Fate/Scramble   作:DF946

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セイバーは1人だけ

 何が行われたのか理解はできないが、俺は助かったらしい。

 

 魔法陣から突然現れた金髪の女性が、(有り得ない程の暴力的な力で)追い払ってくれたのだ。

 

 そして銀髪の男を助けに来たひげ面の大男は、彼女に貫かれて、光になって消えてゆくところだった。

 

 

 

「凄いぞ。あれは〝騎士王〟ーーアルトリア・ペンドラゴン……。過去二回の聖杯戦争を戦って来た最強のセイバーじゃないか」

 

「え?」

 

 

 

 見ると俺の後ろに、男が立っていた。

 

 黒髪で黒シャツの、30代くらいの男。

 さっき爆発する銃に撃たれて壁に叩き付けられた、この家の人だ。

 

 無傷のようだけれど、身体が丈夫なのかな。

 

 

「君は運がいいな」

 

 男が、俺の方を向いて言う。

 

「君は最強の英霊の召喚者だであり、彼女の契約者(マスター)だぞ。どうだろう、今から私と手を組まないか?」

 

 男は表情の読みづらい顔で、少しだけ口角を上げた。

 

 どういう事なんだろう。

 何を言っているんだろう。

 

「敵対するのなら今ここで君を殺すのは容易だ。だが折角のセイバーだぞ。彼女の力を使わないのは、私にとっても君にとっても勿体無いじゃないか?」

 

「えっと、あの……」

 

 俺は内容を理解出来ていないので苦笑いしながらおたおたした。

 

「……なるほど。自分の置かれた状況を理解していらしいな。……まぁ、彼女に話を付けた方が早いか」

 

 男はそう言うと、廊下の奥で背を向けている、金髪の彼女のほうへ歩いて行ってしまった。

 

 

 

「騎士王よ。交渉がしたい」

 

 男が声をかける。

 

「お前のマスターは聖杯戦争について理解していないようだ」

 

 彼女がその声に、ゆっくりと振り返える。

 

「私の名前は|畔野巣〈くろのす〉|終始〈しゅうじ〉。セイバークラスのマスターだ。仲間に……」

 

 彼女が振り返り、男に目を向けた。蒼い瞳と、凛々しくも、少女のような美しい顔立ちだった。

 でも、なにかがおかしい……

 

「あれっ……セイバー……?」

 

 

 男が近付く脚を止めた。

 

 振り返った彼女の顔は怒っていた。

 歯を剥き出してグルルルと唸り、口の端からよだれを垂らしている……

 その目は、知性のある人間のようには見えなかった。

 

「まさか……バーサーカ……っ!?」

 

 男が飛び退く間もなく、彼女は振り向き様に剣で男に襲いかかっていた。

 

 ドン!

 

 爆風が吹き荒れ、男が俺の方にぶっ飛んでくる。

 

 俺は彼を受け止めてしまい、ふたり同時に背後の壁に叩き付けられた。

 

「ぐはっ」

「うわっ」

 

 彼女が近付いてくる。

 強風を纏った黄金の剣をふりかざし、殺意に目が燃えている!

 

 そこで俺は気付いた。

 もしかしたら彼女は、俺を助けたわけじゃないのかもしれない。

 ただ単に、銀髪の男にほうが、先に目に入った獲物だっただけでーー

 

「セイバー! 助けろ!」

 

「はい」

 

 近付いてくる彼女と俺達の間に、不意に鎧を着た少女が現れた。

 この男の呼びかけに応じて瞬間移動してきたようだ。

 

 赤い髪をなびかせ、肩と太ももの空いた甲冑を着込み、双剣を構えている。

 道の真ん中でひげ面の大男と戦っていた相手の女性だ。

 

「ぐぁあああっ!」

 

 八重歯を剥き出し、黄金の剣が襲いかかってくる。

 セイバーと呼ばれた赤髪の女が双剣でそれを防いだ。

 すぐに数度、目にも止まらぬ連撃が繰り広げられる。

 

「や、やめてくれ! 俺を助けてくれたんじゃなかったのかよ!」

 

 俺はさけんでいた。

 男は俺が彼女を召喚したと言った。だったら、俺の言う事を聞くはずだ!

 

「やめろ……。戦いを、止めろ!!」

 

 俺は全身の力を振り絞って、大声で叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふいに、……剣撃の音が止む。

 

 

 見ると、戦っていたふたりの動きは止まり、全員が俺を見ていた。

 

「ん?」

 

 俺の右手の甲に突然現れていた熱が引いて行き、そこには紋章のような痣が浮かんでいた。

 

 

  

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