ポケットモンスタードールズ   作:水代

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すっごい今更だが、一章読み直すと確かに傍点振り過ぎなことに気づいたので、いくらか修正。
ただし面倒になったらやめる(


死の大陸⑨

「大丈夫かなあ、ハルくん」

 窓の外に見える光景は今日も変わりはない。

 ミシロタウンは、今日も平和で今この時、ホウエンが危機に陥っているなんて、この光景を見ているととても現実だとは思えなかった。

 少女、ハルカは自室の窓から遠くを眺めていた。

 あの向こう側で幼馴染の少年が戦っている。勿論それが見えるわけではない。

 『おくりびやま』へと向かう二人を見送った後は、ミツルと二人でミシロに戻ってきていた。

 これから何が起こるのか、大雑把には聞いてはいたし、さすがにそれを聞いて旅を続けるというのも無理だろうと思ったからだ。

 それに、ここにはハルカの、ミツルの、そしてハルトの家族がいる。

 ハルトの母親は、現在すでにもうコトキタウンの病院を退院してミシロの家に戻っている。

 身重の体である彼女を気遣って、夫であるセンリもなるべくミシロにいるようにしているが、それでもやはりジムリーダーとしての責務もあり、家を空けがちになってしまう。

 だからだろう、ハルトもセンリもいない家で独りになる彼女を心配して、ハルカやミツルに後を頼んだのは。

 

「っと、そうだ、そろそろハルトくんのお家に行かないと」

 

 ハルトの母は、自身も昔からお世話になっている人だ。ハルトに頼まれずとも気をかけるのは当然だし、それで少しでもハルトの助けになるなら余計に、だ。

 ホウエン全土を巻き込むかもしれない戦いに赴く少年に、ハルカでは残念ながら力不足だ。

 それが分かるからこそ、少年は自身を連れて行かなかったし、自身もまた少年に連れて行って欲しいとは言わなかった。

 それでも大事な幼馴染のために力になってあげたい気持ちはあるし、何かできることはないかと思う。

 だから、少しでも力になれるのならばいくらでも骨を折ろう。

 

 それは、自身の初めての友達の頼みなのだから。

 

 口元に笑みを浮かべ、よし、と言葉に出す。

 ぐっと両拳を握って活力を漲らせると、机の上のポーチを取り、腰に装着する。

 そのまま部屋を出ようとドアノブを回して。

 

「あ、窓」

 

 閉め忘れた、と振り返り窓へと近づいて。

 

 ゴォォォ、と風鳴りが聞こえると同時に窓辺へとソレが飛来した。

 

 

 * * *

 

 

 空から戦艦が落ちてくる、という光景に一瞬思考が止まる。

 

 アクアが、ルージュが、シャルが、咄嗟に退避していく中で、戦艦がグラードンへと激突し、その周囲を爆散させる。

「なななななな、なんだ?!」

 来る途中に一度見たのは覚えている、というかその後はずっとグラードンを注視していたので気にしていなかったというべきか。そうして気づいた時にはもう姿形も無く消え去っていたので、疑問には思いつつ目の前に集中していたのだが。

 

「やあ、苦戦していたみたいだね」

 

 まるで幻か何かだったとでも言うかのように、大地へと突き刺さった戦艦がその姿を消していく。

 まるで紐がほどけるかのように、先端部から光の帯となっては虚空へと消えていく。

 そうして、その巨大な船体が半ばまで消えた時、ふと声が聞こえた。

 振り返ったその先に、ふわり、と念動(サイコキネシス)によってゆっくりと宙を降りてくる男の姿があった。

 

「ダイゴさん」

「咄嗟に手出ししたけど、大丈夫かい?」

 

 久々に見た彼の相棒のメタグロスと共に地に降り立ってすぐの問いに頷き返しながら、視線を消えていく戦艦へと向ける。

 

「あれ、ダイゴさんが?」

「まあね」

 

 あっさりと頷くダイゴに、相変わらずのチート人間だとため息を吐きたくなる。

 

「と言っても、時間稼ぎにしかならないよ」

 そんな風にダイゴと言葉を交わしている間に、アクア、ルージュ、シャルが戻ってくる。

「大丈夫じゃったか主よ?」

「いきなり何よアレ」

「あわわわわ、ご、ご主人様」

 分かってはいたことだが、全員疲労の色が激しい。あんな怪物を相手に長時間戦闘させられているのだから、仕方ないのかもしれないが。

 だからと言って他の面子ではあっさり返り討ちにされてしまう。

 

 脅威と見られ無くなれば、眼前の相手だろうと無視されてしまう。

 

 そうなれば最悪だ、サクラが居ない今の自身では“じしん”や先ほどの地面が競りあがるような攻撃をされればあっさり巻き込まれる。

 全体攻撃というのは近づくほどに隙が大きくなる、それをグラードンも嫌って先ほどから手足を振り回し暴れまわっているが、避けることを重視したアクアやルージュにはまだ被弾は無い。

 というか、被弾=敗北に近いので、今生きてること自体が無傷の証明なのだが。

 

「消耗がきついな」

 

 苦々しい表情で呟いていると、やがて視界内の戦艦が完全に消えて。

 

「グルウウウウアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 ぴんぴんした様子のグラードンが吠え猛る。

 

「うーん、分かってはいたけど、本当にああも効いた様子がないのがさすがに堪えるね」

 

 困ったような表情で、ダイゴが苦笑いする。

 僅かにだが手が震えているところを見ると、ああは言っていたが多少なりとも先ほどの一撃に自信があったらしい。

 いや、確かに凄まじい一撃だったと思う。あれだけの質量の物体が空から降り注いでくるなど、大抵のポケモン…………それこそ、シキのレジギガスだって直撃すれば『ひんし』を(まぬが)れないだろうと思わされるほどの一撃だった。

 だがそれを耐えた、耐えるどころかほとんど効いた様子すらない。

 

 それだけ隔絶した差があるのだ、同じ伝説のはずのレジギガスとさえ。

 

 ましてグラードン…………正確にはゲンシグラードンは『ぼうぎょ』ステータスが異様に高い。

 実機での種族値は『ぼうぎょ』160。種族値だけ見れば上から数えたほうが早いほどの脅威の防御性能を持つ。

 反面『とくぼう』が90と低めなのが唯一の狙い目なのだが、そもそも天候の関係で『みず』技が通らない場合、狙える弱点は『じめん』タイプのみだが、『じめん』タイプの特殊技というのは非常に少なく、まともに威力があるのは“だいちのちから”くらいである。それすら威力90とそれなりに高い、程度でしかない。そもそも『じめん』タイプには“じしん”という凄まじく使い勝手の良い技があるため大半のポケモンはこちらで済ませてしまうため覚えるポケモンはともかく、覚えているポケモンは少数と言える。

 さらに言えば、そもそも今この場にそれを覚えているポケモンはいないし、いたとしてもあの化け物染みたタフネスにどれほど通用するのか、という問題もある。

 

 やはり明確にダメージを与えるならば『みず』タイプの技、それも特殊技でなければならない。

 

 さらに言えば、できうる限りステータスの高い…………そうできることなら、ゲンシグラードンと同じレベルの存在。

 

 決め手があるとすればどう考えてもカイオーガしかありえない。

 

 ゲンシカイオーガの時との違いは純粋な『種族値』の違いだ。

 『ぼうぎょ』種族値の低いゲンシカイオーガは、比較的物理アタッカーが多く、特殊アタッカーでも弱点タイプを狙えた自身のパーティには相性が良かった。

 だがメインアタッカーが碌に通じず、タイプ相性も最悪に近いゲンシグラードン相手では、やはりどうやっても不利を否めない。

 

 だったら、倒せる手を使えば良い。

 

 幸いにして、そのための手を先に揃えることができたのだから。

 

 

 * * *

 

 グラードンが動き出す前に手短くダイゴに作戦を伝える。

 自身の伝えた無茶な話を、けれどダイゴは一度分かったと頷いてすぐに行動を始める。

 

「自分で言っててなんだけど、良いの?」

「生憎僕じゃ相性が悪すぎる、君に任せるよ」

 

 問いかける自身に、振り向きふっと笑って再びグラードンを見る。

 

「さて、場は彼が整えてくれた、なら僕たちも行こう」

 

 右手に一つボールを取り出し。

 

ボスゴドラ(ココ)メタグロス(コメット)

 

 その名を呼びながら、ポケモンをボールから解放する。

 ダイゴの左にメタグロスが、右にボスゴドラが立ち。

 

「行け」

 

 その襟につけたメガラペルピンに指先が触れると共にボスゴドラの体が光に包まれる。

「えっ」

 それをメガシンカの光だと知っているが故に驚く。

 

 ダイゴのメガシンカポケモンはメタグロスのはずだった。

 以前戦った時に感じたが、メタグロスは『メガシンカ時』を基本として育成されている。

 故に『メガシンカした時』だけ使えるスキルというのも多かったはずだ。

 逆にボスゴドラはメガシンカ抜きの前提で育成されている、だからメガシンカさせるなら逆のはずだというのに。

 

 その時ふと気づく、メタグロスの色が変わっていることに。

 一部一部はほんの些細な違いだが、だがあのカラーリング…………。

「…………もしかして」

 可能性に気づく。よくよく考えれば、自身にだってできたのだ、目の前の男にできないはずも無い。

「つくづく思うけど…………」

 味方になると本当に頼もしい、心底思う。

 

 吼えるグラードンへとダイゴが歩み行く。

 それに追随するように二体のポケモンが続き。

「ココ、コメット」

 ダイゴの呟きと同時に、二体のポケモンが飛び出す。

 

 “てっぺき”

 

 メガボスゴドラがその身をより固くする。

 

 “アームハンマー”

 

 そしてその影から飛び出した()()メタグロスが手にした鉄槌を振り下ろす。

 強烈な一撃にグラードンが僅かに怯む。

 とは言えダメージはほぼ無い。当然のように固い。少なくとも、アクアのようなぶっ飛んだ攻撃能力で四倍弱点でも付かない限り。

 

 “ふんか”

 

 お返しとばかりに放たれる超火力の炎を、けれどメガボスゴドラが盾となって受ける。

 あの火力を受けるのは不味い、と一瞬思ったが、けれどやや痛そうにしながらもメガボスゴドラが反撃と攻撃を再開する。

 

 “ふどうのせいしん”

 

「んな?!」

 

 耐えた?

 一瞬自身が見たものが信じられず、呆然とする。

 ゲンシグラードンの一撃はほぼ必殺の一撃と言っても過言ではない。

 少なくとも、自身のパーティにそれを受けれるポケモンは皆無だろう。

 6ランク積んでも無理な一撃を、けれど受けてそれでも平然と立っている。

 

「無茶苦茶だ」

 

 だが実際頼もしい限りである。

 そしてメガボスゴドラが盾を引き受けてくれるならば…………。

 

「アクア、ルージュ、シャル」

 

 ゆっくりと呼吸をし、息を整えた三人の名を呼ぶ。

「応」

「分かってるわ」

「…………はい!」

 何を言いたいのか、理解した三人がこちらの言葉を前に返事をし、飛び出す。

 先ほどとは違い、メガボスゴドラとメガメタグロスという二つの新たな脅威が目の前に存在するためアクアとルージュに完全に集中しきれないグラードンを、二人が攪乱していく。

 メガボスゴドラには驚かされたが、どう足掻いたところで、自身のポケモンたちがグラードンの一撃を受けて無事に済むはずがないのだ。だったら、全て回避するしかない。そのために全神経を集中させているがけれどここまでの疲労を考えればそう長く持つとも思えない。

 

「…………まだか、サクラ」

 

 ミシロへと飛ばした少女のことを思いながら後方の空を見上げ。

 

「……………………来た、来た!」

 

 曇天の空に浮かぶ紅と蒼を見つけ、思わず声を荒げた。

 

 

 * * *

 

 

 先ほども言ったが、現状こちらのポケモンではグラードンを倒すことがほぼ不可能だ。

 アースの一撃が相当に効いていたので、もう一度攻撃できればチャンスもあるかもしれないが、『オメガシンカ』はかなりポケモン自身に負担をかける。正直『げんきのかけら』で復活させても、戦えるかどうは微妙なところだろう。

 

 だからグラードンを倒せるのはほぼカイオーガのみだと考えてよい。

 

 シキがここに来れるのならば、まだレジギガスという手もあったのだが、残念ながらシキは最後の保険として残してある。

 万一自身たちがやられるようならば…………その時は唯一伝説を従える彼女だけがグラードンに対抗できる…………可能性がある。

 

 カイオーガと比べて、グラードンは生命への殺傷能力が極めて高い。

 

 全員で出てきて一網打尽にされるリスクは極力減らすべきだった。

 

 故に、取りうる手段はもう一つしかない。

 

 カイオーガを使ってグラードンを倒す。

 

 これだけのシンプルな話だが、これが極めて難しい。

 

 まず第一に、グラードンとカイオーガは同格だ。

 同格だが、この場においては明確にカイオーガが不利である。

 理由は簡単で、()()()()()()()()()()だ。

 

 たいりくポケモングラードンは大地の上でこそ真価を発揮し。

 

 かいていポケモンカイオーガは大海の中でこそ真価を発揮する。

 

 つまり、陸の上で戦う限り、カイオーガではグラードンには勝てない。

 

 じゃあどうするか。

 

 考えた末、決めた作戦がそれだ。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そのための手段をこうして時間を稼ぎ、用意したのだ。

 

「よし、間に合った! 行けるな? サクラ、アオバ」

「だいじょーぶ!」

「ここに来る間に凡そのことは把握している、すぐにでも動ける」

 

 人化したアオバとサクラが共に降り立ってくる。

 同時に、グラードンへと視線を向ければ、五対一にも関わらず五を押す怪物の姿。

 それでも均衡を保っているのは、先ほどと違い、ダイゴが指示を出しているからだろう。

 

 いつの間にかボールから出したエアームドの背に乗りながらメガボスゴドラへ、メガメタグロスへ、そしてアクア、ルージュ、シャルに指示を出し、グラードンの圧倒的な火力を上手く逸らしながら戦っている。

 それでも相手に与えたダメージはすぐに回復され、こちらは一方的にダメージを貯める以上展開はジリ貧だ。

 

「にーちゃ!」

「ハルト」

 

 二人の声に一つ頷き。

 

「やろう…………あのトカゲを、海で溺れさせてやる」

 

 作戦決行を合図した。

 

 

 




え、なんでこんな遅くなったのかって?
なんか、所属してる身内だけ(4人)の騎空団で古戦場やってたら、一人初日に1500万稼ぎきったやつがいたお陰で本選出てた。
あとリブレスとかいう糞ゲーが始まったお陰でレイドイベントずっと周回してたり、オトフロやってたり、PSO2やってたり、仕事が忙しかったりでなかなか時間が()





ちょっとだけ本作品での余計な設定的なものをば。

“じしん”系の技は全体攻撃、でも本当に360度攻撃してたらトレーナーまで巻き込まれるはず。
というわけで、基本的に全体攻撃というのは前面に向かってある程度の射程を持った攻撃、という扱いにしてます。
じゃないとなみのりで相手のトレーナーまで飲み込むとかなったらやばいし。

だからある程度の距離を開けてれば“じしん”は届かないし、そもそも角度的に死角になってる部分がある、みたいな解釈。

あと地面を揺らすという攻撃の性質上、(演出的な)溜めが必要になります。
グラードンの場合、拳で大地を叩いて揺らしているので、その間が隙になる。
あとそもそも浮いてたり、グラードンの体によじ登れば当たらない。
というのをグラードンも学習して、全体攻撃控えめになってる。
そもそもまともに全体攻撃食らうと一発で全滅なので、全避けが基本になるんだが、そうすると戦闘描写にいまいち盛り上がりが足りないというジレンマ。


因みにデータ的にグラードンは1ターン(この小説では約6秒)でHP4000以上は回復してる。
これを上回る攻撃叩きこみ続けない限りは、グラードン倒せません。
アクアが6積で全力ぶっぱしても1ターン2000~3000なので、普通に無理。ルージュはもっとダメージ下がるし。
あと『とくぼう』低くてもレベル250だから。雑に計算するとレベル100の実機換算なら種族値200オーバーのHP35000。
『ぼうぎょ』に至ってはその2倍近いので、正直レジギガスの全力でもワンパンは無理。

というわけでカイオーガ以外はほぼ無理ゲーだったりする。

(この糞みたいな怪物を一撃で3割以上削ったバケモノが主人公のPTにいるらしい)
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