ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

90 / 96
 勇者王ガオガイガー、「覇界王」買いました。いやホントに面白いしカッコいい。勇者王を好きで良かったと心から思える作品です。ただ深入りしすぎるとサンシャインが光になってしまうので気をつけなければ。


5話:変わらぬ日々の航海を君と――

 波の音が聞こえて、意識が目覚める。瞼をゆっくり開けると陽の光が窓から差し込んできて思わずまた閉じた。夏休みなんだし、もう少し遅く寝てても問題ないだろう。そう思っていると、幼馴染の声が聞こえてきた。

「起きろかいーっ! 朝だぞーっ!」

 被っていたタオルケットを強引にはぎ取るそいつの名前は、渡辺 曜。ひょんなことからおれの家に同居することになったおれの幼なじみだ。

 おれが瞼をこすりながら彼女を見つめると、曜は両手を腰にあてておれを見下ろしていた。

「いつまで寝てるのさ櫂。早く起きた起きた」

 身体を起こして視線を壁掛け時計に向けると、時刻は6時半。夏休みに起きる時間としては少し早い。

「曜、ちょっと起きるの早すぎんじゃね? まだ学生は寝てる時間だろうに……」

 再び横になって眠ろうとすると、おれの肩を激しく曜が揺さぶった。

「いや、起こしたんだから起きようよ! 二度寝しないで!」

「いーやーでーすー、紫堂くんは夏休みにしか出来ない二度寝ライフを満喫したいんですー」

 そうゴネるも空しく曜の揺さぶり攻撃は続き、おれは起きる羽目になってしまった。まぁ偶には早く起きるのも悪くないと思っておこう。

 顔を洗っておいで、と曜が母親じみたことを言うのでそれに従い洗面所に足を運んだ。冷水を手で掬い、顔面に当てる。冷たさがおれの意識を引き締め、眠気を追い出してくれた。

 リビングに戻ると、テーブルには割と豪華な朝食が置かれていた。普段の焼き魚と味噌汁と飯程度の質素な代物とは違い、冷や奴やレタスのサラダ等が付け足されており一瞬他人の家の朝ご飯にあがりこんだかと勘違いしてしまった。

「ごめんね、食材勝手に使っちゃって」

 曜が台所から出て来た。彼女はショートパンツにタンクトップ、そしてそれにエプロンをまとっていた。幼なじみのラフな格好に、エプロンの組み合わせに見とれてしまう自分がいた。が、曜に悟られる前に平静を装い、イスに腰掛けた。

「いや、全然使ってくれて構わないさ。しっかしすごい量だな。食べきれるかね……」

「何言ってんのさ櫂。よく私の家のご飯食べてたじゃない」

「それは夕飯の時だけだろうが。よく親父がいなくて夕飯はお世話になったことあったけど朝には親父は帰ってきてたし、渡辺式朝ご飯は初見なんだっての」

 そっか、となんだか嬉しそうな表情をする曜。が、すぐに自慢げな表情になった。

「ふふーん、これも櫂の料理が上達する為の教材なんだから! 曜ちゃん先生の朝ご飯から学ぶがよい!」

「はいはい、いいから食べようぜ先生。もうお腹ぺこぺこだからさ」

「それもそうだね。それじゃあーー」

 曜が席につき、互いに手を合わせる。「いただきます」のかけ声と共に、おれ達の朝食は始まった。

 

「ごちそうさまっと」

「えへへ、お粗末様でしたっ」

 嬉しそうな表情で笑いかける曜。これはおれが皿を洗ってやるかな。

「じゃあ今度はおれが皿を洗うぞ。曜はそこで休んでな」

「え、皿洗いも私がやるって! 櫂だと皿割りそうだし!」

「あのな、流石にそこまでおれも不器用じゃありませんよ!?」

「えー、ホントでござるかぁ?」

「なんだその語尾は? じゃあ皿洗いを手伝いながら見てもらおうじゃないか」

 「ヨーソロー♪」と少し悪戯っぽく笑う曜。なんかこいつの思惑に乗ってしまった気がするけど、気にしないでおこう。

 そうして二人並んで台所で皿洗いをする。おれが洗った皿を受け取った曜がタオルで軽く拭いてカゴにいれていく。その作業がとても手慣れているように見えて、釘付けだった。

「もう櫂、手が止まってるぞー?」

 腰をおれにぶつけ、急かしてくる。おれは我に返ると皿洗いに没頭する。

「♪~」

 すると曜の腰が何度もおれの腰にぶつかってきた。なんだよ、と抗議の視線をぶつけると「紫堂くんの皿洗いが遅いから暇なのであります」といたずらっ子のように笑いかけてきた。

「えへへっ」

「ははっ」

 それからおれ達は笑いあいながら皿洗いを続けた。

 

 

「お疲れさま、櫂」

 おれが淹れた茶の入ったカップを受け取ると曜がそう言った。

「あれだけ豪勢な朝食を作ってもらったんだ、これくらいのお礼はしないとな」

 手伝ってもらっちまったけどな、と付け足すと曜は笑った。

「えー、あれ位豪勢に入らないと思うけど? 普通の家庭なら」

「そういうもんかね?」

「そういうもんだよ、きっと。あ、今日どうする?」

 曜がお茶を飲むとそう聞いてきた。

「私今日は水泳部の練習もないし。お昼ご飯のことも考えなくちゃね」

「んー、昼飯ね……」

 顎に手を当てて考えているとふと案が浮かんできた。

「曜、昼は釣った魚でもどうよ? ある程度釣ったら果南姉ちゃんのとこ行って一緒に焼き魚でも食べようぜ」

「あ、それいいかも! 焼き魚なら私でも食べられるしね!」

 名案だったのか、それを聞いた曜はぴょんと身を乗り出した。

「うし、なら善は急げだ! 曜は果南姉ちゃんに連絡頼む。おれは釣り具を引っ張り出してくるから」

「ヨーソロー!」

 びしりと敬礼をして返事をする曜。こうしておれ達は昼飯調達に動き出した。

 

 

「かーいーっ」

「なんだー」

 じりじりと太陽の陽がおれ達二人を焦がす。額からつーっと汗が流れ落ちて瞼の上を滴り落ちた。

「つーれーなーいーっ」

「釣りってのは忍耐勝負なんだぞ。奴らが餌に食いつくか、おれ達が根をあげるかのな」

 被ってた麦わら帽子を少しずらして太陽を見る。丁度真上に近い。昼食をとるには丁度いい時間だが、おれ達はまだ一匹も釣っていない。

「これじゃあ餌に魚が食いつく前に干からびちゃうであります……」

 曜も顔の汗を拭っていた。釣り始めて90分はいただろうか、流石の曜でもきついか。

「水分補給はちゃんとしとけよ。ほらこれ」

 前もって買っておいた清涼飲料水を曜に渡す。ありがとー、と曜はそれを受け取って一気に半分程飲み干した。おれは再び海に視線を向けて浮きをじっと見つめた。

「はいっ、櫂も飲んでおきなよ」

「んー」

 曜から差し出されたペットボトルを受け取り、飲む。清涼飲料水のちょっとした甘さが身体を癒してくれてーー

「っ!?」

 ちょっと待て、今のペットボトルって曜が飲んだやつじゃなかったか?慌てて視線を彼女に向けるが、曜はきょとんとした顔でおれを見つめている。

「ん? どうしたの櫂?」

「な、なんでもねーよ」

 落ち着け紫堂 櫂。当の本人が気にしてないんだ、おれがこんなに意識する必要ないんだ。間接キスって言ってもあれだ、間接的に粘膜的接触をしただけだ。そんな重大なことでも無いはずだ。おそらく。

 なんて半ば混乱しながら自分に言い訳をしていると、曜の状態を見て変に意識してしまう。彼女の肌からも汗が吹き出て、それを曜は拭っている。濡れた肌にぴったりとくっつく衣服が妙におれを緊張させる。おれは平静を装いながら自分の被っていた麦わら帽子を曜に被せた。

「櫂?」

「けっこう日差し強いだろ。曜も一応スクールアイドルなんだし、日焼けには気をつけろよ」

「うん、ありがと……」

 暑さのせいか、顔が紅い曜は嬉しそうに帽子を深く被った。それがなぜだかこっぱずかしくておれは釣りに集中することにした。

「おっ、かかった!」

 すると曜が声をあげて立ち上がった。視線を曜の釣り竿に向けると、ウキが沈み込み、水しぶきがあがっている。

「お、ようやく今日の昼飯が! 曜、逃がすなよ!」

「ヨーソロー!」

 曜は力強く釣り竿を握ってぐいっと引っ張り上げた。

 

 

「それで、その結果がこれ?」

 ダイビングスーツ姿の果南姉ちゃんは笑いながら呆れていた。おれ達が持ってきたケースの中にはさっき曜が釣った魚が一匹のみ。

「う、申し訳ない……」

「私たち頑張ったんだけどね……」

 しゅんと落ち込むおれ達を、果南姉ちゃんは笑って許してくれた。

「いいよ、食材はこっちにたくさんあるから。その魚も一緒に食べよ?」

「果南姉ちゃん……」

「ありがとう果南ちゃん!」

「いいってことよ。それじゃあ曜は調理手伝って。櫂は……、そこでゆっくりしてて」

「え、おれも何か手伝うよ」

 そう言って身を乗り出すが果南姉ちゃんは少し休んでて、と言ってくれた。曜に料理を教わってる身とは言え、まだまだ未熟。ここは彼女の言う通りにしておこう。

「それじゃ曜は先に下準備とかしといてくれる? わたしはちょっと着替えてくるから」

 そう言って果南姉ちゃんは自分の部屋へと戻っていった。

「よーし、じゃあ頑張って作っちゃうぞー!」

 腕まくりをした曜は台所へと移動して料理の下準備を開始した。トントンと小気味よく包丁がまな板を叩く音が聞こえる。楽しそうに作業をする曜に、おれは目が離せなかった。

「いい顔して料理するね、曜は」

 いつの間にか着替え終えたのか、部屋着の果南姉ちゃんが隣にいた。

「そうだね。あいつの料理を食べたことはあったけど、料理してる顔はあんまり意識して見たことなかったから意外だよ」

 10数年の付き合いになるけど、新しい発見があるもんだな。

「あれは、櫂に食べてもらいたいって心から思ってる表情じゃないかな?」

「え、そうかな? だって果南姉ちゃんもいるじゃないか」

「まぁわたしも入ってるかもしれないけどさ、それでも一番は櫂だと思うよ」

「そういうもんかね?」

 首を傾げるおれの頭を優しく撫でる果南姉ちゃん。

「そういうもんだよ。料理ってのはね、食べてもらいたいって思う人のことを想いながら作ると美味しくなるものなんだよ」

「へぇ……。じゃあ果南姉ちゃんにはいるの? 食べてもらいたいって思ってる人」

「わたし?」

 果南姉ちゃんは腕を組んで考えた後、「今は、いないかな」と苦笑いして応えるのだった。

 その日おれ達は、アジの開きやらイカ焼きなどシーフードの焼き物をたらふく食べたのだった。

 

 

●●

「ふぃーっ! 食べた食べたっ! 遊んだ遊んだっ!」

 少し遅めの昼食を食べた後、果南ちゃんと遊んだ私たちは夕方頃に家路を歩く。夕陽が私たちを照らし、涼しげな風が吹いてきた。

「あの後果南ちゃんも仕事無かったから素潜りとかいっぱいしたねー」

「ああ。曜がいきなり飛び込もうとした時にはびっくりしたが」

 櫂のイヤミのこもった視線を受けて申し訳なさそうに縮こまる。

「えへへ、私、ここの海大好きだからねぇ。思い切ってよく飛び込んじゃうのだ!」

「飛び込んだ後の後始末をするこっちの身にもなってくれよ。乾かすのはおれなんだからな」

「じゃあ今度は服を全部脱いでから飛び込むね!」

「そう言う意味じゃありません! ここはヌーディストビーチじゃねーんだぞ」

 顔を紅くして恥ずかしがってる櫂が面白くってついからかってしまう。なんだかんだで私を女の子として見てくれてるんだよね。その事を言うと、「ただの腐れ縁だからだっての」とか言いそうだけど。

 二人肩を並べて歩いていると、道路の脇で鉄のパイプを組み立てる男の人たちがいた。私たちに気づくとこっちに声をかけてきた。

「おーい、曜ちゃん! 今日はデートだったんかい!?」

「そんなんじゃないですよーっ!」

 私が元気よく返事を返すとがっはっはと豪快に笑った。

「そりゃそうか、櫂にゃそんなこと出来ないよなぁ?」

「おい、どう言う意味ですかコノヤロー」

 櫂が抗議の視線をぶつけるが、すぐに視線を鉄パイプに向けた。

「これ、お祭りの準備?」

「ああ。いよいよ明明後日と迫ってるからな。そろそろやっておかないと」

 そっか、もうそんな時期なんだ、内浦夏祭り。内浦で開かれるお祭りで当日は屋台がいっぱい並ぶんだよね。今までは千歌ちゃんと櫂、そして果南ちゃんと一緒に回ってたな。

「曜ちゃんは今年も千歌ちゃん達と行くのかい?」

「うーん、たぶんそうかも?」

「残念だったな櫂、曜ちゃんと二人っきりじゃなくて」

 余計なお世話だっての、と言う櫂の頬は紅くなっていた。櫂は、私が櫂と二人で夏祭り行きたいって言ったらどう思うかな? 迷惑じゃ、ないかな?

 

「ただいまぁー……」

 家に着くなりすぐにソファーに横たわった。なんだか遊び疲れちゃった。

「今日はけっこう長く外にいたな。ちと肌がヒリヒリするぞ。曜は平気か?」

 櫂の質問に私はにっこりと笑って答えた。

「うん、出かける前にばっちりUVケアはしといたから!」

「おぉ、曜の口からUVなんてのが出るとはな。ようやく色気付いたってことかねぇ」

「むっ、聞き捨てなら無いぞー!」

 頬を膨らませて抗議の意を見せると櫂はからからと笑った。

「なんにせよ、陽に焼けなくって良かったよ。中途半端に焼けたスクールアイドルってのは微妙だろうしな」

「あー、確かにそうかも……。そだ、櫂。これ、ありがとね」

 なにが、と聞く櫂に麦わら帽子をとって口元を隠す。

「日焼けを気にして被せてくれたんでしょ?」

「一応、マネージャーでもあるからなおれは」

「そうだとしても、嬉しかったよ。ありがとね、櫂……」

 感謝の視線を向けると、みるみる櫂の顔が真っ赤になった。「あ、照れてるー!」とからかうと、「うっせ」とそっぽを向かれちゃった。

「日差しは防げたとしても、めっちゃくちゃ汗かいただろ。先に風呂入ってこいよ。夕飯はそれからでもいいだろ」

 「おれはその後でいいから」と櫂が言うのでその言葉に甘えることにした。お風呂場に行こうとしたが、ぴこんと思いついて足を止めた。

「櫂」

「んー?」

「覗いたら――、ダメだからね?」

 ちょっと意味深に間をあけて言ってみると、櫂はまた顔を紅くした。

「いいから入れバカ」

 櫂は顔をぷいっと背けてしまった。はいはーい、と答えて私はリビングを後にした。耳まで真っ赤になった櫂の顔が脳裏に残って、笑いが止まらなかった。

 シャワーで軽く汗を流すと、ゆっくりと湯船に浸かった。被せてくれた麦わら帽子の感触を思い出し、くしゃっと頭を撫でた。

「なんだかんだで優しいな櫂は……」

 浴槽で一人呟いた。どんなに冗談や悪態を言い合いながらも、櫂は優しくしてくれる。それが昔から嬉しくて、気がつけば幼なじみとしてじゃなくて男の子として意識するようになってしまった。この気持ちを伝えたいと思うけれど、今までの関係が壊れてしまうのではと思うと後一歩が進めない。我ながら情けないと思う。

「櫂……」

 櫂の事を想うと身体が奥からじゅんと熱くなってくる。その火照りを沈めようとして、ぴくりと身体を止めた。

 ここのお風呂は櫂の家のものだ。つまり私の後に櫂も入る訳で。私の入った後の浴槽に。

「~~っ!」

 そう考えた瞬間、火照りは熱へと変わった。何を考えてるんだ私は! こ、これじゃあ変態みたいじゃないか!

「ちょっと頭を冷やそうっと……」

 浴槽から立ち上がり、今度は冷たいシャワーを浴びる。

「夏祭り、か……」

 私の小さな呟きは、シャワーの音にかき消されるのだった。




 ふと果南ちゃんの家で思ったこと。淡島でカエル館見ましたが、どう見てもあれ二人で住むには狭すぎやしないかね? まぁウチの作品には関係ないがね。
 それと作品内に書きました内浦夏祭りですが、存在しません。まぁ今後の展開を作る為のイベントなので。
 今後も書いていく予定ですが、どうも筆が乗らないことが多く、更新速度が落ちると思います。どうか気長にお待ち下さいね。

 感想お待ちしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。