ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
黒豆さんの花丸ちゃんとのイチャラブっぷりったらもう本当に見てて楽しいです。砂糖を吐いてしまう程に。それではどうぞ。
「着いたずら~! 」
新幹線に揺られ、改札をくぐり花丸が空を見上げて叫ぶ。
――今日はいつものデートとは違って、奮発した遠出だ。
「ここが……古都・京都! ふわぁ、初めてきたずら! 」
「それはよかった。連れてきた甲斐があるよ」
今日は彼女である花丸と一緒に一泊二日で京都旅行に来ていた。
寺生まれなせいか、こういうところに行きたいという願望は、やっぱりあるよね。
「まずはどこから行こうか? 」
「東本願寺! 」
――即答である。さっきからぴょんぴょん跳ねて、いつものおっとりした印象は何処に行ったんだとツッコミを入れたくなってしまう。
「じゃあとりあえず……あっちかな? 」
「よーし、せんぱい、早く早く! 」
「あ、ちょっと」
いつもよりも数倍元気にはしゃぐ花丸に引っ張られて、大通りを歩く。なんだか周りにほほえましく見られている気がする、恥ずかしい……。
「ここが本願寺……? 」
「東本願寺ずら」
東ってことは、西もあるのか?ううん、お寺とかには詳しくないからよくわからん。
首を傾げていると花丸が人差し指を立てて、「――東本願寺というのは、」と解説を始める。
「正式には真宗本廟という名前で、真宗大谷派の本山ずら。なんで東本願寺という呼ばれ方をするかというと、あっちに本願寺があって、その東にあるから東本願寺って呼ばれるようになったんだぁ。ここの見どころは――」
「――花丸、花丸さんや? 」
つらつらと解説をしてくれる花丸を遮って手を挙げる。
「なんずら?」
「……専門用語が多くておれにはさっぱりだ」
「ええ、そうかなぁ? 」
まず最初の真宗……なんとか派ってのがまずわからん。あれか、学校で習う浄土宗とかの一種か?
「……せんぱいってお寺とか宗派とか、からっきし? 」
「自慢じゃないが全くわからん」
「そんなぁ」
がっくりと肩を落とす花丸。こんなことになるなら事前にでも勉強しておけばよかったなあ。
「とりあえず中入ろうか」
「でも……」
「見たいんでしょ? 」
「……それじゃあまるだけが楽しむことになっちゃうよ。せんぱいはただおらについてくるだけになっちゃう」
寂しそうに口をとがらせる花丸の頭を撫でる。
「ふえ……せんぱい? 」
「気にしすぎだよ……おれは、花丸が楽しそうなら楽しめるからさ」
「ほんとう……? 」
「おう」
少しだけ潤んだ瞳でおれを見上げていた花丸が目をこすって、再び笑ってくれる。
「じゃあ、まるはおもいっきり楽しむから……せんぱいはわからないことがあったらまるに訊いてね? 」
「そうするよ」
そこからは、花丸先生のお寺講座を聞きながら東本願寺、西本願寺、と巡っていった。
――正直なところ、花丸の言ってることは半分もわからなかったけど……いつもより二割増しの笑顔が見られるから、それでいいや、という気分になれた。
西本願寺を出て、予定していたお店に入った。
花丸たっての希望で、海鮮丼が食べられるお店だ。
「……海鮮丼って、沼津港でも食べられるのに、いいの? 」
「沼津と京都じゃまた違うずら。まるは京風を味わいにきたからいいの、いいの♪」
花丸の食へのこだわりに「お、おう、そうなのか……」という曖昧な返事しかできなかった。
普段はのっぽパンばかり食べてるけど、意外にグルメなんだな。
「……それにしても、どれもお値段高めだけど、平気ずら? 」
「うん、好きなの頼んでいいぞ。おれは――」
本当はそれなりに大丈夫じゃないけど、彼女に見栄は張らせてほしい。
――花丸の分まで注文を終え、終始にやけの止まっていない彼女に向き合う。
「楽しそうでなりより」
「うん、楽しくて、そこにせんぱいまでいて……おら、幸せでどうにかなってしまいそうずら」
にへらという擬音が聞こえてきそうな笑顔で、頬に両手を当てて夢見ごこちのご様子。
正直に言ってくれるのは嬉しいけど、同時に真っ直ぐに伝えられて、照れてしまう。
「おれも、花丸と一緒に旅行ができて幸せだ」
「――っ、えへへ……照れちゃうね」
「そ、そうだな……おれも」
「…………」
「…………」
お互いに顔を赤くして黙っていると、「お待たせしました」とやけにぶっきらぼうな店員さんに海鮮丼を置いて行かれる。
怖いんだが……もしかしてさっきのやりとりのせいか、そうなのか。
「た、食べようか」
「う、うん」
そうして同時に一口――
「「おいしい! 」」
――あまりのおいしさに感想も同時だった。
そこに気付いてまた二人で顔を見合わせて、照れ笑いを浮かべる。
「次は何処に行く? 」
「金閣寺は外せないずら」
「じゃあ次はバスで移動かな? 」
「ずら! 」
花丸と次の行先を話しながら食べているはずなのに、いつの間にか花丸のどんぶりは空になっていた。食べ終わるの早すぎると思う。
「早食いすると太るらしいよ? 」
「むっ! ……本当に最近、ちょっと体重が……」
「えーっと、それは……」
それほど見た目は全く変わってない……すると……胸に?
「どこ見てるずら? 」
視線が吸い寄せられているのを察知され胸を両手で隠される。
「へんたいさん」
「いや、違う、そういうんじゃ……」
「いいや、視線がへんたいさんのソレだったずら」
頬を膨らませてすねる花丸をなだめようと言葉を探す。
「何が理由でも人の胸をじろじろ見るのはダメ、へんたいさんずら」
「すいませんでした」
口論じゃ花丸には全く敵わないこともあり素直に頭を下げる。
そうするとポン、と下げた頭に花丸の手が乗せられる。
「もう、今日は特別だよ? 」
そう言って慈愛に満ちた笑顔を見せてくれる花丸がこそっと顔を寄せて、ちょんとキスをされる。
「……えへへ、今日は特別な日だから、特別ずら♪」
花丸の顔がまた照れ笑いに変わり、その瞬間、あのぶっきらぼうな店員さんが水を持ってくる。
「「…………」」
……いちゃつきすぎたのかな。なんだか申し訳なくなって、その後は無言でお店を出た。
バスを使い、寄り道をしながら金閣寺までやってきた花丸先生はさっそく講座を開き始めた。
前置きに「金閣さんは有名だからせんぱいもわかるところあるよね? 」と訊くのは余計だと思うけど。
「――金閣寺の正式名称、せんぱい、わかるずら? 」
「えーっと、なんか鹿が入ってた気がする……」
「鹿苑寺、ずら、建立した人はさすがにわか……ってますか?」
なんで敬語になる。久しぶりに敬語の花丸を聞いた。
「えーっと……な、待て、学校でも習うよな」
「うん、建立した人だけなら小学生で習うよ」
室町時代の将軍だってことと、あの坊主の肖像は出てくるけど……なんて名前だったかまでは……
「――足利義満、室町幕府の三代目将軍ずら」
「あ、言われてみるとそんな名前だったな……」
そうだったそうだったと曖昧な反応をしていると、花丸が「そんなんで勉強大丈夫? 」と心配してくる。大丈夫じゃないけど、余計なお世話です。
これ以上、勉強の話をされても困ると思い、無理やり話を転換する。
「そ、それにしても、花丸は金閣寺、好きなのか? 」
「当然ずら! 」
おお、予想外の食いつきだった。そんなおれの驚きを尻目に花丸は金閣を見上げながらうっとりした表情で語りだす。
「金閣さんと言えば、三島由紀夫の『金閣寺』だから一度は自分の目で見てみたかったんだ」
なるほどね、小説の舞台だったのか……それなら花丸が夢中になって見入っているのもわかるな。
「どんな話なんだ?」
「金閣さんを放火する話ずら」
「えっ」
その展開はさすがに予想できなかった。さらにそれが作者の、ひいては日本文学の傑作なんて呼ばれてることを花丸から補足してもらい、「いいのかそれで」という思いがこみ上げてくる。
「読むんだったら貸してあげるよ。語れる仲間がほしいと思ってたところずら」
「そ、それなら……もしかしたら時間かかるかも知れないけど」
「じゃあ旅館に戻ったらね。後日、ちゃんと感想は聞かせてもらうずら」
「ま、任せとけ……」
キラキラした顔で言われては、彼氏として引くわけにもいかず……。
はぁ、仕方ないけど、暇な時間を縫って読むとしますかね。
「そろそろ、次に行く? 」
「そうだな、あんまりのんびりしてると周りきる前に時間になっちまう」
「近くには龍安寺と仁和寺があるけど……」
「じゃあそっちに行ってから旅館に行こうか」
「うん! 」
こうして一日目の京都散策はひたすらに寺を巡り、花丸先生の講座を聞く旅行となった。
――ところで花丸が提案したルートだと旅館と反対方向なんだが、間に合うかな……
「せんぱい、はやく! 」
「そんなに急かすなって……」
……まぁ多少遅れても問題はないか。
「お待ちしておりました、紫堂様」
「なんとか間に合っ……た、ずら? 」
「……ぎりぎりだけどな」
本当にぎりぎりになってしまったけど、何とかチェックインの時間に間に合った。
中居さんに連れられて、部屋に通される。
「こちらのお部屋になります」
「「……広い! 」」
ホテルで言うならスイートルームか? というほどの広さと豪華さを持った部屋におれと花丸は開いた口がふさがらなかった。
「……せんぱい、一泊おいくらなの? 」
「知らん、おれは鞠莉さんに相談したらこうなったんだよ」
「ええ……」
仕方ないだろ、『それならココね、ワタシのオススメよ☆』って言ってたし、ホテルオーナーをしてる鞠莉さんのことなら信用はできると思ったし、しかもお金は鞠莉さんの口添えでおれが予約するより安するって言ってたんだから。
「鞠莉ちゃん……恐るべし」
「おれも、あの人の感覚を疑うべきだった」
まさかこれで値段も高いなんてことないよな……?
――と思ったら、明細は目を疑うくらいに安かった……もはや価格崩壊の域だ。
「鞠莉ちゃん……恐るべし」
一回目より感情のこもった花丸のことばがやけに部屋に響いた。
「ま、まぁ来てしまったからには楽しむことにしよう」
「ずらっ! 」
花丸と半ば強引に納得すると、とりあえず備え付けのポットにお茶をそそぐ。
きっとこれ、茶葉もいいやつなんだろうなぁ。
「はい、花丸」
「ありがとう……ん、お茶もおいしーずらぁ♪」
なんだか花丸に湯呑が妙にマッチしている気がする。そんな風に彼女をみつめていると、湯呑を持っておれの方にやってくる。
「どうした? 」
「ふふ、甘えに来たずら」
湯呑を机に置いて、胡坐をかいていたおれの膝にいそいそと座る。
「んー、落ち着く……♪」
「彼氏を椅子にしていうセリフか? 」
頭を撫でながら苦笑いをすると、花丸は幸せそうに微笑んだ。
「せんぱいが彼氏だから、こんなことしちゃうし、せんぱいに包まれてるみたいで幸せな気持ちになれるんだよ? 」
「……花丸」
その言い方はずるいんじゃないか? と、内心で言い訳をしながら、おれは怒るどころか、腰に手を回して強く抱きしめてしまう。
「わわ、ますますせんぱいに包まれちゃってるずら……」
「痛かったか? 」
「全然、むしろドキドキしちゃう……から」
花丸の耳が赤くなっていくのが見えて、愛おしさがあふれてくる。
「あ、そうだ……」
花丸を膝に置いたままおれはカバンから一冊のノートを取り出した。
「交換日記、持ってきてたの? 」
「まぁ、花丸に会える日には持ってきてるからな」
「じゃあもらってあげるずら」
「どうぞ」
恋人になっても交換日記は続けていた。おれと花丸を繋いでくれたものだから、なんとなく手放しづらくておれも花丸もそこにあったことを気ままに書いて、一人の時に読んで、笑って、照れてを繰り返してる。
「でも読めるのは明日うちに帰ってから……もどかしいずら」
「そんな楽しいことは書いてないけど」
「内容じゃなくて、せんぱいがおらに向けてあったことを教えてくれる……それが楽しみだから」
ふふ、と少しだけ大人びてみえる笑顔にドキッとする。花丸はおれを見上げて、頬にキスをしてくれる。
「今日はせんぱいと一緒に色んなところに行って、本当に楽しかったずら♪」
「おれも……花丸が楽しそうにしてくれて、計画した甲斐があったよ」
花丸に応えるように唇にちょん、と軽くキスをする。それに花丸がさらにキスをしてくる。
キスの応酬はいつしか二人の間に流れる空気を甘く、ピンク色にしていく。
「んっ……ね、せんぱい。この後の予定は? 」
「夕ご飯だけど……まだ時間あるかな」
「じゃあ……」
首に手を回して、身体を押し付けて花丸が迫ってくる。
振り払えるはずもなく、そのままおれは花丸に押し倒される格好になってしまった。
「まるはもっといちゃいちゃしたいずら」
「へ、や、ちょっと!? 」
花丸先生! それはまだ時間的にも早くないかな!?
突然の豹変に、それは声には出なかった。スイッチの入った花丸はますます熱い身体をおれに押し付けてくる。
その熱と女の子特有の柔らかな感触に意識が飛びそうになる。
「せんぱい……♪」
「ま、まって――いやぁぁぁぁぁぁ! 」
結局、このままケダモノと化した花丸を振り払うことなんてできず、夕ご飯の時間もぎりぎりになってしまうのでした。
花丸ちゃんのかわいさを伝えるために別次元からやってきました。「輝く花を愛でる雲は……」の黒豆です。
今回は「輝く花」では都合上あまりできない遠出をさせてあげることにしました。黒豆の大前提である「花丸ちゃんかわいいよ花丸ちゃん」をこちらでも体現できたらいいなと思います。
花丸「どこに行っても変態さんは変わらないずら?」
むしろ変わっては黒豆のアイデンティティが七割ちょっとが失われるので勘弁してくださいね。
……そうそう、「輝く花を愛でる雲は……」も興味があればご覧ください(露骨な宣伝)。
常にオリ主と花丸ちゃんがいちゃいちゃするやや不健全な小説ですので、よろしくお願いします。