皆さんの意見を元に、修正版の内容の一部を修正前に付け加える方針にします。修正版は折を見て削除しますので悪しからず。
そして今話より原作登場人物が出ます。但し自分の捏造がありますが。
死仙の狂躁・改は削除しました。皆さん、ご意見・ご感想をいただきありがとうございました。
咎神の方舟Ⅰ
現月 世日
俺が転生した地球はどうやら世紀末だったらしい。核兵器の炎に文明が焼かれ、母なる海は枯れ果て、生物が死滅し人類が弱肉強食に生きる時代──ではない。
大地は割れてないし海もある、文明崩壊は起きていない。生物も、何か明らかにファンタジーな感じの魔獣が彼方此方にいるが生存している。ならばどのあたりが世紀末なのか?
──人類が所構わず戦争をしている。
まだ此方に来て数日と経ってないが、行く先々で戦争、紛争、闘争。地球規模で人類が争い合っている。俺自身、規模の大小は問わないが既に五回は巻き込まれた。仙人も歩けば戦争に出会すなんて、欠片も笑えないぞ。
人類が何故争っているのかは分からない。取り敢えず縮地と、氣功術の応用で身につけた圏境擬きで各地の状況を忍者宜しく探っているが、正直納得できる理由は得られなさそうだ。
何故かって? 戦争している奴らの目が狂気に染まってるから。
深月 謎日
どうにもこの地球は可笑しい。
生活水準は俺のいた地球より若干下回っているぐらいか、大して不便さを感じはしない。だが殊に戦争の技術や兵器開発産業の発展が著しいというか、この一点だけSFの領域に片足突っ込んでいる。
この前とある大陸で勃発した戦争の様子を窺ったのだが、もう何が何やら。虫型の駆動兵器が入り乱れ、紅い閃光が戦場を薙ぎ払う。その一撃で戦線が瓦解していく光景に俺も唖然呆然。一瞬、機動戦士な宇宙なのかと勘違いしてしまうくらいには違和感バリバリの戦場だった。
レーザーとか魔術兵器とか意味が分からん。特に後者の魔術って何だよ。科学と魔術が交錯して禁書目録なの? ちょっと俺の理解の範疇を超えてますね。
他にも俺の元いた地球と違う点は多々ある。例えば魔獣。元いた世界では空想や伝説上の存在であった生物が当然の如くそこらを闊歩している。加えて吸血鬼や獣人といった魔族。彼らもまた大きな相違点だろう。
一言で表現するなら、
異月 常日
隅々までとは言えないが、粗方世界を巡り終えた。集めた情報を統合して結論を述べると、人類の置かれている現状は異常極まりない。同時に妙な違和感も覚えた。
地球の彼方此方で勃発するありとあらゆる戦争。それらには調べてみれば一応尤もらしい大義名分や原因はあったのだが、戦場の様子を鑑みるにどこも目的と手段が入れ替わってしまっているように見える。
戦場で戦う兵士たちの目は狂気に囚われていた。ただ眼前にいる敵を殺すことだけしか考えられない狂人。率直に言ってキチガイ。後の被害や己の保身すらも捨てている彼らの在り方は異常以外の何物でもない。
尋常ではない。取り憑かれたかのように争いを求め、殺しあう人類。まるで何者かの意思に踊らされているかのような気味の悪さを覚えた。それは恐らく俺が文字通り別世界に等しい仙境の地から来訪した人間だからだろう。
だからこそ気づけたこともある。
以前記述した虫型駆動兵器や魔術兵器についてだが、幾ら何でも無理があると悟った。確かにこの地球の科学テクノロジー、特に戦争に纏わる技術は俺の元いた地球とは比べ物にならない程に発展している。だがそれでも現状の人類では到底実現出来ない兵器があったのだ。
その最たる例として挙げるのは──レヴィアタン。
旧約聖書に登場する超巨大な海獣。伝説上の幻獣や空想であったはずの魔獣が現存する世界だ、神話の怪物が存在したって驚きこそしても何ら妙な話ではない。
だがあれは違う。実際に戦ってみたから分かったが、あれは生物でありながら立派な
何者かの意図を以って生み出された生体兵器。それがあの超巨大な蛇の正体だ。
因みにレヴィアタンとの戦闘は途中で相手が気を失って海底に沈んでいったため一応俺のKO勝ち。兵器であっても生物として必要な器官が備わっているなら、脳を揺らせばいけるんじゃね? という思いつきで頭を殴ったのが幸いした。やっぱり人間辞めてるよなぁ……。
レヴィアタンは現時点の人類には製造どころか設計すら不可能な超兵器である。それなのに現実に実在し兵器として破壊と混沌を撒き散らしている。ならレヴィアタンは一体何処から出てきたのか?
答えは分からない。だが人類が種を滅ぼさん勢いで戦争を繰り返している理由、原因、背景に大きな関わりがあるのは間違いない。
ならば俺が為すべきことは決まり切っている。世界各地で巻き起こっている戦争に片っ端から茶々入れて邪魔をしてやる。そうすれば何れ黒幕的な存在が出っ張ってくるはずだ。そこで連中の真意とやらを問い質してやろう。
それじゃあ、一丁正義の味方の真似事でもしますか!
戦月 場日
世界各地の戦争地帯を転々として、片っ端から横槍を入れる日々。文字に起こすととんでもないことしてるなという実感がヒシヒシ湧いてくる。
未だ地球上から戦争がなくなる気配はない。日に多くて三つの戦場に介入しては大暴れかまして戦争自体を有耶無耶に終わらせているのだが、それ以上のペースで争いが勃発するのだ。俺が何人いても足りやしない。お前らもうちょっと自重しろよ。
文句は他にもある。あの虫型駆動兵器、正式名称をナラクヴェーラというらしいが、あの兵器の性能が逝かれてる。何だ戦えば戦う程強くなるって。何処のスーパー野菜人だ。
しかも連中、どんだけ破壊しても次から次へと蟻の如くわらわらと湧くから切りがない。だ・か・ら! 一体何処からそんな物量を生み出してるんだよ! 可笑しいって思えよ人類!(ブチギレ
もうストレスが溜まる溜まる。加えて可能な限り人は殺さないように立ち回ってるから神経使うし、いい加減腹が立ってきた。
三百年以上生きてるけど、こういう精神面はまだまだ未熟だなぁと思う。でも仕方ないよね、自重を知らない連中が悪い。僕は悪くない。
女月 王日
今日、昨日までと変わらず一向になくなる気配のない戦争の真っ只中に突っ込んだ時だった。妙なことが起きた。
戦場に存在する兵器の一切合切例外なく、全てが一斉に俺を標的にして襲いかかってきたのだ。戦争の相手なんて放り出して、異常なまでに統率された動きで俺を滅ぼさんがために集ってくる。
ぶっちゃけ肝が冷えた。今までは割り込んだ俺を除けようとすることはあっても俺を標的にすることはなかった兵器たちが、掌を返したように全力で俺を排除しにかかってきたのだ。ビビるのも致し方ないでしょうよ。
それに何より驚いたのは連中の軍隊めいた動き。これまでは敵を発見すれば猪突猛進していた兵器共が、まるで腕利きの指揮者がいるかのような統率された動きで迫ってきたのだ。おかげでまんまと包囲されてしまった。
幸いその場は縮地で切り抜け、指揮官機らしきナラクヴェーラを破壊出来たので事なきを得たが、これは本格的に黒幕的な連中が俺の排除に身を乗り出したと考えるべきか。
邂月 逅日
世の中まだまだ捨てたもんじゃない。こんな世紀末な世界でも良識的な思想を持つ者はいる。それを知れただけで頑張ってきた甲斐があったというものだ。……人間じゃなかったけど。やっぱり世も末だな。
今日も今日とて戦場を渡り鳥の如く飛び回っていたら、一人の男と邂逅した。
その男は漆黒の槍を携え、戦場を真紅の光を纏って駆け抜ける。男が通った道に残るのは無傷で立ち尽くす人のみ。握られていた武器も操縦していた兵器も全てが消失していた。まるで最初から存在しなかったかのように。
男が操る真紅の光。それらが戦場を閃く毎に武器や兵器の類は悉く消え去る。最終的に残ったのは間抜け面で棒立つ大勢の兵士と、展開についていけず置いてけぼりを食らった俺。そして戦争を終わらせた彼の男だけだ。
怪我人死傷者零で戦争を終結させた男は、どんな意図を持ってか俺に声を掛けてきた。何でも話がしたいとのこと。俺も彼の使う力が何なのか、何者なのかなど訊きたい事が山程あったので提案を承諾。場所を移して会談と相成った。
正体不明の力を操る見知らぬ怪しい男。最初は警戒心バリバリで話し合いは難航するかと思われたが、いざ話してみると気さくな奴で話がスムーズに進む。会話してて退屈しないというか、惹きつけられるというか。筆舌に尽くしがたい魅力ってやつかな。男はそれを持っていた。
男との話し合いは有意義なものだった。彼が齎してくれた様々な情報のおかげで今まで不透明だったことや曖昧だったことがハッキリとした。特に人類の置かれている状況や背後に潜む黒幕、そして彼自身の境遇についてなどは驚きを禁じ得なかった。
この地球上に生きる生物は人類と魔族、そして魔獣がいる。それが俺の認識だった。だが現実はここにもう一つ加わるらしい。不死の神々という超常の存在が。
神々……で脳裏に浮かぶのは神殺しで羅刹の君に転生する物語。でもあそこの神は不死の権能を持ってても普通に殺されるからなぁ。この世界の連中はどうなのだろう? 殺せば権能を簒奪とかできるのかな。
いや、それよりも問題はこいつらがやってる事だ。彼曰く、不死である神々は己が無聊を慰めるために、娯楽に飢えていたらしい。そんな彼らが目を付けたのが、戦争。人と人が争う様に神々は娯楽としての価値を見出した。
人類の戦争を娯楽として定めた神々は、より自分たちが楽しめるように人類へ幾つもの
神々にとっては望んだ展開、人類にとっては破滅への一本道。それが現在の世界の状況だ。
しかし神々の一員であった彼はそれに異を唱えた。人類を争わせるなど間違っていると、彼は他の神々に逆らったのだ。
目の前の男が不死の神々であったことに驚きだが、その後に続く話には更に驚かされる。
戦争反対を掲げた彼は、しかし一人として賛同を得ることは出来ず、異端の烙印を押され
異境とは虚無の世界。現世ではない正真正銘の異世界だそうだ。話を聞く限り俺の育った仙境に似ているような気もしなくないが、また別の世界らしい。
異境に追放された彼はその地で新たな力を手にした。その一つが彼の携える漆黒の槍。異境の侵食を操る武器だそうで、侵食されたものは異境の地へと葬られる。
槍だけで十二分にチートであるが、彼にはもう一つ力がある。戦場で武器と兵器の悉くを消失させた真紅の光──『聖殲』という魔術。その効果は触れたものを変容させる、世界変革の御業。神々を不老不死の枷から解き放つ事すら可能とする力だ。何それ超チート。
彼は二つの力を手にして現世へと帰還した。その目的はただ一つ。神々の身勝手で終わる事のない戦争に終止符を打つ事。それが彼の願いであり目的。
話の流れからして俺はてっきり己を追放した神々への復讐を企んでいるかと考えたのだが、彼にその心積もりは一切ないらしい。その真意を問えば返ってきたのは屈託のない微笑。
──戦争も復讐も好きではないんですよ。
彼の言葉は不思議と心に響いた。
だからだろう。俺は彼に協力を申し出ていた。
元より俺の目的も彼と似たようなもの。共にあればより早く戦争の終わりを実現させられるはずだ。何よりも、彼が歩む道の先にあるものを見てみたい。
彼は笑顔で承諾してくれた。共に平和な世界を築こうと、固く握手を交わしたのだった。
この日、俺は第二の人生に於いて初めての友を得た。その男の名は──
──────カイン。
友人が一人なんて、寂しいじゃないカイン様。