞いちゃうか。恥ずかしいから言いたくないんだよなー。

「まあ色々と、ね」

 おれがはぐらかそうとすると果南ねえちゃんは頬を膨らませた。そんな子供っぽい表情がなかなかに可愛い。

「誤魔化さずに教えてよー」

「や、やだよ恥ずかしい」

 すると少し意地悪そうな顔をしておれに顔を近づけた。

「そういえば負けた方は勝った方の言うこと聞くんだよね?」

「あ……」

「と言うわけで、教えてね♪」

 にっこりとした笑顔に負けておれは軽くため息をついた。

「誰にも言わないでよ? アレは果南ねえちゃんが中学に入った頃だったかな、おれと腕相撲したの覚えてる? おれ何回やっても勝てなくて、それが悔しくっていつか勝って見せるって言ってさ。それから毎日筋トレしてて――」

 言った後に恥ずかしさがこみ上げてきて、顔が熱くなる。果南ねえちゃんに笑われるんじゃないかな。

「えっ、あの時のこと、覚えてくれてたんだ……」

 が、当の本人は驚いた様に目を見開き、何かを噛みしめる様に頬を紅く染めた。そんな彼女の表情に見惚れてしまい、おれは言葉を失った。

 そんなのを悟られたくなくて、無理に言葉を振り絞る。

「こ、これでいいだろ! それでも果南ねえちゃんに勝てなかったけどね」

「ううん、嬉しかったよ」

 そう言う果南ねえちゃんの表情は本当に嬉しそうで。

「かい。ついでにもう一つお願い事聞いてくれる?」

「な、なに?」 どんなことお願いされるんだろうと身構えるおれに、果南ねえちゃんは微笑むと、手を差し出した。

「私がいいって言うまで、手、繋ご?」

「それだけで、いいの?」

「うん。それだけ。ほら、早くっ」

「わ、わかった」

 差し出された手をきゅっと握る。腕相撲勝負の時には感じる暇も無かったが、その細くて柔らかな感覚にドキドキしてしまう。それを悟れまいと無表情を意識するが――、

「あ、かいってば顔赤いよぉ?」

 ぷにっと空いてる方の手で頬を突かれる。それがまた恥ずかしくて。

「も、もういいだろ、そろそろ離しても――」「だーめっ」

 そのまま果南ねえちゃんは窓を開けて腰を縁に下ろした。

「ちかとようが戻ってくるまで、こうしてようよ。ね?」

 おれに向けるその笑顔におれはこれ以上何も言えず、果南ねえちゃんの隣に腰を落とした。

「ふふっ」

「あははっ」

 おれ達は自然と笑顔をこぼし合い、千歌と曜が見えるまで手を繋いでいたのだった。

 

 

●●

 海からくる風を受けながら、かいの手を握る。昔はかいの手を引いて遊んでたっけ。あの頃と較べて、かいは大きくなったんだね。しかも覚えてくれてた。それが嬉しくてきゅっとかいの手を更に握ってしまう。

「どうしたのさ、果南ねえちゃん」

 握られて少し驚いたように私を見つめるかい。少し顔が紅くなっていて、可愛いな。

「なーんでもないよっ」

 胸のときめきを誤魔化すように笑いかける。胸の高鳴りと、蝉の鳴き声が木霊する昼下がりだった。




 そーいや前シリーズでも腕相撲したっけ。懐かしいなぁ。これが最後のキャラの掘り下げ。全員分出来たらやって、分岐点作ります。やっと佳境ってとこでしょうか。走っていきますよ、自分の中の愛だけで。

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