異能…………前世での超能力とはまた定義が違うこの世界ならば、
実機時代でも確かにいた。
サイキッカー。そう呼ばれるトレーナーたち。
実機ならば使用ポケモンに『エスパー』タイプが多い、と言うかそれしか使わない、と言うだけの普通のトレーナーだったが。
この世界の場合、事情が変わって来る。
地方大会では良く“異能禁止ルール”なるものが設定されている。
この場合の異能、と言うのはポケモンではない。
この世界には異能が存在する。もういっそ
前世とは明らかに異なったこの世界の理を
それが異能トレーナー。
「…………厄介な」
トレーナーズスキルとは、端的に言って
通常のトレーナーズスキルには、ある程度の原理がある。
例えば。
自身のトレーナーズスキルは
見知らぬ他人と親しい誰か、応援されれば誰だって後者のほうが頑張ろうと気力を漲らせる。
つまりそれをとことんまで追求したのが自身のトレーナーズスキルだ。
前世なら気休め程度の効果だが
気力とか、気迫とか、思いとか、勢いとか、そんなものが現実の効力を発揮するのだ、この世界は。
だから前世のイメージのまま殴り合えば負ける、こちらが気休めだと思っているものを本人たちは最大限真面目に行い、そしてそれがそのまま強さに直結するからだ。
けれどそれにしたって多少の原理はある。
例えば先に戦った毒使いの少年について語るのならば。
タチワキシティと言う『どく』タイプジムで専門を学び、『どく』タイプに対して理解を深め、そこから生み出した戦略、戦術、スキル、裏特性、特技だった。
さらに前に戦った“アイテムマスター”のトレーナーについて語るならば、あれは完全にトレーナー自身の腕だ。蓋を開け、振りかける程度に使うはずの薬品類を投げて使うというあの発想、そしてそれを実行するだけの投擲技術をトレーナー自身が持っていた。そして道具の使い方に関する知識、それらを知っていたからこそ、ポケモンたちにそれを伝授し、裏特性として目覚めさせた。
翻って、次に戦うトレーナーのスキルにはそれが無い。
何の原理も無い。
ただトレーナーの意思一つでオンオフが切り替わり、ある程度の傾向はあれど
異能トレーナーと言うのは最も読みが難しいタイプだ。
何せその異能は下手をすれば手持ちにまで影響を与えるのだから。
チャンピオンとのバトルを覚えているだろうか。
あの時は気づかなかったが、あの後になって気づいたことが一つある。
先発のエアームド…………使っていた技を思い出してみる。
“ステルスロック
“まきびし”
“どくどく”
“はねやすめ”
“ふきとばし”
五つ、だ。
間違いでも何でもなく、五つの技を使用していた。
ポケモンのわざは四つ、までだ。
何故ってそれがポケモンのリソースに許された限度だからだ。
だからこそ、チャンピオンの異能が光る。
と言っても、恐らく、だ。実際本人に聞いたわけでも無いが。
自身の
自身の才能をポケモンに与え、ポケモンに積め込める許容量を拡張しているのだ。
それこそがチャンピオンの
とことんまで『はがね』に特化した
それを踏まえて言うならば。
――――――――なんでもあり。
それこそが、異能トレーナーと言う存在だ。
異能を持たない自身には、理解も把握も出来ない摩訶不思議意味不明なる
傾向こそあれ、上限も分からなければ、底の深さも分からないびっくり箱。
いや、もうむしろ、爆弾、と呼んで差し支えないかもしれない。
理論も、原理も、理屈も、全て吹っ飛ばしていきなり結果だけを残してくるような相手、まともに読もうとしても読めるものでは無い。
対抗手段は二つ。
こちらも異能を身に着けて対抗する。
なんて言っても自身にそんな才能は全くない、これっぽっちも無い。
チャンピオンのような全てにおいて才能溢れる人間と違って、自分は正真正銘ただの凡人だ。
本来ならばトレーナーズスキルの一つあればいいようなレベルの凡人だが。
彼女たちがいたから、ここまでこれた。
結局、自身の指示も、育成も、スキルも、全て彼女たちありきなのだ。
自身が彼女たちを強くするために、彼女たちを生かすために、彼女たちを育むために。
彼女たちのためだけに自身の才の全てを傾けた。
それ以外に自身がこの世界で成り上がる方法は無い。
ゲーム基準で考えていた過去が馬鹿らしくなるほど、この世界は理不尽だ。
例えばの話、レベルフラットの制限付きで3VS3のバトルを100回やったとして。
100連勝できる相手、と言うのがいるだろうか。
互いの全力を持って戦い、100連勝を決める。
相当に戦術や戦略、そして読みの上手さが要求されるだろうことは想像に堅く無い。
それでも運次第では負けるかもしれない、当たると思った攻撃が一発外れるだけで全てがひっくり返ることだってある。
つまり、基本的に実機時代の対戦と言うのは
だが翻ってこの世界で同じ相手を100戦すれば。
本当に強ければ当たりまえのように100連勝する。
何だったら1000戦したって全勝する。
これが1万回になろうと、10万回になろうと。
やればやっただけ勝つ。
そのくらいの
だからこそ、挑み甲斐がある、とは思う。
そしてここまで戦ってきた中で思うのは自身の凡庸性だ。
読み、こそ実機時代の経験で
特別カリスマ性に優れるわけでも無く。
相手を出し抜ける特別な読みが出来るほどでも無く。
まっとう過ぎるほどまっとうな育成能力しか無く。
特別異能があるわけでも無い。
総じて言えば、多少読みができる程度の凡人。
知ってはいたが、この世界に於いてそれはハンデだ。
いっそ、父親のように突き抜けることができればそれはそれで一つの武器と成りえたかもしれないが。
突き抜けることも出来なければ、振り切ることも、貫き通すことも出来ない。
だから。
彼女たちが居なければ、自身などここまで来れなかった。
精々六つ目か七つ目のジムで負けて引退を考える程度の雑魚トレーナー。
そう。
そんなIFなど考えても意味が無いのだ。
彼女たちは現実にここに居てくれる。
世界さえ異なって、それでも自身の傍に…………否、前世よりもさらに身近に居てくれる。
誰よりも欲しかった存在となって。
自身の何よりも大切な、かけがえない存在となって。
だから。
「…………もう一つ、しかないよね」
もう一つの方法。
つまり。
「
例えそれがどんな凄まじい異能だろうと、どんな効果を持つ能力だろうと。
真正面から突き抜け、突き破り、食い破り、食い散らす。
「いいよ、そっちのほうが好みだ」
結局、自身は彼女たちが好きなのだ、好きだから作った、好きだから育てた、好きだから使い続けた。
6V…………とは言わずとも、5V程度ならばボックスに溢れていても、だ。
ガルーラ、作った。
ゲンガー、作った。
ガブリアス、作った。
ファイアロー、ギルガルド、バシャーモ、カイリュー、ゲッコウガ、ニンフィア、マリルリ、バンギラス、サザンドラ、ラグラージ、シビルドン、ギャラドス、チルタリス、メタグロス、ヨノワール。
他にもたくさん作った。作って、それでも最終的に使っているのは、エア、シア、シャル、チーク、イナズマ、リップルだけだ。
結局のところ、それは彼女たちが一番好きになった、好きになれたからだ。
使っていて、負けることはそれはある、実機時代、こんな偏りのあるパーティ、それはガチで組んだパーティなら負けることなど幾度もあった。
それでも変えないのは
ああ、そうだ。
だいたいのポケモンなど5Vで十分だ、例えばエアならば『とくこう』が抜けていても十分に強いし、シア、シャル、イナズマに『こうげき』などあっても使うことも無い。
だとしても、それでも6Vに拘ったのは。
つまるところ。
自分の好きなポケモンを自慢したいからだ。
『どうだ? 俺のポケモン、凄いだろ?』
なんて、言いたかったからだ。
そこだけはこの世界も、前世も変わらない。
みんな、みんな同じだ。
意地がある、矜持がある、意思がある。
それでも根底にあるのは。
愛に過ぎない。
自分のポケモンたちが世界で一番可愛い。
これまでの相手も、そしてこれからの相手も、同じ。
「…………うん、そうだね」
考えていても仕方ない、と言うか、考えても変わらない。
ぱん、ぱん、と立ち上がり、ズボンのお尻をはたく。
少し埃がついていたのを払うと、そのまま歩き出す。
「さて、それじゃあ行こうか、みんな」
スタジアム脇のベンチから歩けばすぐ目の前に目的地がある。
「エア、シア、シャル、チーク、イナズマ、リップル」
彼女たちの名を呼ぶ。
「決勝なんて言ったって、これはまだ道の途中に過ぎない、こんなところで負けてられない」
だから。
「勝つよ?」
その呟きに。
かたり、と。
当然、とばかり反応が返ってきて、笑みを浮かべる。
さあ行こう。
――――――――三回戦…………決勝が始まる。
* * *
今大会最強の凡人。
それが対戦相手への自身の評価である。
統率、カリスマを見れば人並み。
育成を見れば確かに育てられているが、それも結局ヒトガタの才能に依存したものであり、本人の育成能力は並。
指示、読みを見れば多少人より高くはあるが、相手を見透かす、と言うほどでも無く、定石外の手には対応しきれていない、つまり高くはあってもとび抜けてはいない。
特異な能力も無い、あのアイテムマスターのような特別な技術も無い。
つまり、正真正銘ただの凡人。
だが、それでも彼の連れているポケモンは凡庸などと言う言葉からは程遠い。
六体全てがヒトガタポケモン、と言うその異様な布陣は決して侮られるものでは無い。
総評して、注意すべきはトレーナーでは無く、ポケモン。
普通できないのだ、ヒトガタの扱いなど。そう容易く無いのだ。
ヒトガタポケモンは通常のポケモンよりも強い。いっそ別格と呼んで差し支えないほどに強さに差がある。
だからこそ、ヒトガタは群れの主になりやすい。
と言うよりも、レベルの高いポケモンもそうだが、強くなれば強くなるほど、野生の矜持のようなものが生まれる。
例えそれが人の手で孵化されたポケモンでも同じ。
ヒトガタ、と言うのはそれが本当に顕著なのだ。
実際のところ
もしくは…………あの子のような…………。
とにかく、彼のような普通の人間ならあっさりと手綱が取れず暴れるのが関の山だと言うのに。
自身の対戦相手はその手綱を完璧に握っている。
彼の率いるヒトガタポケモンたちは誰も彼もが彼に従順であり、同時に絶対の信頼を置いているように見える。
実際のところ、単に野生のヒトガタが六体並んでいるだけなら手強いとは思っても、負ける、とは思わない。
だが彼によってそれが統率され、我の強いはずのヒトガタたちが
単純な能力値の暴力、と言うのはそれだけで脅威だ。
さらにそこにトレーナーによる育成が入り、バトルでは統率と指示が混ざる。
異能など必要無いほど十二分な戦力である。
単体で見ればトレーナーもヒトガタも脅威足りえない。
だが、両方揃えば途端に恐ろしい戦力へと変わる。
自身もまた異能トレーナーとして戦ってきたが。
これほどの強敵など片手の指で数えるほどしかいない。
勝てるか?
そう問われれば、こう答えるしかない。
「勝つわよ」
呟き、少女、シキは一歩、歩みを進める。
「それはそれとして」
そうして、一つ呟く。
「ここどこ?」
絶賛迷子だった。
何故こんなに遅くなったかって?
ヒトモシの厳選してました(
C抜けばっかでてきて、折角HBCDSの5Vキターーーーーーーと思ったら特性が違ってたり、発狂しながら軽く8時間ほど厳選してました。
シャルちゃん作りたかったのに、よく見たら性格:ひかえめ、だった。
なのでXY編にひかえめシャンデラぶっこむことにする(
因みに男の娘です。シャルちゃんと対局のいたずらっ子(可愛い)。
ところで、データがまだ作り終わらない件(
気分転換にネット対戦に手を出し始めた。バトンバシャ+はちまきカイリューのコンボが綺麗に嵌る。
バシャ出して初手守る→変化技→みがわり→変化技→つるまい→攻撃→みがわり→変化技→バトンタッチ→攻撃→カイリュー無償降臨。
あとははちまきカイリューがしんそくでぶっころするだけの作業。
読みがぴったりはまると楽しい。
活動報告にフレコ乗せるんで、誰かあそぼーず。