どうかお待ちください神さま!?彼女たちにはーどもーどは早すぎると思います!!   作:NoRAheart

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にわ!

―――神さま、ありがとう

 

感謝の祝詞は、今これまでに俺が私となってから、果たして何度唱えた事か。

新たな命、新たな躰、やり直しのチャンス。

願いを聴き遂げてくれてありがとう、と。

俺は私となって幸福でした、と。

俺は私になれて幸福なのでした、と。

神さまに、なんど感謝を告げたことか。

 

得られた奇跡、新たな人生。

今度こそ馬鹿な選択をしないように、知識はどん欲に。

誰よりも動けるようにと、あらゆるスポーツに挑戦して。

そして友達もたくさん、一杯できた。

前世の俺では、考えられなかった事。

 

楽しかった。

とても楽しかった。

勉強も運動もどんなに頑張ったところで、一番にはなれなかったけれど、好きだった。

そして生前ではあんなに嫌いだった、学校。

小学校も、中学校も、そして高校も、今では最高に好きになれた。

だけど、それは決して一人では思えなかった事だ。

『友達100人できるかな?』

そうあれと心掛けた、けれどもいつしか自らが進んで交わる事を望むようになった人の和。

共に楽しみ、助け合って、励まし合って。

そんな事が出来る友人たちがいたからこそ、私となってからの人生は、何もかもが輝いて見えた。

その輝きは、夜空にちりばめられた那由多の星の輝きさえ霞む。

 

だから、嗚呼。

皆にもこの幸福を、AMEN(かくあれかし)

皆にもこの幸せを、AMEN(かくあれかし)

私は神さまに感謝して、祈る。

私の幸福を、この思いを、分かち合いたい。

だけれども、分かち合う為には何をすればよいだろうか?

 

 

『答えは簡単ラブよ、LOVE。愛は地球を救うのよぉん』

 

『みんなでオ・ツ・キ・ア・イ(はぁと)。そうすればほぉら、世界は丸ぁくおさまるわぁん』

 

 

………最近はよく、腰振る筋肉モリモリな巨漢の幻覚が見えてしまう、幻聴が聞こえてしまう、その都度己の正気を疑うけど。

どんなに知識を積み込んでも、健全な肉体を作り上げても、魂の本質は変わらない、つまり馬鹿だから。

そんな馬鹿なりに考えて。

私は高校から、おせっかいな事を始めた。

学校がより楽しくなれるような事を始めたんだ。

 

いや、なに。

私になったところで、俺の馬鹿で、ぶきっちょだった本質は変わらなかったから。

迷惑がられることもあった、理解されないことだってあった、気持ち悪がられることもあった。

だけどみんなにとって学校が、楽しい場所になれるようにと願った3年間は、きっと無駄じゃないと思うんだ。

 

 

だって、ほら、『ありがとう』って。

 

 

同級生も、後輩も、友達も。

 

 

前よりも、皆みんな、あんなに楽しそう――――

 

 

「――――なんて」

 

 

なーんて。

私は柄にもなく、窓の外見て、そんな感傷に耽ってみる。

だって、いつだって全力で駆け抜けてきた人生。

そしたらあっという間に高校三年生、あと一年もしないうちに卒業する歳だ。

残念だと思い、名残惜しく思う気持ちは人一倍に持っているから。

 

ため息。

 

小さく溜息を吐いてみた。

僅かに胸が圧迫されるのを感じて、苦しくなって、口からは風がフッと吹く。

 

改めて意識する、抱える、物資がぎっしり入った段ボールは、やはり重たい。

それは私の身体を隠すほどの、物。

すごしやすい季節となった今日この頃だけれども、段ボールを抱える両手だけは、妙に汗ばんでいるのか、湿気っている。

 

 

「ふぅ………」

 

 

少しばかり運んで。

やはり疲れたと、段ボールを地に。

暫し、少しばかりの休憩とする。

 

窓ガラスから、外を望む。

此処は学校の三階、廊下。

そこからは、グラウンドから正門にかけて、遠くとおくを見下ろせる。

今はまだ朝方であるが、朝練を行う部活はわが校でも少なからずある。

ちらほらと、グラウンドには運動部らしき人の姿を確認できた。

 

 

「………あそこにいるのは、磯野君」

 

 

野球部の格好をした、マウンドに立つ背を向けた誰かの名を、私は遠くであろうと言い当ててみる。

すると、ちょうど私の呟きに対する答え合わせの様に、マウンド上の誰かはこちらへと振り向いた。

………やはり彼は、磯野君。

都会暮らしでも、今日まで保たれてきた優れた視力が、彼の顔を見せる。

そんな彼の、今の顔は――――

 

 

「あそこにいるのは中島君」

 

 

次に。

ネクストサークルから打席に移る、彼の名を当てる。

どうやら次は彼の打順らしいが、さて。

磯野君と中島君の対戦成績は、ちょうど五分と五分。

此度の対決は、はてさてどうなる事やら。

 

 

「あそこにいるのは花沢さん」

 

 

そんなふたりの対決を陰から見ていた、彼女の名を当てる。

正確には彼女は、磯野君を見ているのだろう。

彼だけを応援しているのだろう。

そんな事が言えるのは、一年前に、彼女から恋愛相談を受けたから。

残念ながら、恋愛経験がこれっぽっちもない私では、ロクなアドバイスも出来なかったけれど。

面識がなかったはずの彼女に『貴女だから』と頼られた時は、とてもうれしかったことはよくよく覚えている。

 

 

「あれは剛田君、あれは源さん、あれは骨川君――――」

 

 

そっと、より窓辺によって。

窓ガラスにひたり、ひとり触れてみて。

グラウンドにいる、ひとりひとりを言い当ててみる。

誰もかれもの名を、私は知っているからこそ。

ゲームする。

名前当てゲームだ。

グラウンドの端から端までいる人の、名を当てるゲーム。

 

 

「………」

 

 

私が最後の一人の名を諳んじるまでに、そこまで時間を必要とはしなかった。

ただ、名を読み上げる私の声は抑揚がなく、とても。

とても、冷たく感じた。

我ながら酷い、感情のこもっているはずの人間からは、とても発せられたとは思えない声である。

しかしその抑揚のない声の奥底には、寂しさを孕んでいるようにも思え、怒りを孕んでいるようにも思え、そしてそれはあながち間違いではない。

 

陽が、雲に隠れた。

 

陽が隠れ、辺りが暗くなったことで、触れる窓ガラスには何者かが映る。

目の前の窓ガラスに映ったのは、眠たげにこちらを見返す女の子。

肩まで伸ばした髪色は、濡れ鴉。

それの身長は、150㎝もないだろう小柄な少女。

その身体に伴って、女の子が頑張って強調しようと持ち上げてみる胸のカップも、きっとAもない、全然無い、残念である。

しかしそれでも女の子は、貧乳はステータスだと言いたげだ。

そんな彼女の顔は、まぁ整っている方だと言えるだろう。

しかし彼女の表情には全くの変化が見られない、所謂無表情な女の子。

全く持って残念な子、可哀想な子。

 

遺憾ながら。

誠に遺憾ながら。

これが今の俺、改め、私。

 

女の子になった日のこと――――まいさんが、その役目を果たすことなく私の下から去ってしまったときのショックは今でも忘れる事はない、惜しい人をなくした。

表情筋の事については、仕方がないと諦めた。

過ぎた願い、愚かな願いとして願った新たな命。

罰として当然の報いだ。

表情筋があまり動かないことに伴って口数も少なくなってしまって、それで色々苦労する事もあったが、18年近くもそれに付き合ってきたのだ、もう慣れたモノ。

それに、表情筋を転生の対価として支払ったことは、今を考えれば結果論的にベストであったと言えた。

 

 

 

 

 

――――嗚呼、神さま。

 

――――きっと貴方のせいではないのでしょう。

 

――――これは私たち人類の過ち。

 

 

 

 

 

私は触れた窓ガラスに走る、皹割れを指先でなぞった。

 

ガラスを創るのも人ならば、こうしてガラスを壊すのも人だ。

私はそれを知る。

 

見下ろす、窓の外は地獄。

それは冗談でも比喩でもない、リアル。

人が人を喰らう。

そんな恐ろしい行為が、外の世界では、奴らにとってはもはや常識となってしまった。

それは私がいるこの巡ヶ丘学院高校も、例外ではない。

 

歯ぎしり。

 

私の知っている者、私と仲の良かった者が、私の知る誰かだったモノを食べる光景は、この身が引き裂かれる以上の苦痛だった。

愛したこの学び舎で、見知った誰かだった者を手にかける瞬間など、土下座で頭を自らかち割り懺悔したところで足りるものではない。

友にこのような仕打ちをした輩への怒りは、なぶり殺しの惨殺してやるだけではきっと満足できない。

もしも私がごく普通のJKだったなら、この思いを表に出すことなく、隠せる自信はない。

だから、対価として表情筋を選んだのは、今の私にとってとても都合が良かった。

 

苦痛と怒り。

 

しかしそれに耐えてでも、私がこの学院にとどまるのは『学園生活部』の存在があるからだ。

私が今も生きる事を選択する、私の最後の希望。

一人だったなら、今世の私なら。

友人たちを手にかけるくらいなら、人としての道徳なんてとっくに捨てて、報復を選ぶか死を選ぶ。

けれども、だけれども。

『学園生活部』にいる4人は、私よりも幼いのだ。

この地獄の中に放り出されるには、まだ幼すぎて、そして綺麗すぎる。

 

 

 

 

 

――――嗚呼、神さま。

 

――――どうかお待ちください。

 

――――彼女たちには、まだ『はーどもーど』は早すぎるのです。

 

 

 

 

 

大人として。

彼女たちが、身勝手な誰かさんが引き起こしたこの人生の『はーどもーど』の中で、彼女たちが独り立ちできるそれまで、私は彼女たちを守っていきたいと思う。

それまでは己の懺悔も、叫びも、嘆きも。

怒りも、そして憎しみも後回し。

誰かを手にかける穢れは、汚れの泥は、その覚悟ができるまで私が浴びよう。

どうせ二度目の人生、けれども十分に幸せだったから。

もはや誰かの為に動こうと思える程に、私はもう十分生きたから。

 

 

 

 

 

――――だから、さあ、まだボランティア(独善)の続きを。

 

 

 

 

 

窓から離れ、友だったモノらに「またね」と告げた。

「さよなら」じゃないのは、それが彼らとの思い出を蔑ろにするためのものではなく。

今は、生きる彼女たちを優先するのだという意思表示。

 

汗ばんでいるだろう手を見ず拭い、私は段ボールを再びよいしょと抱える。

これは『学園生活部』に届けにきた物資。

外からひそかに確保してきた、貴重な、彼女たちの為の物資だ。

こっそり寝床にでも置いておけば、彼女たちは、悠里は驚いてくれるだろうか?

 

 

「ぇへ」

 

 

悪戯を企てる子が、きっと抱くだろう高揚感。

感じるそれをそのままに、そして私――――独善歩(ひとりよし あゆむ)――――は彼女たちのもとへ。

ふらふら。

 

ぺたぺた。

 

ひたひたと、独り歩む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――丈槍由紀

 

『学園生活部』+1名の面々が持つ、彼女に対する共通印象の第一項目に挙げられるのは、「睡魔」であった。

彼女は兎角、よく眠る。

寝坊上等、授業中居眠り上等。

世界が壊れた後でもそれは変わることない――――いや、世界が壊れているとは認識していない丈槍由紀にとって、正しくそれを「変わることはなかった」とは、決して言えるものではないのだが。

 

だから歩が『学園生活部』の寝床に足を踏み入れた時、早朝とは言えそれは健全な学生なら起床と活動を始めるにはやや遅い時間に、丈槍由紀が未だ惰眠を貪って幸せそうによだれを垂らしていても、別段驚くようなことではなかった。

歩からすると、もはや終わってしまった世界で丈槍由紀の自由行動をとやかく言う必要はない。

『学園生活部』のメンバーであるならまだしも、歩は部員として名を連ねる事を断固として拒否しているため、猶更である。

ただ、「変わることはなかった」という丈槍のやさしい妄想を守るためには、学生としてのサイクルを守らせることも大切な事である事を、歩は理解していた。

 

 

「すぅ………すぅ………」

「………」

 

 

歩が静かに段ボールをおろし、軽くストレッチを始めたのは由紀を起こす為である。

彼女を起こす為に、歩は少しばかりの助走をつけて。

 

 

「てぃ」

 

 

飛ぶ。

 

 

「………うみぅ」

 

 

飛んだ小さな身体は、勿論地球の引力に引っ張られ、落ちる。

歩はそうして由紀のお腹にのしかかったのだが、しかしながら思った以上に効果が見られない事に、歩は首を傾げた。

見るからに、由紀は未だ夢の中である。

せめて歩が日本人女性の平均体型であったなら、確かな効果はあったのだろう。

しかしそれを望むには歩の身体はあまりにも小さすぎた。

 

由紀は起きない。

歩はそれを「ああ残念、残念だ」と思いながら、シーツ越しに由紀の身体に顔を埋めて、大きくおおきく深呼吸を二度。

 

 

「………ごち」

 

 

何の?とは、言うまでもない。

歩が行ったことは、完全に事案である。

お巡りさん此奴です。

 

しかしながら内面はともかく、歩の外見はどこからどう見ても高校生、いや、稀に小学生とも間違われることさえある、幼女(ロリ)体型。

傍から見れば眠る主人にじゃれている猫の様。

微笑ましい光景に、犯罪の匂いなどどこにあろうか?

悲しきかな、完全犯罪とはかくのごときことを言うのであろう。

 

 

「おきろ」

 

 

歩は暫く由紀の身体を堪能したのち。

今度は由紀の頬に歩の白く、細い指を伸ばし、触れ。

たてたてよこよこまーるかいて、ちょんと。

歩は由紀の頬を指で弄ぶ。

 

 

「んぅ、ん~?あーちゃん?」

「たけじょー、おはよう」

 

 

動かぬ表情筋、舌足らずな挨拶。

漸く由紀が目を覚まし、歩の存在を認めた事を、歩は認める。

ならばこれ以上由紀の上にいる必要はないと歩は身体を起こすが、すると歩の起こした空間に、「くぅん」と鳴き声。

 

 

「………たろーまる」

「太郎丸もおはよう!!」

 

 

歩と由紀の身体の間から、顔を出す子犬、柴犬。

由紀を先に起こしに来たのは太郎丸であるにもかかわらず、その目的を果たしたのは歩であることが不満だったのか、太郎丸は犬でありながら、器用に眉をひそめて、またひと鳴き。

それ見て由紀は「気付けなくてごみんごみん」と、太郎丸を抱いて撫でる。

 

 

「丈槍、丈槍」

「ん?なに、あーちゃん」

「時間」

「?」

「遅刻」

「――――――はぅ!?」

 

 

歩の指摘に由紀は顔を真っ青にして跳ね起きた。

由紀に跳ね飛ばされる形となった歩であったが、器用に正座で着地した。

独善歩は生前からの、生粋の紳士である。

太郎丸を膝上に抱えて由紀が慌てて着替えるのを、眺め、待つ。

 

 

「あーちゃん、またあとで!!」

 

 

着替え終わった由紀は、歩に別れを告げて部屋を飛び出した。

歩は飛び出す由紀に手を振って見送ろうとするが、彼女が走り去った方向は本来向かうべき方向とは、逆。

それを不思議に思った歩も部屋から出て彼女を追いかけてみれば、案の定、由紀は階段に足をかけていた。

 

 

「丈槍」

「ん?あーちゃん、どったの?」

「どこ、いく?」

「あのね、今日使う教科書を家に忘れたから家に取りに行こうと思って」

 

 

「たははー」と、由紀は困ったように笑っているが、歩にとっては笑えない冗談である。

繰り返すが、由紀は世界が終わっている事を認識していない。

未だ彼女は、平和な世界を妄想しているのだ。

そんな由紀が安全圏から飛び出し家に帰ろうものなら、ゾンビらしき化け物の格好の餌になるだろうことは想像するまでもない事。

 

歩の小さな口から、ちいさなため息。

丈槍の事も、また大切に思っている彼女だが、しかしどうしても呆れてしまう。

この瞬間もまだ「知ぬ、見えぬ、存ぜぬ」が叶う彼女は、嗚呼なんて幸せな事か、と。

 

 

「あー!!あーちゃん。今、私が教科書忘れた事馬鹿にしているでしょー?」

「うん」

「ぅえ!?即答!?」

 

 

やれやれと言いたげに、歩は首を振る。

 

 

「たけじょーは、バカ」

「うぅ~」

「………そもそも、今から戻ったところで、間に合わない」

「そ、そーだけど」

 

 

全くこの子は手がかかると、歩は由紀に呆れを抱いても、彼女から離れようとは思わない。

由紀の抱える妄想は、歩にかかわらず他者からしたらとても面倒なモノだろう。

しかしそれは、由紀がやさしく綺麗で純粋であるからこそのモノで。

だからこそ、面倒であっても、『学園生活部』の面々は彼女から離れず。

歩もまた、由紀から離れようとしなかったのだろう。

 

 

「私の、貸す」

「ほんと?ありがとあーちゃ………あれ?でもあーちゃん、私とクラス一緒だよね?」

「問題ない。教科書は『保存用・観賞用・布教用』の三冊、もっている」

「………なして?」

「あら?由紀ちゃん?」

 

 

階段の上より、由紀の耳に凛とした声が届く。

 

 

「めぐねぇ!!」

「もう、めぐねぇじゃなくて佐倉先生でしょ?」

 

 

声の主は新米教諭、国語科の佐倉慈先生のものであったらしい。

はしゃぎ、佐倉教諭の元に走る由紀の後ろで、歩は佐倉教諭のいる()()に控えめに頭を下げた。

 

 

「由紀ちゃん、もうすぐ授業よ?下の階になにか用かしら?」

「えへへ、今日使う教科書を忘れちゃって」

「もう、だめでしょ忘れちゃ――――」

「でも、あーちゃんが教科書貸してくれるって!!」

 

 

「ねー」と由紀が振り向くその視線の先にいる歩に気づく、佐倉教諭。

その表情は、複雑。

歩の心境も、顔には出せないが同様で。

互いに声は交わさない、交わせない。

 

 

「―――――」

 

 

息を呑んだのは、どちらか?

歩か、佐倉教諭か?

確かなのは、それが生きている人であること。

 

佐倉教諭と歩は、ここにいる由紀と『学園生活部』を護るために動く、陰の同盟関係()()()

同盟関係、その中で。

汚れる自分を知っている。

汚れていく彼女を知っている。

汚い部分を知って、知られ、しかし互いに何もできなかった。

佐倉教諭と歩の互いの関係は一言では語れない、顔を合わせるのも気まずい複雑なものがあった。

 

 

「はやく二人とも、教室に行きなさい。もうすぐ、ホームルームよ」

「はーい。行こ、あーちゃん」

「………ん」

 

 

由紀に手を引かれる歩は、振り返る。

それは片方が欠けた今も、同じ。

由紀が妄想するその人の存在を語る度に、残る者は、その人を思いだす。

その人を助けられなかった罪を、強く、深く胸に刻まれ、思い出すのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――延びる影は1つと、ひとつ。

 

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