世界最強の人類になっていた件について   作:矢野優斗

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今回ちょっと短いですが、これで死仙の狂躁は終わりです。次回から原作に関わっていきます。


死仙の狂躁Ⅴ

 終月 墓日

 

 

 今日は書こうかどうか迷ったけど、やっぱり書くことにした。と言っても書くことなんて殆どない。念願叶って師父を殺し、きちんと弔いをして墓を作ってきただけ。それだけだ……。

 

 途中ちろっと白猿の姿を見た。あいつも師父のことを気に掛けていたから、思うところがあったのだろう。

 

 師父の遺体は仙人ではなく人として死んでいるので何れ土へと還る。それは師父が拒絶した解脱とはまた違う自然の摂理であるのであの人も文句は言わないと思う。まあもしかしたら仙境の不思議パゥワーで死んだ当時のまま保存されるなんてこともあるかもしれないけどね。

 

 …………何だか凄く疲れた。今日はもう寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 劇月 痛日

 

 

 し、死ぬかと思った……。いや、いっそ殺してくれとすらまで思ったわ。毎度の如く不老不死だがら死ねませんけどね。それ程の地獄を見る羽目になったのだ。まさかあの業の反動が来るとは……。

 

 日記を書くのは実に三年ぶり。その間、俺はずっと止むことのない地獄巡りもかくやの激痛に苛まれ続けた。三日三晩ではなく三年間である。何度殺してくれと祈ったことか。精神が崩壊しなかったのが奇跡なレベル。

 

 それもこれも師父との戦いの中で培われた精神力と白猿が面倒を見てくれたおかげだろう。あいつが持ってきてくれた仙桃がなかったら確実に発狂していた。心の底からあいつに感謝したのは初めてな気がする。

 

 仙境の地に生る桃、仙桃には高純度の神秘が詰まっている。それらを食べることで僅かながら痛みを抑えることができた。ファンタジー凄え。でもそれ以上に業の反動で三年間寝込ませる世界が怖え。もう二度と時空跳躍関連の業は使わないと心に誓ったね。

 

 

 

 退月 屈日

 

 

 ぶっちゃけて言おう、暇であると。

 

 いやね、何よりも優先すべき事柄がなくなってしまったからか兎に角暇なのよ。加えてこの仙境にいるのは現在俺一人。会話する相手すらいないというのは結構キツイ。そのうちエア友達とか作ったりしないか我が事ながら不安になっちゃう。

 

 偶に白猿と酒を呑んだり軽い運動として組手を交わして暇を潰してはいるものの、いつまで続くことか。

 

 

 

 無月 聊日

 

 

 やることもないので最近は只管修練に打ち込んでいる。でも明確な目的も目標もない状態では身が入るはずもない。新業を開発したところで誰に試せる訳でもないし、意味なんて皆無。精々得られるのは自己満足だけだ。

 

 何か面白いことでも転がってないかな……。

 

 

 

 倦月 怠日

 

 

 好奇心は猫を殺すというが、退屈は人を殺せると思う今日この頃。毎度のネタだが不老不死である俺は以下略──

 

 ふとした疑問、現在の現世はどうなっているのか? 意識がハッキリした時点で既に俺は師父に拾われていたので、外の様子はこれっぽっちも知らない。今が何年なのか、そもそも現世とは俺の馴染み深い地球なのかすらも分からない。

 

 ふむ……考えたこともなかったけど、現世に行ってみるのも悪くないかもしれないな。

 

転生なんて無茶苦茶してるからもしかしたら俺の知る物語とかの世界かもしれない。逆に地球でもなければ俺の全く知らない世界かもしれない。

 

 仮に何かしらの物語の世界で俺が知っている作品であったなら、俗に言う原作介入とかするのも面白そうだ。知らない世界であったとしても、俺に馴染み深い現代の地球であったなら今は懐かしい娯楽が溢れている。その辺り目当てで現世入りしてみようかな。

 

 

 

 再月 起日

 

 

 色々と考え紆余曲折悩んだ末、俺は仙境引き篭もり生活を脱することを決心した。ここにいても暇で暇で死にそうだし、いざ戻ろうと思えば縮地一発で戻れるので問題はない。

 

 思い立ったが吉日、早速現世へ向かおう──と、思ったのだが。俺はある恐ろしい可能性に思い至った。

 

 以前、この仙境には結構な数の仙人が辿り着いていたと師父が語っていた。俺や師父が証明するように、仙人とは存在自体が災害染みた存在だ。そんな人外が過去といえそれなりの数存在していたという。

 

 それ即ち──現世には師父並みの人外がゴロゴロしているということ。

 

 師父並みの人間ないし化け物が跳梁跋扈する現世とか何それ怖い。何処の修羅の国だ。途端に行く気が失せてきたぞ。

 

 しかしこのまま仙境に引き篭もる生活は御免被る。俺はゲームがしたい、アニメが見たい、漫画が読みたい、ついでに美味しいものとか食べたいンダ……! 俺は絶対に解脱の域へは達せないな、間違いない。

 

 現世へ行かないという選択肢はない。であればやるべきことは一つ。

 

 ──もっと強くなればいいじゃない。

 

 俺自身が更なる高みへと登り詰めれば外敵を怖れる必要性などなくなる。師父相手でも快勝できるだけの実力があれば、修羅の国であっても生きていけるはずだ。

 

 ──よろしい、ならば鍛錬だ。

 

 という訳で現世行きは決定事項であるが当分先のこと、暫くは己を磨くための修行に打ち込む。

 

 不純ではあるものの明確な目標もある。満足いく実力をつけられる日はそう遠くない。

 

 取り敢えず拳速が光速になるまで頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 門月 出日

 

 

 あれから更に百年ほど修行に費やし、漸く満足のいく成果を出せれたので現世へ旅立とうと思う。

 

 今の俺ならたとえ師父が十人……は無理だけど三人までなら相手できる気がする。本当に師父レベルの輩に襲われたら逃げるけどね。そんな奴と戦ったらまず周囲への被害が凄まじいことになるし、無用な戦いは避けるが吉だ。現世での基本方針である。

 

 さて考えられる限りの手は尽くした。服装に身嗜みをしっかり整え、お菓子兼いざという時の回復用に仙桃を幾つか懐に仕舞い、準備万端。気分はちょっとした遠足気分。ものっそい不安だらけだけど。

 

 まあビビっていては何も始まらない。男は度胸、さあいざ往かん新天地! 現世が俺を待ってるぜ!

 

 そんな感じの無駄に高いテンションのまま、俺は仙境と現世の次元を超えるべく一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────世界の壁を超えるとそこは世紀末もかくやの地球であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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