ポケットモンスタードールズ   作:水代

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本当に可愛い子なら旅なんてさせずに家に囲い込む

「お母様。お話があります」

「どうしたの? ハルくん、改まって」

 一階のリビングに、テーブル越しに向かい合って座るお母様に向かってばっ、と頭を下げる。

「どうか、旅をする許可をください」

「いいわよ」

「………………………………そこをどうか………………………………って、え?」

 

 お母様、五歳児に旅の許可を出すまで僅か0,5秒である。

 

「なんかあっさり許可もらえちゃったね」

「そうね…………なんか私から見てもあっさりしすぎてそれでいいの? って感じなんだけど」

 少し困惑した様子にエアだったが、自身としてもかなり困惑している。

「自分で言っててなんだけど、本当に良いの? 母さん」

 そんな自身の言葉に、我がお母様はええ、と頷く。

「ハルちゃんはしっかりしてるし、それにエアちゃんが付いててくれるのよね?」

 確認するような母さんの問いに、エアがそっぽを向きながら呟く。

「こんなのでも、私のマスターだし、仕方ないからついて行ってあげるわよ」

 こんな台詞、頬を染めながら言う当たり、この子かなり面白い性格してるよなあ、と内心思っている。

「エアちゃんがいるなら、安心して送り出せるわ…………この子のこと、よろしくね?」

 微笑み、そうして託すその言葉に、エアが一瞬言葉を止め…………。

「任せなさい!」

 ドラゴンらしい獰猛な笑みで、はっきりとそう告げた。

 

 

 * * *

 

 

 さて、旅の許可を得た、と言うわけで早速旅に…………なんて言う風にはいかない。

「なんでよ?」

 不思議そうに尋ねてくるエアに、少しだけ戸惑いながら答える。

「ボール必要でしょ?」

「…………はい?」

「だってエア、現状野生のポケモンだよ?」

 その言葉に、数秒エアが沈黙し…………やがて、あっ、と声をあげた。

 どうやら本気で気づいていなかったらしい、まあ現状が特殊なだけに仕方ないのかもしれないが。

 

 ポケモンの所有権、と言うのは『ポケモンを捕獲したトレーナー』か『捕獲したトレーナーが認めて譲ったトレーナー』のどちらかにある。一般的には前者であり、後者の場合、交換などでポケモンを手に入れたトレーナーが該当する。

 他人のポケモンを奪っても所有権は無い、と言ってもその所有権とは実際に何か効果のある物ではない、ただの形式的なものなので結局のところ、そのポケモンが認めるかどうか、が最終的な所有権となる。

 

 ただ公式的な話をすると所有権と言うのは重要になってくる。

 

 端的に言えば。

 

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 何故なら現在エアの入っていたボールは無い。この世界にあるのかどうかすら怪しい。となると、現状のエアはトレーナーが逃した野生のポケモン、と言う扱いになる、他の五匹もそうだ。

 

 恐らくエアのほうから拒絶するだろうから意味の無い話ではあるのだが、使えないだけで持てないわけではない、つまり捕まえたトレーナーが交換を拒否すれば取り返すことすらできない。

 そう言う意味ではこの所有権と言うのはひたすらに重要なのだ。

 

 特に他人のポケモンを奪って売りさばく、ロケット団のような存在が公式である世界だ。用心に越したことはない。

 

「でもミシロタウンにフレンドリィショップは無いわよ?」

「代わりにもっといいところ、あるでしょ?」

 自身の問いに、エアが少し考え…………やがて、なるほど、と頷く、気づいたらしい。

「貸しは作っておくものだね」

 

 例えそれが直接的に自身の貸しでなくても。

 

 自身のポケモンが作った貸しならば、トレーナーがそれを取り立てても間違いではないだろう。

 

「というわけでこんにちわ」

 ミシロタウン唯一のまともな施設、オダマキポケモン研究所の扉を開く。

 研究所、と言われるとなんだか広い施設のイメージがあるが、オダマキ研究所は二階建ての割とこじんまりとした施設だ、そもそも一階はかなり広いがワンフロアしかないので全体的に見るとそんなに大きくは見えない。

「ん…………? おや? おお、キミたちは」

 入ってみると正面最奥の机で何か作業をしていたらしいオダマキ博士が振り返り、こちらの姿を認めるとにっこりと笑った。

「さっきぶりです」

「…………どうも」

「ハルトくんに、エアくん。早速来てくれるとは嬉しいよ」

 わざわざ向こうから入り口に出迎えに来てくれ、そのまま一番奥へと通される。

「お忙しく無かったですか?」

「はは、キミは大人のような気の使い方をするね、ハルカと同い年とはとても思えない。でもそんなの気にしなくても良いんだよ」

 まあ大人ですから、とは言いづらい。と言うかやっぱうちの両親(特にお母様)が鷹揚過ぎるだけで、一般的に見れば自身は五歳児としてかなりズレているのだと思う。

 

 …………まあ目の前のこの人も、一般人と呼ぶには大分感性にズレがあるようだが。

 

「それならまあ遠慮なく…………さっきの今で少しお願いが出来て、やってきました」

「おお、何だい? それはエアくんにも関係ある話かな?」

 鋭い、と言うより先ほどまで知らない間のように振る舞っていたのに、今は二人で来ていることから推察したのだろうと予測する。

「ええまあ…………そう難しい話じゃないんですが」

「まだるっこしいこと抜きで言うと、ボールが欲しいのよ」

「…………ボール? このサッカーボールとかかい?」

 この世界サッカーあるのかよ、と内心で突っ込みつつ、一体どこからそのサッカーボール取りだした、と言うかなんで研究所の中でサッカーボールなんて常備してんだよこのオッサンと言いたいことはいっぱいあったが全部丸っと飲み込みながら。

「モンスターボールです」

「…………ふむ? まあそれくらいならお安い御用、と言いたいのだが、一応目的を聞いても良いかな?」

 さすがに怪しまれるか、五歳児がモンスターボールくれだなんて、そのままボール持って草むらに行くとか思われても不思議じゃない話だ。

 と、なると…………まあ話しても大丈夫だろう、と思う。

 隣のエアに目配せすると、任せる、とだけ返って来る。

 

 ふむ、と一秒未満で思考を巡らせ。

 

「ボールに入れたいのは、こいつです」

 と、エアの帽子の上から手を載せてそう告げる。

 そうして傍から見ると素っ頓狂で頓珍漢な物言いにも、けれど博士はなるほど、とむしろ納得したように頷いた。

「やはりエアくんは、ポケモンだったかい…………研究者である私ですらヒトガタと言うのはあまり見かけないからね、むしろその辺はトレーナーのほうが出会うことも多いかもしれない」

 ヒトガタはみんなトレーナーが所持してしまっているからね。と苦笑いしながら博士がそう告げる。

 と言うかやはり気づいていたのか。

 

 オダマキ博士はポケモンの研究者。その中でもオーキド博士やその他博士たち…………いわゆるゲームでの博士枠が総じてそうであったように、このホウエン地方のポケモン研究者の第一人者でもある。

 だからまあエアの存在に気づいたのは当然、と言えば当然なのかもしれない。

 

「ふむ…………まあ良いよ。どうもエアくんはハルトくんに懐いているようだしね、悪いようにはならないだろう」

 そう呟き、ほら、とモンスターボールを一つ渡してくる。

「ありがとうございます」

 と礼を言ってそれを受け取り…………どうやって使うのだろうと一瞬疑問に思うが、昔父親がやっていたように真ん中のスイッチを押してエアにかざすと。

 

「あ」

 

 しゅん、と一瞬でエアがボールに吸い込まれていく。

「ふむふむ、ボールへの入り方は他のポケモンと同じなんだね、ポケモン、と言う区切りにおいては同じ存在ではあるのだし、当たり前なのかもしれないけど…………やはり興味深いね」

 その様子をつぶさに観察しながらぶつぶつと呟いている様子には、研究職って大変なんだなあ、と言う小並感な感想しか浮かんでこない。

 それはさておき、もう一度スイッチを押してみると、自身の隣の空いた空間にエアが出てくる。

「……………………」

 一瞬自身がどこにいるのか、見失ったかのようにきょろきょろと周囲を見渡し、そうして自身を見つけると。

「…………エア?」

 何故か自身の袖を握る。握り…………握って、何もしない。

 うん? と首を傾げると、エアがはっとなって慌てて袖を放す。放してそのまま腕を組み、顔を背けてしまう。

 何だろう? とは思いつつも、答える様子の無いエアに、とりあえず話を進めることにする。

 

「ありがとうございました、とりあえずこれで旅に出る準備だけは整いました」

「旅? ミシロタウンを出るのかい?」

「ええまあ…………ちょっと探しものもありまして」

「と言ってもハルトくんまだ五歳だろう? もう少し大きくなってからでもいいんじゃ?」

 それは正論だ、全くもって正しい。

 だからこそ、困ってしまう。

 

「待たせてるやつらがいるんです…………だから、探してやらないと」

 

 世界すら異なって、それでもエアは自身を探していたと言った。五年もの間、自身と出会うまで自意識すら持っていなかったのに。それでも彼女は自身を探して、探して…………こうして()()()()()()()()

 他のみんなもそうなのだと、彼女はそう言った。もしそうだとするならば、もし他の五匹が全員、まだ自身を探してくれているのならば。

 

「この言いかたはおかしいかな? うん…………()()()()()()()()()()()

 

 そんな自身の笑みに何を見たのかは分からないが、オダマキ博士が数秒沈黙し。

「うむ…………ならキミにこれを渡しておこう」

 

 そう言って渡されたのは…………。

 

「マルチナビ? でもこれ確か高級品なんじゃ」

 ゲーム主人公は初期で持っていたが、七年も前のこの世界だと割と最新型の高級品だ。一般に普及するようなものでは無い。まあ主人公の場合、ジムリーダーの父親のコネで手に入れた可能性もあるが。

 お値段も六桁は軽くする、少なくとも五歳児に気軽に渡して良いものでは無い。

「おや、知っているのかい? ああ、そう言えばセンリくんも持っていたね。まあ試作に回ってきた余り物だからね、モニターと言うことで貸し出しておくよ」

「モニター?」

「あーつまりだね、そのマルチナビを使ってとあることをして欲しいんだ」

 博士、頼み事、主人公、検索にかけたら本当に出てきそうだ。もう何だか察しがついてしまった。

「そのマルチナビにはポケモン図鑑と言うアプリが入っている。ハルトくんが旅先で出会ったポケモンを自動で登録し、その生態を収集してくれる優れものなんだ。本当に詳細なデータは実際にポケモンを捕まえてみないと分からない部分も多いけれど、正直ポケモンの分布…………どこにどのポケモンがいるか、と言うのを調べてくれるだけでも大分助かるからね。それに後で見てもらうといいけれど、それには多くの機能がついている、旅をするハルトくんにもきっと役に立つはずだ」

 ビンゴ。やっぱりポケモン図鑑だった。と言ってもゲーム見たいに全てのポケモンを捕獲、進化させろと言うわけでもないみたいではあるが。

 まあ出会っただけで自動で登録されるのならば、特にこちらに苦労も無いし、ほとんどデメリット無しでこれが手に入るならばありがたい話だ。

 

「元となる情報が増えれば相手の強さや特性、持ち物なんかも少しずつ表示されるようになるから、是非持っていてくれ」

 

 なんて笑顔で告げるオダマキ博士に、再度謝辞を告げる。

 本当に何と言うか、助けた貸しを返してもらうだけのはずだったのに、余計な恩までもらってしまった感じだ。

 恩を仇で踏み倒せるような性格なら、楽だったのだが、残念ながら今の両親にはそう言う風に教育されなかった。

 

 やれやれ、だなあ、なんて思いながら、物は試しと隣にいるエアに向けてマルチナビを向け図鑑を起動、データ収集をしてみる。

 

 ぴぴ、と電子音と共にエアのデータが表示されて…………。

 

 名前:【ボーマンダ】

 タイプ:【ドラゴン】【ひこう】

 レベル:【1】

 能力:☆☆☆

 

「…………ん?」

 見間違いか? と思わず数度目を擦り。

 

 もう一度見る。

 

 名前:【ボーマンダ】

 タイプ:【ドラゴン】【ひこう】

 レベル:【1】←

 能力:☆☆☆

 

「…………………………………………え?」

「何よ?」

 思わずナビとエアの間を数度視線が往復して。

 受け入れがたい現実に、思わず視線を天井へと逸らし。

 ボーマンダ?! とエアの正体に今更驚いている博士も無視して。

 もう一度だけナビを見る。

 

 

 名前:【ボーマンダ】

 タイプ:【ドラゴン】【ひこう】

 レベル:【1】←

 能力:☆☆☆

 

「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ?!」

 

 変わらない現実に、思わず目の前が真っ暗になった。

 

 




ロリマンダ可愛い、ロリマンダ可愛い、ロリマンダ可愛い!
レベル1で実は貧弱なロリマンダ可愛い!
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