ギターとエフェクターが何かはあえて言いません。みなさんの想像にお任せします。
「はぁ」
ちょっとやりすぎた。そう思いながらスタンドにギターを置いてベッドに座る
休憩しよう、休憩。何事もやり過ぎはよくないのだ。
隣に置いてたコーラのペットボトルを一口飲んだ。
あまりジュースって好きじゃないんだけどこれはやめられそうにないなぁ、なんて思ってたら、私を呼ぶ声がした。
「玲奈ー、お母さんとお父さん、ちょっと買い物してくるわー。留守番頼んだわよー。」
「はーい、いってらっしゃーい、気を付けてねー」
返事は返ってこなかったが慌しく出て行く足音が聞こえた。
なんだかんだで両親共に仲が良い。あまり目の前でイチャイチャされるのは鬱陶しいが、喧嘩してるよりはマシだ。
さて、次はどんな曲を練習しようかなぁ
また同じ曲を練習しようかなぁ。私は同じ曲でも毎回感覚で演奏する箇所が多いから全てが同じ演奏になる訳ではない。友達曰く下手ではないし、私が演奏しているのを見るのは面白いそうだ。悪い感想ではないので気分はいいが。
そうこうしているうちにまた弾きたくなってきた。ギターを手に取り立ち上がる。結局弾くのはさっきと同じ曲だ。でもいいんだ楽しければそれで!
さぁて、楽しもうか
夜になり、ご飯も風呂も勉強も済ませた。昼のように自由に演奏するわけにはいかないから、この時間は主にギターの掃除だ。掃除と言ったら皆いやな顔をするんだけど、私はこの時間が好きだったりする。
自分の楽器を隅々まで観察できるし、掃除でしか学べないこともあったりする。フィンガーボードとかは特にそうだ
「私の手汗マジヤバイ」
ほら、思わず口に出ちゃうほどだもん。根気よく拭いて次に気持ちよく使う為だからしっかりやるよ。
あ、でもなんだか弾きたくなってきちゃった。ギターからもなんだか弾いてくれって声が聞こえるし、ちょっとくらいなら良いよね!
思い立ったが吉日、ギターにヘッドホンアンプを挿してケータイも接続。最近マイブームのなりきり演奏だ。あぁ、明日は学校だったなぁ〜なんて思いつつミュージックスタートした。
「ねぇねぇ、玲奈は新しいエフェクター買わないの?」
「ふふふ、私は今のボードからは不満は感じないぞ〜」
学校での昼休憩、友達の響子とご飯を食べながら話す
「でもさ、玲奈の出す音ってなんていうかこう・・・安定しすぎてるというかさ、若さがないよね!」
「ちょっと!余裕のある演奏って言ってくれない?人を年寄り扱いするのはよくないと思うなぁ」
「あはは、ごめんごめん。じゃあさ、ハムバッカーのギターとか弾かないの?玲奈ってばあの子ばっかり使って面白くないんだもーん。たまには雰囲気違う音聴きたいよ!」
「お断りよ、響子。私はあの子以外は極力使いたくないの。わからないかなぁ?あのカリンとした音の良さとセンターポジのキラキラ具合、そしてモコモコフロントの良さが。」
「うーん、わからないことはないんだけどね、なんていうか、私が今と違う玲奈を見たいというか、そんな感じ?」
なんだそれ。私は一途なんだ、寄り道や惑わされなんてしないんだ!
絶対 多分
嫌ですって顔してるかもな、私
「じゃあさじゃあさ、私のオススメのエフェクターあるから使ってみない?玲奈絶対気に入るよ!かっこいいよ!」
なんとしても私の出音を変えたいのか、響子はキラキラした眼で私に迫る。まぁちょっとだけならいいか・・・
「わかったわかった。放課後うちに持って来てよ。試奏するからさ」
「わぁーい!」
どんだけ私の出音変えたいのこいつ
「はぁ」
溜息が出た
「それで?昼に言ってたエフェクターってどんなのよ?」
「じゃじゃーん、これでーす。」
響子がカバンからエフェクターを取り出す。オレンジに少しラメが入ったエフェクターだ。なんだか目立つやつだなぁ
「これがね、すんごいぎゅいーんとバリバリー!な音がつくれるの。ささ、お試しあれよ玲奈さん」
献上のポーズで私にエフェクターを差し出す響子。ちょっとだけ優越感を感じながら受け取ってアダプターとシールドを挿し込む。
ツマミが音量、低音、高音、歪みとあるがいつも自分が使ってるのと同じセッティングにしてみる。スイッチを踏んでオン、いざ
って
あれ????これ、いいかもしれない。私ってこんなに浮気性だったっけ。響子の方を見ると、惚けた私をみてニヤついてる。くやしい。
「ほら玲奈、どうよどうよ」
「うん、これ、好きだわ」
「にひひ〜、ならこれ、あげるよ。」
マジか
持つべきは良い友達だね。
響子が帰ってからも私は弾いていた。いつもは棒立ちで弾いてるけどこの音の下でそれは出来ない。身体がかってに動いちゃう、どうしたんだ私、ていうかあーーーもうヤバイ楽しい、私のボルテージは最高潮、もう止めれない!
気付いたら私はギターを振り上げた
全身が滾るのを感じる、指がいつもより早く動く、なんだこれは。楽しすぎるじゃないか、ヤバイよこれは。
そう感じながら側から見て狂気的なプレイをする私。だって楽しいから仕方ない。
私がようやく落ち着いたのはそれから2時間後だった。気付いたら手から血が出て弦はボロボロ、我ながらちょっと引いた。
ああでもなんだかギターはお腹いっぱいな気分。もう今日はいいや。
そう思いながらギターと一緒にベッドに倒れ込む。ああ、なんだかこれから楽しくなりそうだなぁ。そんな事を考えながらギターに目をやると、ふとこのギターが愛おしくなって抱き締める。
「これからもよろしくね」
生きてるわけでもないけど、感謝する。そして心地いい眠気が襲い来る。今日はこのまま寝てしまおう。明日のことはどうにかなるよね。
そして私は便器の蓋みたいな形した紅色のギターに笑いかけて目を閉じた