トイレをテーマにした特別展で掲示したパネルの内容に誤りがあったとして、新潟県立自然科学館(新潟市)は20日までに、パネルを撤去しHP上で謝罪した。「うんち」と「うんこ」の違いについて、真偽を確認せずにインターネット上の情報を引用していた。
科学館によると、特別展「トイレ?行っトイレ!ボクらのうんちと地球のみらい」に合わせ、トイレに掲示したパネルに「『うんち』は肉などのタンパク質が消化吸収を経て排出されたもので、『うんこ』は野菜や穀物が消化吸収を経て排出されたものと日本医師会によって決められている」と書かれていた。
日本医師会はそのような定義をしていない。
ソース:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016072001001010.html
あ、どうでもいいことですが今回が最終回です
カックエー・タナカが倒されてから一週間が過ぎた。
IS学園に平和が戻り、けれどエド達が英雄として持て囃されたかといえばそうでもなく。
誰もがスカーの引き起こした事件を腫れ物に触るように――オソマに触るように――扱い、皆がなかったことにしようとし、大多数の人間が口にしないことで忘れることを選んでいた。
異臭の日々に終わりを告げる一週間であった。
「過去に騙してメタルマンというクソ映画を見せたこと、ここに謝罪します。ぜよ」
「ええ、今更……? というかアンタ、あたしにクソ映画見せた日にもちゃんと謝ってるからね」
「え、マジ?」
「その一言で、あんたが完璧に忘れてたってことを知れたわこんにゃろう」
二人並んで歩きつつ、鈴が肘でエドの脇腹を小突く。
エドの身長は結構高いため、そこそこいい肘が入ったようだ。
ちょっと響いた痛みに耐えて、エドは目的地の扉を開いた。
「いらっしゃい、お二人さん」
「前置きはいいぜよ。面会の時間も限られてる。話したいことって、なんだ?」
「つれないわねぇ」
エドと
極めて短い面会時間しか与えられなかったのも、当然と言える。
だがそれでも面会を許されたということは、この一週間という時間が正気を失っていたタナカに理性を取り戻させたということだろう。
タナカはベッドに横になったまま、二人の訪問者を笑顔で迎え、語り始める。
「……この能力をくれた人物について。
そして私にこの学園で暴れるよう唆した人物に、興味はない?」
「!」
「つまり、私を使いっ走りにした黒幕のことよ」
タナカが自分の罪を軽くするために口から出任せを言っているのではないということは分かる。
もしそうであるのなら、彼女は織斑千冬などの、もっと権限のある人物に真っ先にこの話をしていたはずだ。
秘密裏に、黒幕を背後から殴りつけられそうな人物を狙って情報を渡そうとしているあたり、タナカの狙いと思考はとても分かりやすい。
つまり、黒幕を結果的に倒して欲しいということだろう。
「その人物は」
しかし、黒幕がオソマリア代表操縦者タナカの暴露を予想していなかったわけがない。
彼女が二の句を継ぐ前に、スカーの両腕と共に彼女の体内に埋め込まれていた『安全装置』が起動した。
「あなたもよく知る、し―――かはッ!?」
「タナカさん!?」
「ま、まさか……あいつ私の体に細工を……!? あっ……!」
タナカが苦しみ、絶叫し、断末魔のような声を響かせる。
「か、体が―――夏になるッ―――あぁ―――!」
「タナカさーんッ!」
残酷で非道な黒幕の手によって半ば自動的に、タナカの口は封じられてしまった。
体が夏になったタナカは、救急車に乗せられ病院に運ばれていく。
タナカの体を夏にした犯人を倒さない限り、彼女は何も話せないだろう。
黒幕に繋がる手がかりは失われてしまったのだ。
「大丈夫かな、タナカさん」
「……」
だが、彼女が残した断片的な言葉は最後のピースになってくれたようだ。
エドはオソマの残り香残る明晰な頭脳で、情報を一気に組み立てていく。
「スカー騒動は囮。なら、ラスボスの目的は何だったと思う?」
「え?」
「俺は、スカーを学園で暴れさせてそちらに目を向けさせ、学園で何かをすることだと思う」
エドはタナカが学園で大暴れしている時に、織斑姉弟や篠ノ之箒に会おうともせず、学園でコソコソ動きさっさと帰って行った、篠ノ之束のことを思い出していた。
「あんな能力を人間に後付けできる人間なんて一人しかいない。
『汚いドラえもん』
『見た目がいいだけのDr.マンハッタン』
『SSの阿笠博士より邪悪な女』
『芹沢博士に殺して欲しいゴジラ兎』
『メタルマンの博士よりはマシ』
『白い魔法使いより自己中な魔法使い』
『他人のためにドラゴンボールを使わないブルマ』
『ラヴォスよりラスボスっぽい
『TSしたDr.ウェスト』
と敵対する派閥から好き勝手に言われてる、実はちょっと優しい所もあるあの人だ……!」
「それって、まさか!」
世界の表側では世界を変えた偉人と言われ、世界の裏側では共感性の無い天才という手の付けられない外道、とも言われている女性。
そして実際どういう性格かを知っている人物からは、「世間で言われているほどいい人でもなければ、世間で言われているほど悪い人でもない」と評される女。
それが、黒幕。
だがエドが真実に辿り着いたその瞬間、エドと鈴の肩に手が置かれていた。
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」
「―――!?」
そして走る激痛、暗転する意識。
篠ノ之束に奇襲されたのだと気付くこともできず、エドと鈴は一撃で気絶させられてしまった。
目が覚めた時、エドは見知らぬ場所にいた。
白亜の部屋の真ん中には錬成陣とその上に置かれたテーブルが有り、テーブルには『未分化の胎児』のような生物が収められたフラスコが据えられていた。
「フラスコの中に、小人……?」
「お、気が付いたかな?」
「! あなたは、束さん……これは、あなたが?」
「そそ。君らを気絶させて運んできたのも。
七つの大罪を集めて
カックエー・タナカに力を与えたのも、全て私! なにかあったらだいたい私のせいさ!」
「身も蓋もない元凶論ッ!」
人が人である限り持つもの、と定義される七つの大罪を集めて人であり人でないものを作る束の超技術の結晶が、
フラスコ、束と視線を動かしたエドの視線は、自然と束が片手で抱えていた鈴を視界に捉えた。
鈴は何らかの薬品でも嗅がされたのか、目立った外傷も苦しげな様子も見当たらないのに、力なくだらんと手足を投げ出したまま動かない。
「エ……ド……」
「鈴!」
「おおっとう、動けばこの子はその瞬間漏らすことになるよ」
エドは鈴を助け出すため踏み出そうとするが、踏み出す直前にその足は止まる。
タナカが腕に刻んでいた模様と同じ模様が浮かび上がっている束の腕が、鈴に突きつけられていたからだ。
「! その腕、アルを人質に!?」
これでは
好きな子の前で漏らすならまだ耐えられる。
だが好きな子を守れず、好きな子に漏らさせてしまうなど耐えられない。
エドは自分の尊厳は捨てられても、鈴の尊厳までは捨てられなかった。
鈴は動かない体で現状を認識し、束の手の中で呻くように声を出す。
「……たしに……かまわ……ず……」
「うーん、美しい男女の友情だねー。今はそれが仇になってるんだろうけど」
「くっ……!」
「誰かに与えた力は束さんも使える力ってことなのさっ」
完全に詰まされたこの状況で、エドはハッとする。
「そうか、食と消化の過程とは、すなわち食べたものを『束』ねる過程!
食べたものをオソマにするということは、束ねること!
タナカさんに与えた力とは、束さんが自分の存在そのものを形にした力だったのか!」
「なに人の名前勝手に糞もじりして無理矢理それっぽく糞に絡めてんだ殺すぞ」
「あ、はい。すみません」
束の目に殺意が浮かぶ。
子供のような癇癪でもなく、子供のような無邪気な喜びでもなく、子供が虫を潰す時のような冷たい冷酷さでもない、ひどく真っ当で正当な殺意であった。
「……俺に、何をさせようって言うんですか?」
「勘のいいガキは嫌いだけど便利だから好きでもあるよ」
エドは鈴が人質に取られた時点で抵抗を諦め、束が鈴を人質に取った理由を察して、束に指示を仰ぐ。
彼の察しの良さに束はちょっとばかり機嫌を直して、テーブルの上のフラスコを指差した。
「簡単な話。錬成陣を起動させて、"向こう"にある真理の扉を通って戻ってきてくれればいいよ」
「それで、何が起こるんです?」
「世界中でTSした奴がだいたい死ぬ。そして性転換現象が世界から消える」
「!?」
「媒介になるフラスコの中身を、ようやく仕上げられたからね」
篠ノ之束は、大切なもの以外はどうなってもいいというタイプの天才だ。
大切なものとは、彼女が作った傑作と、彼女の身内と、彼女自身のみである。
「大丈夫、何人かは生き残れる上、元の性別に戻れる仕組みにしてあるから」
「何人か、って……」
「ちーちゃ……ちーくんとー。
いっく……いっちゃんとー。
箒ちゃ……箒くんとかだね」
「っ……!」
「正確には、それだけの数のTS経験者の生け贄が要るってことだね。
意図的に狙った人物を元の性別に戻すパワーの捻出って大変だからさー、だから生贄」
束は世界の現状が気に入らなければ、迷いなく壊そうとする人間だ。
その過程で何を壊してしまうかなんて、まるで気にしない。
問題なのは、束が犠牲にしようとしている人間があまりにも多いこと。
そして、そこかしこで誰も彼もが性転換しているこの世界の酷さのせいで、束の蛮行にエドが『まあそうしようとする気持ちもちょっとは分かる』と僅かに共感してしまっていることだ。
僅かな共感を押し隠し、エドは己が内の常識に沿った声を上げる。
「そんなこと、許されるわけが……」
「5」
「え?」
「4」
だが束は、エドと押し問答をする気はないようだ。
何も言わず、ただ数字のカウントをしながら、腹を壊す破壊の右腕を鈴に寄せていく。
「ちょっ、待」
「3」
「……!」
もはや何を言っても時間の無駄だ。
鈴を守りたければ、束の虐殺の片棒を担ぐしかない。
虐殺をする覚悟を決めきれず、けれど鈴の尊厳を諦めるわけにもいかず、エドはテーブルのフラスコに向かって走る。
(真理の扉は利用する時、通行料で体の一部を持っていく……
束さんはそれで目的を果たすと同時に、俺を無力化するつもりだ。
だが、分かってても鈴を人質に取られている現状、どうしようもない!)
当然のように彼は深い錬金術の知識を保有しているが、それに特に理由はない。
強いていうならフィーリング。フィーリングだ。
彼はなんとなく感覚で世界の真理を理解している。
数秒後に出て来るオソマの状態を、出て来る前から感覚で把握できるように。
(そもそも、帰って来れるのか)
扉をくぐれば死ぬかもしれない、とエドが思う。
2、と束が言う。
フラスコを乗せたテーブルと、テーブルを乗せた錬成陣の前に立ったまま、何も決断できないエドが動きを止める。エドが顔を上げると、不安と恐怖に揺れる彼の瞳に、鈴の姿が映った。
「―――」
鈴が何かを言う。
それは鈴を抱えている束の耳にも届かないほどか細い声であったが、鈴の顔が見えていたエドには、その唇の動きから何を言っているのかが分かった。
揺らいでいた男の瞳が、覚悟の支えで揺らがなくなる。
まるで下痢に悩まされていた男のオソマが、胃腸薬で腸内にて固まっていくように、彼の意志も堅固に固まっていった。
(―――いや、絶対に帰って来るんだ。あいつを助けるために)
起動される錬成陣。
だがエドは既に束の思い通りになる気などさらさらなく、叛逆の意志を胸に秘めていた。
気付けば彼は、真っ白な世界で真理の扉の前に立っていた。
生まれ変わる際、世界の壁を越える際に通って来た扉だ。
見覚えのある扉の前に、今は無地で無色で透明な人型をした何かが座っている。
『なんだ、また来たのか』
「ああ、また来たよ」
人型が話しかけてきて、エドは気安い返答を返した。
扉は真理。人型も真理。扉は人の内にあり、人型は己であり他者である。
よく分からないがそういうものなのだろうと、扉を前にして"真理に近付いた"エドが理解していく。扉に手を添え、彼は己の真実を呟きはじめた。
「今なら分かる。俺は、彼女が欲しかったんだな」
『ああ』
「女に興味があった。
女に縁がなかった。
女体に興味があった。
死後のテンションでそれがこじれて、この扉をくぐる時に作用してしまったんだ……」
『女への興味をこじらせたTS好き、まあつまりノーマル寄りのTS好きは多いわな』
女への興味、女体への興味、それらをこじらせたノーマル性癖が下地にあるTS趣味。
この手のこじらせ方をしたTS好きのノーマル達は、TSというスパイスを振られただけの美少女キャラが好きなタイプが多く、性転換というテーマをディープに扱う作品をそこまで好まない。
エドはまさしくこのタイプだった。
彼は童貞をこじらせたがゆえに、女体に興味を持ちすぎたバカだったのだ。
そんな彼は今も、女のことを考えて無茶をしている。
『で、今も結局女のためか』
「愛は等価交換じゃない。
恋も等価交換じゃない。
相手に等価の見返りを求めても、交換を放棄して奉仕しても成り立たない。
俺は俗物だからな、無償の愛とか無理だから……今は必死に頑張って、好感度稼ぎぜよ」
『殊勝なこった』
「"彼女が欲しい"ってのは、極端に言えばいい女なら誰でもいい、みたいな願望だ。
昔の俺はそれを望んでた。だけど今は違う。
今は……あの子に好かれたい。誰よりも何よりも、あの子だけを守りたい」
『扉をくぐってあっちに戻る気か。なら、通行料はどうする? 代価は?』
「代価ならここにあるだろ。社会がでけえ価値を保証してくれてるのがよ」
そう言って、エドはベルトを外す。
ズボンを下ろす。
パンツを下ろす。
そこには、束がエドを世界に一人の希少種と言って哀れんでいた理由があった。
「俺は世界でただ一人の、性転換が微妙に中途半端に終わった結果生まれた、ふたなりだ」
『知ってる』
「この女性器部分が通行料だ。文句はないな?」
世界にただ一人のふたなりという価値を捨て、彼は一人の男に戻る。
男と女の間を反復横跳びしていた人間の中でも、特に希少な唯一無二の属性。
通行料としては十分だろう。
『
「女性器一つで女の子一つ助けられる可能性がある。安いもんだ」
と、いうか。価値はあるのだろうが、彼にとっては激しく要らないものだったので、捨てることに全く躊躇いはなかった。
『正解だ、錬金術師』
人型は笑い、エドを送り出す。
エドの下半身から女要素が消え、腹の中身――内臓の総量――が減ったことで、オソマの内包許容量の限界が少しばかり増す。
元の世界に帰るさなか、彼の脳裏に蘇るのは、捕まった鈴が弱々しく口にしていた言葉。
―――逃げて
あの一言が、エドを奮い立たせていた。
自分のことより他人のことを心配してしまう彼女を何が何でも助けよう、と決意させていた。
帰還すると同時に、エドは束に突っ込んで行った。
「!?」
扉の通行料でまず動けないだろう、と高をくくっていた束は奇襲を受けてしまう。
篠ノ之束とエドモンド本田の間には、浦安鉄筋家族の国会議員とコロッケ!のプリンプリンのオソマ量差以上の力の差があったが、奇襲で鈴を奪い返すことくらいはできた。
しかし取り返すのが精一杯で、取り返した直後の束の一撃をかわす余裕はない。
咄嗟に振るわれた破壊の右腕が、エドに迫る。
「……エ、ド」
「―――」
かすかに聞こえた鈴の声が、鈴を抱えるエドに超人的な動きを可能とさせた。
この一瞬のみ、エドの身体能力は束に並ぶ。
束は身体能力を攻撃に注ぎ、エドは鈴を庇うために使った。
結果、束の破壊の右はエドの背中にピタリと触れる。
(馬鹿め、漏らせ!)
束は最低最悪の力、研究の果てに自ら開発した破壊の力を注ぎ込む。
だが、何故か。
その力はエドに注がれた後逆流し、束の下腹部と肛門に流れ込んでいた。
「―――え?」
壊れる腹。
壊れかける肛門。
爆裂する便意。
下腹部に疾走する本能。新たな性癖に目覚めろ、その魂。
束は腹に走るあまりの激痛に膝をつき、破壊の腕に触れられても平気なエドの顔を見上げた。
「な、なにっ、おっ」
「錬金術におけるリバウンド……対象を理解せず、ありったけの力を注ぐからですよ」
「……!? 対象を、理解せず、って……!?」
「全ては、あんたが蒔いた種だ!」
そう言って、エドはベルトを外す。
ズボンを下ろす。
パンツを下ろす。
そこには、IS技術で作られた彼の新たな門と、リモコンで動き門を塞ぐ扉があった。
「鋼の
彼は今や束に扉を開かされた無名の錬金術師、否―――鋼の錬金術師。
タナカの能力から鈴を守り続け、能力を食らい続けた結果、エドの肛門は完全にその機能を喪失していた。
彼は己が肛門と引き換えに、好いた女を守っていたのだ。
その過程が、その結果が、今ここで束を追い詰めるジョーカーになってくれていた。
「っ、く、ぅ、うぅっ……!」
通常閉じていて意識的に開く肛門が初期設定。
通常開いていて意識的に閉じていないといけない肛門になるのが
そして常時開きっぱなしの肛門になるのが
最終的に排泄に苦痛を感じるようになるのが
今の束は、セカンドシフト直前の状態にあった。
「コヒュー、コヒュー、コヒュー……」
「地獄に落ちな、ベイベー」
「待っ」
そうして、エドの掌底が束の腹に突き刺さる。
彼の掌底がもたらした結果は、想像に難くない。
爆発。そう、爆発だ。
「―――」
そしてエドは写真を取った。
エドは良心を持っているが、同時に手段を選ばない、落ちる所まで落ちた人間だ。
オソマを漏らしたことが、彼から甘さを拭い去っていた。
エドは束を脅す。
また何かやらかしたらこの写真バラまくぞ、と脅す。
丸っきり悪役のやり方であったが、女を捨てきれない束には効果抜群であった。
織斑千冬に写真を見せないよう預けるなど、エドは二重三重の安全策を用意した上で、薄い本でもやらないような極悪非道の脅迫を成立させる。
泣きながら帰って行った束の背中に激しい罪悪感を感じながら、エドは世界を守った実感と、好いた女の子を守れたという満足感に、瞳を閉じていた。
二人は世界を守った余韻に浸る。
鈴はエドの顔を見上げて、微笑んで、彼に礼を言おうとした。
「ね、エド」
「ん? どしたぜよ?」
「ありが―――」
だが、一寸先は闇。人生はジェットコースター。次の瞬間には大変動を起こすものだ。
「うわあああああああああああああああああ!!!」
「うわあああああああああああああああああ!!!」
さしもの二人も、想像もしていなかっただろう。
「アルが男になったァ!?」
「な、な、なんですとぉー!?」
まさかこのタイミングで、鈴に性転換現象が起きるとは。
男が惚れた女のために頑張る物語はここで終わり。もはや事ここに至っては、ハイスピード学園バトルラブコメを終幕させるか、ホモンド・グロッソを開幕させるかの二つに一つしかない。
「終わった……なんか、色々終わった……」
鈴は性転換に伴う自意識変化があまり起きなかったようで、自分の体が男のそれになってしまったことに、織斑一夏が女になって失恋した時以上のショックを受けていた。
そのショックはTNT換算で10メガトンに相当する。
鈴が男のツラで暑苦しく泣き出しそうになったその時、エドが
「か、構わん! 男でも好きだ! 鈴が好きだ! ホモじゃねえからちょっと嫌だけど!」
「!?」
ホモンド・グロッソ、開幕。
「鈴が男でも女でも好きだ! 鈴が男になって、その事実にようやく気付いた!」
エドは愛の告白、はたから見るとカミングアウトにしか見えないラブコールを口にする。
彼は鈴が男になっても好きなままだった。
それは直接的に、彼の恋と愛が本物だったことを証明する。
だがホモだ。
これが真実の愛の証明だったとしても、まごうことなくホモだ。
「は、ちょ、待、え!?」
「落ち込むな鈴! 狼狽えるな鈴! 俺がついてる!」
「今あたしがうろたえてんのはあんたのせいよ!」
頬を赤らめ、照れる鈴。鈴の方にまだ恋愛感情はないようだが、嫌そうな様子は見て取れない。
実にホモだ。
オソマに吐き気を覚える人が居るように、この光景もまた一部の人に吐き気を催させるだろう。
ホモとクソは切っても切れない因果律で、いつの時代もどんな世界でも繋がっている。
「お前を苦しめるもんがあるなら、俺が取り除いてやるぜよ」
「エド……」
「行こう、アル! 俺の体の一部と、お前の体の全部、元に戻す方法を探しに!」
「……ん、だよね。生きて生きて生き延びて、いつか、元の体に……」
二人は旅立ちの決意を固める。
エドは失われた
アルは今の体を投げ捨て、元の体を丸ごと取り戻すために。
オートメイルと仮の体のコンビは、元の体に戻ることを諦めてはいなかった。
「行くぞォ!」
「おー!」
かくして、彼らの旅路は始まる。
そして、これにて物語は終わる。
願わくば、彼らの旅路の先に、よき終わりのあらんことを。
これにて完結です
後は自宅を燃やして帰る場所を捨てる覚悟を見せた原作エドアルのように、エドと鈴がIS学園を全焼させてから旅立てば完璧なのですが、ちょっと難しそうです
それと特に理由もなく神様転生タグを付けていましたが、何故付けたのか自分でも理由がよく分からない上怠け者の神様が最後まで出演拒否し出て来てくれなかったため、タグを外しました
ここにその辺をふわっとした感じに謝罪したいと思います
すみませんでした