どうかお待ちください神さま!?彼女たちにはーどもーどは早すぎると思います!! 作:NoRAheart
サクッと、サクッて、軽く軽い音なれば
飛び出る、妙に不思議な、ピンク色の飛沫
飛び出すんじゃなかったと後悔、良かったと安堵、てめぇと憎悪
この世はなかなかどうして上手く行かなきこといとわろし
まあ、なんだ………
「離せ、くそポリ!!」
「死んでもは、な、す、か、ボケェ!!」
もうちょっと出勤前の
今、己が袈裟固めで取り押さえている少年=高校生くんは、ストーカーだ。
後ろで悲鳴を上げている、綺麗で、綺麗な、清楚系JKちゃんの、ストーカーだ。
ちょうど二か月くらい前だったかな。
俺がJKちゃんに話しかけたのは。ストーカーの被害相談を受けたのは。
担当は違うけれど生活安全課で最近よく見かける子だったから、何より悲痛そうに一人座る彼女が気になって、長椅子に座っていた彼女に声を掛けてみたのは。
ぶっちゃけ、その時に下心がなかったと言えば嘘になる。
「JKちゃんとお近づきになれたらなー」とか、ふわふわ後先考えず、軽い気持ちで近づいたのは言うまでもない。
しかし、なんだ。
ストーカーの被害は、ナイーブな問題だ。
被害者が本当に怖い思いをしていても、犯罪を未然に防ごうとも、加害者側の犯行程度によっては警察の対応は限定されてしまうのだ。
両者にできる干渉も法律の範囲でしか行えず、その法の下では複雑で繊細な思いと行動に、残念ながら対応するには十分なモノとは言えないのが昨今の警察の現状。
本来ならば。
事情をより知る担当がいるのに俺がでしゃばって、場を下手にかき乱すべきではない。
仕事人としては、社会人としては、そうだ。
………でもさ。
そのJKちゃん、とても泣きそうな顔してさ。
こんな頼りなさそうなおっさんにまで「助けて」って頼むくらいだから。
そうさだからさと、言い訳して。
「おっさんに任せときなさいな(キリッ」とか、できもしないことを言っちまう。
後悔はないが、失敗なのは明らか。
だけどおっさん、頑張ったよ?
仕事の合間にJKちゃんの身辺関係いろいろ調べたり、JKちゃんの登下校をできるだけ共にしたり、自宅周辺を見回ったり、いろいろ。
最中、同僚に俺だと気づけずに不審者を疑われて職質されたのはいい思い出だ。
「ああ、いつもの悪癖ですか」と、その時同僚に言われた言葉の意味は、未だに分からないけれど。
なんやかんやあったけれど、ついに見つけたストーカー犯。
中々尻尾を掴めない巧妙な手口だったから、突き止めるには少々時間がかかってしまったけれど、犯人はなんてことはない。
メガネを掛けたちょっと根暗そうで、真面目そうな、JKちゃんのクラスメートくん。
事実として、彼の評価は真面目で成績優秀者として、先生方からラベル張りされている。
そんな彼がどうしてストーカーなど始めたのかといえば、一年前にJKちゃんに告白したけど残念ながらフラれちゃったらしい。
しかし諦めきれなかった。
だからストーカーを始めた。
動機はそんな単純なものだ。
嗚呼、しかし分かるぞ少年。
だってJKちゃん可愛いもんな、ヘタなモデルよりも中々どうして綺麗だもんな。
でもな、少年。
無言電話、盗聴、下着泥棒、etc――――は、ちょっとやりすぎだ。
仕掛けすぎて、巧妙すぎて、おっさんドン引きだ。
………とにかくだ、少年。
こんなしょうもないことで人生をふいにするにはまだ若すぎる。
おっさんと違ってまだ高校生。
やり直しは効くと思うんだ、まだ、うん。
だから今後一切ストーカーなんて、いつまでも未練がましく、くだらないことはやめとけよ。
なーんて。
最近の若者のことなんて、彼の事なんて、ちぃーとも、なぁーんにも、全然分かってないくせに、全く理解していないくせに。
説得で何とかなるなんて考えていたワイは、バカ。
物事の馬か、鹿かも分からぬ。
少年の正気か、狂気かも判別つかぬ。
見極めることが出来なかったから、分からなかったから、馬鹿。
それは少年の事を舐めていたともいう。
「悠里ちゃん、僕を愛してくれなぃの?僕はぁこんなに愛してぃるのぉに?」
フラれたことがなかったかのように、平然と、当然のように聞くけれど、不気味だ。
変で、妙な笑い方も、それを助長する。
「ならいぃや、もうぃいや」
あまりに不自然な言動の
背に隠していたのか?それは包丁。
むちゃくちゃな笑い方をして、取り出したるは包丁。
しかも板前さんが使うやつ、むちゃくちゃ太くてすんごくでっかいの。
少年の実家が板前だと言う事は、知ってた。
「殺そぅ」
でもだからといって凶器にそれを選んでしまうのは、狂気の沙汰と言わずに何か?
「悠里ちゃんぺろぺろ殺してぇえ?僕もぅ、もぅうぅん!!死ぬそれがぃい!!」
首、かしげて。
勝手に納得。
そして、決定。
血走った目で、唾をまき散らしながら行われる、壊滅的な日本語の羅列。
最近の高校生怖い、マジで怖い。
あまりの狂気にあてられて、震える手はしかしポケットに。
手を突っ込んで、万が一の為にと予め開いておいた携帯の通話ボタンを強くプッシュする。
これはもう、俺だけではどうにもならないと判断。
『ピンチですね?』
どうでもいいことだが、
はい、まいさん、こんにちは。
いつもお世話になっております。
そうなんです、ピンチなんです。
だから、今はお呼びでないです、それどころじゃないです。
あっ、と声。
はっ、と前を向けば、JKちゃんに迫る白刃。
嫌にスローで見えたソレを、見送らない、見逃せない。
そこまで俺は、間抜けじゃない。
だけど気持ちはのんきに、かるく、いつものように。
「そんなぶっといやつ、JKちゃんの躰に挿入されちゃったら、一切合切微塵も疑うことなく、JKちゃんきっと処女だから、いや処女じゃなくてもすぐ逝っちゃう、昇天しちゃうから」とか思いながら。
「おっさんので我慢しといて」
「ぉう?」
なんて言って、JKちゃんの前に立つもんだから。
ぐさー、って。
「………いったっ」
「おっさん」
ぐさー、って。
「ちょっ!?」
「おっさん」
ざくざく、って。
「おっさぁん、邪魔だってぇ」
「『邪魔』、じゃねよ!?いてぇよ馬鹿!!普通にいてぇ!!」
キョトンとした顔で、一切の躊躇うことなく行われる、おっさん相手に一方的な刺殺戦。
なんとか痛みを耐えて少年と取っ組み合い、そして取り押さえるのはやっとのこと。
「いやだぁああああ!!じじくせぇええええ!!はーなぁーせぇよぉおおお!!」
あ、気にするところそこなんだと、呆れる。
ってか、包丁、本当にでかすぎて笑えない。
でかすぎて、中年太りしているにもかかわらず、刺さる包丁の刃は俺の背中まで貫通。
ボキャブラリーなんて微塵もない俺の、最上級表現である「無茶苦茶いてぇ」なんて言葉では足りないくらい、ただ痛くて。
遂にカラダは、痛みを感じる事を諦めてしまう。
「早く悠里ちゃんを嗅がないとねぇえ、うん!!」
「ひっ!?」
未熟な袈裟固めを逃れようと、必死に躰を動かすストーカー少年。
流石は柔道有段者、インターハイ出場経験があるとかないとか。
逃れ方は、手慣れたものだ。
袈裟固めが、外れかけている。
そんでもって少年は、手に持つ包丁を手放さず、わざと暴れる事で俺の腹をぐりぐりと抉ってくる。
その少年の行為は、狂っているように見える少年が、その実どこか理性的に俺を殺しに、そしてJKちゃんを殺しにかかっていることを理解するには十分な行い。
俺が此奴を放してしまったら、JKちゃんは一切一片の疑いなく殺されてしまう。
因みにJKちゃんは恐怖のあまりか、その場から動けずにいる。
そんな彼女に「逃げろ」なんて、到底望めない頼みだ。
だからなんとしても、俺は少年を抑え続けなければならない。
しかし出血多量、貧血症状。
意識は、ただ遠く、遠く。
ふと見えたのは俺の腸が、包丁でボロボロにされた腸は、腹を飛び出して地をぺろんぺろん舐める、撫でる様は、無様。
こんな状態の俺が、いつまでも少年を抑えていられるとは思えない。
「あー………」
どうしよう、どうしようと考えていたら、ゆらりと眼前に走馬燈が見え始めた。
おもいでが、ぽろぽろ。
しかし見えた走馬燈は、悲しいかな、色がない。
ある訳ない、知ってた。
そりゃあそうだ。
だって俺氏、自慢ではないが真面目に生きた事なんてないでござる。
それが分かっていただけに、先が知れているつまらない映画を見せられている気分だ。
………。
あははー。
ほらね、やっぱりね。
改めて見て思うが、ほんとつまらない生き方してたな、俺。
しかも最後の走馬燈が、電車で痴漢に間違われて股間を蹴り上げられるシーンってどうよ?
笑えないけど、嗤える。
「ぎゃいぇ!?」
つまらなかった走馬燈であったが、金的を思いつけた一点においては走馬燈に感謝した。
どうだ、少年。
痛かろう?痛かろう?
火事場の馬鹿力で少年の
………もしもーし?聞いているか少年?
ああ、少年泡吹いてる。そうかそうか、効いていたのか少年、なら良し。
………あ、サイレン。
よかった、事前に同僚に出動を頼んでおいて。
これでひとまず解決だ………あとは少年が更生してくれることを祈るばかりだが。
お、おいJKちゃんや、あまりにも嬉しいのは分かるけど、泣きながらおっさんにくっつくものじゃないぜよ?
「ふぉおおお!?おっぱいやわらけぇえええ!?」って、なるからな。おっぱい柔らかくてマジで発情しちまうからな。
そ、それに勘違いしちまうぞ。おっさん童貞だから勘違いがマッハだぞ?これはあれかな?惚れられたかな?なーんて、うっへっへ。
…………。
………うん。
JKちゃん?
………いや、若狭ちゃん?
今日は何月何日何曜日?
あれからいったい何日たったのかね?地球は何回廻ったかね?
いつの間に病院に運ばれたのかは知らないけれどさ。
寝ては起きる度に君、ずっと俺の傍にいるよね。
………。
授業は?部活は?学校は?
何もかもをほっぽりだしてきたみたいな顔をして、なぜそこにいるのさね?
日が昇って、沈む。
ただそれだけを見送るだけになってしまった、どうしようもなく怠惰なダメ人間の傍に居たら駄目よ、うん。
………ほら。
授業はいいよね。
俺もちゃんと受けとけば良かったよ。
大人になってから、一人でした勉強はぜんぜんちっとも楽しくなかったけれど。
学校の友人たちと教え合う、先生が教えてくれる環境は、ホントはほんとに最高の環境だったんだろ。
それを若狭ちゃんが教えてくれたんだろ?
部活はいいよね。
俺も面倒くさがらずやれば良かったよ。
先輩後輩同級生との関係が、どうしようもなく嫌で敬遠していたけれど。
部員らと共に、団結して、何かを成し遂げ、感情を分かち合う事ができる環境は、心から恨めしくて、羨ましい環境だったんだろ。
それを若狭ちゃんが語ってくれたんだろ?
学校はいいよね。
俺も真面目に行っていれば良かったよ。
大人になる為に、仕方なく入れられるただの公共機関の一つでしか捉えていなかったけれど。
思えば、あそこに無いものは、無かったのではなかったのか。
学校ほど、面白おかしいモノは無かったのではないのか。
それを若狭ちゃんが気付かせてくれたんだろ?
それだけじゃない。
友、家族、夢。
大切なモノ、いっぱい持っていたじゃないか。
短い間だけだったけど、君が楽しそうに語ってくれたのは、全部嘘だったのか?
それを全部捨てるつもりなのか?
――――君はいつまで
こんな自分の不注意、勝手、自己中心的行動のせいで、自業自得で機械仕掛けでしか生きられなくなった、生きられなくなっちまった「ちゅーねんどーてーさいぼーぐおっさん」の傍にいてもつまんないだろうにね。
………。
………俺のせい?
俺が馬鹿で、こんなヘマをしたから、だけど若狭ちゃんは責任感の強い子だから責任を感じちゃったのか?
だから、なんどもなんどもなんども。
泣きながら、微笑みながら、謝りながら、眠りながらでさえ。
無駄と知りながら、俺の名を君は呼ぶのか。
いや名前を呼んでくれるのは正直嬉しいけどさー。
「まるで不治の病で眠る彼に付き添う恋人みたいだなー」、とかその先の事とか色々エッチな妄想を不謹慎にもしちゃうけどそれはさておいて、本当になにやってんのさ?
責任感を感じて、此処にいてくれるのは、自由だ。
だけど頭の良い君は、もう分かっているはずだろ。
俺も、自分の事は一番よく分かってる。
時間の無駄使いはよくない。
だからさ、だから、もう………。
………もう?
………なんだっけ?
………まあいいや。
………ねむい。
…………。
………最近、若狭ちゃんを見ない。
これは、あれだ。
若狭ちゃん、やっと時間の無駄だって気づいてくれたみたいだ。
よかった、うんよかった。
こんなおっさんなんか気にせずに、ちゃんと幸せな人生を歩むやで。
でも彼女に恋人が出来て、その恋人に処女をあげちゃうんだなーって考えたら、ものすごくショックかも。
くそぅ、俺があと25歳若ければワンチャン………いや無理か。
………。
あ、同僚ちゃん、ちーす。
こんな体じゃ何のおもてなしどころか話し相手にもなれないけど、ゆっくりしていってくれ。
………おいおい、人のベットの上でメソメソするなよ、反応に困るだろ。
事情は知らんが、泣くなら余所でしてくれ。
なに?「死んじゃヤダ」?「はやく起きてください」?
そんな事言われたって、俺だって、好きで寝ているわけじゃないし………。
その、なんだ………。
………すまん。
………。
………誰もいない。
最近、誰にも会っていない気がする。
いや、生けている花は起きる度に変わっている、誰かしらは見舞いに来ているのだろう。
でも最近は、俺の覚醒していられる時間が極端に短いから、会えていないだけなのだろうな。
………。
………それでも一人は寂しいな。
………ねよぅ。
………。
………久々に起きたら、若狭ちゃんにお手てニギニギされてた。
久々に若狭ちゃんが俺を訪ねていた事に、正直驚く。
だけどより驚いたのは、以前の若狭ちゃんより、だいぶ大人びていたことだ。
あれ、以前っていつだっけ?なんて考える――――いつもの事。
まぁいいやと諦める――――それもいつもの事。
しかし今日は不思議と、いつもよりも意識がはっきりしている気がする。
「間に合わなくてごめんなさい」
何の話か?
それよりも、若狭ちゃんが着る白衣、本当によく似合っている。
お医者さんごっこかな?
美人女医の診察とか無茶苦茶そそります。
ドストライクだ。どんな悪戯をされるのかと想像しようものならフル勃起不可避だ。
――――ただし、彼女が涙を流していなければ。
………。
あー。
おっちゃん、死んじまうのか。
「ごめんなさい、ごめんなさいっ、おじさん」
やー、こっちも申し訳ないです。
俺の不手際で、いらない苦労を掛けさせて。
………。
………あー、くそぅ、畜生。
若狭ちゃんがいい子すぎる。
いい子過ぎて涙が出そうだ――――出ないけど。
恋人なんて贅沢は言わないから、友達………いや知り合いでもいいから、もうちょっと話していたかった。
若狭ちゃんが語ってくれた「学校」にも、ちゃんと行ってみたかった。
ちゃんと勉強して頭良くなりたい、運動も頑張ってちゃんと動けるようになりたい。
学生時代は面倒くさがっていた事だけど、今はもう一度チャンスがあれば頑張ってみたいと思う。
なにより、今度はヘマなんてしたくないから。
若狭ちゃんみたいに、他人の為に優しくなれる人間になりたいから。
健全に学校行って、健全に勉強して、健全に友達作って、健全に部活して、健全に恋人つくって、健全にセックスし………セックスは健全か?まあいいや。
夢想する。
最後ぐらい、今更だけど。
滑稽でもいい、そんな
次の人生は無いかもしれないけれど、そんな願望を抱………
「―――――ブッ!!?」
「おじさん!?」
見えてはいけない者が見えた。
見えてしまった。
病室の入り口。
医師に看護師がいるはずなのに、気付かれず、在る。
それは巨体、それは巨漢、それは巨根。
それは裸体、それは筋肉、そして間違いなくOKAMA。
いきり立つアレは、トラウマもの。
しかも、なんか腰をくねくねしながらこっちに寄ってくるからなお心臓に悪い。
「うっふ~ん(はぁと)」とか「あっは~ん(はぁと)」とか言いながら、こっちに寄ってくるから本当に心臓に悪い。
「おじさんっ!!歩さん!!」
ってか、死んだ。
ただでさえ死にかけだったのに、変態がびっくりさせるものだから、死んだ。
俺が眠る横で、心電図が『びー』って喚き散らし始めたから、間違いない。
なぜそれを死んでいる筈の俺が聞き取れるかは謎だけど。
と言うか俺の死因、『変態(笑)』かよ。
なんだろ、すげー泣きたい。
なんかいい流れだったじゃん。
すげー最終回みたいだったじゃん。
結果が御覧のありさまだよ。
おたくのせいで、雰囲気全部ぶち壊しだよほんと。
………なにちょっと傷付いたみたいな顔してんだよ、傷付いているのこっちだよ。
本当に申し訳なく思ってるなら、腰振るの止めてくれ。
………。
………えっ?
おたく、神様なんですか?お迎え?えっ違う?
なんかあそこがテェンっときたから転生させていただける?
あそこが何処かは聴かないけど、そんな軽いノリで転生させてもらっていいの!?
「ただし、代償を払う必要性が」?いや、転生させていただけるなら十分です、はい。
な、なんか未だによく分からないけど。
俺、人生ニューゲームだそうです。
大分予告したものと方向性が変わってしまったな(´・ω・)
一話目にして、伏線を張り過ぎた感も否めない(´・ω・)
活動報告で行っていた企画で5名の正解者が出たので、匿名を解除しました。
もうちょっとかかると思ってたのに、みんな分かるの早スギィ!!