ポケットモンスタードールズ   作:水代

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妖怪がクロスとかシェアワールドとか騒いでたから、パーティ案募集して、読者案パーティのポケモンバトルしたくなってきた。


本戦開始一戦目後半

 6-4

 

 こちらはイナズマが多少のダメージを負っているのみで、ほぼ無傷。

 あちらはすでに二体『ひんし』。

 状況的には圧倒的有利。

 

 だが油断はできない。

 

 少なくとも、予選を勝ち抜き、あのチャンピオンロードを抜けてきたトレーナーなのだ。

 まだ何か隠し持っている可能性は高く、何よりも一度も出していない最後の一体が気になる。

 

 だがもう負けることは…………無い。

 

 やってみて分かったが、あのトレーナーズスキルは厄介だ。

 回復、補助、どちらも両立できる上に、本来きのみを使わなければダメ―ジを受けた直後の回復などできないところを『かいふくのくすり』で一気に、それも多少の間隔は開けど何度でも全回復できる。

 あれをどうにかするなら回復が追いつかないほどのダメージを与える必要がある。

 だがそのために『貯め』を見せれば相手も補助に道具を使用をしてくる。

 

 なるほど、拮抗すればするほど、相手にひたすら優勢に傾いていく。

 

 拮抗していれば…………だが。

 

 要するに、随所に小細工を仕込むスキルだと思えば良い。

 ポケモン同士の能力の差が小さいほど、小細工が効いてくる。

 だが逆に、ポケモン同士の能力の差が圧倒的なほどに開いていれば、多少の小細工など無意味だ。

 いくら道具を持たせようと、いくら能力補助をしようと、レベル1がレベル100に勝てる道理など早々無い。絶対的な能力の差を覆すならば、戦略が必要だ。

 

 やっていて分かるが、読みが甘い。

 こちらが軽い誘導をかければ、素直なほどに乗って来る。

 予選までの相手ならばそれでもスキルの差で押し勝てたかもしれないが。

 

 そして何よりも。

 

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 相手のポケモンも確かに個体値の高いポケモンを選んでいるのかもしれないが、それでも3Ⅴ、良くて4Ⅴだろうか。

 だが自身のポケモンたちは全て6Vである。そこにさらに努力値によって底上げも行っている。

 基礎能力からして違い過ぎる。

 

 だから、もう、負けは無いのだ。

 

「シア…………このまま行くよ」

「あら…………ふふ、そうですね、久しぶりに頑張ってみます、マスター」

 

 呟く自身の言葉に、シアが微笑む。

 唇を噛みしめ、相手がボールを握り。

 

「行け、ギララ!」

「グルォォォォアアアアアアアアアア!」

 

 再び現れたのはバンギラス。

 そうしてバンギラスが現れたことにより『あられ』が『すなあらし』に上書きされる。

 

「ギララ、チェンジだ」

 

 “アイテムチェンジ『ラムのみ』”

 

 相手が投げた何かの木の実をバンギラスが受け取る。代わりにぽろり、とバンギラスが何か落とす。

「あれは…………『こうかくレンズ』、かな」

 鎖の着いたグラス状のそれを見て、恐らく『こうかくレンズ』だろうと予測をつける。

 そして同時に、何を渡したのかも簡単に予想できる。

 

「バカだねえ…………シア」

「はい、マスター」

 

 読みやすい相手、と言うのは致命的なまでにやりやすい。

 特に現状の自身のパーティはメインアタッカーができるポケモンが半数を超えている。

 そこに常時能力変化の引き継ぎ効果(バトンタッチ)のサイクル戦を展開する自身にとって相手の次の手が読めると言うのは何よりもやりやすい。

 

「ヤチェでも持たせれば良かったのにね」

 

 ヒロアキと言うトレーナーはどうも思考の切り替えが下手なタイプらしい。

 イナズマへの対処を見ればそれは分かる、だからシアに痛い目を見せられてからの対処は分かり切っている。

 

 “つなぐてとて”

 

 “アシストフリーズ”

 

 凍てつく冷気が『すなあらし』を凍り付かせ『あられ』へと変化させる。

 同時、シアの手から放たれる冷気の光がバンギラスを覆う。

 だが『とつげきチョッキ』持ちの上に直前まで『すなあらし』状態のバンギラスだ。

 一撃くらいなら持ち堪えれる。

 

 そうして反撃しようとして、けれどその全身が『こおり』ついて動けない。

 直後、バンギラスの口が動き、先ほど渡されたらしい木の実を咀嚼し、飲み込む。

 途端、バンギラスが動き出し。

 

「グゴオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 “ストーンエッジ”

 

 振り上げた拳を大地へと叩きつける。

 途端、シアの足元の地面が隆起し、岩の刃を産み出して。

 

「あら、痛そうね」

 

 ひょい、と刃を避ける。

 自身でもほとんど活用したことは無かったが、シアの特性は“ゆきがくれ”だ。

 『あられ』状態の現状ならば、命中率の低く、しかも『こうかくレンズ』の命中補正を捨てたストーンエッジならば問題無く避けることができる。

 ゲームならば80%の0.8倍で命中率64%と言ったところだが、現実ならばそんな命中率のわざ、ある程度訓練すれば避けるのは容易だ。

 わざの熟練度を高め、命中80のわざでも()()()()()さえつかめば()()()ことは出来る。

 だが『こうかくレンズ』で常時命中を補っているのが常態とするならば、現状それを失くしてしまっている状況で常と同じように当てることなど無理な芸当だ。

 便利な道具に頼ればその分鈍ってしまうものもある、と言うこと。

 

 とは言っても、結果は変わらない。

 

 持ち物を変えず『こおり』つく瞬間に『かいふくのくすり』を投げる。

 そして『こおり』状態から回復しながらわざを出す。

 そのくらいできなければこの状況を覆すことなど不可能だ。

 

「シア」

「はい」

 

 もう『すなあらし』は無い。

 『とくぼう』の補助は『とつげきチョッキ』だけであり、だがシアとて『とくこう』が2倍になっている。

 故に『すばやさ』の差で、シアにもう一度行動を許した時点で、もう終わりなのだ。

 

 “つなぐてとて”

 

 “アシストフリーズ”

 

 吹き荒れる冷気の輝きがバンギラスを襲い。

 

「グル…………ルァ…………」

 

 ずどん、とバンギラスが倒れる。

 

 これで、三体目。

 

 相手の顔が青を通り越して白くなっているが、大丈夫だろうか、なんて思いながら。

 

「…………っ、頼む! バナ!」

 

 震える手でボールを掴み、投げる。

 

「バァァァァォォォォォォォ!!!」

 

 出てきたのは、フシギバナ。

 

「…………ふむ」

 相手トレーナーの顔色を考えるに。

 メガシンカは無さそうだ。

 そして、フシギバナと言えば“ソーラービーム”を連想するが、“ギガドレイン”、などもありそうだ。

 持ち物は…………最後の一体、と言うことを考えれば、恐らくこのフシギバナがエース。

 と言うことは『こだわりメガネ』あたりはあるかもしれない。複数持てると言うことだし『きあいのタスキ』『きあいのハチマキ』のどちらか、あとは『きせきのたね』なども一応候補になるだろうか。

 だが問題は現状『あられ』だと言うこと。

 もしかすると、今までに倒したポケモンの中に“にほんばれ”持ちが居た可能性もある。

 エテボースは先発、と考えれば真っ先に倒される可能性を考えるなら恐らく違う。フシギバナは最後まで隠したいだろうし、受けポケの中に一体。そして現状すでに倒されているとするならば、恐らくラッキー。バンギラスは特性が“すなおこし”だし、アタッカーとして攻撃に専念して欲しいだろうから、間違いないだろう。

 

 と、考えた上で、すでにもう“にほんばれ”は出来ず、しかも『あられ』天候。

 “ソーラービーム”は無いと考えていいだろう。

 恐らく相手の手持ちの中で辛うじてシアをどうにかできる可能性があるのがフシギバナ、と考えるとこの状況で“ギガドレイン”は無い気がする。

 何せバンギラスが1ターンしか持たなかったせいで、後1ターン分程度だけ“わたはじき”の効果が残っている。

 『すばやさ』の差を考えればこのターンを凌げなければ二連続“アシストフリーズ”で終わりだ。

 となれば“まもる”と言うのもあるかもしれない。

 これは第一案として考えていいだろう。

 

 そしてもし攻撃してきた場合だが“ギガドレイン”でも“ソーラービーム”でも無いなら。

 後は何だろう…………フシギバナが覚えており、尚且つシアの大打撃を与えることができる技。

 恐らくあったとしたら特殊技だろう、フシギバナは両刀できなくても無いが、基本的には特殊アタッカーである。

 

 シアの弱点タイプは『かくとう』『いわ』『はがね』『ほのお』。

 

 フシギバナが覚えるこの辺りのタイプのわざで威力の高いものは無い。

 あるとすれば…………。

 

 めざめるパワー…………?

 

 個体値によってタイプが変動するこのわざならば或いはシアでもそれなりに食らうかもしれないが。

 だが個体値調整なんてこの世界のトレーナーができるとは思えない、個体値なんて概念持ってるならば最初から6Ⅴ探してくるだろうし、ならば偶然、そう言う個体値と言う可能性はある。

 

 第二案、としておこう。

 

 そして最後は。

 

 『くさ』タイプで一番強いわざ。

 

「ふむ…………まあこれ以上考えても無意味かな」

 

 恐らく“まもる”。だがもし攻撃してきてもそれはそれで構わない。

 

「戻ってシア」

「バナ! 最大火力で吹っ飛ばせ!」

 

 “アイテムウェスト『イバンのみ』”

 

 ボールにシアを戻し、次のボールを持ったところで、フシギバナが動き出し。

 

「行って、リップル」

「はいはい、どーんとお任せだよ」

 

 リップルがフィールドに降り立つと同時。

 

 

 地面が隆起する。

 

 

 “ハードプラント”

 

 

 ズドオオオオオオオオオオオ、と激しい音を立てながら地面から何本もの巨大な植物の根が現れ。

「わあ」

 驚くリップルへと根が一斉に襲いかかる。

 

 “ハードプラント”

 

 『くさ』タイプ最強のわざ、と言って良いだろう。

 簡単に言えば『くさ』タイプ版の“はかいこうせん”と言ったところか。

 タイプ一致、さらに持ち物で威力を底上げし、放たれた脅威の一撃。

 

 だったのかもしれないが。

 

「あいたた…………ちょっと打っちゃったよ、痣になってないといいなあ」

 

 わざが解除され、根が戻って行く。

 それと同時に、平然とした顔でリップルが戻って来る。

 

「…………な…………あ…………」

 

 切り札、だったのだろう一撃。

 それをこうも平然とした顔で受けられ、さすがに動揺を隠せない。

「スイッチバック、シア」

 リップルをボールへと戻しながら、同時にシアをボールから出す。

 

 フシギバナは反動で動けない。

 

「シア…………落とせ」

「はい…………マスターのご随意のままに」

 

 シアの手へと光が集う。

 そうして放たれる冷気の光にフシギバナが覆われ。

 

「…………ば…………な…………」

 

 フシギバナが倒れる。

 

 それと同時、相手が膝から崩れ落ちる。

 

 そうして。

 

「…………参りました」

 

 呟かれた言葉。

 

 6-2

 

 だが残り2体を出そうと結果は変わらない。

 『ぼうぎょ』4倍のグレイシアの守りを抜き、『とくこう』2倍の弱点技を防ぐ手立てが最早無い。 

 

 つまり。

 

 詰み、だった。

 

 

 * * *

 

 

 一回戦全試合終了。

 

 その報告がされた頃にはすでに日が沈みかけていた。

 

 難敵、と言うにはほど遠い相手ではあった。

 物足りない、と言われれば確かにそう言う感じもあったかもしれない。

 

 それでも…………決して楽勝だなんて言えない。

 

 読み間違えれば確かに危険はあったし、何よりも大舞台で試合をすることへの緊張感とでも言うのか、そう言ったものが自身の精神を蝕んでいたのを、終わって初めて気づく。

 

 ぐったりとホテルのベッドの上で寝転がりながら、目を向けることすらせず垂れ流したテレビが今日の試合結果についてニュースで報道を始めたのに耳を傾ける。

 

『さてさて、先ほど本日のホウエンリーグ本戦一回戦の全試合が終了致しました。現場のアナウンサーに中継を繋ぎましょうか』

 

 起き上がることも、画面に目を向けることもせず、全身に感じる疲労感に身を投げ出したまま動かない。

 そんな自身を他所に、ニュースが続く。

 

『こちらホウエンリーグスタジオです。今年も特例の許可をいただきやってまいりましたが、本日のホウエンリーグも先ほど最後の試合が終了し、明日のトーナメントの対戦組み合わせが決定いたしました』

 

 アナウンサーがテレビの中で語る言葉を聞いていると、ぴろん、とマルチナビに電信が届く。

 

「ん…………次の対戦相手か」

 

 リーグは一日で全試合を行うが、一度試合を行えば次の試合までに一週間程度の期間を設ける。

 一日で試合を終わらせるのは先に終わらせたトレーナーと後に終わらせたトレーナーの間に時間と言う不公平を極力作らないようにするためであり、同時に対戦を終えたトレーナーはその日一日、スタジアムへの立ち入りを禁止され、次の相手の情報が漏れないように制限される。

 実際のところ、リーグが始まってから情報を得るのは中々に難しい。

 だからこそ、リーグが始まる前により多くの情報を得、自身の情報を一つでも隠せるか、そこが重要になってくるのだ。

 

 リーグはトーナメント式だ、だからこそ、自身の相手は二名に絞られる。

 

 とは言うものの、片やチャンピオンロードを期間ギリギリで抜けてきた無名のトレーナーと、情報もしっかりと集まっている有名なドラゴン使いである。

 あのチャンピオンロードをギリギリで抜けてくるのは大体が、大回りで安全な道を取ってきたトレーナーが大半であり、実際の実力はそれほどでも無いことが多い。

 ドラゴン使いのほうは、準伝説のラティアス、ラティオスすら使う圧倒的な力の持ち主だ。

 

 結果はもう見るまでも無いだろう。

 

 そう思い、ナビを置こうとして。

 

『第四試合の結果は大番狂わせでした、あのドラゴン使いライガ選手が、無名のトレーナールルノ選手に敗れました』

 

 テレビで告げられた言葉に、目が点になる。

 

「……………………は? はあ?!」

 

 大慌てでナビを起動させ、通信を確認する。

 

 二回戦第二試合 ミシロタウン ハルト 対 タチワキシティ ルルノ

 

 表示された名前に、顔が引きつる。

 

「やばい…………やばいぞ」

 

 相手はあの準伝説と600族含めたガチガチのドラゴンパーティに勝つほどの実力者。

 だと言うのに、受付はギリギリ、そして無名。

 予選でのデータも今探しているが、やはり無名だけあって情報も探しづらい。

 

 つまり。

 

「…………ほぼ初見ぶっつけ本番、か」

 

 自身で呟いた言葉に、思わず嘆きたくなった。

 

 

 




エテボース 特性:テクニシャン 持ち物:おうじゃのしるし、きあいのハチマキ、ノーマルジュエル
わざ:なげつける、ねこだまし、とんぼがえり、かたきうち


ホルード 特性:ちからもち 持ち物:ちからのハチマキ、やわらかいすな、チイラのみ
わざ:じしん、おんがえし、とんぼがえり、ストーンエッジ


ラッキー 特性:しぜんかいふく 持ち物:しんかのきせき、たべのこし、オボンのみ(アイテムチェンジorアイテムギフト→あついいわ)
わざ:ちきゅうなげ、いやしのねがい、にほんばれ、ステルスロック


グライオン 特性:ポイズンヒール 持ち物:どくどくだま、やわらかいすな、たべのこし
わざ:じしん、どくどく、まもる、みがわり


バンギラス 特性:すなおこし 持ち物:こうかくレンズ、こだわりハチマキ、とつげきチョッキ
わざ:ストーンエッジ、ばかぢから、じしん、かみくだく


フシギバナ 特性:しんりょく 持ち物:こだわりメガネ、きせきのたね、イバンのみ
わざ:ソーラービーム、ハードプラント、ギガドレイン、せいちょう

専用トレーナーズスキル(P):アイテムフリー
自身の持ち物の不利な効果を無視する。



共通裏特性:コレクター
持ち物を3種まで持てる

共有トレーナーズスキル(P):アイテムギフト
ターン開始時、持ち物枠が空いている味方に「どうぐ」を持たせる。“アイテムチェンジ”を使用した時、この効果は使用できない。

共有トレーナーズスキルP):アイテムチェンジ
ターン開始時、味方の持ち物を一つ選んで任意の「どうぐ」を入れ替える、“アイテムギフト”を使用した時、この効果は使用できない。

共有トレーナーズスキル(P):アイテムスチール
相手に直接攻撃をした時、相手の持ち物を奪う

共有トレーナーズスキル(A):アイテムマスター
ターン開始時、任意の道具を一つ選択する。選択した道具を任意のタイミングで使用できる。1度使用すると1ターンの間はこの効果を使用できない。

共有トレーナーズスキル(A):アイテムウェスト
1ターンに1度、任意のタイミングで自身の消費する持ち物を条件を無視して発動させる。ただし効果が無かった場合でも、持ち物を消費する。



折角作ったデータと戦術…………8割以上ハルトくんに潰されたよ、畜生が!!!
次の相手では滅多メタに苦しめてやるからなあキサマァ!



こだわりメガネ? きせきのたね? 小賢しいんだよ!!!

「とくぼう」2倍かつ『くさ』半減のヌメルゴンがその程度でダメージ食らうかよ!!!!!!!!

と言う話。
久々じゃないだろうか、ヌメルゴンの『とくぼう』がこんなにも目立ったのは。
そしてシアがアタッカーするのなんて野生の時以来な気がする(


最近ふとポケモン小説探したらロリマンダを信仰する小説があったので、1話目からずっと感想にマンダ賛美を爆撃してる水代である。

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