ポケットモンスタードールズ   作:水代

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ちょっと色々詰め込み過ぎた気がする。


600族のくせしてオチにもならんやつめ

 いしのどうくつでチークとイナズマを捕獲し、通路を分断する土砂と岩をどかし、そしてシアとシャルを回収し。

 どうくつを出るとまだ昼を過ぎたばかり。ギラギラと照らす太陽に頭がくらくらしながらムロタウンへと向かい、ようやくムロタウンのポケモンセンターにたどり着く。

 

「疲れたああ」

 手持ちを全員預け、宿泊で借りた部屋のベッドにダイブする。

 全身から疲労感が溢れてくる。

「あ…………やばい、眠い」

 まだ昼飯も食ってないし、汗かいたから風呂入りたい、とは思いつつも、あっさりと意識が飛び。

 

 

 目が覚めたのは夜だった。

 

 

「…………うー…………今何時だ…………?」

 部屋に置いてある時計は午後八時前。ポケモンセンターの食堂は九時までだがあそこの飯は人間の食べるものではないので、置いておくとして。

「…………何か買いに行くかあ」

 大して稼ぎも無いが…………一度家に戻った時に追加でお小遣いをもらったのでまあそれなりに手持ちはある。

「…………これってニートじゃ…………いや、まだ五歳児だからセーフ…………セーフ」

 そう、まだ自分は保護者が必要な年齢…………五歳児だからセーフ。好きなように生きて、親の金で食わせてもらって、親の金をせびって他所で飯食ってても、五歳児だからセーフ、セーフなのだ。

 

「…………十五、六までに適当にリーグトレーナーでも目指すかなあ」

 

 たしかポケモンリーグ本戦に出場するレベルのトレーナーともなれば、それなりに優遇も受けられたはずだ。そこからポケモン協会に入って、適当なジムトレーナーにでもなれれば…………いやそれなら父親のコネもあるし。

「やっぱ公務員安定だね」

 国と言う括りがすでに過去に消滅した今のこの世界では、公務員と言えばポケモン協会職員だろう。

 少なくとも、これが潰れることはまずないし、ポケモンが世界に存在する限り、仕事が無くなることも無い。

 もしくは、シティ運営者と言うのもあるが、まあトレーナー知識以外は本職に敵うはずも無いし、選択肢としては除外でいいだろう。

 

「回復終わってますかー?」

「あ、はい、終わっていますよ。今受け取りますか?」

「お願いします」

 

 因みにポケモンセンターに預けていると、ポケモンたちは何も食べなくても平気らしい。

 原理は良く知らないが、要するにセンターで回復している間は、栄養剤の点滴でも受けているような状態と考えて良いのだろう。

 ただ、人間もそうだが、栄養素が取れてもそれではあまりにも寂しい。栄養剤を摂取することを食事とは言わないのは人間もポケモンも変わりは無いらしい。

 

 受け取ったボールが揺れ、中から、何か食わせろ、と言うエアからの執念にも似た気迫を感じ、一瞬だけ硬直してしまう。

「分かった分かった…………今から飯にするから」

 そう告げると揺れが収まる。食いしん坊め…………少しはシアとシャルの謙虚さを見習え。

 

 だがその前にやることがある。

 

 部屋に戻り…………そうして早速ボールを二つ、取りだす。

 

「おいで、チーク、イナズマ」

 

 そうしてボールから二人の少女が飛び出し。

 

「へーい、おひさ~トレーナー」

「…………あ、あの…………その、お久しぶりです、マスター」

 

 拳を突き上げながら無意味に元気なチークと、反対におずおずと言った感じのイナズマ。

 

「お前、元気だな」

「HAHAHA! アチキはいつでも風の子元気の子さ」

 

 何故そこでアメリカンな笑いを出してくるのだろうこの鼠娘。

 

「ちょ、ちょっと…………ちーちゃん、マスターと会うの久しぶりなんだから、そういうのよくないよ」

 少し呆れたように、そしてたしなめるようなイナズマの言葉に、てへり、と頭を掻きながらチークがぺろ、と舌を出す。

 反省しているかどうかはともかく、イナズマの言葉だと聞き分けが良いらしい。一緒にいたあたり仲と言うか相性みたいなのがいいのかもしれない、同じでんきタイプだし。

 

「…………お前は…………まあ元気そうだな」

「あ…………はい。えっと…………マスターも…………元気…………元気、そう? ですか」

 ちょっと小首を傾げながら、疑問形なイナズマになんでだよ、と視線を向けて。

「その…………なんか、ちっさい…………ような?」

 

 そもそもの疑問なんだが。

 

「お前らは一体、どっちの俺で認識してるんだろうな」

「え? えっと?」

「おいおいトレーナー、アチキたちにも分かるように説明してくんないよ、イナズマが知恵熱で倒れちゃうってサ」

「た、倒れないよ。それに知恵熱って…………赤ちゃんじゃないんだから」

「でもこのもちもちすべすべ肌は赤ちゃん並だけどね」

「ちょ、ちょっと、ちーちゃ、どど、どこ触ってるの?!」

「うっひっひっひ、良いではないか、良いではないか~」

 

 なんで一つ疑問零しただけで、いきなり目の前で百合みたいな光景が広がるんだろう。

 イナズマの服をめくり上げ、そのお腹に触れながら少しずつ上を目指すチークの手を、必死に防ごうと奮闘するイナズマ。

 あと十年歳取ってたら、良い光景なんだけどなあ…………なんて思いつつ。

 

「……………………なにやってんの?」

 

 思わず呟いたその一言に、イナズマははっとなって。

「ままま、マスター、みみみ、見ちゃダメです!!! ダメですからあ!」

「ほらほら、もうちょっとで見えちゃうよ? トレーナーも期待してるって」

「だ、ダメだから! ちーちゃん!」

 

 バリバリバリ、とイナズマの指先が放電し。

 

「うきゃう」

 

 チークが悲鳴を上げて飛びあがる。

 一瞬、緩んだ手をすぐ様払いのけて、両手で肩を抱きながら後退するイナズマ。頬が紅潮し、瞳が潤んでいて…………何と言うかエロい。

「事後みたいだな」

「も、もう! マスターまで!」

 思わず呟いてしまった一言に、イナズマがぶうっと頬を膨らませながらこちらを睨む。

 まあ目元が柔らかすぎて、睨んでるのは分かるが全く怖くない、と言うかむしろ。

 

「可愛いなその表情」

「ふえぁ?! ななななななななな、なにを」

 

 一転して驚きと羞恥に彩られる表情に、感情豊かだなあ、なんて感想を抱きつつ。

 

「…………しっかし、カオスだなこれ」

 

 思わず呟いてしまった。

 

 

 * * *

 

 

 まあ分かり切ったことではあるのだが。

 自身が捕まえるまでの五年間も、それ以前も、大よそ他三人と同じ答えが帰って来る。

 

 やはり情報は無いか。

 

 と思いつつも、無いなら無いで別に構いはしない、とも思っている。

 以前にも言ったが、もう自身は前世とはほぼ別人だと思っている。知識こそあれど、もう自分はこの世界の住人である、ならば別に、自身がここにいる理由など考える必要も無い。

 それでも五年以前と以降のことを聞くのは。

 

 また同じことが起こらないかを警戒しているからだ。

 

 突然こちらの世界に生まれたのだ、もしかするとまたいきなり別の世界へと生まれるかもしれない。

 

 前世で死んだ記憶すら無い、となれば()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ただ一つ、分かってきたことがある。

 

 自身がここにいるのが偶発的かどうかはともかくとして。

 

 自身がこの世界に来たのは、少なくとも誰かが何かを意図した結果であり。

 

 今自身が動いている行動の結果は、その誰かもまた望んだ結果なのだろうと言うことだ。

 

 自身は運命論者ではない。たった一週間で五匹、手元に集まったこの結果を自身は偶然とは呼ばない。

 自身と手持ちたちの運命だとも思わない。

 

 これは必然だ。

 

 何らかの必然がある。

 自身はほぼそれを確信している。

 

 だがそれが何なのか、誰なのかまでは分からない。

 手持ちたちから聞く情報があってもそこだけはまるで分からない。

 

「…………最後に一つだけ試してみるか」

 

 呟く一言に、チークとイナズマ、二人は首を捻り。

 

「…………明日、最後の一匹、捕まえに行くぞ」

 

 そう告げた。

 

 

 * * *

 

 

 ムロタウンは田舎だった。

 

 どのくらいかと言うと、ポケモンセンターの食堂が一番遅くまで営業している飲食店だと言うレベルで田舎だった。

 ていうかまさかのフレンドリーショップが夜八時までとかいう凄い場所だった。

 都会でなくても…………少なくとも、コトキタウンのフレンドリーショップでは二十四時間営業だったのだが。

 立地的に商品の仕入れ量が決まっているらしく、だいたい夜八時くらいにはあらかた捌けてしまうので自然こうなったらしい。

 

「ガルルルルルルルルルルルルルル」

 

 他の四匹はまだ大人しかったのでボールに入れたままだが、エアだけやたらにボールを揺らして面倒だったので、外に出しておいたのだが…………失敗したかもしれない。歩いた分だけ余計にお腹が空いてきたらしく、エアの機嫌が最底辺まで落ちている。

 視線からは殺気が溢れているし、その小さな体全体から周囲を威嚇する威圧感が放たれている。

 お前の特性、いかくじゃないんだけど、って言いたい。

 あとついでに口元からは食欲(隠語)があふれ出している。

 

 まあボーマンダっぽいっちゃぽい気がする(偏見)。

 

 お腹空いたとあまりにもうるさいので指でもしゃぶってろって言ったら自身の腕に噛みついてきたので、持ってきたカバンの中に入れていたオレンのみを食わせて空腹を紛らわさせている。

 

「うーん…………何か無い物か」

 

 これならいっそ、カイナシティまで飛んだほうがいいかもしれないなあ、なんて思う。

 カイナシティはホウエン地方でもミナモ、カナズミ、キンセツに次ぐ大都市だ。

 

 少し考え。

 

「やっぱ移動するか」

 

 明日のことを考えるならば、今のうちにカイナシティに移動しておいたほうが良いだろう。

 

「エア」

「なに?!」

 

 イライラとした様子がありありと見えて、少々頼みづらいが。

 

「カイナまで飛んでくれ」

「……………………お腹空いた」

「オレンのみ一個追加だ」

 

 カバンからさらに一つ、オレンのみを取りだす。

 

「腹の足しにもならないわよ」

「まあそう言うなって…………ほら、あーん」

 

 口開けて、と言いながらオレンのみをエアの口元へと運び。

 

「え?! え、え、え…………え、あ…………あ、あーん」

 

 先ほどまでの怒り顔から一転、顔を真っ赤にして数秒葛藤し、やがて悩み抜いた末に口を開けるエアにオレンのみを与える。

「…………美味しい?」

「……………………………………おいしい」

 たっぷりと溜めて、やがて絞り出すように呟く。

「おかわりは?」

「…………いる」

 

 にこり、と笑ってカバンに手を入れた。

 

 

 * * *

 

 

 カイナシティに向かい、夜間の海と言う中々普段お目にかかれない光景に感動し、視界の悪さに少々迷いながらもなんとかカイナシティに着く。

 カイナシティは造船所やポケモンコンテストの会場などがあり、さらに街の南西には大きなフリーマーケットにも似た市場があって夜にも関わらず賑わいを見せている。

 ただ飲食店、と呼べる類のものはだいたい閉まっており、エアの忍耐が限界まで達しようとしたところで、夜間営業の屋台を見つけ即座に急行。

 ギリギリのところでセーフと言ったところだった。

 

「あのラーメン美味しかったな」

「私、あれ好き」

 

 翌日の現在、再び空…………と言うか地面から数メートル浮いたところを飛びながら昨日食べた屋台のラーメンを思い出す。五歳児の体に油ギトギトのラーメンはけっこうもたれるので、全部は食べきれなかったが、あれは確かに美味しかった。

 エアなど三度お代わりして、自身が残した分までペロリと平らげてしまったぐらいだ。

 残りの四人も順次入れ替えながら食べ、全員が一心地着いたらポケモンセンターでそのまま寝てしまったので詳しくは説明していないのだが。

 

「どこに向かってるの?」

 

 現在はカイナシティからキンセツシティへと続く110番道路…………をさらに超えた先にあるキンセツシティからさらに東進。海上を飛びながら渡って行き、118番道路へと抜け、さらにそこを北上した先にあるヒワマキシティ。

 

 からさらに進んだ先、120番道路である。

 

 アブソルがいる場所と言えば分かりやすいかもしれない。

 

「…………雨が降ってきたわね」

 

 ゲーム中だと119番道路はよく雨が降っており、時折晴れることもあるが、基本的に雨模様でバトルが始まる。

 

 そして120番道路。

 

 ちょうどひでりのほこらの南側当たりだろうか。

 

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 だから、もしいるとすればここだろうと思った。

 

 自身の手持ち、最後の一匹が。

 

「エア…………この辺でいいよ」

「はいはい…………濡れちゃったわ、最悪」

 コートが吸い込んだ水を絞りだしながら、エアが少しだけ不機嫌そうに呟く。

 

 シア、良し。

 シャル、良し。

 チーク、良し。

 イナズマ、良し。

 

 全員いることを確認する。

 

 今から戦うかもしれない相手を考えれば主力はエアのみだろう…………辛うじてシアもいけるか。

 

 ただエアですら下手すればやられるかもしれないだけに、少しだけ緊張する。

 

 大丈夫…………みんながいる。

 

 そう心の中で呟き。

 

 がさり…………唐突に、草むらからそれは現れた。

 

「ぴょろろ?」

 

 淡い青紫色のフリルスカート状のワンピースの上から、白いコートを羽織り、腰に白いベルトを巻いて、その両脇には同じく白いベルトポーチが一つずつ、首元には淡いグリーンのスカーフ、そして服のあちこちにスカーフと同じ色の宝石状のボタンと、コートの裾にも同じ色の大きなリボンががついている。目もまた同じ淡い緑色の宝石のような瞳をしており、白い髪をツインテールにして帽子を被った十八かそこらの少女がそこにいた。

 

「…………でか」

「…………でっか」

 

 思わず吐いて出た言葉がそれだった、エアも同じ感想だったらしい。

 全体的に、うちのパーティは背が低いのが多い。一番高いのでシアかイナズマか、まあ身長155あるかないかと言った感じなのだが。

 目の前の少女は身長170…………下手すれば180くらいはありそうだった。

 

「ぴょろろろ♪」

 

 そうして少女を二人して見ていると、こちらを見た少女が笑みを浮かべ。

 

「えっ」

「ちょっ」

 

 自身とエア…………()()()()()()()()()()()()

 

「にゃああああああああああああああああ、なんか変な感触がするうううううううううううううう」

「すべすべ肌、というか、ぷよぷよ肌?」

 

 エアが悲鳴を上げ、スライムか何かでも表面につけているかのような不可思議な感触を目を丸くし。

 

「ぬふふふふ~…………リップル幸せ心地~…………って、あれれ? マスター?」

 

 ふっと、自身に気づいた少女がこちらを見つめ、首を傾げる。

 

「…………オチにもならんやつだな、お前」

「ぬーん?」

 

 そういう種族だったよなあ、とふと思い返す。

 戦闘するかも、とか思ってた自分が馬鹿みたいだ。

 

 名前はリップル。

 

 種族…………ヌメルゴンだ。

 

 

 




このオチだけは実はシア捕まえようとしてたころにはすでに決めてた(
ここまで戦闘ばかりですっかり心がやさぐれている主人公である。


一応だけ説明すると、ヌメルゴンと言う種族は人懐っこい種族で、特に気に入った相手には抱き着いて相手をヌルヌルにするという意味の分からん習性がある。

主人公に抱き着いた理由? …………本能じゃね?



最後の一つ。

6Vフカマル出たと思ったらすながくれだったあああああああああああああああああああ。

と言うわけでそのうち砂パでも作ってやる(

あ、ゴースとフカマルの厳選完了しました(
HBCDSの5VようきゴースとHABDSの5Vようき夢フカマル。これでいいや、別に。
フカマルは辛かった(

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