ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
それはさておき、本文をお楽しみ下さい。
「櫂ーっ!」
いつもの分かれ道で待ってると、聞き慣れた声が降ってきた。それと同時に襲いかかる衝撃。背中には柔らかい感覚、首筋に濡れた髪の触感が伝わってくる。おれは恋人の濡れた髪をくしゃくしゃと撫でた。
「遅いぞ曜。今日はスクールアイドルの練習だけじゃなかったのかよ」
「いやー、練習の後に水泳部の方も練習が入ってしまいまして……」
えへへ、と頭を掻く曜。そんな笑顔を見ると、遅刻したことも許してしまう。でもそこはおれ達。ホントの事は言わない。
「ま、今日と言う日に免じて許す。おれに感謝しろよ?」
「ははーっ、ありがたきしあわせっ」
おれの腕に抱きつく曜。胸の奥がぽっと温かくなるのを感じながらおれ達は歩き出した。
「んじゃ曜、誕生日デート始めるか。どこ行きたい?」
「ヨーソローっ! じゃあまずはね――」
松月にておれ達は向かい合ってデザートを食べていると、曜が自分のケーキを一部切り取っておれの目の前にチラツかせた。
「ほら、櫂っ。あーん、して?」
「あ、あーんっ……」
口を開くと、みかんの乗ったスポンジケーキが運ばれてきた。口を閉じて租借するとみかんの果肉が口の中ではじけた。スポンジにもみかんが練り込まれているのか、甘みと酸味のコンビネーションが美味なるハーモニーを奏でている。
「どう、櫂? おいし?」
「あぁ。すっげーおいしー」
「よかったぁ。じゃあ私にもあーんして?」
「ん。ほれ」
「あーんっ……。んー、美味しー♪」
「てゆーかさこんなんでいいのか、曜?」
「ん? なにが?」
曜はおれから受け取ったフォークをくわえたまま咀嚼している。
「せっかくの誕生日なんだぞ? もっと特別な所行かなくていいのかよ?」
「いーのっ。こうやって櫂と一緒に居られるだけで特別なんだから」
「曜……」
その言葉に嬉しくて頬が緩んだ。そうか、一緒にいる毎日を大事にしてくれてるんだな。
「それにぃ、ここは櫂の奢りだしね♪ すいませーん、ケーキおかわりー!」
「おまっ、それが本音か!」
「こんな時の為に今日はダンスの練習も、飛び込みの練習もいっぱいやってきたのだ☆ ケーキの二つや三つ、余裕で入っちゃうよ! んー、おいしーっ!」
運ばれてきたおかわりのケーキを口に運んで美味しそうな顔をする曜。その表情を見てたら、怒る気なんてなれる訳がない。
「この後、おれんちで夕飯食べるんだろ? 食べ過ぎないようにしろよ?」
おれの言葉に口元にクリームをつけながら、「ヨーソロー!」と敬礼する曜であった。
「ふー、食べた食べたっと!」
「いい食べっぷりだったな」
松月からの帰り道、二人手を繋いで歩く。夕日の日差しを浴びながら微笑む曜は、いつもよりもどこか魅力的に見えた。
「この時期限定のみかんスポンジケーキ、美味しくっておかわりしちゃった」
「おれが破産しない程度に堪能してもらえて何より」
「それでー、次は櫂の手作りのハンバーグっ♪」
曜の言葉におれは顔をしかめた。
「本当に大丈夫かよ、おれに任せて、さ」
「大丈夫だいじょーぶ。私、櫂のこと信じてるから」
「曜……」
「それに、弟子の上達っぷりも見ておきたいからねっ」
ふふんと得意げに胸を張る。そっか、恋人関係になってもその師弟関係は変わらないのね。
「それじゃ師匠を唸らせる至高のハンバーグを馳走してやりますかね」
「うむ、楽しみにしておるぞっ」
なんて他愛ないやりとりをしている内におれの家に着いた。
家の戸を開けるなり、曜が「ただいまーっ」と言って靴を脱いだ。君の家じゃないでしょうに、という言葉は言わないでおこう。
「じゃあ私は着替えてくるねー。櫂、覗いたらダメだからね?」
「覗かねーよ。これから晩飯の準備するんだっての」
おれの言葉に曜は手をひらひらと振りながら奥へと消えていった。
前に起きた事件がきっかけで、おれの家に簡単ではあるが曜の部屋が出来た。事件が解決した今でも、曜がおれの家に泊まりに来るときはその部屋を使うことになっている。いつの間にか曜の奴は部屋着などを運んでいたようだ。
おれも簡単に着替えを終えて台所に立つ。冷蔵庫を開けて材料に不足がないか確かめる。よし、問題なさそうだ。
誕生日っていう特別な日に、曜はおれとただ一緒にいるだけでいいって言ってくれた。それが嬉しかった。ならおれがすべき事は一つ。この夕食を完璧に作って、曜を満足させる。それがおれが曜にしてやれる一番特別なことだと思うから。
「よしっ」
おれは決意を固めると挽き肉をボウルに入れたのだった。
「ごちそうさまーっ」
「はい、お粗末様でした」
曜がぱんっと両手を合わせてごちそうさまと言ってくれる。それだけでなんだか嬉しかった。
「お味はどうでしたかな、先生?」
「うーむっ、味は悪くはなかったのぉ」
見えないあごひげを撫でる素振りを見せながら老師っぽい口調で喋る。
「ただ中に入ってたタマネギがまだ大きかったかな。そんなに食感を楽しむもんじゃないからね」
「あー、確かにな。そこんとこはまだ精進が必要だったな」
「でもそれ以外は完璧だったよ。曜ちゃん感激だよぉー」
うれし泣きのような仕草を見せる。これだけころころと表情やらキャラが変わるのはそうとう満足してる証拠だ。
おれが皿を洗おうと立ち上がると、曜がそれを制止した。
「あ、皿は私が洗うよ。その代わり櫂には用意して欲しいものがあるんだ」
「用意して欲しいもの? なんだよ?」
おれの問いに曜はにひひと笑った。
「私と勝負しよっ」
そう言って彼女は戦ゲームのソフトを取り出したのだった。
「やったー! 櫂に勝ったー!」
曜が嬉しそうに両手を上げる。おれは力なくコントローラーを床に置いた。
「か、紙一重だったか……。あそこのメテオはずりぃよ」
「むっふっふー、この渡辺 曜容赦せん! そーいう櫂だって掴みからのコンボとかえげつなさ過ぎだって」
「これでも曜に合わせてレベル落としてんの。本気ならあれだからな? 瞬殺だかんな?」
「ぷぷっ、負け惜しみは見苦しいぞー」
「負け惜しみじゃねーし」
いたずらっ子っぽく笑う曜にめらりと対抗心が沸いて出てきた。
「それじゃあ次は手加減なしでやってよ。それで私に勝てたらご褒美あげるからさ」
「言ったな。後になって取り消すんじゃねーぞ」
「取り消さないよっ。じゃあ始めるよーっ!」
おれは軽く首を二三回回すとコントローラーを握った。
「ほいっ、おれの勝ちっと」
「うぅー、一騎落とすだけで精一杯だった……。櫂ってば大人げなさ過ぎー!」
曜の非難の視線が心地よい。悪いがおれは恋人相手だろうと手を抜くことはしないのだ。さっきのはあれだ、誕生日ってことだったから接待モードだっただけだし。
「本気でやれって言ったのは曜の方だろ。おれはそれに全力で応えただけだしな」
「むぅ、確かに……。じゃあ、ご褒美あげるね」
「おう、何が貰えるのかたのし――」
おれの言葉を遮るように曜の唇がおれの唇に重なった。すぐにそれは離れ、曜の紅葉とした表情が視界いっぱいに広がった。
「ルール追加ね。負けた方は勝ったほうにキスする。いい?」
おれは無言で頷いてそのルールに了承した。
それから何回の勝利と敗北を繰り返しただろうか。勝つ度に曜のキスがおれの唇を潤し、負けるとおれが彼女の唇を啄む。そんなのをやっている内に、ゲームそっちのけでおれ達はキスをしていた。
「んっ、ちゅっ……。かい……」
「曜……。んっ」
「ちゅぅ……、ねえ櫂。私誕生日にもう一つ欲しいのがあるんだけど……」
顔を離し、少し恥ずかしそうにおねだりする曜。何となく欲しているものを察しながらも、「なんだよ、言ってみろよ」と彼女の耳を軽く舐めながら言ってみる。
「ひゃうっ! あ、あのね、櫂のこと……、欲しいなぁって」
来ることが予測出来たであろうその言葉を聞いて、おれの中の何かが弾けた。
「仰せのままに、お嬢様」
「んむっ!? はっ、あーー」
その日は、大いに盛り上がる誕生日になった。最後はこんな感じになってしまったけど、これからの毎日をもっと曜と楽しく過ごしたい、そう改めて思える日であった。
はい、曜ちゃん回でした。自分が持ちうる限りのイチャイチャを詰め込んでみました。本編の今後の展開も踏まえての内容だったので伝わらない内容も含んでしまいました。なので、9人分の分岐シナリオの後は、まず曜ルートを書いていきたいと思います!
それともう一つご報告が。この輝きの縁、R18枠を作ります! 以前から花丸ちゃんやダイヤさんなどでプレイの内容は脳内で妄想しまくっていたのですが、もう我慢の限界です。この誕生日回の続きを、翌日に新しい枠として投稿します。
どうか、そちらの方もお楽しみ下さいませ。
ご意見ご感想、お待ちしてます。