ガブリアス ラムのみ
カミツルギ いのちのたま
バトルツリーでメガメタグロスに3縦されたよ(遠い目
朝日を浴びながらの散歩と言うのは存外気分が良い。
特に、寝起きに浴びる朝日と言うのは殊更心地よいものだ…………眠気が無ければ。
「静かだなあ」
最早利用者一人のリーグ街は急速にその規模を狭めている。ポケモン協会運営の店舗は残ってはいるが、その他個人経営店舗は全て撤退をしている。
ホウエンリーグ本戦開始時には二百、三百といたはずのこの街の住人もすでに数十人と大きく数を減らしている。
人の少なさが、そのまま静けさを演出し、同時に物寂しさのようなものもあった。
「うーん…………静かだなあ」
前世は、都内で人の声が絶えることなどまずありえなかっただけに、少し珍しさも覚えた。
ミシロは確かに夜は同じくらい静かではあるが、早く起きてトウカシティやコトキタウンへと仕事に出かけてる人や、それに合わせて朝食を作ったりする家庭の音で町中が溢れている。田舎は早起き、と言うことだ。だから日が昇っている時間に、こんなに静けさを保っているのは、珍しくもあり、同時に少しだけ不安も感じた。
「まるで世界に自分しかいないみたいな気分…………なんて、ちょっと中二チックかな」
独り呟きながら、街を歩く。
人の居ない街、と言うのは存外に薄気味悪いものだ。
街とは人が居た痕跡そのものでありながら、そこに肝心の人が居ないその不自然さがどうにも不気味に思えてならない。
「…………明日、かあ」
そしていよいよ残り一日に迫った、三人目の四天王との戦いについて考える。
四天王プリム。
元々はホウエンの外から修行のためにやってきたトレーナーだ。
使うポケモンのタイプは『こおり』。
カゲツやフヨウの言うことが事実なら異能トレーナー。しかも四天王に座すほどとなればとびっきりだ。
異能トレーナーと言うのは、自身が最も苦手とする相手と言って良い。
異能トレーナーとは…………とにかく不条理なのだ。
読みも何もあったものではない、理不尽を無理矢理にごり押ししてくるような相手だからこそ、育成を得意とするトレーナーが一番相性が良い。
例えばホウエンリーグ決勝で、自身はシキと戦ったが。
あの時勝てたのは、ほぼ情報量の差と言って過言では無かっただろう。
始まる前から、自身は相手の情報の半分は手に入れていた。そして偶然とは言え、事前に五体公開が行われての戦いとなった。
正直に言おう。
互いの情報を一切無しで戦ったならば、まずシキに勝てる気がしない。
異能トレーナーとは、究極の初見殺しだ。
どんな“ありえない”ことでも、“ありえて”しまうのが異能トレーナーの恐ろしいところである。
「…………必中絶対零度…………いや、そんなバカな」
無い、と決して言い切れないのが怖い。
と言うかそんなものどうやって勝つのだ。
“がんじょう”持ち六体並べておけとでも言うのか。
正直、きつい。
と言うのが感想。
ただでさえ異能トレーナーと言うのは手が読み辛いのだ。
そんなバカな、と言うようなこと平然とした顔でやって来るせいで、何でもあり、としか言いようがないのが異能トレーナー。
その上さらに、エア、リップル、そしてメガシンカすればイナズマも。
うちのパーティには『こおり』弱点が多すぎる。
趣味パの時点で偏りがあるのは確かなのだが、それにしたって『こおり』タイプを専門とする四天王にこの編成は正直きついとしか言いようがない。
「なんて泣き言言っても仕方ないか」
一応程度の対策は仕込んでは見た。
誰も彼も、文字通り天性の才を持つ少女たちだ、ある程度の無茶でも覚えてくれる。
最近少しだけ分かってきたことがある。
ヒトガタがヒトガタであることには意味がある、と言うこと。
メリットデメリットと言うものがちゃんと存在しており、ただ6Vである、と言うだけでは語り切れない物がそこにはある。
「本当に今更だけど」
そう、今更過ぎることではあるが。
「ヒトガタって何なんだろうね」
前世での擬人化絵、萌えモンと言ったポケモンを擬人化したものは非公式ながら確かに存在したが。
この世界は現実だ。
ゲームの世界に飛び込んだわけでも無ければ、創作世界に迷い込んだわけでも無い。
ここには生命があり、人がいて、ポケモンがいて。
それが当たりまえの世界。自然な世界。
元の世界にあった理はきちんと存在していて、けれど元の世界には無かった理も存在していた。
だからこそ、何か理由があるのだと思う。
ヒトガタと言う存在が生まれたことに、何か、意味があるのだと思う。
「そう…………だね、やっぱり、そうしようか」
一つ、以前から考えていたことがある。
二年後の話。
決して油断はできないが、このまま放置していれば恐らく二年後に、グラードンかカイオーガ…………恐らくそのどちらか、或いは両方が目覚める。そしてそれを食い止めたとしても、次なる災害は迫って来る。
そのために、旅をしようと思っている。
各地の動向を見て回るための旅、そして同時に、マグマ団とアクア団を抑止するための旅。
だが最終的にはアレを止めなければ、無駄なのだろうな、と内心で呟きつつ。
そしてその時に、調べてみようと思う。
ヒトガタ、とは一体何なのか。
この世界でその存在を知ってからずっと抱いていた疑問。
どうしてポケモンが人の形を取るのか。
それを疑問に思う人間は実は少ない。
そう言うものだと思ってしまっている人が大半だ。
学者たち一部の人間だけがそれに疑問を抱く。
ヒトガタがこの世で認知され始めて十年以上が経つが、分かっていることなど“ヒトガタは強い”くらいのものだ。
何よりも、ヒトガタ本人たちが一番何も分かっていないのだから、それも仕方ないのかもしれないが。
「うん…………それは、面白そうかもしれない」
チャンピオンになって、ホウエンの災害を止めて、平和な日常が戻ってきたのならば。
ヒトガタの研究者になるのも、面白いかもしれない。
そんなことを思い、苦笑した。
* * *
「あ、マスター…………おはようございます」
旅館に戻ると、シアが起きて皆を布団に押し込んでいた。
「おはよう、シア…………起きてたのか」
「私はまあ、いつもの習慣で」
苦笑しながら手際良くタオルケットを畳んでいく。
家にいる時は、いつも母さんの手伝いをしており、さすがの手際である。
早起きして朝食を作ったりもしているので、そう言う意味で習慣、と言ったのだろう。
「ああ、それと…………これ、マスターですよね?」
思い出したように、その手に持った畳んだばかりのタオルケットを掲げるシアに、一つ頷く。
「あー…………まあ、ちょっと肌寒かったしな」
布団敷いて運ぶには、力が足りないし、仕方ないので出かける前にタオルケットだけでも全員にかけておいたのに気づいたらしい。
「ありがとうございます」
嬉しそうに、そう言いながら笑うシアに、何だか少し胸の辺りが温かくなる。
「他のやつらは…………まだ起きてないか」
「あはは…………みんな、マスターが寝ちゃった後もずっと飲んでましたからね」
「お前ら…………酒強かったのな」
前世の時から酒など一切飲んだことが無かったので、自分がこんなにも酒に弱い体質だとは知らなかった。単純に子供だから、と言うのもあるかもしれないが、それでもコップ一杯で思考が止まってしまうのはどう考えたって弱いのだろう。
どうやら他の面子はほとんど最初に潰れてしまった自身とは裏腹にその後もずっと酒盛りしていたらしい。
「シアは?」
「気づいたらけっこう飲んでた気がします…………ちょっと記憶があやふやですけど」
どうやら記憶が余り残らない性質らしい。と言うかシアなら気づいた時点で止めるだろうし、案外シアも強くないのかもしれない。
「私も途中で寝ちゃったので、最後どうなったのかは分からないんですけど。取りあえず、エアとリップルはかなりの量飲んでたはずなので、多分中々起きてこないと思いますよ」
「あー…………まあ、今日は一日休養ってことでいいかあ。温泉入りながらのんびりしよう」
「…………本当ですか?」
少しだけ心配そうなシアの表情。それは昨日までの自身を見て止めたのはシア自身なのだから、気持ちは理解できなくも無い。
「うん…………ちょっと意味の無いところで焦ってたから、気持ちリフレッシュして、万全の体調で明日に望もうか」
「…………はい」
少しだけ声を強めて、嬉しそうに頷くシアに。
可愛いなあ、この子。
なんて思った。
「…………起きてこない、か…………なら…………」
後方を見て、誰も起きていないことを確認する。
それから。
「シア」
名前を呼ぶ。
「はい、マスター」
少し首を傾げ、シアが応えて。
「おいで」
ぽんぽん、と膝の上を手で軽く叩く。
「……………………え?」
「おーいーで」
ぽんぽん、とさらに数度叩き、ようやく意味を理解したシアの表情が一転して真赤になる。
「え、あの…………えっと、そ、その…………ま、ますたー?」
慌ててしどろもどろになる少女を見て、少し苦笑し。
「ほら、いいから…………おいで」
三度目の誘い。有無を言わせないその仕草に、シアが少しだけ躊躇って。
「その…………失礼、します」
やがてゆっくりと、その頭を自身の膝の上に置いた。
膝の上にかかる重み、伝わる熱に、笑みを浮かべる。
「…………………………はう」
未だに顔が赤いシアは、自身と視線を合わせないよう反対側を向いていて。
「…………ふふ」
「ひゃう…………え、あ、あの」
そんな後ろ姿を見て、悪戯心が沸いてきた。
そっと、シアの髪に手を入れ、手櫛で梳いていく。
自身の突然の行動に、シアがびくりと震え、明らかに動揺した様子を見せてくる。
「シアの髪、柔らかいね」
「あ…………あの…………その…………あ、ありがとう…………ございます」
自身の手が髪に触れるたびに、びくり、びくりと震えるその姿が溜まらなく可愛らしく。
思わず、三度、四度、と手が伸びる。
「ねえ、シア」
「ふぁ…………ひゃい」
名を呼び、うなじをくすぐるとシアの声が裏返り、びくん、と身を強張らせる。
起き上がろうとするシアを、手で制止して、再び髪に触れる。
「楽しいね」
そっと呟いた一言に、シアが振り返る。
「私は、楽しく無いですよ」
ようやくこちらを向いたその顔は林檎のように真赤に染まっており、視線は鋭くこちらを見つめていた。
ふふ、と笑うと、何がおかしいのか、と視線がさらに鋭くなり。
「幸せだな、って思っただけ」
差し伸ばした手がシアの頬に触れる。
笑う。笑う。笑う。
楽しくて、嬉しくて、幸せで。
だから。
「シアは…………笑えない?」
楽しく無い?
嬉しく無い?
幸せじゃない?
そんな自身の問い、シアが一度口を閉ざし。
「凄く、幸せですよ…………
呟かれた名前に、心臓がどきり、と跳ねた。
* * *
「だから、お前は!!! 服を脱いで入ってこい!!!」
朝風呂と言うのは人類文明最大の贅沢の一つだと思う(過言)。
朝から温泉とか、最高だわ、なんて少し年寄りみたいになってしまっただろうか、なんて考えながら。
ゆったりと湯船に沈んでいると、がらり、と入り口が開き、ぺたぺたと誰かが入って来る。
手持ちの誰かだろうか、と首を傾げ、振り返ったそこに。
服を来たリップルが立っていた。
そして先ほどの一言。当然の話である。
だが注意を受けたリップルが少しだけ、えー、と言った不満顔。
「ダメ?」
「絶対に、ダメ!」
ホテルの風呂ならばともかく、こんなところでそんなもの許されるはずが無いだろうに。
そして目の前で仕方ないなあ、と言う呟きと共に、リップルの姿が変化する。
いや、正確にはしゅるしゅるとまるで糸がほどけていくように、服が変わって行く。
ほんの数秒の間の出来事、見ている間にその服が変わり。
そして水着になる。
「……………………びみょう~な、ラインだが、まあいいか」
良いとも悪いとも言い難いラインだが、まあ前世でも混浴で水着とかもあると言う話だし、ギリギリセーフと言うことにしておく。いや、実際のところどうかは知らないが。
自身の了承を得たことで、リップルが浴槽へとやってきて、そのまま自身の隣に座る。
「あ~…………気持ちいいねえ、マスター」
「なんで隣なんだよ…………まあいいけど」
相変わらず、シアとリップルは…………どこがとは言わないが大きい。
特にこういう場だとそれを殊更に意識してしまうのは男の悲しい性だろうか。
「ねーマスター?」
「あー? なんだー?」
温泉の熱で二人揃って、脳まで蕩けそうになりながら。
ふとリップルが呟く。
「マスターはさー、リーグが終わったらどうするの~?」
そうして問われた一言に、あ~と間延びした声を出し。
「取りあえずは調査だな~…………リーグの結果がどうあれ、ひとまずそこれで区切りつけて本格的にグラードンとカイオーガへの対策しようかな~って思ってる」
温泉で溶けたままの思考をそのまま告げると、なるほどね~とリップルが一つ頷き。
「ところでマスタ~、全然話変わるんだけどさ~」
「あ~なんだー?」
ぐでー、と湯船にもたれ、目を閉じながらリップルの言葉の続きを聞いて。
「好きな人とかいるの~?」
告げられた言葉に、一瞬言葉に詰まった。
「あ…………あ~? いや、何でだ?」
質問の意図を確かめようと、そんな言葉を投げかけ。
「いい加減気づいてると思うけどさ~?」
何気無く。まるで何のこと無いように。
「私たちみんな、マスターのことを
爆弾を投げつけた。
半分コミュ回。シアとイチャつきながら、リップルと温泉でぐだって、最後に爆弾落とすだけの回。
そして落とした爆弾は回収しないままに、次はプリム戦。
ちょっとデータ作成にてこずってるので、時間かかるかもしれない、とだけ言っておく。
ハルトくん側にも多少調整入れるかも。
正直、まだほとんどデータ決まってないのに勝ったら不自然になるレベルでやばい。
ちょっとだけネタ晴らし。見たくない人は見なくても良い。
プリムさんの異能スキル。
トレーナーズスキル(P):だいひょうが
場の状態を「だいひょうが」に変更する。
場の状態:だいひょうが
『こおり』タイプのわざの威力を2倍にし、『ほのお』『みず』わざの威力を半分にする。また『こおり』タイプ以外のポケモンは『すばやさ』が1/2になり、毎ターン最大HP1/8の『こおり』タイプのダメージを受ける。天候『あられ』の時発動する技、特性が発動する。天候が『あられ』の時、毎ターン『こおり』タイプ以外のポケモンが10%の確率で『こおり』状態になる。
トレーナーズスキル(P):だいれいど
『こおり』タイプが弱点となるタイプ相性を持つ相手に対して、弱点タイプの数だけ“ぜったいれいど”の命中率が倍化する(2倍⇒60、4倍⇒120)。