ディアルガ、パルキア、ギラティナ。
三体の伝説は倒されると共に、闇となって消えてしまった。
ここまでに戦ってきた伝説と同じように。
激闘ではあった、だがそれすらも今や『前座』に過ぎないのだと理解している。
「キヒッ、キヒヒャヒャヒャハ!」
楽しそうに、楽しそうに。
哂って、嗤って、笑って。
「キャハッ」
“いじげんかいろう”*1
直後、空間が軋みを上げて鳴動する。
ゴゴゴゴゴ、とゆっくり、ゆっくり鳴動しながら徐々に変化していく。
そうして。
“
“
“
“
フーパの手によって次々と空間が改造されていく。
『空間』への干渉はフーパの十八番だ。それがフーパにとって都合の良いように作り替えられていることに気づき、シキもレックウザも技の完成を阻止しようとするが、さすがに空間干渉能力で勝てるはずも無く周囲一帯の空間が完全にフーパによって塗り替えられる。
「っ……さすがに向こうが一枚上手ね」
面倒な物を敷かれた。
特に『すばやさ』が高いほど低速になる『トリックルーム』は超高速で移動するレックウザにとっては鬼門と言っても良い。
並大抵の技ならば超越種であるレックウザに通じるはずも無いのだが、同じ超越種であるフーパの使った技だからか、しっかりとレックウザにも作用しているらしい。
さらに。
―――オオォォォォ!
“かみなり”
レックウザが全身に纏った電撃を放つ。
移動速度こそ遅くなれどその場で放つ攻撃ならば『トリックルーム』の影響も多少減じる。
“ワープフープ”
だがフーパは目の前にリングを投げると同時にリングを潜り、あっという間に姿を消す。
あの厄介な能力もしっかり使ってくる……前回以上に当てることは絶望的過ぎる。
どうする、この状況?
考えども答えは出ない。
そもそもレックウザがこちらの指示に従わないのもそうだし、シキ自身この状況でどうするのが最適なのか分かっていない。
ただ一度……そう、一度だけで良いならばフーパの作ったこの空間の効果を『反転』させることができる。
つまり『
この空間に落ちてきてからシキ自身『異能』の強度が上がっているような感覚がある。
故に超越種が相手だろうと全力を振り絞れば、たった一度だけ『反転』に巻き込める、そんな確信があった。
ただし純粋な干渉能力だけならば人間のシキが超越種に勝てるわけないのだ、『反転』した事象に対して相手が主導権を取り戻そうとすればあっさり取り戻されるだろう。
だから一度だけ。
フーパがこちらを舐め切っているこの状況で、一度だけならこの不利を『反転』させ有利に変えれる。
とは言えだ。
たった一度くらいそうしたからと言ってどうなるというものでも無い、それが現状だ。
「ケキャキャキャキャキャ!」
“シャドーボール”“シャドーボール”“シャドーボール”“シャドーボール”“シャドーボール”“シャドーボール”“シャドーボール”“シャドーボール”“シャドーボール”“シャドーボール”
フーパがリングを投げるとリングが空中にピタリと張り付くように停止し、狂ったようにリングに向けて『シャドーボール』を連射する。
今なら攻撃が届くか、とレックウザも何度か技を繰り出すが、追加で投げられたリングに技が吸い込まれどこかへと飛ばされてしまう。
そうして都度十にも及ぶ『シャドーボール』がリングへと飲み込まれ。
「ケキャキャキャキャキャキャキャキャキャ!」
“くうかんさっぽう”
レックウザの真下に投げられたリングが『孔』を穿つ。
直後開かれた『孔』から先ほどまで投げ込まれていた『シャドーボール』と
―――キリュウウウアアァアァァァァ!
一発一発ならば耐えられるはずの攻撃が都度十と重なり、そこにさらに自らの技も加わってその全てが自分へと跳ね返ってくるのだ。
自らの強力な攻撃力を仇となってレックウザに大きなダメージを与える。
それでも『ひんし』とならないのはさすがに伝説と呼ぶべきだろう。
だが倒れなかったと言って何ができるのか。
直接攻撃するような技は『トリックルーム』によって速度が大幅に減じられている。
離れていても使える技はリングに吸い込まれ自らへ返ってくる。
しかも先ほどから受けたダメージが全く回復しない。
フーパの作ったこの空間が原因だろうことは明白であり、結局のところフーパをどうにかしなければジリ貧なのにそのフーパに対処できる手段が無かった。
シキとて何かしようとはしている。
だが手が無い。
並のポケモンを出してもあのフーパに対して何ができるのかという話であり、唯一超越種に対して特効を持っていたはずのレジギガスは先ほどの戦闘でとっくに『ひんし』だ。
一応『げんきのかけら』は与えているが、フーパとの戦闘中に復活できるかどうかは……正直分の悪い賭けだった。
唯一できることと言えばレックウザが致命的なダメージを追う時に代わりに盾を出すこと。
だがそれとてあの先ほどのような連続攻撃を前にすればどれほどの意味を持つか分かった物では無い。
そもそも盾になって時間を稼いでも逆手のための一手が無いのだ。
「……どうすれば」
自らの無力に歯噛みしながらもそれでも考え続ける。
何かできることは無いだろうか。
ずきずきと頭が痛む。
疲労のせいか、それでも休むこともできないのが辛い。
だからと言って時間はそう無い。
レックウザが倒れるまで、それがタイムリミットだ。
何か……何か。
徐々に迫って来る絶望。
「ハルト……」
呟いたそれは自らの希望に縋った言葉だった。
* * *
「おろかものおおおおおお!?」
無の空間で、少女が絶叫した。
声はどこにも響かずにすぐに収束したが、反対に少女は興奮したように袖をばたばたと振っていた。
「おま、おま、お前?! 何で!? いや、良い! むしろ良い! よくやったデシ!」
語りかけるような言葉ではあるが、肝心の相手には届いていないので実質独り言である。
とは言えそんなことを気にする様子も無く少女がぶんぶんと両手を上下させていた。
「
一転して少女が黙し始める。
深く深く考え込むように言葉を止め、動きも止め、ただひたすらに思考に没頭する。
「良かった……どうにか出会えたか」
その後ろでほっと溜息をつくようなソレに気づかないまま。
やがて少女が何度かうんうん、と頷いて。
「かなりぶっつけ本番というかチャンスが一回しかねえデシ……後はあのおろかものがどうにかしてくれることを仕方ねえから『願って』やるデシよ」
ふわり、と呟きながら徐々に少女が浮き上がっていく。
同時にその全身が少しずつ光を放ち始める。
「―――
両手を組んで、そっと目を閉じる。
「―――
“とこよのいのり”*3
“はめつのねがい”
“ねがいごと”
“まんがんじょうじゅ”
* * *
どうにもならない。
そんな諦めにも似た答えが脳裏を過る。
どう足掻いても手も足も出ない……あのレックウザですら、である。
風を起こして領域を作ることはできる、それで受けるダメージを軽減することもできる。
だがそれだけだ、こちらの攻撃は当たらず、相手の攻撃を避けることもできない。
ひたすらに一方的な攻撃が続いていた。
「後どれくらい耐えれる?」
問うたシキだったが、レックウザの答えは無い。
すでにそれに答えるほどの余裕も無かった。
ただ荒く息を吐きだしながら視線の先のフーパを油断無く警戒し続ける。
それしかできない。
この空間に引きずり込まれた時点で『詰み』だったのだ。
空の上でならばレックウザは無類の強さを発揮できる。
例えワープで逃げられてもマッハで飛行できるのだ、逃げた先を追い詰めて追い詰めて逃げ切れなくなるまで執拗なほどに追い続ければ良い。
最も最初に戦った時は様子を見ながらの戦闘だったためにここに落とされてしまったが。
少なくとも空の上ならばレックウザにもまだ勝ち目が見えていた。
だがこの空間はダメだ。
風が滞っている。
当たり前である、非常に広大ではあってもここは閉塞した空間だ。
空も無く、地も無い。
ただ漆黒と闇だけが支配する空間。
ここではフーパが絶対的過ぎる。
余りにもフーパ優位に干渉が進んでしまう。
だから『詰み』だったのだ。
この空間に入った時から、すでに詰んでいたのだ。
どう足掻いてもジリ貧。
そして時間切れでレックウザの負け。
そこまでの未来が克明に見えてしまっている。
けれどだからと言って逃げることも諦めることもできない。
ここはフーパの空間だ、入口も出口も見当たらないこの場所から逃げ出すこともできないし。
故に、その戦いはレックウザの負けだった。
どれだけ意地を張ったところでレックウザだけでは、シキだけではこの状況は覆らない。
―――ぴきり、ぴきり
軋む音がした。
レックウザの唯一の勝機はこの空間に落とされる前だけだった。
それを理解したところでもうすでに遅い。
―――ぴきり、ぴきり
軋む音がした。
「ケキャキャキャ」
嘲笑うかのようにフーパが嗤う。
そうして。
―――ぴきり、ぴきり
軋む音が止まらない。
“いじげんホール”
放たれたフーパの渾身の一撃がレックウザの急所を捉える。
同時、それが限界だったと言わんばかりに。
―――ぴき、ぴきぴきぴき、ぴきぴき……パリィィィィン
硝子の割れるような音共に、空間に亀裂が走り、砕ける。
“じげんほうかい”
空間が砕け、強烈なエネルギーが撒き散らされる。
レックウザが悲鳴を上げる。なまじシキを庇っていたために直撃を受けていた。
だがもし庇わなかったらシキが
お陰でシキは無事だった……代わりにレックウザが限界を迎えていた。
ここまでか。
そんな諦観の念がシキの脳裏を過った。
直後。
「どわああああああぁぁぁ?!」
無重力空間故にくるくるとしばらく回転が止まらず目を回していた少年だったが、やがて平衡感覚を取り戻したのかはっと我に返り。
「シキ! レックウザ!」
その姿を見た瞬間、全身の力が抜けそうになるのを自覚した。
シキとは違うただの人間。異能すら持たないただの人間。
しかもシキと違ってポケモンを持たない……正確にはレックウザ以外にポケモンを持っていない上、レックウザがすでに『ひんし』寸前な今の状況で一体少年に何ができるというのか。
それでも。
シキは無意識に安堵した。
その姿を見た瞬間。
助かった、とそう思ったのだ。
知らず知らずの内にその顔の強張りは取れ、代わりに自然と笑みが浮かぶ。
そうして呼ぶ。
少年の名を。
シキにとって最愛のその名を。
「ハルト」
「ああ……良く耐えてくれたな、シキ。本当にありがとう」
ただの一言で全てがどうでも良くなった。
ただ大好きな少年が目の前にいて、たった一言ありがとうとそう言ってくれただけで、今まで感じていた苦痛も恐怖も、疲労も全部吹き飛んだような気がした。
自分でもチョロ過ぎるなんて思うわけだが。
―――仕方ないわね。もうどうしようも無いくらい好きだし。
何がそんなに好きなのか、自分でも分からないのに、ただどうしようも無いくらいにベタ惚れだった。
* * *
ソレは怒っていた。
昼寝中にいきなり襲われたと思ったら、狭っ苦しい壺の中に封じ込められ、そのままどこかの空間に放り投げられたのだ。
封さえ抜けていれば壺から抜け出して元いた場所に帰るのも簡単なのだが、封が閉じられている以上それもできない。
いきなり何をするんだ、とか。
何てことしやがるこいつ、とか。
色々怒りはあったが、仕方ないので昼寝の続きをすることにした。
そうして眠って何日が経ったのか。
壺の中は時間の感覚が曖昧で、もしかしたらそんなに時間も経っていないのかもしれないが。
とにかくある時、突然壺の封が抜けたのだ。
どうして、とか何があった、とかそんなことはどうでも良かった。
とにかくラッキーと言わんばかりにソレは壺から飛び出して。
一人の少年と出会った。
因みにダークフーパは『ルーム』技の効果を『任意』で『切り替え』ることができます。
つまり相手がわざと鈍足なポケモン出して来たら『トリックルーム』の効果を切ってこちらが上から殴る、とかできるし、相手が『とくぼう』が高くて『ぼうぎょ』が低いなら『ワンダールーム』の効果切って物理で殴ったり、逆に『ワンダールーム』発動して特殊で殴ったりできる。
その上で『自分だけ』は『ルーム』技の効果を『常時無視』もできるし、同時に『効果を受ける』こともできる。空間干渉系能力だけは飛び抜けてる。
というわけでダークフーパのデータです。(ただし一部伏字)
【名前】ダークフーパ
【種族】フーパ(いましめられし)/原種
【タイプ】ダーク
【性格】????
【特性】ワープフープ
【持ち物】■■■■■■■
【技】サイコキネシス/シャドーボール/あくのはどう/いじげんホール/■■■■■■■■/トリックルーム/ワンダールーム/マジックルーム/デッドルーム/■■■■■■■■■■
【裏特性】『じげんしょうあく』
自分の全ての技に『必ず命中する』効果を追加し、相手のタイプ相性の不利に関係なく攻撃できる。
攻撃技を繰り出した時、10%の確率で相手の場を『じげんほうかい』にする。
自分が展開した『全体の場の効果』の数に応じて全能力が上昇する(技の数×0.1倍)
【技能】『くうかんさっぽう』
そのターンに使用した技の命中判定を後のターンに持ち越す。この効果は何度でも使用でき、持ち越した技の命中判定はこの効果を使用しなかったターンに判定される。この効果を使用したターンに『ワープフープ』で受けなかった『直接攻撃』以外の技を判定時に繰り出す。この効果で繰り出す技は全て相手の能力値でダメージ計算する。
【能力】『いじげんかいろう』
場に出た時、自分が覚えている全ての『ルーム』技を繰り出す。
『ルーム』技の効果ターンが永続する。
『ルーム』技の効果を受けない。
【禁忌】『■■■■■■■■』
????
【備考】
特性:ワープフープ:『必ず命中する』技以外を受けなくなり、相手の『必ず命中する』技の命中を50にする。『かげふみ』等の効果を受けず、必ず味方と交代できる。『おいうち』等の交代する前の相手を攻撃する効果を受けない。
技:デッドルーム 『ゴースト』タイプ
効果:5ターンの間、互いの場のポケモンのHPが回復しなくなり、互いの攻撃で受けるダメージが1.2倍になる。
場の状態:じげんほうかい
ターン終了時に、場のポケモンが『ひんし』になる。お互いの場の効果が全て無くなる。
補足解説:とこよのいのり
このターンに効果が発動せず後のターンに発動する技の効果を、技が発動するまでにかかるターン数に応じて上昇させる(ターン数倍)
ターン数×1倍が基準です。
ねがいごと→2ターン目に発動だから効果が2倍でHP全回復
はめつのねがい→3ターン目に発動だから効果が3倍で威力140×3=420(タイプ一致で630)
みらいよち→3ターン目発動なので威力3倍になります。