ポケットモンスタードールズ   作:水代

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ぅゎょぅι゛ょっょぃ

 伝説のポケモン、と言う存在について、正直言って自身は何も知らないに等しい。

 実機時代の知識ならある、種族値もある程度は覚えているし、タイプや特性、覚えるわざなども把握している。

 だが、この現実において、それらがどれほど意味を為すのか、正直分かりかねている。

 

 自身の手持ちで考えるならば、実機時代レベル100の伝説だろうが、エアならば勝てる自信はある。

 パーティで戦えばまず間違いなく勝てる、と言う程度の存在。

 だが現実において、その程度の存在が伝説に語られるだろうか?

 実機で考えるなら、ストーリー上必ず戦うことになる伝説のポケモンたちが理不尽なほどに強ければ、そこで詰みになる。だからこそ()()()()()()()()調()()()()()()()()と言うのが普通だろう。

 本当に伝承通りの能力を作ったならば、アルセウスなどどうやって倒すのだ、と言う話。

 それを捕獲してしまうトレーナーは、じゃあアルセウスや他の伝説種の力を使って世界を再び作ることだってできるかもしれない。

 だがゲームにおいてそんなことはできない。

 

 例えグラードンとカイオーガをゲンシカイキさせても、天候被害はバトルの範疇に収まるし、伝承通りの力を十全に発揮しているとは思えない。

 

 だが現実において。

 

 本当に伝承通りの力を十全に振るうとするならば。

 

 伝説種とは。

 

 

 文字通りの災厄だ。

 

 

 * * *

 

 

 圧倒的な力。

 存在そのものの格の差、とでも言えばいいのだろうか。

 

 絶望的なほどの隔たりを感じる。

 

 ただそこにいるだけのはずなのに。

 文字通り、存在感が違う。

 生きている世界が違い過ぎる。

 

 だからこそ。

 

 ――――勝たねばならない。

 

「行くぞ…………イナズマ」

「ん…………ますたー」

 

 歳の頃十五、六ほどだったその姿を変化(へんげ)したイナズマが力強く頷く。

 

 メガデンリュウ。今回の自身の切り札。

 この世界に来た時、イナズマが持っていたのは『たべのこし』である。

 故に、この世界で再びデンリュウナイトを見つける必要があった。

 原作においてニューキンセツにあるはずのそれだが、ゲームならともかく、現実に勝手に入れるわけも無く。

 だがゲームと違って現実には、ショップ販売でメガストーンが売られていることもあることを思い出す。

 ミナモデパートのように大きな店舗ならばあるかもしれないと、近場のキンセツシティを探し。

 そうして見つけたのだ、黄と橙の特徴的な石を。

 

 メガデンリュウ、原作でも伝説種を除けば『とくこう』種族値の高さにおいてトップ3に入るほどの強力な特殊アタッカーである。

 唯一『すばやさ』が下がる部分だけは難点だが、元の数値が低いためそれほど気にはならない。それよりも『ぼうぎょ』『とくぼう』の数値が高くなり、打たれ強さを増しているため全体的には使いやすさも増している。

 

 少し話は変わるが。

 

 この世界において、育成とは才能の開拓だと自身は思っている。

 ゲームで言えば厳選した個体を努力値を振って、レベリングをして、技を整えること、と思うかもしれないが。

 特技、裏特性、トレーナーズスキルの存在するこの世界ではポケモンの才能と言うものが大きく関わって来ることに、自身の手持ちを育成する中で気づいた。

 

 才能とは種族値であり、個体値であり、努力値である。

 努力値を才能、と呼ぶにはおかしな語感ではあるが。

 

 例えばエアならば物理攻撃と速度一辺倒の努力値振りをしているため速攻アタッカーとしての才能の開花は非常に速い。“らせんきどう”や“かりゅうのまい”も初めての試行錯誤の中でも無事完成したし、ある程度要領を得て行った“ガリョウテンセイ”の完成も非常に早かった。

 逆にシアならば防御と補助、特殊攻撃に比重を置いているため、普通の物理アタッカーや速攻アタッカーのような育て方をしても難航しただろうことは予測できる。

 

 エアには“りゅうせいぐん”を覚えさせている、いずれこの辺りもさらに追及していきたいと思っているが、物理アタッカーとしての比重を置いているエアにしてみれば恐らく特殊攻撃技の特技を開発することは物理技よりも難航するだろう。

 

 だが不可能ではない。

 

 努力値を振った分だけ、振った能力に依存した技術の開発が容易になる。

 つまり努力値とは才能の後押し、とでも言えばいいのだろうか。

 物事全てに経験値をつけ数値で表すならば、努力値を振った能力と言うのは経験値が増すのだ。それだけその才能を開発しやすくもなる。

 だが努力値を振っていなくても物理技ほどでないにしても、いずれ特殊系の特技も使えるだろう。

 

 何故なら『とくこう』がVだからだ。

 

 つまり個体値の問題。

 そしてボーマンダと言う種族が決して『とくこう』種族値が低く無いことにも起因する。

 種族値自体が種族としての才能とするならば、個体値はその種族の才能をどれだけ発揮できるかの才能。

 6V個体とはつまりその種族の才能を100%発揮できる個体、と言える。

 

 だからシアを物理アタッカーとして育て直そうとしたら、努力値を振っても相当に苦労するだろう。そもそもの『こうげき』の種族値が低い。

 まして裏特性や専用トレーナーズスキルを開発することは絶望的かもしれない。

 

 だからイナズマも実は難航した。

 裏特性で火力と速度の両立をしたかった。

 だがデンリュウと言う種族の『すばやさ』数値を考えると相当に絶望的なのは分かる。

 

 だからそう言う場合には条件付けをする。

 

 特定の条件を満たした時、特定の効果を発揮する、と言ったように。

 足りない才能は条件を限定することで効力を絞り、特化させていくことで解決した。

 得意の電気に絡め、そして前世における科学の知識を無理矢理にこちらの世界の理に適応させる。

 裏特性は技術だ、だったら理論と原理があれば多少の無茶は通る。

 デンリュウの夢特性の『プラス』と言うのもその一押しになっただろう。デンリュウにはそう言う下地があるのだ。イナズマはそうじゃないとしても、デンリュウと言う種族にそう言った眠った才能があることは確かだ。

 そうやってイナズマとシャルに関してはかなり無理を通した。

 

 さて、ではここで一つ問題だ。

 

 メガシンカはどうなる?

 

 メガシンカすると種族値が上昇する。

 種族値は種の才能だ。そして6V個体であるイナズマは上昇した種の才能を十全に発揮できる。

 

 つまり。

 

「イナズマ、フルパワーチャージ!」

「ちゃーじ…………する」

 

 “むげんでんりょく”

 

「最大威力でぶっ飛ばせ!」

 

 絶叫染みた叫びと同時。

 

「でんりょく、さいだい」

 

 “レールガン”

 

「ギガス!!!」

「……………………」

 

 “ギガインパクト”

 

 互いの最強の一撃がぶつかり合う。

 最早電撃のビームとでも呼んでも過言でないイナズマの放つ一撃と、レジギガスの放つ拳の一撃が衝突し。

 

 そして。

 

「…………………………!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 そして押し返す勢いを殺そうと、レジギガスが拳で受け流そうとするが。

 

「もーいっぱつ」

 

 “レールガン”

 

 無慈悲に叩き込まれた二発目の“レールガン”が、レジギガスを飲み込んだ。

 

 

 * * *

 

 

 ――――夢から醒める。

 

 

「ん…………」

 

 薄っすらと、意識が覚醒していく。

 ゆっくりと目を開きながら、目の前に見える肌色をぼんやりと考える。

 寝ぼけ半分の頭を回しながら、何の気無しに手を伸ばす。

 

 ふにゃ、と柔らかい感触がした。

 

「ん…………やぁ…………」

 

 そして耳元をくすぐるように聞こえてきた艶のある声。

 ふと視線をずらす。

 

「んー…………ます……たぁ……?」

 

 ずらした先、ジャストなタイミングで少女が目を開く。

 そして自身の視線と少女の視線がぶつかり合い。

 

「えへへ…………ます、たあ」

 

 少女のターコイズのような色の瞳が自身を見つめ、そうしてその目が形を変え、笑みを浮かべる。

 じゃれあうように、自身へと小さな手を伸ばし、しがみついてくる少女をあやしながら、上半身を起こす。

 

「…………まだ小さいんだな、()()()()のやつ」

 

 そう、同じベッドにいつの間にか潜りこんでいたらしい目の前の()()()()()()()()()

 自身よりも背の低く、足元まで届くほどに長い金の髪の少女は。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 エアのメガシンカは成長を促していた。だからてっきりイナズマもそうだと思っていたのだが。

 イナズマのメガシンカは退化していた…………いや、別に能力的に低くなったわけではない、数値的に見れば確かにメガシンカ分強くはなっていたのだが。

 

 何故かその外見は十歳程度にまで若返り、さらに知能まで年相応になっていた。

 

 しかも、決勝戦はとうに終わったはずなのに、翌日になっても未だにメガシンカが解けていない。

「…………いつになったら解けるんだよ、これ」

 

 異常事態、と言えばそうかもしれない。

 

 本来メガシンカしたポケモンはバトルが終わればメガシンカは解除されるはずなのに。

 同じメガシンカしたことのあるエアに聞いてみたところ。

 

 幼児退行しているせいで、逆に自分の意思でメガシンカを解けないのではないか、とのこと。

 

 と言ってもキーストーンとて永続的に共鳴しているわけではない。

 放っておけば自然と解けるのではないか、と言うのがエアの見解。

 

 は、いいのだが。

 

「…………なんでこうなってんだ」

 

 右を見る、イナズマが嬉しそうに笑っている。

 その奥にはリップルが平然と眠っている。

 

 左を見る、すぐ隣にエアが眠っている。

 その奥にはシアが安らかな寝息を立てている。

 

 二人いない、そう思えば。

 チークとシャルは自身の両の脚にしがみついていた。

 どうりでさっきから暖かいと思った。

 

 つまるところ。

 

 手持ち全員と一緒に一つのベッドで寝ていた。

 

 思うことはただ一つ。

 

「…………………………狭い」

 

 かなり大きなホテルだけに、実家にある自身のベッドよりも倍以上大きいサイズのはずのベッドなのに、寝返りうつ余白すらない。

 

 どうしてこうなってしまったのか、思い出そうとして。

「おかしい…………全員それぞれのベッドで寝てたはずなのに」

 ()()()()()()()()()()()だけあってその辺は都合がつくらしい。ヒトガタポケモンが六体と言うことで、一番大きな部屋にベッドが七つも用意されていた。

 

 寝る前は確かに全員それぞれのベッドに入ったはずなんだが。

 

 どうしてこうなった、そう考えて。

 

「…………まあいいか」

 

 全員、昨日はよくやってくれた。

 本当に、誰一人欠けても駄目だっただろう戦いだった。

 

 ()()()()()()()()()()

 

 そう、勝ったのだ。

 

 あの強敵を相手に。

 

 伝説種すら下して。

 

 勝ったのだ。

 

「…………ますたー?」

 

 ふと、イナズマを見ると、きょとん、と首を傾げるその姿に苦笑する。

 

「…………イナズマ」

「はーい」

 

 短く、名前を呼べば嬉しそうに答える。

 

 だから。

 

「頑張ったな」

 

 その頭に手をおいて。

 

「ありがとう」

 

 笑みを浮かべた。

 

 

 * * *

 

 

「……………………はあ」

 

 ため息一つ。

 

 ベンチに座ったまま、さてどうしようかと考える。

「負けちゃった…………わねえ」

 まさかの敗北に、実際戸惑いを隠せない。

 レジギガス、伝説種まで出しての敗北。

 まさしく完敗、である。

 

 正直、ここからのことは何も考えていない。

 

 勝たなければならない勝負だった。

 負ければ後など無かった。

 

 否。

 

「後が無い、と言うなら、いっそ」

 

 捨ててしまおうか、正直もうあの場所に未練も無い。

 

「………………………………シキ」

 

 呟くその名は、自身と同じ。

 けれど、自身のものでは無い。

 

 それは大切な、大切な。

 

「…………あの子のこと、言えなくなったわねえ」

 

 “正しさだけで決めるな、意味なんて求めるな”

 

 そう言ったのはあの子。

 あの時の自身には分からなかった。今の自身にも分かったとは言えない。

 

 だが……………………。

 

「旅でもしてみましょうかね」

 

 まずはこのホウエンと言う地方を。

 

 敗北した自身に、あの場所に居場所など無い。

 ならば、もういっそ…………捨ててしまえば良いのかもしれない。

 

 それに。

 

「……………………ハルト」

 

 呟く、自身が戦った相手の名。

 

 そして。

 

 初めて自身が――――――――

 

「呼んだ?」

 

 背後より聞こえた声に驚き、振り向く。

 

「さっきぶり、かな」

「…………そうね」

 

 勝者と、敗者。

 流れる空気は、気まずい。

 

「あの、さ」

 

 だが、その空白を打ち破って、ハルトが口を開く。

 

「頼みがあるんだ」

「たの、み?」

 

 自身が首を傾げ。

 

 そうして、ハルトがその続きを語る。

 

「――――――――」

 

 呟かれたその言葉に、目を見開いた。

 

 

 




“さかさま”のシキ(サイキッカー)


クロ(サザンドラ) 特性:ふゆう 持ち物:こだわりメガネ
わざ:りゅうせいぐん、あくのはどう、かえんほうしゃ、だいちのちから

裏特性:みつくび
自身が使用する『ドラゴン』タイプのわざの威力を半減するが、攻撃回数を3回に変更する。

専用トレーナーズスキル:しょうりのほうこう
相手を倒した時、「最大HPの1/3を回復」「自身の『ぼうぎょ』『すばやさ』を1段階上昇」「自身の『とくぼう』『すばやさ』を1段階上昇」のいずれかの効果を得る。




ルイ(ジバコイル) 特性:じりょく 持ち物:ひかりのねんど
わざ:ミラクルバリアー、めざめるパワー(炎)、10まんボルト、みがわり

特技:ミラクルバリアー 『エスパー』
分類:リフレクター+ひかりのかべ
効果:5ターンの間、味方への物理・特殊技のダメージを半減し、攻撃技が急所に当たらなくなる。持ち物が『ひかりのねんど』の時8ターン続く。

裏特性:はんぱつりょく
『でんき』わざが命中した相手を強制交代させる。



ドッスン(ハリテヤマ) 特性:こんじょう 持ち物:くろおび
わざ:インファイト、ばかぢから、はらだいこ、はたきおとす

裏特性:りきし
自身の『かくとう』わざで相手が『ひんし』になった時、相手を強制交代させる(次に出すポケモンをランダムに選出する)。

専用トレーナーズスキル(A):リバースダメージ
ターン開始時発動、発動ターン中互いへのダメージをHP回復効果に変える。



ララ(ハピナス) 特性:いやしのこころ 持ち物:ヨプのみ
わざ:ちいさくなる、いやしのはどう、うたう、いやしのねがい

裏特性:ヒーリングボイス
『うたう』で相手を『ねむり』状態にした時、『ねむり』状態の間、毎ターン最大HPの1/4回復する。

専用トレーナーズスキル(A):リバースヒール
ターン開始時発動、発動ターン中互いへのHP回復効果をダメージに変える。



アーケオス 特性:よわき 持ち物:いのちのたま
わざ:もろはのずつき、げきりん、ついばむ、じしん

裏特性:きょうそう
特殊技・変化技を出せなくなるが、物理技を使用した時、自身の『こうげき』『すばやさ』に『とくこう』の半分を加算して先攻後攻、ダメージ計算する。

専用トレーナーズスキル:きょうらん
HPが半分以下の時、相手の攻撃技以外のダメージを全て無視する。自身の攻撃の反動を受けなくなる。



レジギガス 特性:スロースタート 持ち物:こだわりハチマキ
わざ:ギガインパクト、ばかぢから、ストーンエッジ、つばめがえし、じしん、みがわり、グロウパンチ、きあいパンチ、ロックカット

裏特性:さびつき
ターン経過で特性“スロースタート”が解除されない。

専用トレーナーズスキル:ジャガーノート
ダメージ計算時、『ひんし』や『みがわり』によって余剰ダメージが発生した時、追加ダメージとして相手にダメージを与える。

アビリティ:たいこのきょしん
自身の使用する物理技が半減・無効化されない。

アビリティ:おうのおう
自身を対象とする全てのデメリット効果を無視する。

アビリティ:たいりくへんどう
自身の『こうげき』の能力ランクが6以上の時使用可能。次に使用する物理技の威力を2倍にする。使用後、全ての能力ランクの変化を元通りする。この効果は“おうのおう”によって無視できない。



メガデンリュウ
外見:イナズマをそのまま幼くした感じ。髪は足元まで伸びている。
特徴:口調が幼い、知能が退行している。
注意:メガシンカから元に戻っても記憶だけ残っている


専用トレーナーズスキル(P):むげんでんりょく
自身がメガシンカをした時、自身を『じゅうでん』状態にし、『じりょくカウンター』を6つ増やす。さらに自身が場にいる間、毎ターン『じりょくカウンター』を2つ増やす。



水代考えた。メガシンカしたイナズマの容姿どうしよう、と。
エアを鑑みて、大人のお姉さんにしようかと思ったけど。
ふとピクシブでメガデンリュウ見て思ったことがある。

そうだ、幼女にしよう。

何故大きくなる=成長なのだ。
成長して小さくなってもいいじゃないか。

そんな逆転の発想から生まれたイナズマならぬ、いなずまちゃん。
ろりいずづま…………ろりづま? ロリ妻?

ところでハルトくん、いなずまちゃんの()()()()()()()()()()()()

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