「びょ、病弱…………ショタ…………」
「男の子…………師弟、ですって」
「オレの物を受け入れろよ、そんな師匠…………みたいなことが」
コトキタウン。
時折買い出しなどでやってくることはある街。
「ハルトさん…………何か寒気がするんですが」
「気のせいだ、気のせいに決まってる、だから気にするな」
「あ、ポケモンの足跡だ」
何故か背筋に寒気の走る舐めまわすような視線を感じた気がするが、断じて気のせいだろう。
「それで…………一応ここまで来たはいいけど、どうする?」
ポケモンセンターのロビーに置かれたソファーに腰かけ、置かれたテーブルに上に先ほど外で買ってきた昼食を並べながら、ハルカとミツルに尋ねる。
「どうする、ですか?」
「どこに向かうか、ってことだよね…………もぐもぐ」
疑問に首を傾げるミツルに、サンドイッチを頬張ったハルカが補足するように言葉を連ねる。
紙パックのジュースをストローで飲みながら、ハルカの言葉に一つ頷き。
「ここから東に向かえばカイナシティ、もしくはキンセツシティ。西に向かえばトウカシティ、その先のカナズミシティに行ける。基本的に俺とハルちゃんはミツルくんに合わせるから」
良いよね? とハルカへと視線を向ければ、口いっぱいにサンドイッチを含んで喋れないハルカが、オッケー、とハンドサインしてくる。
基本的に、旅の目的は全員バラバラだ。
ミツルは各ジムを巡り、トレーナーとしての腕を磨き、ホウエンリーグに出ること。
ハルカはホウエン各地のポケモンたちを捕獲し、図鑑で記録していくこと。
そして自身は各地で暗躍するマグマ団とアクア団の動きを見て回ること。
現在十二歳。すでに実機で言うところのストーリーの開始時期と見て良いだろう。
と、なれば自身も本格的に動き出さなければならない。
現在、両団の尻尾は完全には掴めていない。
だがいくつかすでに手は打ってはいる。原作の知識を持ち、チャンピオンとしての権力も合わせれば大分先回りが出来たと思っている。
だがそれも全て終わるまでは分からない。
この世界は現実であり、原作開始前にチャンピオンが変わっていたり、ミシロに居ないはずの人間がいたり、そもそもヒトガタなんて存在がいたり、と色々違う点はあるが、それでも類似した点も多い。
両団を壊滅させるか、グラードンかカイオーガを捕まえるか。
そして最終的にホウエンに降り注ぐであろう隕石をどうするか。
手は打ったとして、まるで運命に導かれるように二体の伝説は復活するかもしれないし、レックウザを捕まえなければ隕石はどうにもならないかもしれない。
何もしなければ定められた運命だが、自身の行動で果たしてそれが変わるのかも分からないし、そもそも変わったとして、原作よりも良い物になると言う保証も無い。
ORASは何だかんだでハッピーエンド風に纏まっていたストーリーだったので、原作通りの展開にできるならそれでも良かったと言えば良かったのだが、この世界はどこまでも現実だ。
本当に原作通りに行くのか、と言う内心の疑問が沸くのは当然のこと。
そして今自身が生きているのはこの現実なのだ。だったら知っている以上、精一杯のことはすべきだと思う。
まあ、だがそれも今すぐ、と言うほどのものではない。
少なくとも、最近両団の活動が活発になっているのは把握しているし、何かあればすぐにこちらにも連絡が届くようにはなっている。
まだ完全に安心することはできないが、今すぐどうこう、と言うことは無いと思う。
だからまあ、これはどちらでも良い選択だ。
「東に行くか、西に行くか、まあシンプルな話だよ」
そんな自身の問いに、ミツルが少しだけ悩み。
「なら、西で」
そう告げた。
* * *
コトキタウンを東に抜ければ、102番道路になる。
その先にはトウカシティがあり、そこに最初のジムがある。
「ミツルくん、挑戦するの?」
「あ、はい…………出来るなら、挑戦してみようかと」
原作だとバッジを半分集めなければ挑戦できなかったジムだが、まあ現実的に考えてそんな縛り存在するはずなく、普通に挑戦できる。
「…………まあ勝てるかどうかは別の話だけどね」
「えっ? 何か言いました?」
何でも無いよ、と呟きながら笑みを浮かべる。
まあ負けるのもいい経験だろう。
――――――――正直、トウカジム、今ちょっと魔境化してるし。
なんて考えていると。
がさり
草むらのほうから聞こえてくる物音。
「っと…………ハルちゃん」
音のするほうに視線を向ければ、揺れる草むらを見つけ、ハルカへと声をかける。
「っ…………オッケー、行ってくるね」
自身の視線の先の揺れる草むらに気づいたハルカが小声をそう言うと、そろり、そろりと物音を立てないように近づき。
「お願いね、ノワール」
「…………了解」
ボールを投げた瞬間飛び出した黒い影が草むらを一閃。
「キャンッ」
草むらから茶色のドングリのようなポケモン…………タネボーが転がり出てくる。
それを追うように飛び出した黒い服の狐面を被った少年がハルカの前に立ち。
「もう一回、お願い、ノワール! “イカサマ”」
「沈め」
“イカサマ”
少年…………ノワールが、威嚇し、飛びかかって来るタネボーを手にした太刀でいなし、その勢いのままにタネボーが地面に激突する。
「キュウ…………ウゥ」
呻くタネボーにハルカがすかさずボールを手に取り。
「いって!」
投げる。放物線を描いたボールがタネボーへとぶつかり。
しゅん、と赤い光に包まれボールの中へと消える。
ゆらり、ゆらりとボールが揺れ。
ぱちん、とボールのスイッチが赤から白へと切り替わる。
「よしっ、これで102番道路のポケモンは全部だね」
タネボーをゲットしたボールをマルチナビを使い、博士の研究所に転送しながらハルカが呟く。
「意外と時間かかったね…………もうトウカシティまですぐだよ」
「あ、ホントだ…………ラルトスはすぐ見つかったのにね」
「ミツルくん、ラルトスホイホイだからね」
「何ですかその呼び方…………」
草むら歩いてるだけなのに、気づけばラルトスが列をなしてミツルくんの後を歩いているのだから、こっちが驚くと言うものだ。
「ミツルくんてば、誘ラルトス体質ね!」
「語呂悪い」
「センス無いです」
閃いた、みたいな顔で何を言うのかと思えば。思わず口を突いて出た言葉に、まさかのミツル追随でハルカがしょんぼりとしていた。
「取りあえず、トウカシティに着いたらもう今日はポケモンセンターで部屋取ろうか」
見上げればそろそろ夕暮れに空が橙に染まっていた。
さすがに朝ミシロからコトキタウン経由でここまで歩けば相応に時間も経つし、昼にコトキタウンを出て夕方にトウカシティに着いたのなら、まあ早い方だろう。
以前に移動した時はエアに連れられてだったので、余り気にしなかったが街と街の間と言うのは意外と距離があるのだ。
自身やハルカはまあ以前から良く動き回っていたのでそうでも無いが、ミツルはまだ多少体が弱いところがある。余り無理をさせるものでも無いだろう。
坂を一つ越え、見下ろす先に広がるトウカシティの光景に、ミツルが目を細める。
「…………懐かしいなあ」
「そう言えば前までここに住んでたんだっけ」
「はい…………センリさんのジムの近くでした」
原作でも確かにトウカシティにミツルの家あったよな、なんて思いながら。
夕暮れに染まるトウカシティへと足を向けた。
* * *
トウカシティジムは『ノーマル』タイプ専門のジムだ。
「それで、ジム戦ではあの二人を出しても良いんですか?」
「あーうん…………他のジムならダメって言うところだけど、ここは良いよ」
「トウカシティジムかー…………あたしポケモンジムって初めて来たかも」
一日明けて、ポケモンセンターで十分休んだので、早速ジムへとやって来る。
トウカシティに限らず、ポケモンジムと言うのは街の中心部に立地していることが多い。
それがこの世界における、ポケモンバトルと言う物の存在価値の高さを如実に示していると言える。
初めて行く街でもだいたいジムのある街なら街の中心に行くほどトレーナーの数が増えていくのですぐに分かる。ポケモンセンターの数も通常の街よりも多く設立されているので、見慣れてくると初めての街でもすぐに分かるようになる。
当たりまえだが、実機のように一つの街に一つのセンターなんて、現実にやったらポケモンセンターが常に満員になって回復待ちなんてものが出来る。
『ひんし』状態から全回復するのにだいたい半日以上かかると考えれば一つの街で最低でも十件以上は必要になる。ジムのある街ならば二十、大きな街でかつジムもある…………カナズミシティや、行ったことは無いがカントー地方のヤマブキシティならば恐らく三十を超えるポケモンセンターが乱立しているだろう。
原作で考えれば多すぎるようにも思えるが、トレーナー人口二、三万と言われるホウエンですらこの数でギリギリと言ったところだ。
トレーナー人口十万を超えるカロス地方などに行けば、もっと多くのポケモンセンターが密集しているだろう。
実機のように明確なエリアがあって、ここからここまでが道路、ここからが街、なんて境目は無い。
なのでだいたい街の端と端にポケモンセンターを置いて、そこを区切りにしていることが多い。
そう言った理由から、普通の街は外周に行くほどポケモンセンターが多くなるが、ジムのある街ならば中心にさらに多くのセンターがある。
と、まあそんな余談は置いておいて。
「すみませーん、ジム戦お願いしまーす」
「はーい」
入り口を抜け、受付で声をかければ奥からジムの担当がやってきて。
「チャンピオン?!」
絶叫にも似た声がジムに響き。
「チャンピオン?」
「あ、ハルトくんだ」
「ハルトじゃねーか!」
「おっす、ハルトくん」
「ハルトくんじゃねえよ、もうチャンピオンだろ」
「おい、誰かジムリーダー呼んで来いよ」
「チャンピオンって、あの人が?!」
「お前新入りだから知らなかったか? ハルトくんはホウエンチャンピオンで、ジムリーダーの息子さんだよ」
「ええええええ?!」
「え、あなたも知らなかったの?」
ぞろぞろ、と言う言葉がまさしくぴったりなほどに、奥から大量のジムトレーナーがやってくる。
「ハルトさん、人気者ですね」
「父さんのジムだから、昔からお世話になってるんだよね」
「賑やかだね」
そうこうしている内に、奥から男がやってくる。
「あ、父さん」
「ハルトか」
自身の父にしてこのジムのリーダー、センリである。
「ふむ…………挑戦か?」
「うん、ミツルくんがね」
ぽん、とミツルの頭の上に手を置くと、ジムトレーナーたちの視線がミツルへと集まる。
「あれ? あの子どっかで」
「確か以前にジムの近くに住んでた子じゃなかったっけ?」
「なんでハルトくんと?」
「ていうか挑戦って、あの子トレーナーだったの?」
「そういやちょっと前から見なくなったよな」
「引っ越したって聞いたぞ?」
どうやら出身だけあって、ミツルのことを知っている古参トレーナーたちもちらほらといるらしい。
「なるほど…………ふむ、今日は予約は無かったはずだな?」
父さんが視線を受付のトレーナーへと向けると、受付のトレーナーが紙を挟んだボードへと視線を落とし、頷く。
「数はどうする?」
「あの二匹使うんで、二対二で」
その言葉にセンリが一瞬目を細め、なるほど、と頷いた。
「ヒデキ、サオリ…………相手してやれ」
「「はい」」
センリの言葉に、ジムトレーナーが二人前に出てくる。
「残りの者は…………そうだな、ハルト、相手してやってくれるか?」
「え? 俺? あー…………あんまバトルするとホウエンリーグがうるさいんだけどな」
「リーグ側には俺から調整のため、とでも理由をつけておく」
真面目な話。
ダイゴを破りチャンピオン就任と言うのは、相当にホウエン全体に影響を与えたらしい。
自身の顔と名前も相当に売れ、それ故に、トレーナーたちからバトルの申し込みが殺到した。
自分自身、ダイゴに勝ったのも紙一重と感じていたため、自身のトレーナーとしてのレベルアップのためフルメンバーで野良バトルしていたらホウエンリーグから、公式戦以外での殿堂入りメンバーの使用を禁止された。
今回の旅に、エアもシアもシャルもチークもイナズマもリップルも使えないのはそのためだ。
どうも、チャンピオンがチャンピオンリーグ以外でほいほい全力でバトルしてたらチャンピオンリーグの意味ねえだろ、とまあ要約するとそう言うことらしい。
ただ主力メンバー…………つまり殿堂入りの時に登録したメンバーでなければセーフ、とのことなので、今回の旅に連れてきているのは二体だけだ。
「ならまあ…………遊ぼうか、
かたり、と腰に付けたボールが一瞬揺れ。
それが返事の代わりとなった。
* * *
「……………………ここ、どこかしら?」
海、海、海。
見渡す限りの海。
振り返った先には、洞窟の入り口。
「…………ここから出れるのかしら」
呟きと共に、洞窟へと踏み入り。
「…………冷たい風が流れてくるわね」
洞窟の奥から吹く、ホウエンに似つかわしくない冷たい風。
潮が引いて、洞窟内に出来た道を進みながら。
「…………それで、ここどこ?」
まずお前どうやって来たんだよ、と言う疑問を投げかける人物はどこにもおらず。
何故“なみのり”も“そらをとぶ”も無く徒歩で、僅か一日で浅瀬の洞穴にやってこれるのか。
今日も方向音痴は奇跡を連発していた。
ハーメルンでスコップ掘ってて初めて0評価つけたいと思った。
1とか0とかつけるならさっさと閉じればいいじゃん、と思って付けたこと無かったけど、読んで損したどころか、気分が下がったと思わされたのはさすがに初めてだわ。
ランキング上位ですら偶に地雷がある…………さすがハーメルン、魔窟の異名を持つサイトだわ。
まあ鬱な話はここまでにしておいて。
サンムーンでバンク解禁!
ただし注意点
①島スキャンで出るポケモンの夢個体を厳選した個体は対戦じゃ使えないぞ(アローラマーク付くと不正扱いになるらしい、つまり夢シャンデラ&夢ジャローダ封印された
②各フォルムごとの専用技を覚えたロトムは対戦じゃ使えないぞ(ウォッシュロトム=ドロポン、ヒートロトム=オバヒなど、謎の不正判定
③新しいメガ石解禁されず
など問題も多い模様(
あ、やっぱ鬱い。
もういいや、俺はひたすら色ミミッキュと色イーブイ求めて走るのだ。
GTSでゴミマンダと交換したミミッキュが海外産6Vで本気でびびった。
卵20個作って6Vミミッキュ2匹とか笑えるわ。