ポケットモンスタードールズ   作:水代

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5対1? つまり群れバトルですね、分かります

「シキ起きてくるまでに行き先でも決めておこうかな…………カナズミ北へ行けば『りゅうせいのたき』抜ければハジツゲタウン。東へ行けばカナシダトンネル、その先はシダケタウン。南から船に乗ればムロタウン、そこからカイナシティかな」

 カナズミシティに着て早三日。ジム戦含め、やることと言うのは大体終わったし、そろそろ次の街へ出発しようとミツルとハルカに提案する。

「私はどこでもいいよ、最終的には全部回るつもりだし、ボールもいっぱい買ったしね」

 呟くハルカが買って来たばかりらしいボールを机の上に並べ、磨きながら呟く。

 別に磨いたからってボールの性能が良くなるわけでも無いが、入れられたポケモンは案外自身の入っているボールが綺麗だと喜ぶし、汚れていると嫌がるので、自身も時折ボールの整備や清掃はしている。

 案外この辺を気にしないトレーナーと言うのは多いが、ハルカはその辺りマメである。

「ならムロタウンはどうでしょう」

 そして意外と早く答えを出したミツルに、理由を尋ねてみれば。

「実はボク、船って乗ったことが無いので、一度乗ってみたかったんです」

 なるほど、と納得する。

 

 まあそう言う知らない物に触れ合うことも旅の醍醐味と言うものだろう。

 

「特に異論はないかな、良いよね、ハルちゃん」

「おっけー」

 一度こちらを見て、一つ頷くハルカに苦笑し。

「じゃあ、次はムロタウンだね」

 そう告げた。

 

 

 * * *

 

 

「はふっ」

 欠伸をかみ殺しながら、朝焼けの空から高度を落とし、屋根の上に降り立つ。

 屋根裏部屋の窓を開け、するり、と体を滑り込ませて。

「…………玄関から入ってきなさい」

 聞こえた声に、目を丸くする。

「シア」

 腕を組みながら、ため息一つ吐くエメラルドグリーンの少女、シアがそこにいた。

「おかえりなさい、エア…………マスターは元気でしたか?」

「ええ…………それに、シキのほうも合流したわ」

 告げた名前に、シアが僅かに目を細める。

「ああ…………合流できたんですね」

 怒っているようにも見えて、その実笑いをかみ殺しているのだと気づける。

「あと、ハルトから伝令」

 続けた言葉に、空気が一転し、底冷えする。

 

「――――――――――――」

 

 告げた言葉に、シアが一つ頷いた。

 

 

 * * *

 

 

 カナズミシティまでやってきた道をまた戻っていく。

 さすがに行きのようにトウカの森が雨続きなんて事態は無く、午前中にカナズミシティを出て、夕暮れ前にはトウカの森を抜ける。

「このまま船着き場まで行くか、それとも森の入り口のセンターで一晩休んでいくか、どっちにする?」

「あれ? 船着き場に泊まるとこあったっけ?」

 ハルカが首を傾げながら呟いた疑問に、一つ頷き。

「乗船客が泊まるための宿がいくつかあるよ」

 そう答えた。

 

 実機だとハギ老人のいる海辺の小屋しかない場所だが、実際に個人所有の船着き場などあるわけがなく、トウカシティ西の船着き場は極々小規模な港町になっている。

 正確に言えば、海辺の小屋の南、実機だとただの海岸だがあの辺りを中心としていくつかの宿と店が存在している。港町、とは例えたが民家のようなものは無い。言ってしまえば停泊所と言ったところか。

 もっと言えば、船着き場からムロ経由、カイナ行きの定期便が出ている。実機のようにわざわざハギ老人に連れて行ってもらう必要も無い。でなければ、ムロタウンの人間は全員『なみのり』か『そらをとぶ』を使えるのか、と言う話になる。

 とは言っても、実際のところムロタウンと言うのはホウエンと言う他所の地方と比べても発展の乏しい地方の中にあって、ダントツの田舎街だ。シダケタウンだって何気にキンセツシティが近い分いくらか発展もしているし、ハジツゲタウンも『りゅうせいのたき』の研究のためなどで人の賑わいもあり、そのための施設や研究員たちのための店などもあるが、本土から離れた小島と言う立ち位置からして、どうしてもムロタウンと言うのはそう言った人の賑わいから遠くなる。

 同じ本土から離れた島とは言ってもトクサネにはロケット開発に携わる『うちゅうセンター』などもあるのでまた別と言える。

 

 まあそう言った事情から、定期便の数と言うのは少なく、半日に一回。一日二回が精々だ。

 だから一度逃してしまうと下手すれば一晩越さなければならないこともある。

 そう言った利用者のために小規模ながら宿が用意されている。

 

 さらに因みにだが、この定期便も、宿も、ポケモン協会の管轄だ。

 ポケモン協会は前世で言うところの地方自治体を規模を拡大したものと言える。なのでバスや船などの乗り物や、ポケモンセンターなどの施設など、公共物に関しての管轄は全てポケモン協会だと言える。

 

「だから今日はそっちに泊まって明日の午前の便に乗れば良いと思うけど」

 

 そんな自身の言葉に、三人とも意見は無い、と言った様子で頷く。

 夕焼けに染まる空を眺めながら歩けば、オレンジ色に染まる海が見えてきて。

「ここで良いんじゃない?」

 船着き場へと向かう途中に見つけた宿を見て、シキがそんな風に告げる。

 別にどこに泊まるか、と言うことに拘りも無かったので、部屋の空きだけを問い、全員が泊まれることを確認すると、あっさりと宿を決めてしまう。

 

 宿、と言っても旅館のようなものではなく、一階建てのホテルと言った感じだが、まあ野宿よりは大分マシだろうと思う。

 そうして案内された部屋に荷物を置いたら、シキに割り当てられた部屋へと向かう。

 軽いノック、返事と共に扉を開く。

 

「ハルト…………どうしたの?」

「明日の便の時間見たいから船着き場まで付き合ってくれない?」

 部屋で休んでいたせいか、いつもかけている眼鏡が無いと少し雰囲気が違うな、なんて思いながら、自身の言葉に頷いたシキと共に宿を出て、船着き場まで歩く。

 

「眼鏡かけてないけど、見えるの?」

「細かい字までは見えないけど…………まあ、一応持ってはいるわ」

 ポケットから眼鏡を取り出し、戻す。

「独りだと絶対に外せないんだけど…………今はハルトがいるから助かるわね」

「シキ一人で歩かせたら、明日から三人旅に逆戻りだよ」

 この少女の方向音痴が度を超えた物であると言うのはすでに自身の中で確定事項だ。

 なんだかんだカロスホウエンと数年に渡って旅してきているのだから、最悪の事態、と言うのは無いだろうが、それでもキナ臭い雰囲気の漂う現状、ハルカとミツルの守りと言う意味でもいてもらわないと困る。

 

 …………まあ、ハルカに限ってそれが必要かどうかは悩みどころだが。

 

「ん…………暗くなってきた、急ごう」

「分かったわ」

 すでに夕日は水平線へと沈みかけている。

 そう広い場所でも無いが、街中と違って灯りがそれほど無いこの辺りでは暗くなれば一気に視界が悪くなる。そうなる前にさっさと帰りたいものだ。

 少しだけ、二人足を急がせる。

 幸い宿からそれほど距離も無かったらしく、すぐに船着き場に着き、定期便の時刻を確かめる。

 まだ僅かに日の光の残る帰り道を歩きながら。

 

「…………ところで、昨日の話」

 

 昨日からずっと気になっていた話を切り出す。

 

「昨日?」

「帰るって、ホントに?」

 

 ――――カロスに帰る。

 

 昨日確かにシキがそう言った。

 昨日は結局聞けなかったが、気にはなっていた。

 そもそもシキがどうしてカロスからホウエンに来たのか、その理由も含めて。

 聞けるチャンス、と言うのは確かにこの二年の間にもあったが、それでも今まで聞いてこなかった。

 いつでも聞けると言う安心もあっただろうし、そもそも今シキはホウエンにいるのだ、だったらそれで別に良いじゃないか、と言う思いもあった。

 

「……………………本当よ。今年中でハルトの目的は達成される、のよね?」

「…………まあ、現状だとその可能性は高いね」

 

 自身の目的、伝説種の捕獲、正確にはホウエンの崩壊の阻止。

 その目的は確かに今年、自身が十二歳となった年に達成される見込みだ。

 この時に向けて色々と仕掛けてきたのだ、阻止できなければさすがに困る。

 そして実機でも起こった事件のいくつか、言うならば()()は確かに始まっていると考えて良いだろう。

 

 つまり、近いうちにことが起こる、そしてそれさえやり過ごせばもう自身の()()()()()()()()()()()()は終わりと言って良いだろう。

 

「だから、ハルトの手伝いが終わったら、帰るつもり」

「…………なんで突然」

 

 そう、本当に突然。

 少なくとも、旅に出る前までそんな素振り全く無かったのに。

 

「……………………個人的な事情よ」

 

 自身の問いに、けれどシキは僅かに目を細めるだけでそれ以上のことを語ろうとはせず。

 

「――――あの時のこと、忘れてちょうだい」

 

 一歩、前に踏み出し、振り返る。

 

 同時に水平線の彼方へ、太陽が消えていき。

 

「シキ、俺は――――」

 

 夜が訪れた。

 

 

 * * *

 

 

 ――――直後。

 

 囲まれている。

 

 自身と、シキと。

 互いが互い、同時に気づき、口を閉ざす。

 

 ――――いつから?

 

 最初に浮かんだのはそんな疑問。

 いつから、そしてどこから。

 こんな閑散とした場所で、わざわざこちらを囲っている、なんて。

 どう考えても、こちらを狙い定めている。

 

 少なくとも、先ほどまで歩いていて周囲に人の姿なんて見ることが無かった。

 と、なればこっそりついてきたのか、それとも最初からここで待ち伏せていたのか。

 まあどちらでも良い、とにもかくにも、自身たちに用事がある相手がいる、と言うのは事実。

 

 そして恐らく、友好的でないだろうことも。

 

 ならば次の疑問は。

 

 ――――何者か。

 

 足を止める。

 同時、腰のつけたボールを手に取り、いつでも投げれるようにする。

「…………シキ」

「…………分かってる」

 互いに一瞬の声の掛け合い、そして目配せ、それでだいたい意図は通じた。

 シキもまた同じようにいつでもボールを投げれるように態勢を取る。

 

 そして、こちらが気づいていることを悟ったのか、やがて前方の建物の影からゆらり、と誰かが姿を現し。

 

「よう」

 

 そこに男がいた。

 体に張り付くかのようなピッチリとした青いボディスーツに青いバンダナを付けた無精髭の目つきの悪い大男。

 

「…………なんだ、大物が釣れたね」

「…………誰?」

「首領だよ、アクア団の」

 

 呟いた言葉に、男が目を細める。

 

「なんだ、オレのことを知ってやがんのか、意外だな、チャンピオンサマよぉ」

「そっちこそ、俺のこと知ってんだ、ウシオのほうは知らなかったのに」

 

 自身の口から出たウシオの名に、アオギリが一瞬目を丸くし。

 

「あー…………アイツを倒したトレーナーってのはテメェか、あのバカ、地方チャンピオンの顔くらいは知っておけよ」

 

 ぽりぽりと、後ろ頭を掻きながらぼやくように呟き。

 

「まあそれはいい…………本題はシンプルなんだ、デボンで受け取った荷物をこちらに渡せ」

 

 単刀直入に要求を突き付けて。

 

「断る」

 

 即断した。

 

「即決かよ…………一応言っておくが、こっちは五人だぜ?」

 

 アオギリの言葉と共に、左右に二人、そして後ろから二人。暗くて分かりづらいが、恰好から察するにアクア団の団員だろう。

 全員がボールを構え、いつでも行けると言った様子。

 

 上手い手ではある。

 言っては何だが、ポケモンバトルをすれば、まず負けない自信がある。例え5対1でも、である。

 だが実機と違って相手はお行儀よくバトルのルールを守る必要など無いのだ。当然トレーナーへのダイレクトアタックもありの何でもありでは、数の差と言うのはかなり不利になる。

 守ればジリ貧、攻めればこちらの守りが足りない、なるほど、それなりに考えられてはいる。

 

 だから。

 

「ルージュ」

 

 何かされるよりも先にボールを投げる。

 

「クロ」

 

 一瞬遅れてシキがボールを投げ。

 

「テメェら!」

 

 アオギリがほぼ同時にボールを投げ、ワンテンポ遅れて団員たちもボールを投げる。

 

 ルージュが、サザンドラ…………クロが、こちらに現れ。

 

 アオギリがサメハダーを。そして残りの団員たちがキバニアを出す。

 

「遅い」

 

 けれどその時にはもう遅いのだ。

 

 “つながるきずな”

 

 ルージュと絆を結び。

 

「戻れ」

 

 “スイッチバック”

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 そうして。

 

「蹂躙しろ、アース」

 

 ボールを投げる。

 

「ふひ…………き、ひひ、あひゃ」

 

 “とうしゅうかそく”

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「シキ」

「捕まって」

 クロの背に掴まる。

 

 同時に。

 

 “じしん”

 

 ずどん、と。アースが大地を踏み抜き、轟音と共に大地が大きく揺れる。

 

 『こうげき』6積のガブリアスの“じしん”である、耐えることなどまず不可能と言えるレベルの一撃に、一瞬で場に出たポケモンたちが全滅する。

 

 “ふゆう”

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ…………」

 僅か一瞬、ほんの数秒内の出来事に、アオギリが驚愕に目を見開き。

 その視線が自身たちを囲むように配置されていた団員たちへと向けられる。

 激しい“じしん”の余波で、ポケモンだけでなく腰を抜かして座り込む団員たちを見て。

 

「…………っち、オレの見込みが甘かったってことか」

 

 舌打ち一つ、同時に建物の影から一人、また一人と新しくアクア団の団員たちが現れ。

 

「撤収だ」

 

 こちらを警戒したまま、アオギリが呟くと、新しくやってきた団員たちが座り込む団員たちを連れて去っていく。

 こちらはまだ動かない、と言うか動けない。

 

 正直、去っていくならそれでも良かった。むしろあの数でキバニアでも並べられて“アクアジェット”でもされたらさすがに防ぎきれないところだ。

 

「…………うーん、こっちも見込みが甘かったかな」

 

 荷物を受け取って一日、カナズミで様子を見たが特にちょっかいを出してくる輩が居なかったのでエアを返したのだが、こうなるなら残しておけば良かったかもしれないと後悔する。

 

「…………シキ、追跡用のポケモンいる?」

「…………ごめん、さすがにこんなところで出会うと思わなかったから用意してない」

 

 そっか、とだけ呟き。

 

「実機には無い行動、か…………そろそろ真面目に動かないとダメかな」

 

 一つ嘆息した。

 

 

 




アクア団の行動⇒カナズミシティで潜水艦のパーツ移送するらしいから奪おうぜ⇒カナズミシティに現地集合な、遅れんなよ? ⇒やべえ、トウカの森通ってたら森にすげえ強い『みず』ポケモンいんだけどどうするよ⇒捕まえろって、絶対役立つから⇒やべえ、強すぎワロえない⇒ウシオさん行くってよ⇒潜水艦のパーツどうすんの?⇒残ったやつがやるっきゃないっしょ⇒やべえ、ウシオさん含めて森のやつら全滅だってよ⇒パーツ強奪も無理だった(泣)⇒ていうか元チャンピオンとかマジ鬼畜難易度⇒取りあえず監視してチャンスを伺っとけ⇒あ、でも子供に渡してるぞ⇒カナズミで仕掛けるとまた大誤算でてくんべ⇒街出るまで監視だな⇒なんかいい具合に人気の無い船着き場向かってんだけど⇒リーダーもいるしここは行くぜ⇒チャンピオンには勝てなかったよ(今ここ



名前:アース(ガブリアス) 性格:いじっぱり 特性:さめはだ 持ち物:オリジンクォーツ
わざ:「じしん」「ファントムキラー」「どくづき」「ストーンエッジ」

特技:ファントムキラー 『ドラゴン』タイプ
分類:きりさく+ドラゴンダイブ
効果:威力120 命中95 優先度+1 自分の『すばやさ』が相手より高いほどきゅうしょに当たりやすくなる。攻撃が外れると自分の最大HPの1/8のダメージを受ける。

裏特性:とうしゅうかそく
味方から能力ランクを引き継いで場に出た時、引き継いだ能力ランクを最大まで上昇させる。

専用トレーナーズスキル:????

専用トレーナーズスキル:????

固有スキル:????




ハルトくんの絆スキルで2段階上昇、そこから通常交代で出ると『こうげき』『ぼうぎょ』『とくこう』『とくぼう』『すばやさ』6ランクの6Vガブリアスが誕生する。
まあチートだ。チートだがもうリーグ戦終わってるので、伝説戦相手ならこれくらいでちょうどいい。

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