ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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 ライブお疲れさまです。そして二期が決定したようですね。それに関してはあとがきにて。
 今回は善子回です。


56話 男子高校生と中二病少女―黒衣の逆三角―

「今日もハードな練習だったわ……」

 夕日が水平線へと沈む逢魔ヶ刻。ヨハネはその闇に染まりかけの外の空気を味わっていたの。自主練で火照った身体を海からの風が吹き抜けてくる。消費した魔力が回復するまでここで休んでよっと。

 そう思った時だった。砂を蹴る音が後ろから響いてヨハネの後ろで止まった。

 誰だろうと振り返ると、スマホを見ながら腰掛けるシドーの姿があった。って、シ、シドー!? どうしてここに!?

 シドーの顔を見た瞬間に顔が熱くなって直ぐに顔を背けた。両手に頬を当ててちらちらと見てしまう。

 な、何を慌ててるのよヨハネ。リトルデーモン相手に情けないわよ! もっと毅然としなくちゃ!

 とはいえ、何を言えばいいのかしら。夕日が綺麗ね――ダメね、ありきたりすぎる! どうすれば……

 

 

◇◇

 抜かった。まずこの状況に関する感想はその一言に尽きる。

 ダイヤさんの説教を正座しながら聞いた為か、おれの両足はじんじんと痺れていた。ちょっと座って休もうとしたらコレだ。おれの右斜め前には善子がいる。そしてその善子がちらちらとおれを見ている。これは、アレか。まーたおれにあの空間へと誘えという視線か。この堕天使め!

 だが、こいつとそんな会話をするのは悪くはない。ひねり出してやろうじゃねえの。堕天へと導く言葉を!

「今日は、波が煌めいてやがるな」

「ぷっ……」

「……」

「……」

 少しの沈黙の後、おれは口を開いた。

「おい、そこの自称堕天使」

「自称じゃないわよっ! 堕天使なの!」

「んで、せっかく人が捻った台詞に対しての感想が吹き出しってのはどうなのよ堕天使さまよ?」

「そ、それもそうね……」

 そう言うと善子は目を細め、それっぽい感じの指を顔に添えた。

「でも、この風、少し泣いているわね」

「波だっつてんだろ!」

「ふふっ」

「っ、くくっ」

 やり取りがツボにはまったのか、互いに笑い合う。やっぱこいつといると楽しいな。悪くない。

「シドーはどうしてここに?」

「あー、訳あって少し足が痺れてな。ちょっと羽休めってとこだな。善子は?」

「ヨハネよっ。ヨハネは自主練のあとの休憩よ。それにしても奇遇ね。堕天使が二人、こうして出会うなんて」

「ふっ、確かにそうかもな。おれ達は何か縁があるのかもしれんな」

「縁……」

 そう呟く善子の顔は何だか少し赤くて。それを誤魔化すようと顔を振って立ち上がった。

「そうね、ここで会ったのも何かの縁。ここは堕天使同士の語らいと洒落込みましょ。隣、座るわね」

 そう言うと善子はおれの隣に腰掛けた。肩が触れ合う寸前の距離。なぜだか少し緊張してしまう。いや、前に鞠莉さんのホテルでこんな感じで会話しただろう。何を今更緊張することがあるんだ。

「いいだろう、こうなれば空が常闇に染まるまで語り合おうか!」

 夕焼けのせいか、善子の表情がいつもよりもちょっと魅力的に思えた。おれの答えが嬉しかったのか彼女の笑顔が更に輝いて見える。

「っ! うん! それじゃあ、シドーの好きなアニメって何?」

「アニメ? んー、そうだな……」

 

 

「やっぱりシドーも男の子ね。ロボットアニメが好きなんて」

「男の子ですから。やっぱりロマンだろロボットって」

 それからおれ達二人は互いの好きなものについて語り合っていた。

「わからなくはないわね。堕天使たるもの、常にロマンを追い求めなくてはならないもの」

「堕天使がそうあるべきはどうかはようわからんが、理解があって嬉しいぞ」

 幼なじみ三人、千歌はまぁそこそこあるみたいなんだけど残りの二人はどうも理解が薄くてな。こうやって語り合える相手がいるのは嬉しいな。

「当然よ、ヨハネはあらゆる方面でリトルデーモンの心を掴むんだから。あらゆる方面の情報を収集するのは、ヨハネの使命でもあるのよ」

「こないだのお泊まり会の時のDVDのチョイスといい、善子はほんといい趣味してるよ」

「っ!!」

 それを聞いた善子は少し顔を赤らめながら立ち上がった。

「当然よ! 配下たるリトルデーモンの心をつかみ続けるのもヨハネのーー」

 そこまで善子が言った時だった。少し強めの風が彼女の後ろから吹き抜けて、善子のスカートを持ち上げた。腰掛けていたので善子の腰辺りに頭があったおれはばっちりその中を見てしまって。

「っーー!!」

 善子が慌ててそれを押さえるが時すでに遅し。おれの脳裏にその光景は焼き付けられてしまっていて。

「黒」

 とっさにそう呟いてしまった。その瞬間、おれの眼前には人差し指と中指が。間一髪で避けて立ち上がると、善子が鬼のような形相でおれを睨んでいた。

「よ、善子?」

「シ、シドー……、今すぐその眼を潰しなさい……」

「ま、待て。落ち着こう善子。な?」

「ヨハネよっ!」

 そして善子の猛烈な突きがおれを襲った。それをなんとか回避する。このままじゃ失明するのも時間の問題だ。なんとか彼女を落ち着かせないと。

「落ち着け善子、たかが布一枚見られただけだ。大したことじゃないって」

「シドーにとっては大したことなくてもヨハネにとっては一大事なの! よりにもよってシドーにっ!」

 おおう、そこまで言うか。女の子にとってはそうなのかもしれないな。でも、善子がそんなにまで恥ずかしがるとは思わなかった。よし、ここはーー

「おわっ!?」

 善子に向き合おうとした瞬間、砂浜に落ちていた大きめの石にバランスを崩される。そしてそこに善子の身体が突進してきて。

「ちょっ!?」

 おれ達二人は砂浜に倒れた。

 

 

 これは、ラッキーなのかアンラッキーなのか、今の状況についてどう言えばいいのかおれは解らなかった。

 善子の身体はおれに覆い被さる形で倒れており、彼女の柔らかな感触が胸板やら足に絡みつく。そして二人の顔の距離も近く、おれ達は言葉を失ってただ見つめ続けることしか出来なかった。

「その、あれだ」

 まだ整理も出来てない頭で言葉を出していく。落ち着け紫堂 櫂。ここで言葉を間違えればおれは終わりだ。

「これもまた、恥の見せあいってことで一つ――」

「ならないわよっ!」

「じゃ、じゃあこうしようか」

 おれは軽く息を吐くと、力を抜いた。その様を、善子はきょとんとしている。

「おれは抵抗もしない、逃げもしない。だから、好きに仕返しでもするといい」

「……」

「おれはその、お前のアレも見ちまったし、今こうして倒れ込んでるのもおれの責任だ。その落とし前はつけないとダメだ。目を潰す以外の何かで、さ。今回のことは水に流してくれると嬉しいんだけど……」

 言ってる途中で不安になってきたな。こんな提案、のってくれるかな?

「ふ、ふーん? 何されても大丈夫なのね?」

 おっ、のってくれたか。信じてたぞ、善子。

「ああ、目潰し以外ならな。ビンタでも何でもいいから一発殴ったっていい。好きにしてくれ」

 目を瞑って善子からの制裁を待つ。

「へ、へー……、リトルデーモンとしていい心がけてじゃない。じゃあお言葉に甘えて――」

 きゅっと目を閉じて顔面への衝撃に備える。が、そんな強い衝撃は無く、ぴし、と額にデコピン一つ。

「へ?」

「まだ目開けちゃダメよ!」

 そう善子が言うと、身体に柔らかさと重さが同時に襲いかかってきた。え、これさっきよりも密着してません?!

「あの、ちょっ、ヨハネ様!?」

 混乱してるおれを余所に、善子の声が耳元に届いた。

「黙ってこうされてなさい、リトルデーモン」

 この距離。もしかしておれの顔の隣に善子の顔があるんじゃ。

「いや、でも――」

「さっきのデコピンがお仕置き。それでこれはそれを癒やす為の、ぎぎ、儀式なんだから」

「ぎ、儀式?」

 儀式だと? おれ、生贄としてリリースされるのか?

「あなたはヨハネにとって、――な、リトルデーモンなのよ! も、もしも堕天使のデコピンで後遺症とか残ったら大変じゃない! だからこうして治療の儀式を……」

 一部聞き取れなかったが、おれを心配してくれてるってことなのかな。なんだか嬉しかった。

「ああ、ありがとうな、善子」

「ヨハネよぉ……」

 ヨハネといいはる堕天使様が、妙に可愛らしくて思わず彼女の肩を叩きながら、もう片方の手でシニヨンを撫でた。

「ひゃっ」

 軽い悲鳴をあげて起き上がる善子。その顔は真っ赤に染まっていて。

「き、気安いわよばかーっ!」

 おれは二度目のお仕置きを受けることとなった。当然だが、ビンタはデコピンよりも痛かった。

 

 

●●

「全く、まだまだこのヨハネに相応しいリトルデーモンには程遠いわね」

「力不足を感じましたよハイ」

 シドーは両頬を抑えている。往復ビンタは流石にやりすぎたかも。明日も頬が腫れてるなら湿布でもあげようかな。

「そういや善子、さっきのデコピンの後のあれは――」

「ヨハネよっ!」

 シドーの指摘にドキッとしながら声を出した。どど、どうしよう。制裁を受けるってことで抱きついちゃったけど……。必死に考えながら言葉を紡いた。

「フッ、あれは治癒の儀式でもありながらあなたに呪いをかける儀式でもあったのよ!」

「呪い?」

「そう、呪い。あれをヨハネが他のメンバーに言ったらどうなるかしらね?」

「なっ!?」

「どうなってしまうかイメージ出来たようね? そうなりたくなかったら、この先もこのヨハネのリトルデーモンとして言うことを聞いてもらうわ!」

「おま、それって脅しじゃねーか!」

 脅し、その言葉にちょっとギクリとした。そうよね、やってることはそれと変わらない。シドー、嫌、だよね?

「まぁでも、お前のその、パンツ見ちまったし、押し倒したりしたし? 貸しを作ったって思えばいいか」

「なっ、そーゆーことは言わないでよ!」

「ああ、すまんすまん」

 苦笑いしながらそれを受け入れてくれた。それが嬉しくて、ポーズをとる。

「やはり、徐々にリトルデーモンっぽくなって来たわね。いい調子よ。それじゃシドー、また明日ね?」

「ああ、また明日」

 シドーの口から出た『明日』が嬉しくて、走って去ってしまった。明日もシドーに会える、そう思うだけで足が軽くなった。

 シドー! 明日もこのヨハネがあなたをもっとヨハネにとって大好きなリトルデーモンにしてあげるんだから!

 

 

◇◇

「堕天使っつうより悪魔だろ……」

 おれは砂浜で一人、呟いた。まさか抱きつかれてそれを脅しとして使ってくるとは……。とんだ小悪魔だよ。

「でもまぁ、良しとしますか……」

 さっき倒れ込んでしまった時の感覚が脳裏を過る。胸元から伝わった善子の大きくは無いが柔らかな感触。善子が女の子なんだって改めて認識させられた。あれを味わえたんだから役得ってもんでしょう。それでデコピンと貸しと往復ビンタで済んだんだ、安いもんだ。

「さて、どんな貸しの返し方を要求してくるんだか」

 そう呟くおれの頬は、緩んでいた気がした。

 




 今回は改めて櫂が善子を女の子として意識する回でした。どこかの二次作家さんが仰ってた通り、善子は甘やかし、甘やかされるのが出来るキャラなんですよね。そこが可愛い。彼女とのルートは構成はそこそこ出来てるから書くのが楽しみです。

 さてアニメ二期について。僕が危惧してるのはライバルとして登場したセイントなんたらについて。
 恐らく二期にもセイントスノーは出てくるでしょう。が、強キャラ感出しといてAqoursの引き立て役として10話前後でカマセ役の様に踊ったっていう影だけの描写にされてあっさり負けるかもしれない。そして二次作家さんが敗れた彼女達の陵辱系を描くかもしれない。はてさて、ソレスタル・ビーイングの明日はどっちだ。

 と、冗談半分はさておき、アニメ二期に関しての心情、今後の僕の動きは活動報告にて書いておきましょうかね。

 長文失礼しました。ご意見ご感想、お待ちしてます。
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