こつん、こつん、と。
主の居なくなった部屋を歩く。
四天王カゲツがいたはずの部屋はけれど今や照明は落ち、薄暗い部屋の中は非常灯だけが道を示していた。
以前は閉じられていたはずの扉は今は開かれている。
部屋…………と言うか最早一つのドームのようなその場所を突っ切って、部屋の奥の扉を抜け。
ぼん、と。
真っすぐ伸びた通路の先で一つ、提灯に一つ、火が灯る。
一歩、歩みを進めれば、ぼん、と二つ、火が。
一歩、また進めば、三つ。
歩みを進めるほどに視界に映る御殿に掲げられた提灯に明かりを灯され。
橋のような通路の半ばまで歩みを進めた時。
ぼん、と最後の提灯に明かりが灯され、ぎぎぎぎぎ、と御殿の扉が独りで開いていく。
「……………………すう…………はあ…………」
一つ呼吸を整え。
「…………行こう」
一歩、足を進めた。
* * *
「アハハ、アタシフヨウ。よろしくね?」
御殿の扉を潜り、室内に入った自身を認めた少女…………四天王フヨウが椅子から立ち上がり、こちらに向かってそう告げる。
「使用するポケモンは六体。それ以外のルールは特にないよ。好きなように戦えばいいから」
呟きつつ、どこからともなく、ボールを取りだす。
「前置きは…………まあいいよね、ここまで来たんだから」
にかり、と笑ってフヨウがボールを振りかぶり。
「それじゃあ」
投げる。
「始めようか」
* * *
一手、様子見かな。
判断し、ボールを投げる。
「頼んだ、チーク」
「あいあいサー!」
“つながるきずな”
チークとの繋がりを確認しながら、相手を見やる。
投げられたボール、出てきたのは。
「キヒヒヒヒ、アタイが参上なのサ」
袖や
“だいいちのきょうふ”
ぞくり、と背筋が凍る。
一瞬だが、フヨウと目の前の少女から発せられた威圧感のようなものに、体が硬直する。
だがそれも一瞬のことで、すぐに無くなる。
「何か不味い」
そんな気がする。
相手はゴーストタイプとなればここは。
「チーク」
指示を出し、チークが動きだそうとした瞬間。
“うしろのしょうめん”
「だーれダ」
“かげうち”
「後ろだ!」
咄嗟の叫びに、チークが敏感に反応し。
「うわわわああ…………あっとっと」
頭を下げながら体を前に転がす。
振り向かないままに前に転がったことで、完全には避けることは出来なかったが、いくらか威力は軽減されただろうと予想する。
そして、すばやく態勢を立て直し。
“ほっぺすりすり”
チークが少女に全身から突っ込んでいく。
最早タックルじゃないのか、と言うレベルだが。
「避けて」
“たましいのきずな”
フヨウの呟きに、少女がぴくり、と反応し。
少女がふっと、虚空に消えたと思うと。
「ふう…………危ない、危ないネ」
気づけば、フヨウの元に少女の姿がある。
そんな少女を見ていて、ふと呟く。
「めが…………じゅぺった?」
“かげうち”と言うことは物理型。
そして突然消えては現れる…………恐らくゴーストダイブの元のような技。
そしてあのカラーリング、と見た事のあるような外見。
総合して考えるに。
メガジュペッタ。
それがあの相手の名前だろうと予測する。
「あらら~? バレちゃったね」
「キヒヒヒヒ、なんでだろーネ?」
自身の呟きに、首を傾げるフヨウと嗤う少女。
だが、種が分かれば…………と言いたいところだが。
「…………どうする?」
小さく呟く。手は二つ。変えるか、残すか。
正直言えば、チークでは有効打が無い。と言うか、今回に関してチークは半分も仕事ができないだろうと予想する。
“なれあい”がタイプ相性のせいで、相手の全てのポケモンに無効化されてしまう以上、チークは今回は余り当てにはならない。
今回重要なのは、シャルだろう。
『ゴースト』に『ゴースト』わざは相性抜群だ。
シャルの“シャドーフレア”を叩き込めれば、ほぼ確実に相手を倒せると考えても良い。
エアは能力ランクを上げて行けば、一方的に上から叩けるので、相性は悪くない。
最も、相手がそう容易く勝負を運ばせてくれるかどうかは分からないが。
それと、一つ不思議なことがある。
あのジュペッタ…………本当にメガジュペッタなのか?
否、メガシンカさせていない通常のジュペッタに“かげうち”…………?
なくは無い、がそれだったら“シャドークロー”の一つでもあったほうがまだマシだ。
この世界ならば、優先度と言うのは『すばやさ』で補えるものだからこそ、実機時代ほど優先技、と言うのはメジャーではないのだ。
だからこそ、あれはメガジュペッタだろう、とは思うし、実際、フヨウも否定しなかった。
ブラフ、と言う可能性は無くは無いが、どうにもそう言う駆け引きの得意のようなタイプには見えないのが困る。
だからこそ、疑問。
そもそも、だ。
フヨウのあの服装、キーストーンらしきものが一つも無い。
それに、メガシンカをすれば、必ずキーストーンが共振するので分かるはずなのだ。
その兆しは一切見えない、つまり、可能性は二つ。
一つはキーストーンを隠している。
とは言ってもこれは考えにくい。何せあの服装だ。南国衣装と言うか、何と言うか。
光り輝くキーストーンをあの服のどこかに隠し持っていると言うのはちょっと考えづらい。
と、なると可能性は残り一つなのだが。
「…………まさか、ねえ」
正直、余り考えたくない、考えたくないが、最早そう考えるしかない。
ホウエン最高の『ゴースト』タイプの育成家フヨウ。
まさか、とは思うが。
否、その可能性自体は自身とて気づいていた。
それでも、だ。
未だ自身でもたどり着かない領域だ、それは。
もし、目の前の少女がその領域にたどり着いているとするならば。
「……………………勝てるのか、この勝負」
本気でそう思わざるを得なかった。
* * *
「当てに行く…………頼む、チーク!」
「あいあいサ!」
「行くよー、ぺぺちゃん!」
「はいヨ!」
“うしろのしょうめん”
「だーれダ?」
“ふいうち”
放たれた一撃。
それを。
「アンタだヨ!」
あえて受ける。ほとんど一瞬の、攻撃に移ろうとする僅かな意気と息の隙間を縫った一撃を、けれど来ると分かっていれば受けることは出来る。
“ほっぺすりすり”
「アババババババババ…………し、しびれた、ゼ」
帯電した体へと放たれた一撃は、けれど放った本人であるメガジュペッタの少女を『マヒ』させる。
「ぐ…………ぬ…………うううううう、えいっ!」
突き刺さったメガジュペッタの一撃を、けれど気合いだけで堪え。
“ぬすみぐい”
「…………って、これ食べれないよ」
そして、その全身に再び電気を纏い。
“ボルトチェンジ”
「おおっトォ?」
メガジュペッタを蹴っ飛ばし、そのままボールの中へと戻り。
「ここで落とす」
余り残しておきたく無い相手だ。
故に。
「行けっ、シャル」
切り札を一枚切る。
「は、はい!」
場にシャルが降り立つと同時に、あふれ出た影がメガジュペッタへと延びる。
「“かげふみ”系の裏特性、もしくはスキル? うーん、でもそう言うのって『ゴースト』には効かないんだよね」
さすがに育成が得意なだけあるらしい。一瞬で“かげぬい”の正体を見破る…………だが。
“かげはみ”
“かげおに”
“かげぬい”
「シャル」
「は、はい!」
呟きと共に、シャルがその手の中に黒い炎を産み出し。
「ペペ、避けて!」
放たれた炎、同時にフヨウが声をあげる…………が。
「あ、あ…………れ…………?」
メガジュペッタがその赤い瞳を大きく開き、驚愕する。
その指先の一本たりとて、動くことは無く。
“シャドーフレア”
「ペペっ!?」
メガジュペッタが黒い炎に飲み込まれ。
「あ…………あう…………や~ら~れ~た~ネ~」
目をぐるぐると回しながら、ばたん、と倒れる。
「戻れ、シャル」
「お疲れ、ペペ」
相手がポケモンをボールに戻すのと合わせて、こちらもシャルを戻す。
これで6:5
ただチークがかなり削られている上に、タイプ相性の問題でほぼ無力化している以上有利とは決して言えない状況。
シャルは魅せ札だ。
次いつ出てくるか分からない、この状況でじわじわと圧力をかける。
正直、シャルの裏特性、そしてトレーナーズスキルは自身の手持ちの中でもひと際凶悪に仕上がっている自負がある。
ただ相手は四天王。カゲツはタイミングの問題で対処するには手札が足りない状況で発覚したからギリギリ一手、こちらが勝った。
だがこんな序盤で見せたのだ、恐らく対策はされるだろう、と予想する。
次に見せるのは勝負の趨勢を決める一手、それまでは他五体で試合運びをするしかない。
次のポケモンは。
「行くぞ、シア」
「行って、バルちゃん」
互いにボールを投げ、こちらが出すのはシア。
そして相手は。
「ブルブル~」
“みんなのうらみ”
紫色の気球のようなポケモン、フワライドだった。
タイプは『ひこう』『ゴースト』だったはず。
シアとの相性は抜群に良い。
ならば。
「シア! 行け」
「吹き荒べ、バルちゃーん!」
同時に指示が飛び。
“たましいのきずな”
一瞬、フワライドが加速したかのように見えた次の瞬間。
“おいかぜ”
室内に風が吹き始める。
同時、シアがその冷気を収束させ。
“アシストフリーズ”
放つ。
“ふうせん”
だが、フワライドが風に揺られふわり、と浮き上がる。
光線はその真下を抜けていき、フワライドには命中しない。
「あの動き、厄介だな」
恐らく裏特性、と判断する。
『おいかぜ』状態の時に発動する裏特性、と言ったところか。
ならば。
「シア、狙いを定めて」
“キズナパワー『めいちゅう』”
それでも、見えているならば、当てられる。
ダーテングのようにトレーナーのほうも視認できないような場合は無理だが、相手の動きを観察し、当てる、それをトレーナーの指示によって命中を強化できる。
「撃て」
“アシストフリーズ”
言葉と共に、シアの一撃が放たれようとして。
「戻って、バルちゃん」
直前でフヨウがフワライドを手持に戻す。
撃つ直前で技を押しとどめたシアが、いつでも放てるようにと構え。
「行って、ミミちゃん」
投げられたボールから現れたのは。
“みんなのうらみ”
「…………メガヤミラミ?!」
赤い半透明の盾を持つヤミラミの姿。
“せいしんとういつ”
出てきた瞬間、盾に隠れゆっくりと呼吸を行う。
これは…………もう間違い無いだろう。
フヨウはすでに
と、なれば、まだ見ぬ三体の内、一体も予想はできる。
むしろ『ゴースト』使いが持っていないはずが無い。
いや、それは後で良い、どうせいつかは出てくる相手だ。
「シア」
「はい!」
自身の言葉に短く答え、シアがその手に収束する冷気を放つ。
“アシストフリーズ”
放たれた冷気がメガヤミラミへと降り注ぎ。
「……………………ギギィィ」
僅かに、ヤミラミがうめき声を上げる。
“かがみのたて”
同時、手に持った盾が怪しく光り。
びゅん、と氷の光が反射される。
「なっ」
「っぐ!」
反射された冷気の光線がシアへと降り注ぎ、シアが苦痛に呻く。
同時。
メガヤミラミがその手に持ったボタンのようなものを押す。
ぼん、と音が弾け。
次の瞬間、メガヤミラミがフヨウのボールへと戻って行く。
「『だっしゅつボタン』か!」
実機ならばメジャーだったが、この世界だと使われているのを余り見た事が無い道具だけに、僅かに驚く。
そうしてメガヤミラミが引っ込み、フヨウが次のボールを投げる。
「来て、ひーちゃん!」
投げられたボールから出てきたのは。
「キシャシャシャシャシャ」
嗤い声を上げながら、紫色の炎を燃え上がらせるポケモン。
「…………シャンデラ!」
自身の手持ちと全く同じ種族のポケモンが嗤い声を上げながら、立ちはだかった。
メガジュペッタ 特性:のろわれボディ、いたずらごころ 持ち物:きあいのタスキ
わざ:ふいうち、かげうち、おにび、みちづれ
裏特性:うしろのしょうめん
優先度の着いた攻撃技が必ず急所に当たる。
専用トレーナーズスキル(P):だいいちのきょうふ
自身が戦闘の最初に場に出た時、自身の『とくこう』を2ランク下げ、『こうげき』を2ランク上げる。
フワライド 特性:ゆうばく 持ち物:チイラのみ
わざ:おいかぜ、めいそう、だいばくはつ、おきみやげ
裏特性:ふうせん
場が『おいかぜ』状態の時、自身の回避ランクを最大まで上昇させる。
専用トレーナーズスキル(P):うかぶれいこん
場が『おいかぜ』状態の時『ゴースト』タイプのポケモンは『じめん』わざが当たらなくなる。
メガヤミラミ 特性:いたずらごころ、マジックミラー 持ち物:だっしゅつボタン
わざ:おにび、せいしんとういつ、バークアウト、イカサマ
特性:せいしんとういつ 『ノーマル』タイプ
分類:めいそう+じこさいせい
効果:自身の『とくこう』と『とくぼう』ランクを1段階上げ、自身の最大HPの1/2を回復する。
裏特性:かがみのたて
自身が攻撃された時、相手は自身が受けたダメージの1/2のダメージを受ける。また自身が状態異常にならなくなる。
専用トレーナーズスキル(P):めいきょうしすい
自身が場に出た時“せいしんとういつ”を使用する。
トレーナーズスキル(P):たましいのきずな
10%の確率で次の効果が発動する。
・相手の攻撃を回避する。
・相手よりも先に行動する。
・自身の攻撃が急所に当たる。
・自身の状態異常を回復する。
・自身が『ひんし』になるダメージを負った時HPを1残す。
トレーナーズスキル(P):みんなのうらみ
手持ちの『ゴースト』タイプのポケモンが『ひんし』になった時、味方の場に出ているポケモンの全能力ランクを1段階上げる。この効果は味方のポケモンが場に出るたびに発動する。
と言うわけで、『ゴースト』タイプに限り、
因みに割りとトレーナーとしての本質がハルトくんと類似してるので、トレーナーズスキルもかなり近い。
え? 最後のトレーナーズスキル、なんか聞いた事ある?
き、気のせいでしょ(
倒したモンスターの数分だけ威力が上がるRPGの禁じ手みたいな某技とは一切関係ないから(震え声
本当なら月曜に執筆するはずだったのに、サンが面白すぎてついやり込んでしまう。
現在UB関連のイベントやってます。厳選しながら。
今作ではミミッキュを嫁ポケとし、Rキュウコンやアシレーヌなど、フェアリーパを作りたい所存。
…………カミツルギとかテッカグヤとか、UBは許さない、出して来たらカプ系フルコースで応戦する(