──遊園地北部・ラーテゾーン、観覧車破壊直後。
「こんな、馬鹿馬鹿しい形で……!」
オイ車の砲塔から、絶望的な表情で辻つつじは転がってくる巨大観覧車を見上げた。
捨て身の足止めを仕掛けていた二両のチハが白旗を上げる。これで後退は可能になったが、それはつつじの望むより僅かに遅かった。今からでは間に合わない。
「こんな……馬鹿なぁぁっ!」
つつじは懸命に生き残りの道を模索した。まだⅡ号戦車とチハ二両を走行不能にしただけ。オイ車の強さを見せつけたとは到底言えない。おまけに転がってきた観覧車に撃破されたなど、物笑いのタネにしかならないだろう。
「(ふざけるな! 私は、私はまだこんな所では!)」
既に窓を完全に覆う程に観覧車は接近していた。
逃げるか?
否、オイ車の鈍重な足では逃げ切れない。
迎撃するか?
否、あの大質量が十分な勢いで転がってきているのだ。例え撃ったとしても鉄骨の隙間を抜けるか、あるいは骨組みの一本を壊して終わりだ。
諦め、覚悟を決めるか?
論外だ。既に表向き、つつじは高校戦車道を引退している身だ。この試合を逃せば、もう次の機会は無いだろう。
ならば──
つつじは咄嗟に顔を上に向け、天井を見た。
「全砲門、仰角最大! 天井の支えを撃て!」
「りょ、了解!」
つつじの指示に、砲手と副砲手は動揺しつつも一斉に動いた。主砲と二門の副砲が持ち上がる。
「仰角最大!」
「撃て!」
断末魔めいた砲声が響く。
放たれた三発の砲弾は斜め上の天井の支柱部とその周辺を破壊し、観覧車を掠めて飛んで行った。
片側の支えを失った天井がみしみしと音を立て、間もなく崩落してきた。それを待たずつつじは車内に戻り、次に来る衝撃に備えた。
「ぐっ……!」
強い揺れ。屋根の一角が崩れ、
「総員、衝撃に備えろ! 来るぞ!」
つつじはそう叫び、身を伏せる。
直後、屋根が当たった際の数倍以上の衝撃がオイ車を襲った。
「うぅ……?」
余りの衝撃に、少しの間意識を失っていたらしい。頭を振りつつ、つつじは立ち上がった。
車内は暗い。元々最低限の灯りしか無いところに、外からの光が一切遮断されているからだ。
「全員、無事か?」
「か、確認致します」
同様に身を伏せていた装填手が起き上がり、確認を始めた。多少の簡略化はされているものの、オイ車の搭乗員は十数名。確認するだけでひと手間である。
「……車長殿。搭乗員、全員無傷であります」
「分かった……判定装置は働いているか?」
つつじは頷くと、最も重要な点について尋ねた。これで判定装置が走行不能判定を下していれば、そこで終わりだ。
「……判定装置、発動なし!」
「おぉ……!」
確認を行っていた通信手の報告に、車内のメンバーが声を漏らした。
「……クク」
つつじは口元に笑みを浮かべた。どうやら“悪あがき”は功を奏したらしい。
無論、無傷では無いだろう。だが観覧車の直撃を防いだ事で何とか白旗判定だけは回避できた。それで今は十分だ。
「直ちに発車。引き続き戦闘を継続する」
「了解であります!」
伏せていた搭乗員が各位置に着く。しかし、そこで通信手が言った。
「車長殿、指向性の通信が入っております!」
「通信? この状況でか?」
「はい。その、『動かすな』と……通信を回します」
通信手はそう言うと機器を操作する。つつじは怪訝な表情で通信を開いた。途端に飛び込んでくる陽気な声。
『はいはーい、こちらT-34のトウコ! 辻っち、聞こえる?』
「……貴様か」
うんざりした表情でつつじは言った。自分のお目付け役を任じられた、島田愛里寿直属の飄々とした戦車乗りだ。
特にこちらから言う事はない。そう思い通信を切ろうとした時、トウコは何時になく真面目な声で言った。
『動かしちゃ駄目だよ。今動かしたら、途端に白旗が上がる』
「何?」
操縦手が車長席のつつじを仰いで指示を求める。つつじは首を横に振り、トウコの言葉に耳を傾けた。
『そっちからじゃ状況把握しきれてないと思うんだけど、アンタのオイ車、瓦礫に埋まってるよ。本当にギリッギリで走行不能判定を回避してる感じ。ちょっと前進しようとして、履帯が噛んだらアウトだね』
「……むう」
ここで彼女が嘘を言う理由は無い。トウコの言葉は真実だろう。
結局、まだ自分たちはどうしようもない状況にあるようだ。
しかし、トウコはこちらの心境が読めていたような言葉を発した。
『アタシの言う事を聞いてくれる?』
「何だと?」
『悪くない話だよ? とりあえず、今はぴくりとも動かずに連盟の作業車両の到着を待って。アンタの足元のチハの回収もあるから、そんなに長くはないだろうね』
「……それでもう一度、参戦できるのだろうな?」
『フヒヒッ、言う通りにしていればね』
こちらの内心の不安を見通すように、彼女は笑った。
劇場版カタクチイワシは虎と踊る 第三十七話 悪魔と道化師
突如。遊園地の全ての設置スピーカーからサイレンが鳴り響いた。
「な、何!?」
遊園地南東部・トータスランド周辺。
突然のサイレンにM3Lee車内の大野あやが驚きの声をあげた。
サイレンは十数秒鳴り続け、続いて今試合の審判長である蝶野亜美の声が流れ始めた。
『残存している全車両の選手の皆さん、試合の30分の休止をお願いします。先程、走行不能と思われていた車両の判定装置が働いておらず、審議が必要となりました。戦闘行為を中断し、その場から動かないようお願いします。既に砲弾を装填してしまっている車両は、相手に当てないように発砲して装填されていない状態に──』
戦闘の中断を指示する亜美の声が何度か繰り返される。
「審議中に、試合を進めちゃ駄目なのかな?」
「そりゃ駄目でしょ。殲滅戦で復帰できる、できないって大事だし」
操縦席の桂里奈の疑問にあゆみが言う。
実際その通りである。極端な話をすれば、殲滅戦で審議中に相手側の最後の一両を撃破した後で復帰した場合、勝利になるのか試合継続になるのか不明瞭になってしまうからだ。
「でも、『走行不能と思われていた車両』って……?」
梓は嫌な予感がした。味方側の損害状況は把握できている。判定が曖昧な状態の戦車は無いはずだ。とすれば、その車両は大学側の戦車という事になる。
「………!」
彼女の不安を裏付けるように、紗希がぴくりと身を起こした。
『……こ、ここに来て驚くべき事態が発生しました! 観覧車の暴走によって二両のチハを道連れに潰されたと思われていたオイ車、まさかの生存!』
どよめきが広がる観客席、実況席の王大河はマイクを握り締めつつ緊張した面持ちで言った。
『現在、試合を一時中断し審判団による、再参戦を認めるかどうかの審議が行われております! 解説の方々、こういった場合、どのように判定されるんでしょうか?』
「そうね……まず戦車道連盟の試合規則に沿っているかどうかを確認。次にそこから審判団の意見をまとめて、最終的に審判長が判断を下す事になるわね」
『なるほど、その規則とはどのような?』
「う~ん、細かい所までは暗記してないのよね……HEY、エクレール! 貴女なら分かるんじゃないの?」
「え!? え、ええ……少しお待ちくださいませ。何か、書くものを頂けます?」
間もなく撮影班から渡されたボードとマジックを受け取ると、エクレールはすらすらと書いて机に立てた。
「戦車道連盟試合規則、4条4項には競技資格喪失条件について以下のように書かれています」
・判定装置が競技続行不能と判断した場合
・競技者全員が戦車を降り、試合放棄した場合
・審判員が競技続行不能と判断した場合
(判定装置が競技続行可能と判断した場合でも、その損傷等の程度によっては審判員が競技続行不可能との判断を下す場合がある)
・審判が規則違反を認定した場合
「この場合、判定装置は働いておらず、また搭乗員は全員乗車しています。なので重要になってくるのは三つ目の『審判が競技続行不能と判断した場合』ですね」
『実際にそういったケースはあるのでしょうか?』
「そう多くはありませんが……主砲が暴発しかねない損傷を受けているのが認められた場合など、搭乗員への危険を
『むむむ……では、今回のケースはどのような判断が下されると思われますか?』
大河の質問を受け、エクレールは悩みつつ答えた。
「……難しいですわね。『破壊された観覧車の暴走で建物ごと破壊され、掘り起こしたら白旗が上がっていなかった』などというケースはおそらく今回が初めて。審判団の方々には慎重な判断が求められるかと思われますわ」
「でも、今回の審判長は『蝶野が斬る!』の蝶野さんでしょ? バッサリと判定を下してくれるんじゃないかしら?」
『バ、バッサリ……ですか』
ケイの補足に、息を呑みつつ大河は視線を審判団のいるテントへ送った。
「その……私は、再参戦には反対です」
机を囲む、戦車道連盟の制服を着た数名の女性。首には審判の証である“JUDGE”の字が打ち込まれた金属製の
その内の一人、黒髪をセミロングに整えた稲富ひびきが悩みつつも言った。
亜美は気を悪くする風もなく、微笑み彼女に尋ねた。
「何故そう思うの?」
「連盟の回収作業が無ければ、彼女らは動けないままでした。これでは連盟側が手助けしたようなものです。正直、公正ではないかと思います」
「なるほどね……篠川さん、高島さん、貴女達はどう?」
頷きつつ、亜美は他の審判にも尋ねた。眼鏡をかけた篠川香音が慎重に答える。
「私は……認めるべきかと思います。確認の結果、オイ車の判定装置は故障しておらず、損傷も試合続行可能な範囲でした。規則上の問題が無い以上、ここで参戦を認めないのは逆に連盟が大洗側に肩入れしているという印象を与えます」
続けて、暫くの沈黙の後にポニーテール髪の高島レミが言った。
「……すみません、審判長。私はまだ決められません」
「賛成1、反対1、保留1。綺麗に分かれたわね……」
亜美はそう言いつつ三人を見回し、瞳を閉じた。
蝶野亜美、彼女は豪胆さと思い切りの良さで知られる戦車乗りである。おそらく次の一言で判断が決まる。三人の審判は緊張しつつ彼女の言葉を待つ。
やがて、亜美は瞳を開いた。
「……オイ車の再参戦を認めます」
「審判長……!」
反論しようとするひびきに、亜美は柔らかい表情で言った。
「稲富さん。確かに貴女の言う事も分かるわ。だけど……私は、あのオイ車に乗っていた彼女たちの“戦意”を評価したいの」
「戦意……ですか?」
「ええ。あのオイ車は判定装置が働いていなかったといっても、貴女の言う通り連盟の回収作業が無ければ、再参戦の保証なんて無かった」
ひびきの意見を肯定しつつ、亜美は言葉を続ける。
「そんな中、彼女たちは自分たちがもう一度戦えると信じて待っていた。これは高い戦意があったからこそ出来た事だと、私は考えます。戦車道の規則は、戦意の低い無気力な試合をした選手には規則違反として罰則が科せられるわ。それだけ選手の試合に挑む姿勢を重視している。ならばこそ、ここで私たちはオイ車の彼女たちの姿勢を評価すべきだと思うの」
それが、大洗の皆にとって辛い判定になるとしても。亜美は内心で呟く。
今語っているのは“審判長・蝶野亜美”としての言葉だ。“一個人・蝶野亜美”としては、ひびきと同様かそれ以上に複雑な感情が渦巻いている。
しかし、亜美は表面上は迷い無い、堂々とした姿勢を崩さずに言った。
「そんなに長い時間、試合を中断はできないわ。判定の告知を」
再度、試合会場にサイレンが鳴った。
『戦車道連盟からお知らせします。先ほどの審議中の車両の試合への参戦が認められました。10分後に試合再開しますので、休憩等で戦車を離れている搭乗員は戦車に戻り──』
「……蝶野さんにしては、結構迷っていたみたいだな」
遊園地北部・イベントエリア。資材置き場で何かを物色していたアンチョビは放送に顔を上げて言った。
CV38の上で寝転びつつ麻子がアンチョビに言う。
「というか、中断中に何かやってていいのか?」
「別に戦車を動かしてもいないし、攻撃をしようって訳でもない。ちょっとした探しものだ」
「それが通用するといいがな……で、何か見つかったのか?」
「ああ、使う場面が来るかは分からないが、とりあえず」
アンチョビは麻子の方を見ずに返事をした。麻子は寝転んだまま、周囲に並ぶ様々な戦車の書き割りを見た。戦車道関連のイベントなどで使われたのだろう。様々な戦車の精巧な絵が残されている。
ここではつい先ほどまでエリカやカチューシャらがメグミの中隊と撃ち合いをしていたようだが、彼女らは既にここには居ない。周辺に幾つかの弾着も残っているが、幸い全損は免れていたようだ。
「それで、どうするんだ?」
「何がだ、麻子?」
「復帰した車両というのは、大学側のだろう? 何か対策を考えないのか?」
麻子の当然とも言える疑問に、アンチョビは少しの沈黙の後に答えた。
「……ちょっと様子見ってところだな」
「様子見?」
「ああ。まず復帰した戦車だが、十中八九オイ車だ。唯一、あいつだけ白旗が上がるのを確認できていない」
書き割りの大きさを確かめ、畳める事を確認するとアンチョビはその内の二枚を持ち上げてCV38に戻ってきた。
「また面倒なやつだな……」
「まあ、そうだな。だが……この復帰のタイミングが変だ」
「変?」
「判定装置が働いていないのは、車内からすぐに確認できたはずだ。それなら、早々に島田愛里寿なりに報告して連盟に対応に動いてもらう事もできただろう。よい……しょっと」
麻子が身を起こしたのを確認し、アンチョビは車体の上に書き割りを乗せる。麻子は小首を傾げつつ聞いた。
「わざと報告せず、連盟が瓦礫の撤去を行うまで待っていたという事か?」
「そうだ。これはあくまで私の推測だけど……大学側にとっても、予想外だったのかもしれない。そして、仮にそうだとしたら……使い道がある」
「使い道?」
怪訝な顔をする麻子に、アンチョビは不敵に笑って答えた。
「……島田愛里寿を倒すための、使い道だ」
遊園地南部。メインストリート近郊。
「………」
三人の中隊長のひとり、ルミは極めて不機嫌そうに何かを待っていた。
「おずおず」と言った風な様子で車内の通信手が彼女に言う。
「しゃ、車長、通信繋がりました」
「……こちらに回せ」
押し殺した声でルミは答え、受信機を耳にあてた。やがていつもの、何を考えているか分からない陽気な声が届く。
「はいはいお待たせ! どうしたの、先輩?」
「何が『どうしたの』だ!」
こちらを舐め切ったトウコの態度に、ルミは激昂して言った。しかし、その怒りもトウコの態度を変えさせるには至らなかったようだ。
「そんなに怒らないでよ、先輩……どうしたってのさ?」
「トウコ! お前、オイ車が判定装置が働いていない事を何故黙っていた!?」
「ああ、その事? いや、アタシも知らなかったんだよ。デカい屋根がどけられて、初めて知ったんだって」
嘘だ。ルミは彼女との継続高校戦車道以来の付き合いの長さからそれを感じ取った。
普段のマイペースな態度とは裏腹に、トウコの戦車道における諸能力は確かだ。おそらくは気付いた上で、こちらに秘密にしていた。
とはいえ、これはルミの推測でしかない。ここで食い下がったところで彼女はしらばっくれるだろう。
ルミは一度呼吸を整え、トウコに言った。
「……分かった、その事はもういい。何にせよこちらの戦力が戻ってきたのは僥倖だ。そいつを連れて、隊長の指示を仰げ」
「あー……いや、それなんだけどね」
ルミの当然の指示に、トウコは歯切れ悪く答えた。嫌な予感がルミの背中を這い上がる。
「何だ?」
「この子、アタシの言う事を聞いてくれないみたい。勝手に動き出しちゃって、どこに行くか分からない感じ。通信機が壊れてるのかも」
「……!?」
間違いない。これも嘘だ。ルミは声を低くしてトウコに聞いた。
「おい、トウコ……お前、何を企んでいる!?」
「嫌だなァ、先輩。何言ってるの?」
「私を舐めるなよ、トウコ。お前が嘘を言う時、あの何時もの癇に障る笑い方をしなくなる事くらい気付いている! 言え、オイ車を手駒にして、何をするつもりだ!?」
「………」
ルミの言葉に、トウコはこれ以上の演技が通用しない事に気付いたのだろう。僅かの沈黙ののち、
「……フヒヒッ、やっぱ勘がいいねえ、先輩」
──愉快そうに笑った。
「いや、ほら、先輩もさ、見てみたくない?」
「何をだ!?」
「そりゃ勿論、愛里寿隊長の“本気”ってヤツをさ」
「……!?」
「気付いてないとは言わさないよ? 隊長、アタシ達との紅白戦でも底を見せてない。今回だって、指示役に徹してアタシ達に実戦経験を積ませようとしてた。大洗の子達が頑張って主戦場まで引き出してくれたけど、あの子が動くと決めたら大洗に勝ち目はない。結局、今回も本気を見せないまま勝負がつく」
「トウコ……お前、それだけの為に大洗側に就くつもりか!?」
「嫌だなァ、幾らアタシでもそこまでは無いって。ちゃんと最後までアタシは大学側の味方だよ?」
ルミの言葉を、トウコはあっさりと否定する。
とりあえずの安堵の吐息をつこうとしたルミに、続けて彼女は言った。
「でもさ……フヒヒッ、これって“殲滅戦”じゃない?」
ルミの身が凍った。彼女の様子に気付かないのか、気付いていてあえて態度を崩さないのか、そのままトウコは言葉を続ける。
「要はこっちが一両でも残っていればいいんでしょ? だったら一両くらい“うっかり”で」
彼女の言葉を待たず、ルミは通信を叩き切った。
元々何を考えているか分からない所はあった。突然に飄々とした仮面を脱ぎ捨て、獰猛に突撃するような所もあった。
しかし──ここまで面倒な奴になっていたとは!
「どうしたの、ルミ?」
「……まずい」
尋常でないルミの様子にメグミが尋ねると、ルミは青い顔で言った。
「あの馬鹿……隊長と大洗が撃ち合う時に、敵味方無視でオイ車を突っ込ませるつもりだ」
「そんな、まさか……」
彼女の言葉を一笑に伏そうとしたメグミが、ルミの顔を見て真顔に戻る。
「……“やれる子”なの?」
「あいつは、どんな悪ふざけでも思いついたからには本気でやる。妥協も、いい加減さもなく、本気でだ」
「それ、隊長にちゃんと言っておくべきだったわね……大洗の追い込み以外にもうひと仕事、やらないと」
横から話を聞いていたアズミの言葉に、ルミは苦々しく頷いた。
「……あーあ、気付かれちゃったか。フヒヒッ、流石先輩、勘がいいねえ」
ラーテゾーン近く、T-34の車上でトウコは呑気に言った。その背後には、建物のようにオイ車がそびえている。
「フヒッ、フヒヒッ……さあて、場も温まってきた! 一丁ド派手に、舞台を回そうじゃないか!」
劇場版カタクチイワシは虎と踊る 第37話 終わり
次回「三角海域は鮫を食らう」に続く