チャンピオンマッチVSレッド①
チャンピオン、そう呼ばれる存在がいる。
春の地方リーグ予選を勝ち抜き、夏の本選を勝ち抜き、秋のチャンピオンリーグを勝ち抜いた、文字通り、その地方のトレーナーの頂点。
頂点、と言えど、それはあくまでその地方においての話であり、別の地方へ行けば別の頂点が存在する。
とは言え、それでもその地方のトレーナー全ての頂点であることには変わりなく、トレーナーたちが目指す先であり、須らく憧れを抱く存在でもある。
チャンピオン、その地方における最強の称号。
最強のポケモントレーナーの証。
故にその名は決して安いものではない。
ポケモンは人類の隣人である。
だが同時に、人類の最も近い脅威であることも事実だ。
そして人類がポケモンに対抗するためには、同じポケモンを使って戦うポケモントレーナーを頼るしかない。
そのポケモントレーナーの最高位、それが示す事実は。
地方の最高戦力、ということである。
地方に降りかかる災いに、その地方で最後に頼り、縋る相手、それがチャンピオンという存在であり。
弱いチャンピオンはチャンピオンに非ず。
チャンピオンとは常に最強、そういう絶対の強さを必要とする。
だからこそ、なのだろう。
齢十歳にして、その場所に立った二人の少年。
そこに何の不安も抱かなかった、と言われればそれは嘘になる。
片や最硬の鋼の王を破った人形遣い。
片や最強の竜の王を破った深紅。
果たしてその強さは本物なのか。
そこに疑問を抱いた人間たちがいた。
それはホウエンが伝説の災禍に見舞われるよりも少しだけ以前の話。
世界最年少チャンピオンの二人が公式で行った最初で最後の戦いの物語である。
* * *
「さーって、と」
手の中でボールを弄びながら、視線の先に立つ少年を見る。
エクストラチャンピオンマッチ、そう銘打たれたポケモンバトルはカントー地方、ポケモンバトルが総本山、即ちセキエイ高原のポケモンリーグにて行われていた。
基本的に地方チャンピオンは地方の外へと出ることが少ない。
いや、個人的に、というのならともかく、仕事で、となると本当に稀としか言いようがないレベルだ。
特に今回のような他地方のチャンピオンと戦う、というのはダイゴ曰く、本当に例外中の例外な話らしい。
まあ当然だろう、チャンピオンとは地方における最強だ。
だが他地方にも同じ最強が存在しており。
地方チャンピオン同士が全力で戦う、というのは言ってみれば地方同士に優劣をつけるに等しい行為だ。
故にそこまでしてこの試合が組まれた意図も察せられる。
要するに、十歳児がチャンピオンの地位に立っていることが気に食わないのか、或いは不安なのだろう。
チャンピオンとは地方の最高戦力だ、それがトレーナーになってまた一年も経たない子供だという事実に不安を感じるのも無理は無いのかもしれない。
特にホウエン地方もカントー地方も過去にポケモン災害で痛い目を見てきた。
カントーチャンピオンにいたっては、ジョウト地方のチャンピオンも兼任する、つまり二つの地方の最高戦力である以上、どの地方のチャンピオンよりも強いことが期待される。
だからこうして、公式に試合を組み、全国に公開して、その強さの程を計ろうという魂胆、なのだろうが。
「まあ、どうでもいいんだ、そんなこと」
そんなもの、トレーナーでない人間の戯言なのだから。
チャンピオンと言う存在の理不尽さは、結局のところトレーナーが一番良く分かっている。
あのダイゴに勝った自分の実力というのは、トレーナーだからこそ、最も良く理解できる。
だからこそ、リーグトレーナーから自身の実力を疑う声は無かった。
疑っているのはトレーナーでも無い人間ばかりだ。
だからこそ、どうでも良い。
そんなものはどうせこの一戦で証明できる。
そんなことよりも問題は、目の前の相手だろう。
―――カントー・ジョウト地方チャンピオンレッド。
メタ知識で考えるながらポケットモンスターシリーズにおける初代主人公。
ネット界隈で原点にして頂点と称される最強のポケモントレーナー。
まだ十歳、自分のように転生していないのならば本当にただの子供が才覚でもってここまでやってきた、つまり自分のような子供の振りをしているだけの偽物と違って本物の天才というやつだろう。
まあ才能だけで勝てるなら、自分がダイゴに勝てるはずも無いので、そこに萎縮する必要も無いだろうが。
問題は、だ。
相手のトレーナーズスキルだろう。
面子自体はほぼ割れている、少なくともエースのピカチュウは確定。
他の面子も初代御三家のフシギバナ、リザードン、カメックス、それからカビゴンも恐らく出てくるだろう。
事前に調べたが、他にもプテラやニョロボンなどもいるようだが、この場で出すにはレベルが今一足りない。
多少の相性の差はレベルで覆されるためこの場では出てこないと見て言い。
となると最後の面子はラプラスかエーフィか。
いや、シロガネやまの環境を考慮しないならばエーフィの可能性のほうが高いか?
ラプラスではカメックスと相性の有利不利が被りやすい。
どのポケモンも高いバランスでまとまった性能をしているが、弱点も多い。
あとはメガシンカがあるか無いかによって違いもあるだろうが、見たところキーストーンらしきものは持っていないので恐らく無いだろうと予想はできる。
とは言え、こちらの面子はすでに決まっている。
決まっている、というか固定されている。
だからまあ、まずは。
「行ってこい、チーク」
「ピカチュウ」
互いのボールを投げる。
試合開始の合図なんて必要も無かった。
ただ目と目が合えば、その瞬間にバトルは始まる。
当然の理だ、ここにいるのはチャンピオンとチャンピオン。
それは即ち、極まったポケモントレーナー同士ということなのだから。
投げられたボールから互いのポケモンが出てくる。
「シシ……さあ始まり始まり、さネ」
「ピッカァ!」
こちらはデデンネのチーク、相手は予想通りピカチュウ。
だから、すでに手は決めてある。
「チーク!」
「あいサ!」
“つながるきずな”
“こうきしん”
“なれあい”
相手のピカチュウが動くより先にチークがピカチュウに駆け寄り、擦り寄る。
「ピカチュウ!」
「ピッカー!」
“10まんボルト”
お返しとばかりにピカチュウの放つ電撃がチークを捉え。
「シシ、お仕事完了さネ」
“ボルトチェンジ”
電撃を撃たれながらピカチュウを蹴り上げ、その勢いのままにボールへと戻っていく。
「『でんき』タイプ?」
“ボルトチェンジ”を放ったチークを見て、赤帽子の少年、レッドがぽつりと呟いた。
やはりヒトガタというのは一見しても簡単に元のポケモンが分からないため奇襲性があるな、と内心で思いつつ。
「イナズマ!」
チークの戻ったボールと入れ替えるようにして、もう片方の手でイナズマの入ったボールを投げる。
「代わるよ、ちーちゃん!」
そうして全身に電流と迸らせながら場にイナズマが現れる。
これで特性と『こうげき』の下がったピカチュウが場に取り残され。
「っ!?」
僅かに驚いたように、レッドが目を見開いた。
「イナズマ! 次!」
「はい!」
“わたはじき”
そうしてイナズマの全身から白い胞子が弾きだされる。
一瞬驚きはしたもののさすがはチャンピオンか、レッドとピカチュウも直後に動き出す。
“でんこうせっか”
その場から掻き消えるかのような高速移動でピカチュウがイナズマへと体当たりし。
「っっと」
威力自体はさほど高いない技だ、イナズマも一瞬表情を歪ませるがすぐに技を放とうとし。
“しっぷうじんらい”
ばちん、と全身に電撃を迸らせたピカチュウがまるで雷のような速度でレッドの元へと戻っていく。
「戻った!?」
いや、交代自体は予想通りだが戻り方は予想外だ。
『攻撃後に味方と交代する』だろうか、この場合。つまり“とんぼがえり”や先ほどの“ボルトチェンジ”のような交代効果を技の付与できるということ、しかも先制技まであるとなるとあのピカチュウを確実に仕留めるにはシャルで縛るか、ピカチュウ以外の全員を倒すくらいしかなくなる。
とは言え、それはそれで交代相手へ負担をかけれることを考えれば決して悪くはない……はずなのだが。
何か嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
いや、或いは相手がレッド、ということで無駄に警戒してしまっているのかもしれないが。
実際のところ、ピカチュウというのは決して強いポケモンではない。
何せライチュウという明確な進化先があるのだ。進化前のポケモンである以上、まだ成長途中と言える。つまり未熟であり、未完成なポケモンだ。
だがレッドの代表的なポケモンと言われればどうしても真っ先にピカチュウが出てくる。
単純な創作のイメージ、ではなく。
現実にチャンピオンレッドはこのピカチュウをエースとしてカントーポケモンリーグを制覇している。
残念ながら他地方のリーグ戦故、映像記録などはそれほど無かったが、明らかにピカチュウが倒せるような相手ではないようなポケモンも何匹と倒しているのは知っている。
つまり、あれはただのピカチュウでは無い。
チャンピオンがエースに据えるだけの強さを持ったピカチュウ、ということになる。
だからこそ、妙なことをされる前に倒してしまえるならばそれでも良いし。
チークで起点にし、イナズマで積んで、それを引き継ぎながら戦う。最初にそう決めたのは決して間違いではない、と思いたいのだが。
基本的にレッドの手持ちのポケモンはピカチュウとフシギバナ以外、イナズマで攻めることができる。
カメックス、リザードンは『でんき』技に弱いし、ラプラスなら同じこと、エーフィでも基本的に耐久は低いためイナズマの火力で押し切れる。
カビゴンは少し厄介だが、能力を積み上げて殴り合えば勝つ自信はある。
だからこそ、最初にピカチュウを起点にし。
「行って、フシギバナ」
「スイッチバック! シャル!」
フシギバナを引き寄せる。
ヒトガタとは言え、全身から電気が走っているイナズマを見ればまず『でんき』タイプであることは思いつくだろう。
そしてそれを受けるならカビゴンかフシギバナの二択だが。
「半減相性ってのは魅力的だよな」
カビゴンは『ノーマル』タイプ、さらに言うならばその『HP』と『とくぼう』の高さを考えれば、特殊技を使う相手全般に強く出れる。
ただ反面『ぼうぎょ』は低いので物理技には弱い。
レッドとてイナズマが『でんき』タイプであることは察しているだろう。
ただ物理寄りなのか、特殊寄りなのか、どちらであるかは分からないはずだ。
だとするならば、ここで頼れるのは『くさ』タイプで確実に『でんき』技を半減できるフシギバナであり、何よりフシギバナなら“じしん”で『でんき』タイプ相手に弱点が狙える。
そして。
一番厄介な相手が確実に出てくるタイミングが分かっているならばそれを狙わない道理はない。
「止まって!」
「ギャ……ォォ……ァ」
“かげぬい”
場に出たシャルが同時に出てきたフシギバナへと影を伸ばす。
影がフシギバナの影を絡めとり、縛り上げ、その本体すらも拘束する。
そうして。
「燃やせ」
“シャドーフレア”
メガフシギバナならばともかく、ただのフシギバナにそれが受けられるはずも無く、一瞬にして燃え尽き倒れ伏す。
「っ……」
瞠目し、沈黙するレッドだったが、すぐにフシギバナを戻し。
「カメックス」
放たれるボールからカメックスが現れる。
「ゴォォォ!」
場にカメックスが現れて。
「「戻れ」」
「なっ!? リップル!」
「ピカチュウ!」
予想を超えた行動に、一瞬戸惑うが、けれど慣れた動作が無意識にリップルのボールを手に取り、投げていた。
ボールからリップルが、相手はピカチュウを場に出し。
“みんなのエース”
「ピッカー!!!」
吼えるように態勢を伏せながら威嚇するピカチュウに、一瞬嫌なものを感じ。
「リップル!」
「りょーかい」
“まもる”
一手攻撃を守る……否、守ろうとして。
「ピカチュウ!」
「ピィィィィカァァァチュウウウウウウ!」
“ほんき”
“やるき”
“ゆうき”
鉄がごとき堅い尾を叩きつけた。
“アイアンテール”
ずどぉぉん、と。
まるで巨大な鉄槌でも叩きつけたような音が響き。
「う、そ……ごめん、マスター」
リップルが倒れる。
リップルが……ヌメルゴンが、ピカチュウの攻撃一発で倒れる。
それは中々に受け入れがたい光景だった。
ランク効果まで乗っていたはずのリップルが一撃でやられるというのは、ちょっと信じがたい話であり。
いや、そもそも“まもる”が完成するよりも早く技が出たという事実に何よりも驚く。
“まもる”は優先度+4、実機においてほぼ最速で形成される技だ。
それを“アイアンテール”が速度で上回るというのはどう考えてもおかしな話である。
だが現実としてそれは起こっている。起こっている以上受け入れるしかなく。
“しっぷうじんらい”
そうして呆然としている間に、ピカチュウが再び雷を纏いながらレッドの元へと戻っていく。
「っ! イナズマ!」
受けポケモンのリップルが落ちた以上、簡単には交代がしづらい。
最悪チークで受けるというのも手だが、それは最後の手だ。
だったら受けて殴る、というスタイルのイナズマが最適解だと信じる。
何より一番相性の悪いフシギバナがすでに落ちている以上、簡単に止められはしない。
「カビゴン!」
そうして相手が出してきたのは巨体のカビゴン。通常のサイズより一回りか二回りも大きい。
これは厄介だな、と思いつつも。
「イナズマァ!」
「はい!」
“むげんでんりょく”
バチバチ、とイナズマの全身に電気が迸る。
そうしてカビゴンへと手を翳し、放たれるは。
「ついでに持っていけ!」
“きずなパワー『とくこう』”
“レールガン”
極光がカビゴンの巨体を包み込む。
最大威力の一撃がカビゴンを襲い。
“がまん”
“きあい”
「ゴォン!」
“ほんき”
“ゆうき”
“じしん”
どん、とカビゴンがその剛腕を地面へと叩きつけ。
地響きは鳴り、大地が鳴動する。
『でんき』タイプには弱点となる一撃がイナズマへと叩きつけられ。
「ぐ……う……」
がくり、とイナズマが膝を着く。
と、言うか先ほどから薄々は気づいていたが。
―――こいつら全員能力ランクを完全に無視している。
能力を上げたはずのイナズマがいくらなんでもダメージを受けすぎだし、“わたはじき”の効果も全く効いていないようにしか見えない。
恐らくレッドのトレーナースキルだろうと予想はできる。
『てんねん』など同じような特性もあるし、トレーナーズスキルでそれを再現していてもおかしくはない。
『つながるきずな』が意味を為さない……いや、絆を無意味とは言わないが、現状その効果を発揮できているとは言えない状況になっている。
これは多少計算外な話になってきた。
元よりそう読み合いが得意な性質でも無い、事前にある程度考えは練ってきたが、この展開は予想していなかった。
とは言え、元よりそう多くができるわけでもない。
自分にできることなど限られている。
「イナズマ!」
“つながるきずな”
それが無意味でも。
「はいっ!」
何の効果が無くても。
“10まんボルト”
それでも。
「いっけええええ!」
信じる、それしかできないのだから、それだけは決して止めない。
「ご……ォ……」
「戻れ、カビゴン!」
それだけの話だ。
* * *
状況を整理しよう。
こちらの手持ちは残り五体。
リップルがやられ、イナズマがすでに大ダメージを負っている、長くは戦えないだろう。
相手は残り四体。
フシギバナとカビゴンが倒れているが残りは全員無傷だ。
状況的には五分に見えるが、残ったポケモンの性質を考えるとこちらがやや不利か。
相手の残り四体に対してイナズマが一貫して通るのだがその肝心のイナズマがすでにやられかけている。
さらに相手にはあの厄介なピカチュウが残っているという事実も見逃せない。
イナズマは典型的な鈍足アタッカーだ。
実機でもそうだが鈍足アタッカーというのは攻撃を受け、耐えてから倒し返す、という性質上、一体、ないし二体倒せれば上出来な部類だ。
そういう意味ではすでにイナズマは役目を果たしているのだが。
ことごとく相性の悪い相手と対面し、削られてしまっているのはトレーナーである自分の未熟としか言いようが無い。
恐らく、下手をすれば次でイナズマは倒れる。
それを回避する手も無くは無いが……リソースをどこまでつぎ込むか、というのは問題になってくる。
きずなパワーによる回復や、攻撃の回避などまだ手札はある、が。
下手に手を尽くしてイナズマを生かそうとして、それをあっさり倒されれば無駄な手を切ることになる。
回復はそれを上回るダメージで、回避は必中効果で無駄になる。
そうすると残りの四体が相手の四体に対してやや相性の悪い形になる。
趣味パ故の偏り、というべきか。
イナズマの通りが一貫して良いためできれば残したいが、ほぼ確実に後出しになるイナズマを生かすにはリソースを無駄なく切り続ける必要があり、手札を尽くすまでにイナズマがどれだけ相手を落とせるか、という勝負にもなってくる。
こちらが有利なのは未だにイナズマが生きているという点。
そして相手がこちらの手札を全て知らないだろう点だ。
―――一瞬の思考の間。
考えても考えても、相手がどう動くかなんて思いつかない。
元よりそう深く考えることのできる性質でも無いのだ。
だったら、先ほどと同じ。
自分のやりたいようにやるだけだ。
「行けるな、イナズマ!」
「あ……はい!」
こちらの意図を理解したイナズマが、こくり、と頷く。
そうしている間にレッドがボールを投げ。
「エーフィ!」
「キャォ……ピァァ」
薄紫色の猫のようなポケモン……エーフィが現れる。
視線をすっと細め、エーフィがイナズマを見つめ。
“サイコキネシス”
“10まんボルト”
念動力がイナズマを捉えるが、一瞬早くイナズマの電撃を放たれる。
「耐えろ、イナズマ!」
“きずなパワー『とくぼう』”
念動がイナズマを大地に叩きつける。
苦悶の表情を浮かべるイナズマだったが、直後にイナズマの放った電撃をエーフィを襲う。
「ピァ……ァ……」
“きあい”
だがそれでもエーフィは倒れない。
苦しそうな悲鳴を漏らしながらも、それでもゆらりゆらりとイナズマを見つめ。
「スイッチバック」
イナズマを即座に戻し。
「シャル!」
「っ、はい。行きます!」
シャルが現れる、と同時にその影が伸び。
「戻れ、エーフィ」
レッドがエーフィをボールに戻し、入れ替わりに投げられたボールから。
「ピッカ!」
ピカチュウが現れる。と同時にピカチュウへと影が伸び。
「ピカチュウ!」
「ピイイイイッカアアアア!」
“しっぷうじんらい”
“やるき”
“ゆうき”
影すら置き去りにした一瞬の動きで、ピカチュウがシャルへと迫り。
“ボルテッカー”
電撃を全身に纏った激突が軽々とシャルを吹き飛ばす。
二度、三度と地面をバウンドしながらシャルが転がり。
「あ……う……」
一瞬にして瀕死に追い込まれた。
「っ……嘘、だろ」
交代後の最速攻撃、それだけでも信じがたいのに。
“しっぷうじんらい”
再びピカチュウが雷電を纏いながらレッドの元へと戻っていく。
技を繰り出し即座に戻る、味方と交代した時攻撃する。この動きが完全にセットになっている。
しかもピカチュウの種族値から考えればあり得ないほどの強烈な威力の攻撃が加わって凄まじいまでの脅威としてそこに存在している。
どうする? どうする? どうする?
思考が回れど答えが出ない。
シャルはあれでも火力という一点では最強に近い。
この状況でアタッカーを失うということはかなり不味い。
何より、次に何を出せばいいのか悩む。
どれだけ考えても、あのピカチュウの存在が前提を片っ端から崩してくる。
どうする、どうする、どうする、それだけを考え続け。
かたり、とボールが揺れた。
「…………」
視線を向け、それが誰のボールかを確認し。
「……分かった」
手に取る。
そうして。
「頼んだ、エア!」
投げた。
デート……の前に。前からずっとレッド戦書きたかったから書く。
因みにだが、レッドさん
育成は得意ではない模様。というか、それでもチャンピオンってどうなってんだ、と言われるとこれが答えだ。
ポケモントレーナー レッド
手持ち:ピカチュウ、カビゴン、エーフィ、フシギバナ、カメックス、リザードン(全員レベル100)
トレーナーズスキル(A):ほんき
味方のテンション値を最大値にする。
トレーナーズスキル(P):ゆうき
テンション値に応じて味方の技の威力を増減する。
トレーナーズスキル(P):がまん
テンション値に応じて味方が受けるダメージを軽減する。
トレーナーズスキル(P):きあい
テンション値に応じて味方が『ひんし』になるダメージを受けた時、確率でHPを1残す。
トレーナーズスキル(P):やるき
テンション値に応じて味方が確率で相手より先に行動する。
トレーナーズスキル(P):がんばり
相手の『能力値』『技の威力』以外の数字を無視する。
トレーナーズスキル(P):ドてんねん
相手の異能スキルの効果を受けない。味方と相手の能力ランクの変化の影響を受けない。
【名前】ピカチュウ
【種族】“レッドの”ピカチュウ
【性格】むじゃき
【特性】しっぷうじんらい:自分が技を繰り出した時、味方と交代する。味方と交代して場に出た時、『ひこう』か『でんき』タイプの技を繰り出す。
【レベル】100(図鑑表記)
【持ち物】でんきだま
【技】
【10まんボルト】
【アイアンテール】
【でんこうせっか】
【ボルテッカー】
【裏特性】
【ジャイアントキリング】
相手が自分より合計種族値が高いほどトレーナーズスキルの効果が上昇する。
【チャージタイム】
1ターン以上戦闘に出ていなかった時、次に場に出た時『じゅうでん』状態になる。
【みんなのエース】
前のターンに味方が倒れている時、トレーナーズスキルの発動確率と効果が上昇する。
【備考】
【専用個体】
トレーナーが『レッド』の時、『レッド』のトレーナーズスキルの発動率が極めて高くなる。自分の特性を『しっぷうじんらい』に変更する。
Q.つまり?
A.アニメ仕様
コンセプトは『数字殺し』。
能力を〇倍にする、とか技の威力を〇倍にするとか、×に軽減する、とか〇%の確率で、とかそういう数字系を全部殺して、ノリと勢いとテンションだけで能力が上がったり下がったり、技の威力が上がったり下がったり、食いしばったり、先行取ったり、好き放題してる。
因みに数字が明確に書いてないけど、一応執筆参考用にはある程度範囲決めてる、決めてるけどピカニキだけはジャイアントキリングの効果で上限が消えるので、ぶっちゃけほぼ常時一撃必殺状態(
あ、因みにハルトくんですが、3章終了時のデータを使ってます。
これ10歳の時の話なんで。ほぼチャンピオン戦の時のデータです。
さらに因みに因みに。
ドてんねんの効果だが。
レッドさん、運命力に関しては主人公級の中でも最上位なので、ぶっちゃけ。
伝説種の異能すら無視するよ!!!
伝説<超えられない壁<レッドさん
まあマサラ人なら当然のことだね。