ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
登校日の学校の帰り、空は夕日の色に染まっていて。おれはまっすぐ家に帰らず、梨子達の学校の校門前に立っていた。不審者だと思われるんじゃないかと少しドキドキしながら待っているとーー
「紫堂くんっ」
跳ねた声が後ろから聞こえてきた。振り返ると嬉しそうな表情をする梨子がいた。
「お、学校お疲れさま」
「紫堂くんも、迎えに来てくれてありがとうね」
「お礼を言われることじゃないさ。登校日って言っても大したことなかったし。何よりーー」
おれは彼女に手を差し伸べて笑いかけた。
「今日も恋人役として、梨子の手助けを出来るのが嬉しいからな」
「紫堂くん……」
梨子は頬を赤くしてその手を恐る恐る、ゆっくりと握ってくれた。その手の温かさにおれの心臓が高鳴る。それを悟られないように手をぎゅっと握り返した。
「じゃ、今日は梨子の家まで送っていくな。帰り道を一緒に帰る恋人同士ってシチュで」
「はいっ、よろしくお願いしますっ」
柔らかな笑顔で返事をしてくれる梨子の顔は、夕日に照らされてとても魅力的だった。
「そういえば今日も練習あったみたいだけど、他の連中はどうしたんだ?」
二人で手を繋いだまま並んで会話をする。前回のデートがあったからか、梨子には幾分かの余裕があるみたいだ。
「作曲で一人で音楽室で考えたいから、って嘘ついちゃった。みんなにこんなとこ見られたらまずいかも」
「そしたらラブソング作曲の雰囲気掴みの為だって言えばいいんじゃないか? 作曲の為だって言えば他の連中も文句言わないだろ」
「それは、そうかもだけど……」
「ま、誰かに見つかったら帰り道でばったり会ったってことにしときゃいいだろ。あ、そしたら手を繋いでるのは不自然か……」
少し名残惜しいが、それで梨子が変な風評被害を被ることになるのは良くない。おれが繋いでいた手の力を緩めるとーー
「待って!」
梨子が大きな声でおれの手をきゅっと更に握ってきた。
「このままで、いいから。わたし、紫堂くんともっと手を繋いでいたいの。紫堂くんは、いや?」
不安げにおれを見つめる梨子。それはズルい。そんな風に見つめられて手を離すことは出来ないって。
「り、梨子がいいなら、それで」
気がつけば体温が上がっ心臓がすごい速さで脈打っていた。うわ、おれすげードキドキしてる。おちつけ、これは作曲の為の雰囲気掴みなんだ。しっかり恋人役として振る舞わないと、梨子に失礼だ。
雑念を振り払って梨子の方を見つめると、彼女は顔を赤くして視線を落としていた。
こうして隣で見ていると、梨子って本当に綺麗なんだなって思えた。風にふわりと赤みがかった髪が揺れる。髪が乱れるのがイヤなのか髪を押さえる様がまた映えて、今までのおれの周囲には居なかった女の子だと改めて認識させて。
「綺麗だな」
「え?」
気がつけばそう口走っていた。そして次の瞬間自分が何を言っているのか理解した。そしてすぐに言い訳を探そうとしてしまう。
「ほら、夕日! が綺麗で、さ……」
「あ、ああ! うん、そうだね……」
少し梨子も慌てた様子で沈みゆく夕日に視線を向ける。「本当に、綺麗だね」と言う彼女の横顔はとても魅力的に見えた。
「引っ越した時は不安で仕方なかったけど、帰り道から見るこの夕陽が本当に綺麗でね、毎日見る度に不安な気持ちが薄れていったの」
そうか、あんまり意識したことなかったけど梨子は東京から引っ越してきた転校生だったよな。
梨子はおれの方を向くと、優しく微笑んだ。
「綺麗な夕陽と千歌ちゃんが、わたしを温かく迎え入れてくれたから。もちろん、他のクラスメートの皆もとっても優しかったのもあるけどね」
「そっか千歌が……」
千歌が梨子を助けてくれてたんだな。あいつは自覚はないだろうけど、幼なじみとしてちょっと誇らしかった。
「それにね、紫堂くんのお陰でもあるから……」
「え、おれが? それってーー」
今の言葉の意味を尋ねようとするが、スマホが大きな音をたてて震えた。その騒音にお互い驚いてしまい、手を離してしまった。全く、こんな時に誰だよ。
画面には親父の名前。親父の奴、人のメールは読むの忘れるクセに、おれが読まないと怒るんだよな。緊急のかもしれんし、読んでおくか。
「ごめん、ちょっと親父からメールだ」
梨子にすまないと言っておき、届いたメールの確認をする。
「んー、ん? おいおいマジかよ……」
「どうかしたの?」
苦い顔をするおれに梨子は首を傾げて尋ねてくる。隠してもしょうがないし、正直に言うか。
「親父が四日位帰ってこないんだよ」
「えっ! お父さん、どこか悪いの?」
「あー、入院とかそういうのじゃなくて。親父は漁師でな。どうやら漁をしに遠くまで行くんだと。まぁ家を空けることはよくあることなんだ」
でもこんなに急に行くなんて連絡することなかったんだけどな。メールに添付されていた写真には、海上で自撮りしている親父がいた。あの親父、帰ってきたらとっちめてやる。
「それじゃご飯とかはどうするの?」
「朝と昼はなんとかなるんだけど、問題は夕飯だな……」
仕方ない、カップ麺とかでしのぐしかないか。最悪となりの曜の家に上がり込んで食べさせてもらうしかないな。
「あのっ、紫堂くん」
梨子の声に視線を向けると、少しもじもじしながら彼女は提案してきた。
「よ、良ければあの、晩ご飯作ってあげようかなーって思うんだけど……」
「えっ、梨子が、おれに?」
おれの問いにこくんと頷く梨子。女の子がおれの家に上がって飯を作ってくれるなんて、生まれて初めてだぞ。でも本当にいいのかな。
「気持ちは嬉しいけど、なんか申し訳ないよ。そこまでしてもらう訳にはーー」
「申し訳なくなんて、ないよ」
梨子は優しくおれの言葉を遮った。
「わたしは紫堂くんの力になりたいの。今もこうしてわたしのわがままに付き合ってくれてる訳だし、今度はわたしの番だと思うんだけど、だめかな?」
顔を伏せ気味に、そして瞳は上目遣いでおれを見つめている。彼女がそう思ってるなら、おれから断る理由は無いよな。
「本当に作ってくれるのか?」
「うん。流石に今晩は難しいけど、明日からなら」
「じゃあお願いしても、いいかな?」
「はいっ」
優しい笑顔で頷いてくれる梨子。それを見て、心の奥からとても温かな気持ちになった。あー、彼女がご飯を作ってくれるってこんな気持ちなんだろうな。
「それじゃあ今日はここまででいいよ」
「え、家まで送るけど?」
「それは明日以降の楽しみにとっておきますっ。何より献立とか考えておないとね」
「ありがとな。絶食して楽しみにしてるよ」
「もう、ちゃんと食べないと作ってあげないよ?」
「う、カップ麺で我慢します」
「それでよしっ。じゃあまた明日ね」
手を振って歩き出す梨子に手を振り返して見送った。さて明日から楽しみだな。
「でもその前に家を綺麗にしとかなくちゃな」
おれは苦笑いすると、家に入っていった。
●●
どうしようどうしようーー
紫堂くんの家でご飯を作ることになっちゃった。お父さんがしばらく居ないって聞いて、困った顔をしてる紫堂くんを見ていたらついそんなこと言っちゃって。
でも紫堂くんの嬉しそうな顔を見たら、頑張ろうかなって思えて。それに彼の為にご飯を作れることが嬉しい。よーし、美味しいって思ってもらえるように明日からの献立を考えなくっちゃ。あとで苦手なものとかあるか聞いてみようかな。
さて、アニメ二期が近づいてきましたね。僕は恐らくその頃になるとマトモな精神構造にはならないと思います。まぁ情報元やらなんやらを極力シャットアウトするつもりですがそれでもどうなるか……。
アニメをやってる三ヶ月間は別の小説を書いてみようかと考えています。けものフレンズとかネタがあるんだよね。
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