最近怨恨ヴィーゲンリートにはまっている、深緑の古龍という者です。
星夜が好きすぎて生きるのが楽しい。
ということで新シリーズ開幕です。
今回は、グリム童話たちの住む世界をもとにした、ホラーファンタジーとなっています。
注意もろもろは人物紹介に乗っていますので、読み始める前にお読みください。
始まり始まり
グリム童話の世界は、平和なところ。
赤ずきんが暮らすきれいな森に、ラプンツェルの誰でも気軽に登れる塔。
アリスの住む不思議な国に、人魚の泳ぐ美しい湖。
白雪姫が住むお城に、ヘンゼルとグレーテルが暮らす森。
眠り姫が住むところには、アヒルの子が泳いでいる。
そして、大きなお城がもうひとつあって、そこに住むのは優しい王様。
王様はとても優しいグリム童話で、この世界に住まう全てのグリム童話を愛していた。
たまに、この世界には人間の子ども達が迷い混んでくる。
そういう子達を案内し、無事にもとの人間の世界へと返す役割として、管理人のグリム童話が存在する。
管理人のグリム童話はそれだけが役目ではなく、グリム童話の世界に異変がないか、グリム童話たちに困ったことが起きていないかを見て回っている。
王様と管理人のお陰で、グリム童話の世界は平和そのものだった。
人間の子どもも、よく迷い込んでくる。
そんなときは管理人が子どもの面倒を見ながら、グリム童話の世界を案内する。
子どもは美しいグリム童話の世界に夢中になる。
子どもがグリム童話の世界から帰るときは、いつもみんな同じ顔。
ニコニコとした、満面の笑顔で帰ってくれる。
グリム童話たちはそんな子どもたちに、楽しい楽しいおとぎの世界を満喫してもらう。
そして、その子どもが大人になって、子どもを産んだら、その子どもがまた世界へやって来る。
そうして、グリム童話の世界は消えることなく、存在し続けていた。
誰も覚えてはいなくとも、楽しかった思いではきっと、いつか蘇る。
だからこそ、この世界は必要だった。
ある日のこと、管理人は王様と約束した。
『お前は、大切な私の息子だ。ほかに管理人は要らない。ずっとそばにいておくれ、この世界を一緒に護っておくれ』
王様にそう言われ、管理人は頷いた。
グリム童話たちはみんな、王様が大好きだった。
王様がグリム童話たちを愛しているように、グリム童話たちも王様を愛していた。
管理人も、そのうちの一人。
王様の願いを、何でも叶えたがった。
王様の望む通りに、世界を見守った。
でもある日、王様はおかしくなった。
王様は言った。
『私に逆らうものは、全て不用品だ。私の言うことは絶対だ』
グリム童話の世界はおかしくなった。
赤ずきんは狂ってしまい、人肉を好んで喰らうようになった。
アリスは眠ったままで、目覚めることはない。
ヘンゼルとグレーテルは魔女の家にはいかず、ずっと森の中をさ迷い続ける。
人魚姫はあまり変わらない。今も魔女と仲良して、でも王子様とは仲が悪い。
アヒルの子は親や森の動物たちからいじめられ続け、管理人に助けを求める。
白雪姫は銃をもち、来る人々を撃ち殺す。
眠り姫は男性を拒んで、森の奥から出てこない。
グリム童話の世界に異変が起こったせいで、人間界の童話にも異変が現れた。
みんなのよく知るかつての彼らは、もうそこにはない……
管理人は今日も、狂ってしまったグリム童話の世界を見て回る。
彼の目に写るのは、記憶のそこに鮮明に残るあの美しい世界ではない。
何もかもが醜く歪んでしまった、変わり果てた世界。
それでも、そんな世界で管理人は今も、自分の職務を全うしている。
こんな世界になっても、迷い込んでくる子どもは少なからずいる。
否。
むしろ、迷い込む子どもが多くなった。
それが何を意味するのは、管理人にはわからない。
ただ彼は、グリム童話たちの様子を見て回り、子どもを無事にもとの世界へと帰す。
ただ、それだけ・・・