ポケットモンスタードールズ   作:水代

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インタールード
ゲームとは違うと分かっててもイメージは離れない


 

「……………………は?」

 まさしくポカーン…………である。

「どうやら、俺の勝ち、だな」

 視線の先には、ふう、と息を吐く父さんとその目前のケッキング。

 

 そしてその足元に転がり気絶するエア。

 

「……………………は?」

 

 もう一度言う、まさしくポカーンである。

 

 

 * * *

 

 

「父さんと勝負してみたい」

 と言ったのは、うちのマイファザーが明日は久々に一日家にいられる、と夕食の席で仰ったからである。

 それなら、と試しに言ってみたのだが。

 

 父、センリはトウカジムのジムリーダーである。

 

 ゲーム時代よりもトレーナーの人口は数十倍に膨れ上がっており、ゲーム時代数百と言った程度の数のトレーナーは、現在数千…………下手をすれば万を超える数に膨れ上がっており、その分だけジムに挑戦するトレーナーも増えてくる。

 

 ポケモンジムは、ゲーム時代ではストーリー上の都合を除けば、基本的に行けばいつでも戦えたがこの世界ではそんなことは無い。ジムに挑戦するためにはまずジムトレーナーを破って行く。ジムごとに決められた条件があるのだが、だいたいは三人、ないし四人、ジムトレーナーを倒せばジムリーダーへの挑戦権を与えられる。

 たった三人と言うなかれ、ゲーム時代においてポケモンジムのトレーナーなど多くて十人程度だったかもしれないが、現実では少なくとも二十名以上、多ければ五十名近いトレーナーがジムトレーナーとして日々、切磋琢磨しているのだ。

 その中の上位三名、ないし四名ともなれば、ひとかどのトレーナーであり、この条件すら満たせないトレーナーと言うのが非常に多い。

 そしてジムトレーナーを倒し、ようやくジムリーダーへの挑戦権が認められれば即座にバトル…………とは行かない。

 当たりまえだが、ジムトレーナーとの連戦で挑戦者も無傷とはいかないし、ジムリーダーだって、ただ挑戦者と戦うだけが仕事ではない。それ以外にもやらなければならないこと、と言うのはけっこうあるのだ。不定期に、そして不規則に来る挑戦者たちのために常に身軽にしておくことなど無理がありすぎる。

 だからだいたい挑戦が認められてから一週間程度の猶予が挑戦者には与えられる。その間にパーティを見直すなり、育成に励むなり、ゆっくりと休養するなり、戦いに備え、そしてジムリーダーは挑戦者との戦いのために、事務仕事と言う別の戦いに挑み、時間を作らなければならない。

 

 ジムリーダーって実は大変な仕事なのだ。

 

 と言うことを前提に考えて。

 

 折角の休日に子供の我が儘でバトルしたい、である。

 

 やはりジムリーダーなのだし、そうほいほいバトルしていてはダメだろうか、そもそも休日なんだしゆっくりしたかったかな。

 

 なんて言った後に思い出して。

 

「なに?! 俺とバトルしたいのか!!? よし、いいぞ、やろう…………ああ、母さん、ハルトが俺とポケモンで勝負してくれるみたいだぞ」

「あらあら、良かったわねアナタ、明日はしっかりハルトに遊んでもらうんですよ?」

 

 …………なんか思ってたのと違う反応。

 

 と言うか母さん、そこは俺が遊んでもらうんじゃないのでしょうか…………?

 

「いやー、ハルトと勝負するのは二度目だなあ。前は俺が負けてしまったし、今度は勝つぞ」

 

 すっごく楽しそうに、笑みを浮かべてらっしゃる。何と言う幸せの顔だろうか。

 そしてさり気なく、腰の後ろに手を回し…………一番奥のボールに触れる。

 知っているあれ父さんの切り札、ケッキングだ。

 

 この父親、本気でなりふり構わず勝ちに来てやがる。

 

 ジムリーダーは大体の場合、複数種類のパーティを用意している。

 それらは多くて六、七種類、少なくとも四種類程度はあるが、大別すると二つに分けられる。

 

 一つはジム戦用のレベル調整されたパーティ。

 当たりまえだが、ゲームで最初に挑戦したジムのような、レベル20にもならないポケモン二体しかいないのにジムリーダー名乗ってる、なんてことは無い。

 ジムリーダーは、相手が持っているバッジの数やジムトレーナー戦での挑戦者の強さをだいたい見極め、その上でどのくらい本気でやるかと決める。

 ジムトレーナーも最も強い三人、四人、とは限らず、挑戦者の持っているバッジの数に応じて、実は戦う相手と言うのはかなり違ってくる。有り体に言って、バッジを一つも持っていないトレーナー相手に、ジムトレーナー最強をぶつけていてもただの弱いもの苛めである。故に、バッジ0の相手にはジムでも最近入ったばかりの弱いトレーナーを。そしてバッジが増えていくごとに上位のトレーナーに、と相手によって対応を変えてくる。

 当たりまえだが、ポケモンジムが絶対に攻略不可能、なんてことになってはそのジムは廃止される。

 ジムはあくまで、試験のようなものであり、落第必至の試験などただの無理難題だ。

 因みに親父様の場合、レベル10代、30代、50代、70代の四種類のパーティを持っている。

 バッジの数が二個増えるたびに、難易度を一つ上げているため、バッジ4,5個あたりが一番辛いと評判である。

 さらに因みに、あくまで調整されるのはポケモンのレベルであり、強さである。その強さの範囲内であれば、トレーナーは持てる全ての力を駆使してこちらを倒そうとしてくるので、レベルが低いからと言って決して油断できるものでは無い。ゲームの時のような、ただ場当たり的にレベル上げて殴ればいいや、とか言ってたら一つ上の難易度のパーティが来て、逆に殴り殺されるのがオチなのである。

 

 さて、ではもう一つだけ、親父様が持っているパーティがある。

 

 それがガチ用。つまり、いざ何かがあった時に使う、本来のパーティだ。

 つまりジムリーダーの全力、と言い変えてもいいかもしれない。

 

 普段親父様が身に着けているのはこちらのほうだ。ジム用のポケモンはジムに置いてきている。

 割とトレーナーたちの練習相手になっているので、ジム戦以外でも重宝するらしい。

 

 そしてそのガチ用のパーティの、切り札に触れている、と言うことは。

 

「…………マジのマジだ、この人」

 

 五歳児相手に、大人げなく本気で勝ちに来る漢がいた。

 

 

 ……………………俺の父親だった。

 

 

 * * *

 

 

 早朝、やったらテンションの高い父親に起こされて、眠い目を擦りながら庭に出る。

 

「よし、やるぞ! ハルト、準備いいな!」

「良くねえよ…………朝早すぎるよ父さん」

「なあに、朝飯前の軽い運動だと思えば良いさ」

「こんな時間に起きてるやつなんて…………」

 

 シャルは完全に寝ている。イナズマは…………どうだろう、あいつはそこそこ早起きだ。正確にはチークが早起きで、それに起こされている内に馴染んだ感じ。それとシアは母さんと同じ時間に起きているので起きているだろうが、朝食の準備があるので来れ無いだろう。呼べば来るかもしれないが、まあ朝ご飯でも作っておいてもらおう。

 あとは…………リップルか、あいつは何と言うか、生態と言うか正体が意味不明なので起きているような気もするし、寝ているような気もする。少なくとも自分から起きてくるまで自身はあいつを起こす勇気は無い。

 

 それからあとは…………。

 

「エア!」

 

 屋根の上に向かって声をあげるとと、ひょっこり、と屋根の上からエアがこちらへと顔を覗かせる。

 

「ちょっと来て」

 

 手招きしながら呼ぶと、ふわり、と帽子とスカートを抑えながら飛び降り、途中で浮遊して勢いを殺しながら着地する。

 

「…………何? こんな朝っぱらから」

 

 自身と、そしてやる気たっぷりの父を見て、不審そうな表情で尋ねてくる。

「バトル、するんだって」

「…………こんな朝から?」

「朝飯前の軽い運動、らしいよ」

 エアが父さんを変なものでも見る目で見ている、そしてこちらに視線を移し。

「やるの?」

「休日なのに戦ってって言ったのはこっちだしねえ…………まあ仕方ないさ」

 そんな自身の言葉に、はあ、と一つため息を吐き。

「仕方ないわね、付き合ってあげる」

「ありがとう」

「…………ふんっ」

 謝辞を述べれば、少し照れたように顔を背ける。

 素直に礼は受け取れないのがこのツンデレドラゴンである。だが根が良い子なので人の感謝を跳ねのけることはしない、と言うかできないのが可愛いところであると言える。

 

「とりあえず、まだみんな寝てるから、一対一でいいかな?」

「ああ、いいぞ…………前と同じシチュエーションか、燃えるな」

 

 あ、なんかもう目がメラメラ燃えてる幻覚が見える。

 

「さあ…………行くぞ、ハルト!」

 

 叫びながらボールを手に取り。

 

「行け! キング!」

「ぐごおおおおおおおおおお!」

 

 叫びながら出てきたのは。

 

「やっぱケッキングじゃねえかぁぁぁぁ!!! エアァァァァ!」

「はいはい…………取りあえず、やってみるわ」

 

 ケッキング…………ナマケロからの進化。つまり複数入手可能なのに種族値合計670とか言う怪物。

 数値で分からない人にはこう言えば良い。

 

 能力値だけ見れば伝説のポケモンとほぼ同レベル。

 

 ただし特性のなまけがデメリット過ぎるので、総合的に見ると、強いのは強いけど、なんか微妙。と言うところに落ち着く。

 ナマケロの時からだが、なまけは1ターン置きにしか行動できない。現実だとだいたい一度行動するたび数秒何もしなくなる酷い特性だ。

 凄まじく強い反面、使い勝手は難しい。そんなポケモンである。

 

「エア、りゅうのまい」

「キング、アンコール」

「うげっ」

 

 りゅうのまいで能力値を上げるエアに対して、アンコールで行動を繰り返させる。

 これでもう三回くらいはりゅうのまいしか繰り返せない。

 

 だったら。

 

「積め! 折角向こうが許してくれたんだ、積みまくれ」

 

 自身の指示に従って、エアが二度、三度とりゅうのまいを積み。

 計四度、積んだところでアンコールが切れる。りゅうのまいはすばやさも上げるので、相手はまだ動き出す前である。

 そして積み終わったと同時に相手が動きだす。

 手は…………こちらが有利と言える。

 

「おんがえし!」

「ギガインパクト!」

「ルオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

「ぐごおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 エアが咆哮し、ケッキングがその巨体を持ちあげて。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 図鑑を開いてみれば多分分かると思うが、ケッキングの通常のサイズは2m前後である。

 だが当たりまえだが、生物である以上、通常よりも大きい個体、小さい個体、と言うのは出てくるもので。

 

 父、センリのケッキング…………キングは通常の2倍近いサイズを誇る、余りにもでかくなり過ぎた特異個体である。

 

 種族値、と言うのは確かにあるのだが、だが目の前のケッキングを通常の物と同じと見てはならない。

 

 ヒトガタポケモンは強い、6Vと言うのは確かにその種族の()()()()()の中では最強かもしれない。

 

 だが種から外れ、個となった存在がこの世界には存在する。

 

 ハミダシ。種の枠からはみ出してしまった存在。

 

 故に。

 

「ルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「ごがあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 エアのおんがえしとキングのギガインパクトが拮抗する。

 りゅうのまい四度で元の三倍となったエアのこうげきで、である。

 レベル差、と言うのは確かにある。だがそれ以上に、あの恐ろしいほどの剛腕こそが異常なのだ。

 恐らく素のステータスで見れば、エアの倍以上のこうげき数値を持っているだろうことは簡単に予測できる。

 種族値自体最上位クラスに入るレベルなのだ。それがさらに巨体になって全身が力に満ち溢れたその強さは最早ケッキングと言う種族を完全に超えていた。

 

 メガシンカ。

 

 進化を超える進化にして、完全なる変異とはならないためシンカと称されるポケモンの状態変化現象。

 キングは最早常時その状態にあると言っても過言ではない。

 

 強い、それは掛け値なしに理解している。

 

 だが、それでも。

 

「エア…………やれ」

 

 じ し ん !

 

 お ん が え し !

 

 り ゅ う せ い ぐ ん!

 

 次々と繰り出される攻撃を、けれどキングはただ耐える。

 特性のせいで、動かないのだ。

 

 面白いことに、自身が死ぬような目にあっていても、この特性を持つポケモンは動かない。

 それだけ特性と言うものが強力だと言うのが分かる。

 

 特性とは、最早ポケモンの根底の性質と言える。

 それを変えるのは容易なことではない。

 

 ――――――――だからこそ。

 

「キング…………ねむる」

「ぐ、がう…………」

 

 キングが目を閉じ、静かに眠りだす。

 

 そして直後。

 

 キングの口がもごもごと動き。

 

「起きろ、キング」

「ぐ…………がああああああああああああああああああああああ!」

 

 恐らくカゴのみでも持たせていたのだろう。眠って体力を回復し、直後に目覚めさせる。

 ゲームだと良くあったコンボだ。

 

 だがそれは一回だけの切り札だ。

 

 これでもう無くなったし…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 だから、それは意味の無い行動のはず…………()()()

 

 ――――――――そう、だからこそ、だ。

 

 

 だからこそ、自身はその光景が理解できなかった。

 

 

 お ん が え し !

 

 ア ー ム ハ ン マ ー !

 

 じ し ん !

 

 ギ ガ イ ン パ ク ト !

 

 

 じしんによって揺さぶられながらも、耐えて、耐えて、耐えて。

 

 そうしてカウンター気味に放たれた最強の一撃がエアへと突き刺さり。

 

「ぐ…………あ…………あぅ」

 

 エアが呻き、倒れ伏す。

 そのまま動かなくなり…………気絶しているのが分かった。

 

 そして、自身は、と言えば。

 

「……………………は?」

 

 まさしくポカーン…………である。

 

「どうやら、俺の勝ち、だな」

 視線の先には、ふう、と息を吐く父さんとその目前のキング。

 

 そしてその足元に転がり気絶するエア。

 

「……………………は?」

 

 もう一度言う、まさしくポカーンである。

 

 




メガシュッキング! 否、これは最早。

シュッキンオウ! もしくはシャチクオウでも許可。


と言うわけで、第二章開始です。

投稿間隔が一日空いたのって初めてじゃね? と言うことに気づいて、自身の投稿ペースこの小説だけやべえな、って想い返す。やっぱ愛だな。

第二章からは、ゲーム従来のシステムからどんどん逸脱していきます。
ゲーム通りに考えてると、こんな小説読めなくなるから、創作であることを理解して頭を柔らかくしよう。



あと感想で何度も「~と戦ったら勝てない」とか「廃人相手だと普通に負ける」とか言われてるけど。


だから趣味パだって何度も言ってるだろ!!!
勝ちたいなら、メガガル使うわ! (なおセンリさん将来的に上のシュッキンオウとメガガルでジム戦する模様)
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