ポケットモンスタードールズ   作:水代

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すまん、アオバ! お前の存在忘れてたわ!


特別編クリスマスドールズ②

 

 * コミュニケーション【チーク/ハルカ/クレナイ】 *

 

 

 シシ、と楽しそうな笑い声が聞こえたのでそちらに向かって見れば、チークとハルカちゃんという珍しい組み合わせが机を囲んでいた。

 そして相変わらず、というべきかハルカちゃんの背に隠れるようにクレナイが張り付いている。

 

「なんだか楽しそうだね」

「ん? おー、ハルトじゃないカ」

「ハル君、めりくりー」

「やあハルちゃん、めりくりー」

 

 ちらりと視線をハルカちゃんの後ろのクレナイに移すが、ふいっと視線を逸らす。

 代わりにぎゅっとハルカちゃんに抱き着く力を増したようで、困ったようにハルカちゃんが苦笑した。

 

「相変わらずべったりだね」

「うん……何でだろうね? 他の子はそうでも無かったんだけど」

 

 確か二年ほど前だったと思う。

 オダマキ博士はホウエン地方を代表するポケモン博士であり、実機でも主人公に御三家をくれる人物でもあったのだが、娘であるハルカちゃんが正式にトレーナー資格を取ったお祝いとしてポケモンの卵を送ったのだ。

 それがアチャモの卵。まあ初心者用のポケモンとしてホウエン地方のポケモン協会のほう主導で個体数を増やすことを推進しているのでその中の一つをもらってきた、ということなのだろうが。

 

 問題は、だ。

 

 基本的にポケモンというのは全員卵生、というか卵から生まれるのだが、基本的に全員最初に見た存在を親と思い込む『刷り込み』のようなものがある。

 特に鳥ポケモンの場合これが強く、生まれたアチャモはハルカちゃんを親としてどこに行くにも一緒と言うほど懐いていた。というか懐き過ぎた。

 生まれたてのポケモンは厳しい野生環境の中で生き残るために一週間もすれば自立して独自に動くようになるのだが、ハルカちゃんが甘やかしすぎたのかアチャモがそういう性格だったのか、いつまでも親離れできず、ついには進化した未だにハルカちゃんにべったりなのだ。

 

 それが一つ目の問題。

 

 そしてもう一つが。

 

 生まれたアチャモ……ニックネームクレナイが()()()()だったこと。

 

 それを知ったオダマキ博士が白目剥いていたことはどうでもいいとしても、見た目長身痩躯の美少年が十歳の幼女に四六時中べったりという絵面が凄い。

 さらに言うなら凄まじいまでにマザコンをこじらせてしまっており、ハルカちゃんに近づく者全て敵と見なし始めるし、そのせいで一時期ノワールととんでもないことになったり、その被害がこっちまで来てアースがキレてクレナイ叩きのめしてルージュがキレてノワール叩きのめしてエアがキレて全員叩きのめした辺りでようやく事態が収束した。

 

 それから二年経って少しは落ち着いたかと思えば全くそんなこと無く、今もハルカちゃんに近づく俺をじとーと睨んでいる。

 前はこの辺で手が出ていたのだが、ハルカちゃんがさすがに怒ってからはハルカちゃんの身近な人やポケモンには手出ししなくなった。

 

「一応育ててやったの俺なんだけどなあ……未だにハルカちゃん以外には?」

「んー。最近はマギーとかとは少しは話してるみたいだよ? ノワールは……うん、ほら、ちょっと相性が? あとアオバは単純にまだ入って間も無いから警戒してるみたい」

 

 ハルカちゃんが手を伸ばしクレナイの頭に乗せれば、険しい表情が途端に解けて満面の笑みを浮かべる。

 ある意味チョロいなこいつ、と内心で思ったのがバレたのか、また視線がこちらを向いて……。

 

「それで、何の話してたの?」

 

 ハルカちゃんとチークという珍しい組み合わせである。

 一体この二人が何を話していたのか、というのはかなり興味がある。

 

「んー? 最近のフィールドワークの話かな」

「だネ」

「フィールドワーク?」

 

 ハルカちゃんの趣味である。正確には将来へ向けての勉強の一環と言ったところなのだろうが、まあ最近は父親であるオダマキ博士に習って多少本格的になってきたらしい。

 

「ほら、半年くらい前の一件で生息域が大分変ったでしょ?」

「あーうん……そうだね」

 

 伝説大集合なあれの件である。

 グラードンが『えんとつやま』吹っ飛ばしたり、カイオーガが『めざめのほこら』吹っ飛ばしたり(正確にはレジギガスだが)、レックウザが『そらのはしら』吹っ飛ばしたり。

 まああいつらどいつもこいつも力が強すぎてちょっと動いた程度で異常気象に大災害のオンパレードなのでたまった物ではないのは人間だけでなく、野生のポケモンも同じだ。

 それまで荒れ狂う伝説の天災から逃れるためにそれまで住んでいた住処を捨てて新天地へと旅立ったポケモンは決して少なくなく、半年ほど前からホウエン全土においてポケモンの生息域の大きな変化が起こったのだ。

 

「私もそうだけど、チークもしょっちゅうミシロから飛び出してるし、色々話聞いてたの」

「……お前、そんな遠出してるの?」

「シシ、時々、だヨ?」

「まあ気を付けろよ?」

「…………」

 

 一瞬チークが目を丸くして、ニカッと笑う。

 そのままばっと飛びついてくるので思わず抱き留め。

 

「うん……分かってる、大丈夫だよ」

 

 自分にだけ聞こえるような小声でぼそりと呟くとすぐ様ばっと離れて再びハルカと話始める。

 こちらを一瞬ちらりと見やり、ニヤニヤと笑みを浮かべるハルカから多分赤くなってるんだろう顔を逸らし。

 

「……次、行くか」

 

 逃げ出すようにその場を離れた。

 

 

 * * *

 

 

 * コミュニケーション【シャル/イナズマ/リップル/サクラ/アオバ】 *

 

 

「にーちゃ!」

 

 どん、と横合いから衝撃が走った。

 勢いはあったが幸いにして衝撃は軽く、持っていたコップを落とすことは無かったが。

 

「サクラ……コップ持ってるときにだきつかな……い……で?」

 

 幼女がいた。否、間違えた。

 

 ―――サンタがいた。

 

 赤と白のふわふわとしたローブを纏い、三角帽子を被ったサクラが満面の笑みでぐりぐりと自身のお腹に頬を擦る。

「えへ……にーちゃ! さんた!」

「あ、うん……そうだね、サンタさんだ、うん。可愛い可愛い」

 少しびっくりしたが、視線を上げればイナズマとリップルがテーブルの端で笑みを浮かべてこちらを見ている。どうやらあの二人が主犯らしい。

 まあ似合っている、元々の配色が赤と白だけにそれほど違和感も無い。

 自身よりも幾分か低い位置にあるその頭に手を乗せぐりぐりと撫でてやれば、また笑みを零す。

 

「お前らの仕業か?」

 

 抱き着いて離れないサクラを担いで歩く。

 羽毛のように、とは言わないがかなり軽く持ち上がったのは恐らく念動で自分を持ちあげているのだろうと予想する。

 まあ軽い分には問題無いとイナズマとリップルの元へと行き。

 

「……なにやってんの、シャル」

「は……はわ、はわわわわわ、みみみ、見ないで?!」

 

 この寒い十二月に茶色のショートパンツと茶色のショートブラ。そして頭には角っぽいものの生えたカチューシャ。

 

「トナカイだよ~」

「私が作りました!」

「見ないで~~~!!!」

 

 セクシー……というかもう控えめに言ってもエロい。お腹とかもう丸出しだし、良く寒くないなと思うが一応こいつ『ほのお』タイプなんだよなあと納得させる。その割に寒がりな気がするが。

 顔を真っ赤にしているが、元が白いだけに余計にはっきり分かる。というかもう赤いのがむしろエロティックな感じがする。ドスレートに言ってエロい。

 

「……シャルちゃんてば、えっち」

「うわああああああああああああああああああ」

 

 顔を覆いながら入口目掛けて逃げ出してしまったシャルに苦笑しながら視線を戻す。

 人差し指を口に当ててニコニコと笑うリップルと頬に手を当てて笑みを浮かべるイナズマ。というかイナズマはもう何かもう艶々と艶めいて見えるんだが。

 

「お前らは普通の衣装か……いや、普通か?」

 

 イナズマがミニスカサンタ服。

 そしてリップルがトナカイ着ぐるみである。

 

 トナカイの着ぐるみである。

 

 いやまあ高身長のリップルだけに、似合っていると言えば似合っている。

 トナカイもデフェルメされた可愛いやつだし、ちょうどフードを被るとすごくそれっぽい。

 

「なんでシャルだけああなの?」

「だって、シャルですし」

「シャルだからね~」

 

 理由、シャルだから。

 分かるような分からないような理由だった。

 まあ弄られキャラということだろうか、それなら分かる。

 

「それはそれでどうかと思うがな」

 

 後ろから聞こえた声に振り返り。

 

「……トナカイが増えた」

 

 着ぐるみトナカイを着せられた誰かが。

 まあ声でアオバだと分かるのだが。

 

「にーちゃ!」

「サクラ、またあれか?」

 

 アオバの声に気づいたサクラが自分から離れ、アオバの元へと歩いて行く。

 何をするのかと見ている自身の目の前で、トナカイが膝を降り四つん這いになる。

 

「……は?」

 

 そのまましゃがんで背を低くすると、サクラがトナカイ……アオバの上に跨る。

 

「にーちゃ! しゅっぱつ!」

「ヒヒーン」

 

 それトナカイじゃなくて馬だから?!

 

 というツッコミを入れる余裕すらなく、呆然ととことこと歩いて行く四つん這いのトナカイを見送り。

 

「……えー」

 

 思わず顔が引きつった。

 

 

 

 * コミュニケーション【センリ/ミツル/オダマキ博士/ハルカママ】 *

 

 

「あ、父さん」

「ん、ハルトか」

 

 食堂の入口辺りで父さんと出会った。ついていくと暖炉のほうに行くらしい。

 因みに広い食堂ではあるが、別に全域にテーブルを並べてあるわけでも無い。

 調理用スペースのキッチン、食事用スペースのテーブル、団欒スペースの炬燵、あとは暖炉が置いてある。

 暖炉前にやってくるとミツル君やオダマキ博士、それにハルカちゃんのお母さんがいた。

 

「あ、ハルトさん」

「やあやあ、ミツル君。楽しんでる?」

「はい! 料理とっても美味しいですし、最高ですね」

 

 ふと視線を向ければミツル君の手持ちたちも一緒にいるらしい。暖炉の前でポケモンフードを齧っている。

 まあヒトガタでも無ければポケモンは余り人間用の食事を取らないので仕方ないのだが、普段全員同じ物を食べているので三体だけ別のものを食べているのは少し寂しいような気もした。

 

「やあやあハルト君。お招きありがとう」

「ああ、博士。なんだかこうして話すの久しぶりな気がしますね」

「そうだね、まああの一件以来こっちも忙しくなったからね」

 

 特に避けていたわけでも無いのだが、伝説の一件以来妙に合わない日々が続いていた。

 まあハルカちゃんも言っていたが、ポケモンの生息域の分布が変わってしまったので自然生態研究の第一人者であるオダマキ博士としてもやり直さなくてはならないことがたくさん増えてしまったのは間違い無いだろう。

 

「それにしても、キミが研究者になるなんてね……」

「ヒトガタの研究はまだまだ分かっていないことが多いですから……大切な家族のために、少しでも知っておきたいって思ったんです」

「そうか……まあ、センリ君も鼻が高いだろ、何せ息子がホウエンのチャンピオンになった上に、今度は研究者だ。それもヒトガタの研究はまだまだ分かっていないことだらけなのに、ヒトガタポケモンをたくさん持つハルト君は間違いなくその第一人者になれるんだから」

「立派になったな……立派になり過ぎて、父さん立つ瀬が無いぞ」

「それもまた嬉しいんだろ?」

「うるさいぞ……」

 

 笑みを浮かべながら隣でビールを飲む父さんの肩を突く博士に、鬱陶しそうに返す父さん。

 この二人も『親友』だよな、と見ていて思う。確か大学時代からの縁らしいので、もう二十年かそこらくらいになるのだろうか。

 自分もまた二十年、三十年先もハルカちゃんやミツル君たちをこんな良い関係であれたら良いなと思う。

 思い、視線をミツル君に向ければ首を傾げるミツル君に苦笑した。

 

「でも……父さんがいなかったら、ここまでこれなかったと思うよ」

「……ハルト」

「父さんだけじゃない、博士にもたくさんお世話になって、だから、今の俺があるのは、みんなのお陰ですよ」

「……ハルト君」

「感謝してますよ……本当にね」

「……本当にキミの子かい? 凄く良い子だよ?」

「間違いなく俺の子だ、俺にそっくりだろ」

「奥さんが良かったんだね……キミに似てたら堅物みたいな子になってただろうし」

「お前こそ、娘さんが奥さん似で良かったな……お前に似ていたら相撲取りにでもなっていただろうよ」

「「…………」」

 

 なんで感謝の言葉を述べただけなのに唐突に喧嘩が始まるんだろうと呆然としている横で。

 

「ハルト君」

 

 名前が呼ばれ、振り返ればハルカちゃんのお母さん。

 

「あ、お久しぶりです」

「本当に立派になっちゃって……ハルカには会った?」

「はい、さっきちゃんと……そもそも来た時にも挨拶しましたし」

「そっか。それにしても随分とたくさん可愛い子集めたわね……私は昔からね、てっきりハルト君がハルカのこともらってくれると思ってたのよ?」

「あはは、その言い方止めてもらえませんかね……いや、俺は……まあ、他に好きな人がいますし。それに」

「……それに?」

「ハルちゃん、あんまりそういうの興味なさそうですよね」

 

 告げた言葉に、ハルカちゃんのお母さんが嘆息する。

 

「冬ね……春は遠いわ」

 

 色んな意味で。

 

 




畜生! 二話で終わらなかったんだけど!!!

ところで誰か、サンタサクラちゃんとエロトナカイシャルちゃん描いて?

作者はとても見たいです(欲望
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