それではご覧ください。
俺にとって唯一の憩いの場、昼間の潮風が心地いい、このベストプレイスで、日課の昼食タイムを楽しんでいた。俺は基本購買でパンを2個買うだけだから、食う時間をさほど有しない。20分くらいは余裕ができるため、こうして、潮風とテニスボールがはじける音を堪能しながら、遠くを見つめている。この時間が、学校で唯一くつろげる場所だ。
「あ、やっぱりここにいた」
するとそこへやってきたのは、前に俺にとって人生で初めての友達である、太宰春歌が訪れた。
「太宰か」
「やっほー」
何ともあほらしい挨拶だ。そして、いつものように俺の隣に座ってきたので、俺はいつものように少し距離をとる。
「いいね~、ここ。風が気持ちいい」
「ああ。ここは俺が苦労して、1人でいられる場所を見つけたんだからな」
「まぁ、確かに人通りは少ないし、案外くつろげるかもね」
太宰はそう言って、腕を上にあげ、背筋を伸ばした。今は絶対に横を向いてはいけない。煩悩退散。
「それよか、何でここに来たんだ?」
「比企谷君いるかな~?って思ったから」
えー、その言い方だと、俺に会いたがってるように聞こえるじゃん。昔の俺だったら勘違いして、勝手に舞い上がってるところだぞ。
「クラスの友達とでも話してればいいのに。俺といたって、あんまり楽しくないぞ」
「いいのいいの。ちょっとお喋りしたかっただけだし」
「お喋りって・・・。俺に話題提供スキルなんてないぞ」
「私が勝手に話すからいいの」
「そーかい」
そこまでして俺と話したいことでもあるのか?
「そういえば比企谷君。私のメール無視したでしょ?」
「は?メール?・・・・・あ、きてる」
受信履歴を確認すると、一番上に太宰春歌という文字があった。時刻は23時という夜中だ。
メールの内容は
『今日の夜ご飯、私の大好物のオムライスだったんだ~。美味しかった!
比企谷君は何が好きなの?』
という、俺にとっちゃ至極どうでもよい内容だった。
「いや、こんなことわざわざ送らんでも・・・」
「ええー、初めてのメールなんだから、これくらいがいいの。それで、比企谷君は何が好きなの?」
友達同士って、こんなどうでもいいことをわざわざメールでやり取りしているのか?俺にはいまいち理解ができいない。・・まぁいいや、とりあえず質問には答えよう。
「俺は、ハンバーグだな。和風でもデミグラスでも、何でもいける」
「成程。ハンバーグね。・・・子供?」
「オムライスの太宰には言われたくない」
そもそも、ハンバーグ好き=子供っていう思考がすでに子供のような気がする。
「オムライスは子供じゃないよ!」
「いや、そこで熱くなられても困る。そろそろ予鈴もなるし、行った方がいいぞ」
「あ、そうだね。じゃあ、行こうか」
あれ?何で俺も一緒に行くことになってるんだ?お1人でどーぞ。
動かない俺を不思議そうに首を傾げながら、こちらを窺っている。
「ん?どうしたの?早く行こう」
どうやら、俺の意図が伝わっていないらしいので、仕方なく一緒に戻ることになってしまった。
「あ、次からはちゃんと返信してよね」
「善処する」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
奉仕部には入れないと思います。
また明日。